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五里霧中の戦場で新人士官の俺だけが視たものは。  作者: linka
窮鼠。

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本手。

気に入っていただけたならば作品を育てるつもりで評価、コメント、ブックマークの方をしてもらえたら幸いです。

「そうか。奴がいるなら多分やられてるな。」


渡辺中隊の通信途絶に対して、玄は軽薄な反応を示す。


「流石に鬼熊、天津が破られるとまずいが…奴らならまぁ抑えられるだろ。」


玄は棚から固体操作魔法で資料を取り出す。


資料を浮かせたまま玄は一度唸る。


「んでだ。お前がいるなら多分封鎖とかが目的だろ?

となれば…」


そして地図上のムノンジョル陣地に目をやる。

…ここを取られるのは攻勢をかける上で中々に厳しいものがある。

そして自陣からそこに行く道もまだ2つしか開通していなかった。


「…まぁ多分ここを狙ってるわな。

なら水月はそっちに派遣しないとだな。」


ぶつくさ呟きながら資料を見る。


―――暫くして、鬼熊と雷が交戦したとの報が届く。


「成る程。鬼熊の方に行ったのか。

…何故だ?そっちは封鎖とは関係ないぞ?」


玄は沈黙した。


(…乱心…はないとして。

そっちに向かう理由…理由…


本命はまた別のもの…


…まさか旅団と港を断つ…


…いや、愚策だな。やはりない。


強いていうなら鬼熊を止めるか、俺の考えを乱すか。

…ひょっとしたら旅団と港を断つ算段があったかもしれないが。

いや、膠着状態である以上それに気を取られる必要はないな。)


一度、玄は雷徳遠関連の資料を棚に片付ける。


「尾崎、次は樺の方に陣地が包囲される可能性が高いことと、水月が向かってることを伝えといてくれ。」


玄は伝令兵をざっとみて、尾崎を指名する。

そして、天幕から出る伝令兵の後ろを見ることはなく玄は相変わらず資料を見ていた。

____________________


「…そうですか…」


樺は伝令兵の言葉を噛み締めていた。

そして、再び電波の位置の確認を試みる。


八時半の方角に離れて1つ。


…そして七時の方角に1つ。


樺は戦闘にかまけて観測をしていなかったことを悔いる。

が、それに囚われても何も変わらないことは分かっていた。


直ぐに樺は玄に情報を送り、再び戦闘に意識を向ける。

相変わらず撃ち合いは続いている。

一方で、向こうの射撃の量が少し減ったように感じる。


そろそろ向こうは魔法戦を仕掛けるだろうか。


そう思うと同時に向こうから声が響くように聞えてきた。



…そしてそれに伴って銃弾以外のものも飛び交う。

礫や、火の玉、よくわからない液体、火のついた朽木片。


「なんやこの液体…って軍服が溶けとるし…!」


「あまりよろしい環境ではありませんね。こちらも風や土の操作で防ぐ方が宜しいでしょう。」


室井が慌てる中、榊原は分隊の指揮を行い、樺に進言した。

樺は頷き、魔法の使用を命じる。土嚢の上に土の壁を張り、更に両陣の狭間には乱気流が生じる。


―――がそれは直ぐに塗りつぶすかのように呑まれ、向かい風となった。


「ならば…」


樺は逆に自隊の後方へ飛ばすように風を吹かせる。


しかし、それすらも意味がないかのように上から礫や燃えた朽木片が落下し続けた。

「怯まないで射撃を継続してください!!」


三嶋が隊員をまとめようと声を上げる。

…次の手として、側面からの攻撃を試みようと人員編成をするところで突如として飛来物が止んだ。


そして間もなく


「其奴らにかまけてる場合ではなかろう。樺よ。」


後方から水月の声が聞こえてきたのであった。


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