ミルとデート 4
「ありがとうございます。旦那様」
二人で仲良く手を繋いで王城を出るとミルがそんな事を言ってきた。
城の中では楓達が手を繋いでいるのを温かい目で見る人達もいれば未だに楓を恨む様な視線を楓に送る人達もいる。
主に女性のメイドが楓達を暖かく見守ってくれていて男性の騎士の一部が恨む様な視線を送っていた。
「いや、逆にごめん。用事は俺の方のだった。せっかくのデートが…」
何だかんだ言って楓もミル達とのデートを楽しみにしているのかもしれない。
「何を言ってるんですか?時間はまだまだあります。これからたくさん楽しむんです!」
ミルは楓の頰に指をツンツンして、笑いながらなんでもない様にそうやって言い切った。
「そうだな、まずは何処から行く?」
「一度ゆっくり街を見て回りたいです。この国の王女だった時はあまりゆっくりこの街を見られてませんでしたから」
ミルは姉と違って学問等は優秀だったので姉以上に色々な勉強をさせられていてあまり自由な時間がなかったらしい。
王女というのもなかなか不憫なものなのかもしれない。
「じゃあ、適当に歩こうか」
楓はそう言ってミルの手を握りながらエスコートしていく。
そのまま楓達は歩いて貴族街を抜けて平民街の賑わっている所に行く。
「わぁ、ここはやっぱり凄いですね。何年もこの街に住んでいるのにこうやってここをゆっくり歩くのは初めてです」
ミルはとても嬉しそうにそう言った。楓もつられて笑顔になる。
日向と違ってミルは可愛らしく笑う。日向は元気に笑ってこちらも元気にしてくれるし、ミルの笑顔は見ているこちらにほんわかしたものを与えてくれる。
ルミナは基本ツンデレなのでそこまでたくさん笑う事はないがその分たまに笑う時は楓もドキッとさせられる。
二人で、昨日の様に買い食いをしたりお互いの服を選んだりしてとても充実した時間を過ごせていた。
最初、まだ買い食いに慣れないのかミルが恥ずかしそうに食べていたのが周囲の目に付き何時の間にか人だかりが出来ていた。
昨日に続き楓達はまた人だかりを作ってしまった。
「おい、お嬢さん。その男より俺達と遊ばないか?」
ミルと楽しく買い食いをしていると前から駆け出し冒険者らしき男達に声をかけられる。
一気にミルの機嫌が悪くなるが男達はそれに気付いていない。
「悪い、こいつは俺の妻でな。他を当たってくれ」
楓もミルとの楽しい時間が遮られ若干不機嫌になりながら警告も兼ねてそうやって言うが全く聞いている様子がない。
「はぁ?お前には聞いてねぇよ。お前はさっさと金を置いて帰れよ。じゃねえとボコるぞ?」
男は楓とあまり変わらない年齢だったので数の利が自分達にあると分かり強気に出ている。
ちなみに今は俺達はまだ冒険者になって1年でCランクなんだぞ?とミルに口説き始めているがミルの表情は一切動いていない。
「ミル、次は何処に行きたい?」
「旦那様、わたしは旦那様となら何処へでも行ってみたいですが今は目の前の羽虫が邪魔で鬱陶しいです」
ミルは男達に向かって睨みながらそう言う。男達は当然の如くキレるがもう五月蝿いだけだ。
「そうだな、こういうのも最近はなかったのにな」
「ですね、毎回嫌になります」
「ミルが片付けるか?」
「いえ、旦那様にお任せします。この格好では動き辛いですし」
「了解。ちょっと後ろに下がっててくれ。後周りの人達に流れ弾がいかない様に気を付けていてくれ」
「分かりました。頑張って下さいね」
ここで、気を付けて下さいと言わないあたりミルは楓の勝ちを全く疑っていない。
「おうおう、さっきから黙ってたら…」
「もう、お前を許さないぞ」
「お前を気絶させてからあの子を無茶苦茶に犯して返品してやるぜ」
前にいた男三人が楓に向かって挑発する。チンピラは合計で五人いて後ろの二人は後衛職なのかあまり体つきもしっかりしていない。
「お前らも分かってるよな?俺とミルの貴重な時間を奪ってるんだぞ?さっさと衛兵にでも捕まって少し反省してくれ」
楓は肩をすくめて呆れたようにそう言った。怒っていると言うのももちろんあるがそれ以上にこの男達が滑稽で目も当てられない。
「お前、この状況が分かってないのk…」
「ごめん、襲うにしてももっと個性を出してくれ。退場の仕方がワンパターンでこっちも飽きた」
楓はそう言いながら周りに被害が出ない様に調整して風魔法を使う。
「な…!?」
「お疲れ様です」
「おう、さてデートを再開しようか。っとその前にっと」
意識を刈り取られた男達に拘束魔法を使い動けない様にしておく。
このまま放置していれば誰かがさっきの出来事を証言すると思うので楓は動けない様に拘束だけしておく。
その後は特に問題なくデートを楽しみだんだん日も暮れてきた。
「ミル、最後に連れて行きたい場所があるんだけどいいかな?」
「はい、楽しみです!」
昨日と同じように唯一楓が事前に用意しておいた場所にミルと一緒に向かう。
現在、ミルには目を瞑って貰って楓がお姫様抱っこをしてその場所に向かっている。
結構距離がある為空を飛んで移動する。バレない様に認識阻害のスキルを使っている為問題はなかった。
「旦那様、わたしは今、とっても幸せです!」
ミルは楓にお姫様抱っこをされているのが嬉しいらしく今日の暫定一位の笑顔で楓に向かってそう言う。
そろそろ着きそうだがミル、気に入ってくれると良いなぁ。
楓は、昨日と同じ様に緊張しながらその場に向かうのであった。




