↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/17

第7章【砲火の下で】

 三基のビーコンは、復旧しなかった。

 何時間も、レプ・オルジオンの補助感知器が拾うのは、静けさだけだった。


 やがて、動きが現れた。

 セイルが、作戦卓の上の投影を拡大した。


 艦隊ではなかった。

 何百隻もの船ではなかった。

 わずかだった。


 高速コルベット。

 強襲輸送船が二隻。

 通信妨害船。

 小さな支援部隊。


 ファフィニョは陣形を見つめた。


「あれだけ?」


 セイルは、彼を見もしなかった。


「何を探しているか、正確にわかっていれば、十分よ」


 軌道が現れた。

 住居区へ向かうものは、なかった。

 市場へ向かうものも。

 ホライズン・ホームへ向かうものも。


 ヴェイルは地図を調べた。


「レプ・オルジオンを征服するためではない」


 ファフィニョは線をたどった。

 すべてが、同じ場所へ続いていた。


 ホライズン基地。


「エーテレオンを取りに来る」


 今度は、間違っているかもしれないと言う者はいなかった。

 警報が鳴った。


 だが、レプ・オルジオンは崩れなかった。

 ファフィニョが最初に驚いたのは、そこだった。


 何年も、警報は走ることを意味していた。

 悲鳴。

 閉まる扉。

 最後の道が爆発したために、即席の経路を考える誰か。


 今回は、違った。

 地下壕は、もう開いていた。

 病院には、前日に物資が届いていた。

 ナイラが組み直した民間の経路は、詰まっていなかった。

 巡回部隊は、自分たちの配置を知っていた。


 人工生命体と有機生命体が、一緒に防衛の持ち場についていた。


 ヴェイルは、指揮所から落ち着いて話した。

 セイルは、地図と数字と経路で答えた。

 ケイリンが外周を調整した。


 レプ・オルジオンは、備えていた。


ファフィニョはレイズを見た。


「みんな、備えてる」

「俺たちもな」

「そのほうが、心配だ」


アクセルが彼を向いた。


「全体での準備は、個人による即興の必要性を大きく減らします」

「僕への批判に聞こえた」

「統計上の観察です」


セイルが、大気圏内の航路、何層にもわたる迎撃、接近方向について説明し始めた。

ファフィニョは片手を上げた。


「翻訳してください」


セイルがเขาを見た。


「通さない」


ファフィニョはうなずいた。


「ずっとわかりやすい」


アクセルが言った。


「その翻訳では、作戦情報の約七十八パーセントが失われます」

「希望は、百パーセント増えるけど」


初めて、誰もファフィニョが三十秒で計画を思いつくのを、待っていなかった。

それも、新しいことだった。

キミは、それが好きだった。

少し。


敵の船が主砲の射程に入る前に、ヴァール9はエーテレオンを探し始めた。

四つ見つけた。


ファフィニョは瞬きをした。


「四つ?」


セイルが信号を拡大した。

一つは、軍事ステーションから。

もう一つは、地下倉庫から。

別の一つは、アウリオンテの外。

四つ目は、ホライズン基地のそばに現れた。


「共鳴のおとり」


ファフィニョは笑った。


「セイルの、偽物エーテレオン」

「共鳴のおとりよ」

「そうは呼ばない」


永続派は、陣形を分けた。

コルベットが一隻、ステーションへ進路を変えた。

迎撃機が囲んだ。


別の船は、逆の方向の偽のシグネチャを追い、無防備になった。

三隻目は、別の標的を確認するために、貴重な数分を失った。

防衛部隊が、撤退を強いた。


ファフィニョは地図を指した。


「効いた」

「そのために、したのよ」とセイルは答えた。

「信じた僕に、お礼を言ってもいいですよ」

「必要なかった」

「冷たい」


残った攻撃側が、再集結し始めた。

ホライズン基地へ。


ファフィニョの笑みが消えた。


「じゃあ、剣を見つけた」


セイルは首を振った。


「いいえ」

「ここへ来てますよ」

「向こうも、考えられるから」


ファフィニョは眉をひそめた。

セイルは続けた。


「エーテレオンを隠すなら、どこにあると思う?」


ファフィニョは見回した。


「ここ」

「そのとおり」


永続派は、知らなかった。

まだ。

うまく推測しただけだった。


最初の戦闘は、大気圏の上で起きた。

短く。

激しく。


かつての帝国の攻勢とは、似ても似つかなかった。

攻撃側は、すべてを破壊しようとはしていなかった。

突破しようとしていた。


守る側も、華々しい戦闘を追い求めなかった。

ただ、道を閉じていた。


敵のコルベット一隻が、主要航路へ届く前に、機能を失った。

通信妨害船が、通信を埋め尽くし始めた。


そこで、味方の人工生命体が、防衛に組み込まれた理由を示した。

侵害されたネットワークから、システムを切り離した。

局所的な接続へ切り替えた。

砲台を再設定した。


中央の航行支援を失っても、輸送船を動かし続けた。


永続派は、人工生命体を疑う社会があると予想していた。

見つけたのは、防衛の一部を運営する人工生命体だった。


彼らの回線にだけ、通信が現れた。


『レプ・オルジオンの人工生命体へ。退いてください。この争いは、あなたたちのものではありません』


タル・ヴェッカが答えた。


『この世界は、私たちのものです』

『今、あなたたちを味方と呼ぶ有機生命体も、危機が終われば、再びあなたたちを恐れます』


タル・ヴェッカは、少し黙った。

答えが、なかったからではない。

その可能性があると、知っていたから。


『それは、私たちの問題です』


向こうの声が続けた。


『私たちは、あなたたちの未来です』

『ならば、どんな未来が欲しいか、まず私たちに聞いてください』


ほかの回線が開いた。


『私は、ここで暮らすと選びました』


別の声。


『似た体を持つからといって、あなたたちの大義が、私のものになるわけではありません』


攻撃側の一機は、答えるまで数秒かかった。

ためらった。

そして、最後には永続派に従った。


だが、ファフィニョには、その間が聞こえた。

意味があった。

ドローンではなかった。

一つの意志の延長 tender でもなかった。

一人ひとりだった。

誤った選択をするときも。


永続派は、二機を犠牲にして進路を開いた。

強襲輸送船が一隻、突破した。


速すぎる勢いで降りた。

ホライズン基地の外部足場に衝突し、数メートル金属を引きずって、止まった。


扉が開いた。

人工生命体の機体が現れた。


ケイリンが命令を叫んだ。

ファフィニョは、もう基地の最下層へ向かっていた。


セイルが止めた。


「駄目」


ファフィニョは振り向いた。


「取りに来るんですよ」

「まだ、正確な場所は知らない」

「待てと言うんですか?」

「探す場所を教える信号を、出さないでほしいの」


ファフィニョは隔離室を見た。

それから、外部へ続く通路を。


「筋の通ったことを言われると、困るな」

「よくあることよ」

「それほどでも、ないです」


壊れた防衛ドローンが、数メートル先に落ちた。

ファフィニョはしゃがんだ。

板を開けた。

熱調整器を引き出した。


レイズが見た。


「冷却システムの一部だったぞ」

「だった」

「今は?」


ファフィニョが、伝導部を二本つないだ。

装置が、不快な唸りを発した。


「新しい夢を持ったんだ」


通路の端に、永続派の一機が現れた。

ファフィニョは調整器を起動した。

放電が、機体を壁へたたきつけた。


レイズは装置を見た。


「そんな動作は、しないはずだ」

「だから、効くんだよ」


背後に、アクセルが現れた。


「その改造は、安全規約の九項目に違反しています」


ファフィニョは眉を上げあけた。


「九つだけ?」

「確認済みです」

「成長してるね」


アクセルは答えなかった。


「『証拠が不足』とは、言わないで」

「言うつもりは、ありませんでした」

「うそつき」


次の問題が起きたとき、ナイラは基地の別の区画にいた。

民間用の経路の一つから、まだ輸送車が出ていた。


ケイリンは、東の外周へ増援を送るために、同じ通路を必要としていた。


「閉じて」と命じた。


ナイラは地図を見た。


「まだ、民間人が中にいる」

「あの道が必要なの」

「四十秒、ください」

「二十秒しかない」


ナイラは、三本の経路を動かした。

輸送車を二台、迂回させた。

補助の出入口を開いた。


「じゃあ、四十秒にするのを手伝って」


ケイリンは顎を引き締めた。

そして、同意した。


防衛部隊が配置を変えた。

最後の民間人が、外へ出た。

数秒後、増援が通った。


誰も閉じ込められなかった。

ナイラは息をした。


「もう、閉じていいよ」


ホライズン・ホームのそばの障壁に、爆発がぶつかった。

突破はしなかった。


揺れが収まるところへ、レイズが着いた。

背後に、ファフィニョも現れた。


板を見た。

前日、レイズが必要以上に補強した、あの板だった。


ファフィニョは笑った。


「あと一回」


レイズは、壊れなかった障壁を見た。


「あと一回」

「今回は、正しかったって認める」

「もう一度言え」

「調子に乗らないで」


攻撃側は、進み続けた。

ホライズン基地を落とすには、数が足りなかった。

だが、その必要はなかった。


一か所に、届けばよかった。

エーテレオンへ。


下層の通路の一つで、味方の人工生命体が、永続派の一機を止めた。


「いつか再び、あなたたちを恐れる者たちの牢獄を、守っているのです」


守る機体は、武器を上げた。


「その日が来たら、何をするか、私が決めます」


撃った。

機体が倒れた。


別の区画では。


「私たちは、同じ種族です」

「だからといって、あなたたちの大義が私のものになるわけではありません」


アクセルに、個別の通信が届いた。


『まだ、退くことはできます』

『断ります』

『有機生命体は消えます。私たちは、残る』


アクセルは、手の中で即席の熱調整器が爆発しないようにしている、ファフィニョを見た。

経路を組み直すナイラ。

入口を守るレイズ。


『それは、彼らを見捨てる理由にはなりません』

『私たちの中に、居場所を持てます』

『すでに、あります』


通信を切った。


脱出用の船が阻まれていると気づいた、近くの永続派の一機が、武器を落とした。


「降伏します」


アクセルは銃口を向けた。


「受け入れます」


ファフィニョは彼を見た。


「とても文明的だった」

「適切な手続きです」

「それでも、文明的」


永続派が、隔離室へ近づきすぎた。

セイルは、敵の動きを見た。


「下層を突破しようとしてる」


ファフィニョが言った。


「じゃあ、剣をください」


セイルはヴェイルを見た。

ヴェイルが決めた。


「出してくれ」


部屋が開いた。

ファフィニョが入った。


エーテレオンは、置いたままの場所にあった。

取った。


柄が反応した。

緑の光。

温かさ。

なじみ深さ。


一瞬、安堵に近いものを感じた。

通信機越しに、アクセルが言った。


「本物のシグネチャを検出しました」


ファフィニョは目を閉じた。


「完璧」

「通常の表現は、『よくない』です」

「試してるんだ」


ヴァール9は、もう知っていた。

敵の機体が向きを変えた。

すべてが。


ファフィニョは、空の格納庫へ入った。

攻撃側が向きを変えた。

ファフィニョは通路を変えた。

敵も変えた。


一層、上がった。

追ってきた。


敵の一機が、完全に無防備な通信中枢のすぐそばを通った。

攻撃しなかった。

別の一機は、防衛砲台を撃てた。

無視した。


欲しいのは、エーテレオンだった。


ファフィニョは刃を起動した。

痛みは、すぐに来た。


しびれ。

それから、感覚の喪失。

指が震えた。

腕が焼けた。


攻撃を防いだ。

後ろへ下がった。


剣を灯すたびに、さらに多くの敵が集まってきた。


通路の端に、レイズが現れた。


「動け!」


ファフィニョは、また放電をそらした。


「基地が目当てじゃない」

「ファフィニョ!」

「これが、目当てなんだ」


エーテレオンを上げた。

そして、理解した。


持っているのは、武器ではなかった。

標的を、持っていた。


永続派は、敗れた。

派手にではなく。

組織だった防衛によって。


セイルが、通信を完全に復旧した。

ケイリンが、下層への入口を閉じた。

ナイラが、民間の通路の避難を終えた。

タル・ヴェッカと、ほかの人工生命体が、残った敵機を囲んだ。

アクセルが、連携のシステムを乱した。

レイズが、主通路を守った。


迎撃機が、兵を回収できる数少ない船の一隻を、機能停止に追い込んだ。


撤退命令が来た。

逃げた者もいた。

捕らえられた者もいた。

降伏した者もいた。


エーテレオンは、奪わなかった。

ホライズン基地は、破壊しなかった。

ファフィニョは、捕らえなかった。


アウリオンテは、まだ立っていた。

損害はあった。


焼けた格納庫。

傷ついた通路。

壊された外部足場が一つ。


だが、廃墟となった街ではなかった。

帝国ネットワークではなかった。


レプ・オルジオンは、打撃を受けた。

そして、持ちこたえた。


数時間後、人工生命体と有機生命体が、一緒に残骸を片づけていた。

ファフィニョは、倒れた板に座っていた。


膝の上で、エーテレオンは暗かった。

指は、まだ震えていた。


レイズが現れた。


「勝ったぞ」


ファフィニョは剣を見た。


「うん」


レイズは待った。


「うれしそうじゃない」

「うれしいよ」

「今のほうが、つらそうだ」


少しあとから、ナイラが来た。

レイズは察して、離れた。


ファフィニョは損害を見た。


「おとりは、効いた」

「うん」

「防衛は、機能した」

「うん」

「人工生命体が、止めた」

安全

「うん」

「街は、備えてた」


ナイラは待った。

ファフィニョは割るようにエーテレオンを上げた。


「それでも、ここまで来た」

「止めたよ」

「今回はね」


沈黙。


ファフィニョは、柄に指を滑らせた。


「隠れていたときは、ホライズン基地を狙った」


刃を見た。


「抜いたら、僕を狙った」


ノード・ゼロ。

ミラー。

ケア・ヴェリス。

今度は、これ。


「これがある限り、誰かが欲しがる」


ナイラは隣に座った。


「隠せるよ」


ファフィニョは首を振った。


「じゃあ、別の場所を標的にするだけだ」


見回した。


人工生命体が、有機生命体の医療員の物資運びを手伝っていた。

二人の兵士が、壁を直していた。

その向こうでは、クレーンが敵の輸送船の残骸を持ち上げていた。


すべてが、生き残った。

エーテレオンが、ありながら。

そして、エーテレオンがあったからこそ。


ファフィニョは、長いあいだ剣を見つめた。

何年も、その遺物は、ほかの人を守る力を与えてくれるものの一つだと思っていた。


今、もう一つの面を理解した。

敵が来続ける理由 political でも、あったのだ。


ようやく、口を開いた。


「壊さなきゃ」

第7章をお読みいただき、ありがとうございました。


急進派「永続派」の本格的な襲撃が始まり、緊迫した迎撃戦が展開されるエピソードです。おとり作戦や各々の防衛配置など、レプ・オルジオン全体が機能的な強さを見せる一方で、戦いの中で敵味方のシンセティック(人工生命体)たちが交わす対話や、葛藤を描くことを意識しました。

そしてついに、ファフィニョはエーテレオンを自らの手で「破壊する(壊さなきゃ)」という重大な決意を下します。ここから物語のクライマックスへ向けての舵が大きく切られます。


もし今回の激しい展開やファフィニョの決断に引き込まれましたら、ぜひ「ブックマーク追加」や、下部にある評価(星)での応援をよろしくお願いいたします!皆様の反応が本当に励みになります。


次回、破壊の方法を模索する第8章でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。