クラス対抗戦 2
今の状況を軽く説明すると楓とムートが睨み合っている感じだ。
ルミナはちゃっかり楓の服を摘んで怯えている。
「そうだ、いい事を思いつきました。賭けをしませんか?カエデ先生」
ムートは楓にそう提案した。どこか余裕そうなのはムートが楓の実力を全く知らないが故だろう。
楓はみっちり偵察済みだが…マリーのおかげで偵察も楽に出来た。
なんでも召喚魔法って術者と召喚された存在の五感を共有出来るらしくマリーに各クラスの練習風景や各生徒の実力を見て来て貰ったのだ。
せこい?知らんな。
それで、ムートの実力はと言うと実は結構強かったりする。
まぁ、ルミナ程ではないが確実にマークよりかは強い。
なんでこんなに勇者達といい勝負する奴がいるのかは疑問だが勇者達も召喚されてまだ半年とちょっとと言う事を考えるとその成長速度は勇者達は異常なのかもしれない。
伸び代があるのかどうかは知らないが…
「賭けとは?」
楓も余裕そうにそう尋ねる。相手がその気ならこっちもその気でやらせて貰うのが楓のポリシーだ。
今、楓は後ろを見ていないのでルミナの顔を見る事が出来ないが顔を真っ赤にして震えていた。
まさか、自分を取り合う賭け事をされるとは思ってもいなかったのだろう。
「そうですね、今日のクラス対抗戦。ルミナさん達が勝てば今回は諦めます。ですが、もし僕達が勝てばルミナさんはきちんと家に帰って僕のものになってもらいます」
「それ、おれ何も出来なくね?」
それではムートとルミナの賭けになってしまう。
「そうですね、ではエキシビションマッチで生徒一人と先生一人のタッグ戦で勝負を決めましょう。当然カエデ先生とルミナさんが出場するのでしょう?」
「なんだそれ?」
楓は心の底からの疑問だった。まず、今回のクラス対抗戦って生徒達の勝負だけじゃないの?
さっき教員達も戦う事を聞いたのにまだあるの?
「先生と生徒の一人でタッグを組んで総当たり戦をするの」
ルミナが後ろから軽くフォローをしてくれる。
「なぁ、ルミナ。もしかしてまだあったりする?」
「いえ、クラス対抗戦、教員対抗戦、タッグ戦の三つが今日の種目よ」
了解した。一日を使うのにやけに早く終わりそうだなーと思ってたけどそう言う事か。これならいい感じの時間で終わるだろう。
「分かった。じゃあそれに勝てばルミナは俺が貰うから覚悟しておけよ?」
「分かりました、目に物見せてやりますから楽しみにしていて下さい」
ムートはそう言って先に訓練場へと去っていった。
うん、俺あいつ嫌いだ。
『珍しいですね、マスターが誰かを嫌うなんて』
うん、なんかあいつは勇者の一段階下のうざい奴だったよ。
「な、な、な」
「ん?」
「何、私で賭け事をしてるのよー!!!!!」
ルミナが叫びながら楓の襟をつかんで揺らす。相当恥ずかしいみたいで勢いがいつもの三倍はあった。
「いや、なんかあいつうざかったから…」
「そ、それでも!私は先生かムートのどちらかのものになるって!」
「嫌か?」
「ムートはダメ!絶対いや!」
そう言うルミナの顔はマジで嫌がってる顔だった。
いや、まぁ俺も嫌いだけどそこまで嫌ってやらなくても…
「あいつ、私の家の人達には表の顔をするの。でも裏の顔は酷いものよ。あいつは私が苦しんでいるのを見て楽しんでいるだけ」
「そっか。じゃあどっちが勝ってもお前は負けた事になる訳か、困ったな…」
「べ、別にあなたは、い、嫌じゃない…け、ど」
「ん?何か言ったか?まぁ、俺も勢いでやってしまった感があるしな。とりあえず勝負には勝つからその後の事は考えておいてくれ」
ルミナの頑張って紡いだ言葉は楓には届かず、とりあえず勝負に勝つ事を考え始めた。
「わ、分かってるわよ!」
ルミナは何かムシャクシャして楓にそう叫んでから一人で訓練場へと走っていった。
「はぁ、マジで女心が分からん。あ、日向達だ。とりあえず今の状況を把握してもらわないとな」
そう言って楓も日向達の元へと駆けていくのであった。
「楓くん、何やってるの?」
「旦那様は気をぬくとすぐにトラブルに足を突っ込むから…」
「いや、今回の俺悪いか?」
「相手の喧嘩に乗ってる時点でダメだね。まぁそのおかげでルミナさんは助かるみたいだから良かったけど。カエデにしては珍しいね」
「うん、なんかムシャクシャしてやった。反省はしている」
楓も反省はしているようだ。まぁその反省も今日限り、いやこの一瞬限りだろうが。
「で、ルミナさんも今日から私達の家で生活をするんだよね?服とかどうするの?」
日向が素朴な疑問を口に出す。そう言えばそうだった。ルミナが生活をするにあたっての必需品を買っておかないと…
「エリス」
「はい、旦那様」
楓は別に叫ぶ事もなくただ自分の家のメイドの名前を口にする。
するとそこに亜空間が開かれメイドが参上してくる。日向達も呆れ顔だ。
「ルミナっていう女の子がいて、そいつも今日からクランハウスで住む予定だから部屋と生活必需品を買っておいてくれ」
「畏まりました」
エリスはそう言って姿を消してルミナの元へと向かっていく。きっとバレない様に体の大きさ等を計りに行くのだろう。
出来たメイドだ。
「エリスさんって凄いね…」
日向が口に出したその言葉を否定する声はどこからもかからなかった。




