反狼。
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午前一時、樺は高橋の隊の斥候と共に陣地を出発した。
そしてほどなくして攻撃拠点にたどり着く。
そこでは昨日の戦いの痕跡の大半は片付けられ、代わりに積み上げられた資材といくつかの天幕があった。輸送の往来はまばらで周囲の林は微かに虫の音が鳴るばかりであった。
樺は再び電波を視る。
静けさに反して電波はやはり、変わらずその場所から出ている。
樺は確信する。
「皆さん、ここからは警戒を怠らず、音も出さないようにしてください。」
斥候らにこう告げた後、慎重に林に分け入る。
道中に迷いはない。
そしてしばらく歩き―――
熱の塊を捉えた。電波はここから来ている。
前決めした通りに樺は小さく手を降ろす動作をする。
斥候らはそれに応えて伏せる。
一行は更に近づく。
心音と微細な足音さえも聞こえてくる。
次第に熱の塊が複数の人の形を成してきた。
隣にいる斥候は目配せをする。
樺は小さく頷く。
斥候は更に前方へ向かった。
…しばらくした斥候が戻ってくる。
「樺小隊長、確かに敵兵でした。数は3人、軽装なのでこの場で制圧できます。」
樺は頷く。熱で知れる情報とずれはない。
斥候らは散開する。
斥候長は小さく頷き樺の指示を待つ。
そして散開が終わったことを確認した樺は信号を兼ねた銃声を鳴らす。
それに応えるように銃声が絶え間なく鳴る。
そして敵兵はそのまま為す術なく倒れた。
「止め!!」
樺は再び声を出す。
銃声は止み、木々に反響した残響がしばらくして戻ってきた。
倒れた熱は動かない。
自分の指揮で殺した感覚は快いものではなかった。
樺がその場所に近づくと敵兵の近くに通信機と地図が転がっていた。
樺はどちらも拾い上げる。
「持ち帰ります。」
樺は淡々と告げる。
そして敵兵の方に目をやった。
一人がうめき声を上げている。
樺は告げる。
「彼も連れて帰ります。」
斥候長は頷いて、止血と毛布に包んで運ぶ指示を出す。
樺は敵兵の顔を見る。
―――野々村。
樺は止血される男に彼が一瞬重なる。
彼の抱えた通信機は途切れることなく絶えず鳴っていた。
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「おう、ちょうど良かったな。」
樺と斥候が捕虜を野戦病院に送り、指揮所に着くと高橋が小説を閉じてそう言った。
「で、どうだったよ。」
高橋は尋ねる。
「敵兵三名とこちらを」
樺は話しながら拾った通信機と地図を見せる。
「成る程な…」
少し考えた後、高橋は表情を変え言葉を続ける。
「…多分下手すりゃ拠点潰されてたなこれ。
聞いてる話を踏まえたらだが、ただの偵察ならそんな頻度で電信は送らねぇだろ?
中隊長の元に向うぞ。即刻だ。」
二人は中隊長の元へ向かった。
先ほどの発見はやけに上手く行った様に思う。
しかし、樺には抱えた通信機―そしてこれを見つけたこと―が何かを変えると直感的に感じるように。
嵐はもうすぐそこまで迫ってるかのようだった。
一話一語句解説
電磁波:ここでは、電波、赤外線、可視光、紫外線、X線などのことを指す。
樺はこれらの光がどの向きから来ているか感知することで座標を特定することが出来る。




