第39話 Nリーグ第7節VS浦和ロート
2014年4月
4月になって俺も高校生デビュー!
スタートダッシュから女子高生にモテモテで俺、どうなっちゃうの〜?
みたいな展開を夢見てたが、残念ながら俺は通信制の高校に入学したのでほぼ同級生に会うことはない。
実は去年の11月くらいから父さんと名古屋アハトのU-18監督に通信制の高校を勧められていたのだ。
今思えば俺が2種登録して名古屋アハトのトップチームに帯同することで忙しくなる事を匂わせてくれていたのだと思う。
前世でも2種登録の選手が普通の高校に進学して、学業とサッカーの両立が難しい状態になる話はよく聞いたので、通信制高校を選ぶ事に抵抗はなかった。
残念なのはもう一度言うようだが、JKの同級生にチヤホヤされるチャンスを手放してしまったことだろう。
まあいい。自分で選んだ道だ。それに俺には毎日電話してくれる望結という彼女がいる。
望結は志望校に無事合格して晴れてこの春からJKだ。
JKといえば紗那も志望校に無事合格したそうだ。俺の母さんが近所話で聞いてきてくれた。
本当によかったと思う。
さて、今日は2014Nリーグ第7節浦和ロート戦。
紗那と茉那、その家族を招待した(家のポストにチケットを入れただけなので来てくれるかはしらない)ホームゲーム…なのだが、なんと望結も家族で来るらしい。
来てくれるのは嬉しいが、スタジアムで鉢合わせしないように祈ろう。
とにかく3人にカッコ悪い姿は絶対見せられない。
俺達名古屋アハトはここまで第6節終了時点ではリーグ6戦4勝2敗の勝ち点12で3位につけている。
ちなみに負けたのはアウェイ川崎戦2-3とホーム広島戦3-5で、どちらも得点は取っているものの勝ちきれない試合だった。
俺個人では6戦6ゴール3アシストと1戦1ゴールペースを保っており、現在得点ランキングトップにいる。
その活躍ぶりが評価されてのことか、つい数日前日本代表候補合宿のメンバーに選ばれ、3日間千葉に行ってきた。
この合宿ではNリーグ所属かつ代表常連組以外の選手が招集されたので、フレッシュなメンバーばかりだった。
恐らくW杯前最後の新戦力発掘の場という感じだ。
練習や練習試合はA代表のイタリア人監督、アントニオ・ザッパリーノ監督が直接指導、指揮を行っていた。
なので皆W杯日本代表になるため必死にアピールしていた。
俺も練習試合で得点を取ったのでちょっとはアピールできただろうか。
しかしたったの3日でアピールしきれるわけもないので、重要なのはこれからW杯日本代表が発表されるまでの間得点を取り続ける事だと思う。
確か川崎の小野寺選手はW杯前は代表に呼ばれていなかったのに、Nリーグで得点を取り続けた結果2014W杯日本代表になった。
俺も新人というかまだアマチュアだが、Nリーグで得点を量産してアピールすることで、W杯日本代表になりたいものだ。
さあ、日本代表を夢見るのはいいが、今集中すべきは浦和ロート戦だ。
選手入場してセレモニーをしたら、レフェリーや浦和の選手と握手していく。
今日は浦和サポーターがよく入ってるな。
豊田スポーツアレナの埋まり具合は開幕戦とそう変わらずまぁまぁといったところ。
もっと勝ちまくって何もキャンペーンなどせずとも満席にしたいものだ。
次はスターティングイレブンで写真を撮った後キャプテンはコイントスをする。
その後はキャプテンが来るのを待ってからピッチのハーフコートの真ん中で円陣を組む。
「ホーム2連敗はありえない!絶対にファン、サポーターに勝利を届けるぞ!!」
「オウ!!」
選手はピッチに散っていく。
さあ試合が始まる…
ピーッ!
2014Nリーグ第7節
名古屋アハトVS浦和ロート
KICKOFF!
浦和ボールで始まる。
浦和のフォーメーションは3-4-2-1。試合前から皆知っていることだ。
監督が3-4-2-1の使い手だからな。
といっても基本フォーメーションを保つのではなく攻撃時には4-1-5を形成したり、守備時には5-4-1を形成するので一概に3-4-2-1とは言えない。
なので可変式3-4-2-1と言われることが多い。
一方で相手もこちらのフォーメーションは知っていただろう。
ここまでずっと名古屋は4-4-2で戦っているし、今日もそうだ。
多分俺とケリー選手を同時に使うとしたら、守備陣との兼ね合いも含めてこのフォーメーションが一番丁度いいのだと思う。
だが今日の名古屋は一味違う。それに浦和はいつ気づくだろうか。
浦和は自陣でボールを回していく…
・・・・・
前半4分頃
浦和の攻撃、相手右WBがサイドから中央のCFへパスを送る。
相手CFは右のシャドーにフリックパスを出す。
これは味方DFが大きくクリア!
このボールは再び相手に渡る。
今回浦和相手に名古屋の二階堂監督が選択した作戦は、4-4ブロックを作ってドン引きからのロングカウンターを狙うこと。
ぶっちゃけ超守備的な戦術だ。
これには先週のホーム広島戦3-5での敗戦という結果がかなり影響しているだろう。
広島は前任監督が浦和の現監督で、監督が変わってもその戦術を継承している。
なので3-4-2-1のチームと2連戦という事もあり、二階堂監督は広島戦で上手くいかなかった事を改善しつつも、別のアプローチで今日の浦和戦に挑んでいるのだ。
浦和は攻撃時4-1-5を形成するため、攻撃から守備に切り替わる時は中盤が手薄になる。
そこを俺というゴリゴリ俊足ドリブルマシーンが中盤に降りてきて、浦和の守備の体勢が整う前にボールを前線まで運ぶ。
もしくはシンプルに最前線のケリーにロングボールを蹴って収めてもらい、俺とMFの選手と連携してボールを前に進める。
それが今日の名古屋の作戦となっている。
なのでフォーメーションとしては4-4-2というよりも4-4-1-1の形、俺が1.5列目に入る。
俺の役割としてはいつものフィニッシュの部分は当然ながらパス、ドリブル、守備全てをオールマイティにこなす必要がある。
難しい挑戦だが、やるしかない。
望結、紗那、茉那に絶対良いところを見せるんだ!
・・・・・
前半24分頃
浦和の左WBがクロスを中央に送る!
このボールはGKの長嶋がキャッチ。長嶋は素早くオーバーハンドスローで俺に向かってパスする!
俺はそのボールを自陣中央右でトラップ、素早く反転してドリブルで前へ前へと運んでいく!
相手ボランチが俺を捕まえようと近寄ってくるが、ボールを前に蹴り出し躱してみせる!
だが、その前方には相手CBがいる。ここまで来たら前線で待っていたケリーに一旦パスする。
ケリーはボールを受け取った後、左サイドを全力で駆け上がるハヤブサの異名を持つ左SHの成田にスルーパスを送る!
相手DFは成田に遅れながらも必死についていく!
しかし成田はそのスピードを活かし敵陣深くまで侵入、クロスをあげる!
ボンッ!
ケリーも成田のスピードには追いつけてない。
それなら中央には誰がいる?
俺がいる!
ボンッ!
俺はクロスボールをヘディングで叩きつける!
パサッ…
GOAL!
名古屋1-0浦和
ワアアアア! ウオオオオ! キャアアア!
豊田スポーツアレナ全体が歓声に包まれる。
「よっしゃあ!」
ガオー!
コーナーエリアに行き、カメラに向けていつものタイガーポーズ。
このポーズも最近はファンの間に定着したのか、観客席の方を見ると真似してくれている子どもたちの姿があった。
よし、今日は一杯タイガーポーズを見せられるように沢山得点を取ろう。
・・・・・
前半40分頃
ここまで浦和のボール保持率はかなり高いが、フィニッシュまでいけた回数はそう多くない。
名古屋の強固なドン引き守備を崩すことが出来ないのだ。
そしてまた浦和の右WBがCFとのワンツーからミドルシュートを放った時!
名古屋のCHがブロックに入り、足に当たって跳ねたボールはCBの高尾がヘディングでクリア!
クリアした先には俺がいる!相手ボランチとのボールの奪い合いだ!
自軍のゴールを向いて先にボールを触った俺は、ボールをポンッと背後に送って体を反転させる!
両者後ろを振り返ってのかけっこ勝負!
だが、俺のほうが敵より速い!
トンッ!
俺は相手ボランチに体を当てられながらも先にボールに触りドリブルを始める!
そしてドリブルしてすぐに相手CBの1人がカバーに来ていたので、その選手をダブルタッチで抜き去る!
これで道は開けた!
前を見るとケリーが相手CBを背負ってポストプレーの構えをしている。
俺はシンプルにケリーにボールを送ると同時に全力疾走で前線に向かう!
そしてハーフウェイラインを越えたあたりでケリーからパスしてもらう!
しかしまだ相手DFが残っている。俺はそれでもドリブルで前進していく。
ズルズルと下がる相手DFライン。彼らの目は俺に釘付けだ。
そこへまたしても左方向から爆速で駆け上がっていく成田が視界に入った。
ここだ!
俺は成田にスルーパスを送る。成田がドリブルで運んで浦和GKとの1対1になる!
成田は右足でシュートを放った!
ボンッ!
しかし浦和GKは目一杯足を広げてシュートを防いでみせた!
だがボールが成田の前にこぼれている!
「パス!」
そこへ駆けつけたのは俺だ。
オフサイドにならないよう注意しながら、角度をつけてGKから離れたポジションへ位置取る。
後は成田からパスされたボールを、ゴールへ流し込むだけの簡単なお仕事。
ポンッ!
パサッ…
GOAL!
相手DFを寄せ付けない瞬速ゴールが決まった。
名古屋2-0浦和
ワアアアア! ウオオオオ! キャアアア!
「くぅー!自分で決めたかった!」
ゴールをしてすぐに成田選手とハイタッチ。でも成田選手は悔しそうだ。
「それでもナイスアシストですよ!まだ前半ですからまだまだチャンスあります」
「まぁそうだな、ナイスゴール大雅」
「あざっす。あっ、一緒にカメラに向かってポーズしません?俺はタイガー、成田さんはハヤブサで!」
コーナーエリアに向かいカメラに向かってポーズ。
俺は片膝をついてタイガーポーズ、その後ろに成田選手が立って両手を広げハヤブサポーズをした。
・・・ダサくてもいい。こういうのはやったもん勝ちだ。
俺達はチームメイトと笑いあって自陣に戻る。
・・・・・
ハーフタイムを挟んで後半開始。監督陣から指示を貰って勝利を目指す。
後半12分
ここまで名古屋DF陣を攻略できていない浦和ロート。
今回もWBから中央へとクロスボールが供給される!
これは高尾キャプテンが高く飛んでボールをヘディングでクリア!
だがこのボールは相手ボランチが先に触る!
相手ボランチは密集した敵味方の中から、的確に浦和の右シャドーの選手にボールをつける!
浦和の右シャドーは素早くシュートを放つ!
ボンッ!
バシッ!
名古屋GKの長嶋がボールを弾く。
しかし抜け出した浦和の左シャドーがこぼれ球を押し込む!
ボンッ!
パサッ…
GOAL!
名古屋2-1浦和
ウオオオオ!
ゴール裏の浦和サポーターが今日一番の声を出す。
浦和に点を入れられてしまった…
「もっと距離を詰めないと!シュート打たせるなよ!」
高尾キャプテンの叱咤激励を受けてみんな厳しい表情だ。
・・・・・
後半22分
引き続き浦和が名古屋を押し込む展開。ワンタッチパスを多用して名古屋DFを翻弄する!
しかし名古屋DFも集中を切らさず、必死にボールをクリアする!
このボールは最前線のケリーの下まで飛んだ。
ケリーが相手DFと競り合い、俺にボールをパスする。
カウンターの発動だ!
俺はぐんぐんとドリブルで前進する。そして今度は右サイドにいる右SHにパス!
俺は勢いそのままに中央の相手DFの裏を狙う!
右SHはオフサイドにかからないようにタイミングよくスルーパスを俺に返す!
後は敵陣深くまでドリブル突破だ!GKとの対決!
首を振ると左サイドの左SH成田が俺に並走している!GKとは2対1の状況だ!
ここはGKを引きつけて…
ラストパスを成田に送る!
成田のダイレクトシュート!
ボンッ!
パサッ…
GOAL!
名古屋3-1浦和
ウオオオオ! ワアアアア! キャアアア!
「うおおお!今度は決めてやったぞ!大雅!」
「ナイスゴール!相変わらず速いっすね!」
「お前がそれを言うかっ、この!」
「ハハハ、すみません」
俺と成田選手で談笑しているとチームメイトが集まってきて、ゴールのお祝いをしてくれる。
「はえぇよ二人共!」
「ナイスゴールだ!」
結局その後も名古屋のカウンター戦術がハマり、俺が追加点を取って4-1で試合を締め括った。
これで俺はNリーグでは初めてのハットトリックだ。
・・・・・
試合後3人を見つけられる事を期待しながら、観客に手を振ってスタジアムを一周する。すると…
「大雅くーん!」
なんと望結を見つける事が出来た。そういえば望結が来たら3点取るという話をしていたな。
俺は手で3本指を立てて望結に向ける。
伝わってるかな?まぁいいや後で電話しよう。
そして…
「大雅お兄ちゃーん!」
父さんにはメインスタンドの近めの席を用意してもらったから神田家も見つけやすかった。
「茉那ちゃーん!」
「かっこよかったよー!また観に来るねー!」
「ありがとうー!」
紗那とそのご両親も手を振ってくれている。
茉那に遠くからではあるが、また会えて話をする事ができた。
それがたまらなく嬉しかった。
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