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五里霧中の戦場で新人士官の俺だけが視たものは。  作者: linka
窮鼠。

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30/34

狂熱。

気に入っていただけたならば作品を育てるつもりで評価、コメント、ブックマークの方をしてもらえたら幸いです。

目の前に迫る火球に樺は思考を乱される。

避ければそのまま櫓から落ちる。

5メートルもある櫓から落ちるのは躊躇せざるを得なかった。

そこまで考えていたかは樺自身ですら分からない。

ただ、咄嗟に腕を前に出し、防御姿勢をとり火球に対峙する。


そして…


(焼けるっ…!!!)


樺は熱を受けて絶叫する。

腕と腹が激しく痛む。

そしてそのまま櫓は崩れていった。

樺は背中から落ちる。


そして死を覚悟したその瞬間。


不自然ながらも柔らかな浮遊感を覚えた。

樺が首を横に向けると天津と目が合う。


「…間に合ったか。

…よかった。」


そう呟いた後、樺は地面に打ち付けられ、そして同時に天津は倒れた。


…そして天津は横になったままゆっくりと息をしている。

ひと先ず問題ないだろう。

樺はそう判断して前方を向く。

…先ほどと違って全容は見えない。


そして樺は不思議とどこも痛くないことに気が付いた。

だが先ほどの痛みで無傷なわけがない。

案の定見れば腕は露出しており、爛れてもいた。

そして更に不思議なことに樺には負ける気も微塵としないのである。

櫓は潰れ、天津は倒れ、敵も先鋒以外はやられていないというのに。


樺は呼子笛で自隊の斉射を止めた。

そして室井隊と三嶋隊で魔法攻撃を行う。

…目論見通り敵が突撃してきた。


そして目の前に落とし穴があることに気付かなかった最前線の兵が落ちていく。


「総員!!再度斉射!!」


樺の指示で立ち往生した敵兵を撃ち続けていく。

敵は土壁を築けずに倒れていくところで樺は勝利を確信する。


突如として熱の視える範囲が広がった。

この場面でそれが起こるとしたら。


「隘路を崩されたか…」


樺の理性は敗北を告げている。

しかしながら相変わらず負ける気が何故かしない。


次の一手をかんがえられない。

樺の思考は高揚と絶望に塗りつぶされている。


(打つ手は。打つ手は。打つ手は。)


そして敵は落とし穴を越えていく。


距離は100メートルを切った。


敵が土壁を立て、射撃を始める。


射撃を前に、伏せる判断のできない樺を


「何をしているのですか…伏せてください!!」


榊原が倒す。


「えぇ。何が、あぁ。


…すみません。」


樺はその衝撃で混乱から復帰する。

その時だった。


電波を樺は検知する。

第8連隊、矢野隊が後方から接近しているとの報を受けた。


…連隊。…通信。…援軍。


働かない樺の脳が言葉を繋ぐ。

そして結論を得た樺は、


「榊原分隊長、後はお願いします。」


そう言って意識を手放したのであった。

有言実行!!

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