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五里霧中の戦場で新人士官の俺だけが視たものは。  作者: linka
窮鼠。

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立意。

気に入っていただけたならば作品を育てるつもりで評価、コメント、ブックマークの方をしてもらえたら幸いです。

「室井さんが…居ない?」


樺の呼吸が次第に速くなる。

そして拍動が速まる感覚もし始めた。


三嶋もまた顔を白くして、


「…はい。」


と呟く。


「…少し、お話を聞いてもらってもいいですか?」


か弱い声に、樺は頷いた。


____________________


樺隊長の指揮で三嶋と室井は射撃を止め、魔法戦に移行した。

魔法戦は基本的には銃弾が無くなった後に仕掛けるものであり、魔法というのは銃に比べて威力も魔力効率も悪い。

そして、隊にはまだ銃弾の余裕がないまでも、まだ残弾はあるのである。


「隊長はなんでいきなり射撃をやめたんやろ。」


室井はそう呟いた。


(その意を私達が考える必要はないでしょうに。)


三嶋はそう心の中で呟きながら言われた通りに魔法の射出を命じる。

するとしばらく沈黙していた室井がその横でこう叫んだ。


「室井分隊、余力は残せ!!」


暫く射出を行ったところ、敵が突撃を敢行してきた。

そして先頭の兵は天津が作った落とし穴に落ちていく。

更に寸前で止まった兵を後続の兵士が押し出して落ちていく。


その瞬間を狙うがごとく射撃指示が再び出された。


敵は抗えぬまま撃たれ崩れる。

この時点では2つの隊の振る舞いは何も変わらなかった。


…この時点では。


そして隊の残弾が無くなり始めるころ。


地面の揺れと共に轟音が響く。


そして土砂と朽木が手前に落ちる。


「総員!!退避!!」


その声に倣い隊員は後ろに下がり、再び態勢を整える。

が、脅威はそれだけではなかった。


隊が態勢を整えたところに銃弾が飛来してきた。

それも一方向ではない。


(陣地が…崩された?)


そう思った三嶋を更に追い詰めるかのように榊原から知らせが来た。


…樺隊長が倒れたのだ。


(取り敢えず、敵をなんとかしないと。)


「総員!!土壁を立て、防御態勢へ!!」


しかし、出来上がった土壁は銃弾を防ぐには小さいものであった。

三嶋は再び命令を下す。


「土壁を立ててください!!」


「隊長…これ以上は魔力的に厳しいです…」


三嶋は唇を噛む。

解決策は見当たらない。


その時、室井は声を上げて指示を出す。


「土壁の方援護してやり!!」


三嶋は茫然とした様子で室井に問いかけた。


「いいんですか?私なんかに。」


「構わへんよ。仲間やろ?

というか死んだら困るし。」


室井は素っ気ない様子で言葉を返す。

されどそれに三嶋は心を動かされたのである。


そして斉射に耐えて土壁に隠れる。

隣には室井がいた。


そして

…背後から熱気を感じた。

そのすぐ後に隣から舌打ちが聞こえたかと思えば腰に蹴りのような衝撃を受ける。


見ればさっきまで居た場所は火球が占拠していた。


そして火球が次第に失せていった。




…そこから先は三嶋自身もよく覚えていない。


後から聞いたのは第八連隊の合流の直後、水月隊も樺・天津隊の元に合流して指揮を引き継いだこと。

その結果、将校を水月隊が2人、矢野連隊が1人捕らえ、敵の連隊規模の部隊は壊滅したこと。

その報告の後、雷徳遠は撤退したということ。


そして樺隊も少なからず被害を受けたこと。


これが樺が目覚めるまでに起きた出来事であった。

____________________


話が終わる頃には、三嶋の声は震え、目からは雫が溢れていた。


「一つ、考えていることがあるのです。


私は一つの方法、一つのやり方に囚われていたのかもしれない。と。


勿論規律も大事ですけれど、何のために動くかの方がもっと大事なのではないか。

それを考えることが、居なくなった室井さんが私に託したことなのでは。と。」


そう言い終えて三嶋が袖で涙を拭く中、竹戸が言葉を添えた。


「まぁ室井は生きて後送されただけだけどな。

まぁ予断を許さない状況ではあるらしいが。」


樺はそっと胸を撫で下ろした。

その様子を見た竹戸が苦言を呈す。


「小隊長様も本来は後送ですぜ?

鬼熊隊長って人が治療してくれたから陣地に居るだけで。」


樺は何も言えなかった。


「まぁ…話に聞く限りじゃ、あの陣地で命があるだけでも上等じゃねぇかな。

とても()()とは言えない被害だっただろうに。」


三嶋も何も言えなかった。


そして沈黙に包まれた天幕でどこからともなく膿んだ匂いが流れ、三人の鼻を刺激したのであった。

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