止まらぬ怒り
微かに光が差し込む部屋で相変わらずの不協和音を奏でるオルゴールが鳴っている。
この音は僕が聞くから不穏なのだろうか?
そんなことを思っていても、ベットから起きれない。
起きる理由がない。
時刻は……朝6時、早くもない遅くもない時間だ。
寝ようとしても寝れない。
なぜこんなふうになったのだろう。
「………」
木でできた茶色い天井を眺める、傷ひとつない綺麗な天井。
それと僕の体についた傷を対比させてしまう。
3日前のハンバーガー屋でつけられたこの大量の傷、別に恨んだりはしていないが人間の体はやはり不便だ、体力回復に神経を使いすぎて動く気力すらも起きない。
しばらくぼーっとしていると、スマホに着信があった。
重い腕を伸ばして、光る画面をのぞいた。
連絡は澪さんからのものだった。
…………
「……招待状持ってるんですけど」
「ああ、澪先生のご友人ですね…あの人ほぼ外でないのにどうやって友達作ってるんですか?」
「澪さんはトラブル体質ですからね、知り合いが多いのも無理はないでしょうね」
ボディーチェックをしてから、そうですかと受付嬢は他愛のない話を終わらせて門を開けてくれた。
死神時代は透明になって、基地侵入なんて簡単だったんだが。
人間になってからはどうも面倒臭い受付をしなくてはいけなくなってしまった。
「はぁ」
さっき来た、メールの内容はリングの命日だから一緒に弔おうという内容だった。
リングさんは澪さんの同僚で、抜けているところがあったが、仕事を愛し、家族を愛し……自分に目を向けてたただの若者だった…
だが、三年前…異能犯罪の被害者となり死んでしまった。
しかし、彼はどこまでも優秀だったという、自分の死までも計算に入れ彼がいなくなっても自分の意思が生き続けるように手引きをしていたのだ。
こんな人たちがなぜ、先に旅立ってしまうのだろう?
冷たいドアノブに手をかけて、体重をかける。
立て付けが悪いのか、それともまた体重が軽くなったのかわからないが、あまりすぐには部屋の光景が目には飛び込んでこなかった。
だけど、それの方が良かったのかもしれない。
「え??????」
僕はしばらく目の前の光景を理解することができなかった。
いや、理解を拒んだ。
「なんでこんなことに……」
部屋に入り惨劇にゆっくりと近づく。
「そんな…澪さん?」
……………
「澪??さん」
「………」
地面に這っている彼女たちは…血まみれだった。
「どうして…どうして…僕より先に…逝ってしまうんだ」
「サ…リ……にげ……ろ」
「澪さん!!………クソ!!息絶えた!」
僕は必ず、澪さんの命令に従わなければならない!
澪さんたちをそこに置いて、僕は廊下に出る。
廊下の冷たい空気がいくらが脳を覚ましてくれた。
「待てよ…このまま外に出たら僕は血まみれの状態で外に出ることになる」
まずいことになった…どう逃げる…いや違う。
ここは、信用してもらうんだ。
ここに入る時、ボディーチェックを受けた。
あの受付嬢ならもしかして、信じてくれるのでは?
そう考えると僕は、すぐさま長い廊下を駆け出した。
しばらく走って分厚い鉄扉の前に立つ、息を切らしながら手をかけた。
そうするとドアの奥は、暗黒空間になっていた。
「これは……!」
電気が切れていても、受付前にはガラス張りの出入り口がある。
光が入ってくるはずなんだ!!
「なんだこれは、まるで悪夢じゃないか!」
そうこうしていると、暗闇の中からコツコツとヒールの音がする。
「誰だ!!お前が澪さんたちを!!」
硬い音はどんどんこちらに近づいてくる。
その不気味な音は、僕をだんだんと不安にさせて行く。
そして無意識のうちに、後退りをしていた。
さっき、ボディーチェックを受けているから僕は武器も持っていない。
死神の力もない丸腰の僕が、澪さんを殺せるほどの異能力使いを倒せるはずなんてない。
そんなことを考えている間にも、確実にやつはこちらに近づいてくる。
そして、ついに暗黒空間からその音の主は出てきた。
「……お前は!…やはり受付嬢か!」
「うん、そうよ。ただそれだけここの基地を私のものにしたいの。目撃者は全員消すわ」
……こんなやつなんかに。
ゆっくりと近づいて来る奴に僕は無意識に近づいていた。
さっきまで抱いていた恐怖なんてものは全て捨てて。
今抱いているこの感情はなんていうのだろう。
いつものようにうまく笑えない、なんだかもどかしい。
「自ら死を選ぶのね」
「うん、もうめんどくさいから」
彼女の目の前に立つ。
受付嬢はゆっくりとナイフを出す。
僕は、最後のため息をつく。
そして……
「はりゃ!!」
一発完璧に拳が相手のこめかみをとらえていた。
手に衝撃が走るが、そんなことは気にしなかった。
「何…を?」
「……これは、春香さんの分だ…そして」
もう一発腹に!
「澪さんの分!そしてこれは僕の周りで死んでいったみんなの分!まだ足りない!これも!これも!これも!!これも!!これもどれもこれもこれもこれも!!澪さんの分だ!!!!」
何発殴ったのだろう…疲労もあったのか、相手を倒したのかも確認できないまま僕は気を失ってしまった。
…………
どれほど時が経ったのだろう?
僕は罪により死ぬことはない、でも昏睡状態にならなるはずだ。
そうこうしていると暗闇が一気に何かの光に照らされた。
「なんだ?」
「サリバン、あなたはよく頑張りました」
僕の耳に届いた声それは僕が生まれてから初めて聞いた声だった。
「我が主?」
「あなたが三年前人間になってからずっと見ていました。罪を犯したあなたがまた変な気を起こさないように…しかしあなたは予想以上に変わってくれた。そこで私は、あなたに試験をさせたのです」
「試験?…もしかして、あの異能使いですか?」
「まあ、そうですね…この試験はあなたを再評価するもの。そしてさっきも言った通りあなたはいい成績を残してくれた。そこで、あなたには選択肢があります。」
今まで、いろんなことを命令されてきたが他人から選べと言われたのは初めてだ。
「一つは、死神に戻る道。以前のあなたの能力を戻して差し上げます。そして、二つ目は天使になる道。私に支え生物の魂を再び綺麗にする仕事です。」
僕は……どちらを選んだら良いのだろう。
………待てよ?どちらを選んでも…澪さんに会えない…僕は一般的に死神と言われいたが本当は堕天使、天使の状態で地に落ちたから人間にも見えたりしたが…死神となれば話は別。
霊体になってしまうのだ。
「我が主よ、決めました…僕は……」
……………
「澪さん〜用紙できましたよ」
「おう、希愛ありがとな」
「にしてもなんで今更改名手続きなんか?」
「私は、この苗字が大っ嫌いなんだ!
「じゃあ、弟さんの苗字も変わるんですね」
「ああ、あいつとはもう話はつけてあるから書類は同時に出すさ」
………………
あなたはその道を選ぶのですね。
なら、見守りましょうこれからも。
「……僕の名前…これから佐倉か…自己紹介も用意しないとね……僕は、佐倉零、ただの異能力者だ!……こんなんでいいかな?」
閉まりませんね…全く。




