第69話 久々マーリン
翌朝になり、目が覚めたのでベッドから起き上がろうと思ったが、ホールドロックされて動けない。
よくもその格好のまま一晩寝られたものだと感心してしまう。
幸せそうに寝ているイリアの顔がすぐ目の前にある。
柔らかな胸の感触を体いっぱいに感じてしまい、不肖ながら、腰を引き気味にしたい気分です。でも動けない・・・。
―――――ん?
えっ!?いつの間にか上半身の服がなくなっている!?
どおりで生々しい感触だと・・・
「んん・・・」
ロックを解こうかともぞもぞ動いていたら、イリアが起きてしまった。
「おはよう、ジンイチロー」
「うん・・・オハヨー・・・」
「どうして逃げるの?」
「いや・・・だって・・・」
「今日ここを発つんでしょ?」
「そうです」
「だったらしばらくこのままです」
「・・・」
30分ほど経った頃だろうか・・・ようやくイリアがベッドから離れてくれた。
彼女曰くあと1時間は大丈夫と言うが、色々な意味で無理です・・・。
あ・・・。
ベッドから降りて髪を結わえようとする彼女の後姿を見たとき、それがあった。
腰に痣のような模様がある。まるで魔法陣のような・・・。
「ねぇ、イリア」
「なに?」
「腰の模様は何?」
「あぁ、これ?これはね、『王家紋章』といって、生まれてすぐに王が子に与えるという王家の子息である証なの」
「ふぅん・・・」
今日はマーリンさんとの定期連絡に立ち会えることとなっている。
随分と会っていないようにも思えるが、まだ1か月ほどしか経っていない。
マーリンさんに聞いてみたいこと・・・色々あるようで、ないような・・・
朝食を食べ終え、俺の部屋でモアさんと待機。モアさんに若干の魔力を与えて、今日も実験は休止。明日からは魔力を与えないようにして再び開始しよう。
そうこうするうちにイリアが部屋に尋ねてきて、アルマン王の元へ案内された。
「うむ、では早速はじめようか」
「はい」
アルマン王は、部屋の隅から布で覆われたものを手に取り、俺達の座っていたソファのローテーブルに置いた。
布を取ると、見た目はギルドに置いてあるものと大して変わらない、登録認証用の水晶だ。
「これに手を置くと、マーリン様につながるのだ」
「ふぅん・・・」
便利な魔道具だ。これ、電話と言っても過言じゃない。
―――プルルルルル、プルルルルル
ええええええっ!?
何ですか!?この呼び出し音!?電話じゃないっスか!!
『もしもーし!!』
「マーリン様、フィロデニア王国アルマンでございます」
『おお、お世話様!!』
「はっはっはっ、相変わらず不思議な言葉ですな」
もう・・・笑うしかない・・・。この世界でこれまで一度も聞いたことがない、『お世話様』なんて・・・。
「定期連絡の時期となった故、魔道具を起こした次第です」
『そっかー、早いもんだねー。王様は元気してた?』
「えぇ。健康は問題ありませんが、ここ最近厄介ごとが続きまして、今日はその報告とそれに係るご相談をさせていただきたいのです。少々長くなりますが・・・」
『うん、いいよ。それで?』
アルマン王は魔物による王城襲撃事件の概要と、灰色ローブの男について、そして紫色の宝石・・・『魔神石』について話した。マーリンさんは何も口を挟まず、黙ってその報告を聞いていた。
「・・・というわけであります」
『王様、よく生き残ったね。イリア王女も無事なの?』
「えぇ、問題ありません。イリアに至っては、魔物に喰われかけましたが、ここにいる『大賢者ジンイチロー』殿に助けていただき、九死に一生を得ました」
『・・・ジンイチローがそこにいるの!?』
「マーリンさん、お久しぶりです。ジンイチローです」
『やだぁ~久しぶり~。生きてたんだね』
「いきなり失礼ですね・・・。ちゃんと生きながらえましたよ。あなたのくれた銀貨3枚のおかげで、かけがえのない方たちと出会えました」
『そのお金の意味をしっかりと汲み取ってくれたあなただからこそ、『大賢者』を譲った意味があるのよ。本当に、あなたでよかったと思ってる』
マーリンさん・・・。くそ・・・泣かせるんじゃねぇよ・・・。
『で、イリア王女とはもうヤっちゃったの?』
「ぶふぉおお!!」
『え?まさか本当に?冗談のつもりだったのに・・・やだもう!』
「まだそんなことまではしてないですから!」
『ふぅん・・・『そんなことまでは』か・・・。ふぅん・・・』
アルマン王が咳ばらいをした。
「ゴフンゴフン!えー、積もる話もあるでしょうが、まずは私の話したことについての解説を・・・」
『あ、ごめんごめん。ついつい・・・』
「アルマン王、すみません」
「すまんが私の話の後でな。まずは・・・王城の一部が魔物に破壊されてしまったのでその修理に当たりたいのだが、いかんせん古き時代の造りであるため修復方法が分からないのです」
『確かエルフと仲良くやっていたころのものだよね』
「えぇ、そうです。石造りのものですが、石と石の間に繋ぎを含ませていまして、それが一体何なのかが分からないのです」
「うーん・・・実物を見たわけじゃないから何とも言えないけど・・・。そこのジンイチロー君には見せた?」
え?俺?
「いえ、実物は・・・」
『多分ねぇ、ジンイチロー君にならわかるよ』
「なんと!ジンイチロー殿、それは真か!」
「ええええ!!そんなのわかるわけないじゃないですか!!」
「マーリン様はそうおっしゃっておられるが・・・」
『ジンイチロー君、君の故郷では石と石を繋ぐときに多用していたものは?』
「・・・モルタルやコンクリートです」
『ほら!さすが大賢者!解決方法が見つかったよ』
「なんと・・・さすがだ!早速後で指南していただこう!」
「ちょっとマーリンさん!それがわかったからといってもどうやって作るんだかわかりませんよ!教えてください!」
『えー・・・。仕方ないなぁ。サラリーマンならなんでもわかると思ったのに・・・』
いくらなんでも度が過ぎる――――
ん?サラリーマンなんて言い方、まるで元の世界の・・・。
それにモルタルとコンクリのことも知っているなんて・・・。
俺はマーリンさんから言われたその配合を必死でメモ。
あとでアルマン王にわかりやすく伝えなければ・・・。
「さて、次であります――――。灰色ローブの男がここ最近暗躍しておりまして、マーリン様はご存じありませんか?王城襲撃の際には、この男達が大森林の魔物をこの王城に、転移魔法陣を使って降ろしたのです」
『・・・見たことはないけどね。それよりも転移魔法陣を?うーん・・・』
「内部にもそれに通ずるものが現れはじめましてな」
『もちろん予測はしていると思うけど、中心にまとめている者がいるはずだよ。それの見当はついていないんだね』
「残念ながら・・・」
『ジンイチロー君はどう思う?』
「・・・その転移魔法陣、マーリンさんはご存知ですよね?エルフの国の『ハイエルフ』によるものだと」
『なんだ知ってんじゃん。王様、ジンイチロー君の言う通り。私はその男達の心配よりも、首謀者一味に『ハイエルフ』が関わっていることの方が重要だと思うよ』
「ハイエルフ?」
『王都にある転移魔法陣はエルフの国の知識によって作られたものだけど、その知識の中心にいるのが『ハイエルフ』だよ。私もあの転移魔法陣を解析しようかと思ったんだけど、単純なように見えて複雑怪奇。とても私の手におえるものじゃなかった。それだけ転移魔法陣って大変なんだよ。私も転移魔法はたまに使うけど、ハイエルフの行使する転移魔法陣は永年効果のほかに色々特性があってとっても特殊なのよ』
「アルマン王、つまりこの灰色ローブの男達に関する動きというのは、単に犯人探しという枠ではなく、エルフの技術を使って転覆を謀ろうとする組織的な活動だと窺えます。この組織というのが国なのかそうでないのかは、周辺の国々の動きを窺いつつ見極めたほうがよいかと」
「なるほど・・・」
『だから私も気にかけてみるよ』
「ありがとうございます。それではその灰色ローブの男に関することとしてもう一つ懸念されるのが、紫色の宝石・・・彼ら曰く『魔人石』というものです」
『魔人石?聞いたことない・・・』
「これについては俺から話してもいいですか?」
「うむ、構わん」
俺はハピロン伯爵とモアさんの身に起きたこととその違い、モアさんの魔人石を魔力溜まりに換えたが生産・回復ができないことなど全て話した。
「アルマン王、この話は内密に願います」
「承知した」
「マーリンさんはどう思いますか」
『よく魔力溜まりを作れたじゃない』
「なんかまぁ・・・助けたいって強く願ったことが功を奏したのでしょうか」
『魔人石についてはよくわからないけど、魔族と何かかかわりがあるのかしら・・・』
「魔族・・・」
『聞いてみるのも一つの手ね。魔王にもさっぱり会ってないしなぁ』
「魔王って・・・あの魔王ですか・・・」
『何の魔王のことを言っているのか分からないけど、王様はわかるでしょ』
「うむ。かつて『ロード・ハンス』がこのフィロデニアから魔王を撃退したとして記録が残っておる」
ハンス・・・?
『わたしも魔王にコンタクトとってみるわ。それについてはまた私から連絡するわね』
「ありがとうございます、マーリン様」
『さてと・・・そろそろ出かけなきゃいけない時間なのよね・・・。ジンイチロー君は何か聞きたいことはあるのかしら?』
聞きたいこと・・・聞きたいこと・・・そうだなぁ・・・。
「どうにも攻撃魔法が火魔法しかできないんですけど、なにか他にいいものはありますか?」
『・・・』
ん?なにかおかしな質問しちゃった?
『あはははははははははは!何よそれっ!!!こんなときにそんなこと聞いちゃうの!?』
「いけませんか・・・?」
『もっと違うこと聞いてくるのかと思いきや、その辺にいる魔法士に聞けばわかることをわざわざ私に聞くなんて・・・。でもいいわ。そんな面白いジンイチロー君には特別に教えてあげる。あなたのいた世界では、石に穴を開けるときとか、汚れを落とす時には何を使っていた?』
石に穴を・・・汚れを落とすって言えば・・・水・・・・・あぁ!!
「ウォータージェットですか!」
『そう、速度と体積を考慮すれば十分に攻撃魔法足りうるでしょ。魔法なんてなんでも試してみればいいのよ。そのうちマスターしちゃうわよ。ただし、水の弾は炎と違って貫通するから、見境なく撃つと味方にも当たっちゃうから注意が必要ね』
「心得ました」
マーリンさんはふぅ~っと声をあげて一息ついた。
『じゃあね、皆さん。またどこかでお会いしましょ!王様も気になることがあったらすぐ連絡くれてもいいんだからね!』
「いやはや、なんだか申し訳なくて―――」
『だったらジンイチロー君を出汁に使って呼びだしちゃえばいいのよ』
「なるほど、コイツがうるさくて仕方がないんだと言えばいいんですね」
『そう!早く呼び出さないとイリアがあんなことされてしまう!って』
お~い・・・。
『冗談はさておき・・・。ジンイチロー君もまたね!』
「ありがとうございます。お元気で」
『アディオ~ス』
通信が切れたようだ・・・。
「さて、ジンイチロー殿、早速『もるたる』と『こんくりーと』について話してもらおうじゃないか・・・」
アルマン王の目が据わってます。脅さなくても教えますって。
現場に王とイリアの案内で向かっているさなか、モアさんが小声で話しかけてきた。
「ジンイチロー様、前にいるお二人のお話が興味深いです」
「あんまり聞き耳立てると――――」
「第一王女のことについての話題です。どうやら王都に帰省するらしいのですが、その伴侶様の症状が・・・」
「症状が?」
「『腹に何かがある』と騒ぎ立て、かきむしっているそうです」
・・・まさか・・・ドルアンドの言っていたことって・・・
「第一王女のプラム様にも物を投げつけるなど暴力傾向が強く出ているらしく、一時的な避難のためとのことです」
第一王女から詳しく話を聞くことができればいいんだけど・・・タイミングが合わなそうだから、機会があれば聞いてみよう。
「それにしてもジンイチロー様」
「なぁに?」
「第二王女様はどこにおられるのですか?」
「・・・知らないな」
「イリア様と王との邂逅を果たした際、家族構成員が不意に気になったのです」
第一王女の存在は確認できても、第二王女は確かに未だ確認がとれていない。モアさんの指摘がなければ気がつかなかった・・・。
俺達は魔物によって大きく崩されたところを案内された。といってもここは俺が初めて回復魔法を発動させた場所のすぐ側でもある。
「これだ。この繋ぎがわからんのだ」
崩された石をよくみると、コンクリートのようなもので繋がれた痕がある。
「多分マーリンさんの言っていたものは、俺の考えているものと同じだと思います。書くものをください。こいつを作る配合を書きますから」
何人か職人が立ち会ったのだが、皆さん俺の話を聞いて意気揚々としていた。
むしろ俺からしたら不思議なほどだ。街にはあれだけ立派な造りの建物があるにも関わらず、モルタルなど使わずによく出来たものだと関心してしまう。
そして王城を発つときがやって来た。
イリアが城の入口まで見送りに来てくれた。いつもの彼女ならぐずつきそうなものを、晴れ晴れとした笑顔を絶やさなかった。
「見送りありがとう、イリア」
「よいのです。またすぐに会えますから」
なるほど、こりゃまた城を抜け出す気でいるな・・・。
「ですがミニンスクの一件もありますので、早々というわけにはいきませんが・・・」
「俺もしばらくは王都にいるけど、用事を済ませたら大山脈に行くよ」
「それまでには一度お会いしたいものですわ」
「そうだね」
用意してくれた馬車にモアさんと乗り込み、早速出立。
イリアに大きく手を振って再開を約束した。
さぁ帰ろう!ばぁばが待ってるぞ!
いつもありがとうございます。
今後の投稿についてお伝えします。
リアルの方でゴタゴタが続き、PCでの投稿ができなくなってしまいました。これまで定期的に投稿を重ねてこられたのにこんなことになってしまい、残念な気持ちでいっぱいです。
今後はスマホ投稿が主軸となるため、書くスピードが遅くなることから、週に一度、よくて二度の不定期更新となってしまいます。修正はこれまで通り必要に応じて行います。
いつもお読みくださるみなさんに申し訳ありませんが、今後も引き続きよろしくお願いします。
※11/23 一部修正しました。ご指摘ありがとうございます。




