熾黒。
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その先には朱色の甲冑を着た男が一人だけ立っていた。
…いや、その後ろに微かに人が列を成して居る。
もしやあの男が。
そうなると小隊どころか、中隊全体がやられかねない。
周囲の霧は既に晴れきっていて、夏のような暑さがこちらに襲いかかる。
「総員構え!!」
熱気が立ち込める。
拡声器が熱を帯びる。
熱い。
「準備でき次第撃て!!」
そう叫んだ。
そして肌を焼きつつある拡声器を高橋は手放した。
―――射撃音は聞こえない。
高橋は咄嗟にあたりを見渡す。
隊員は銃を手放していて、焼けた手を冷やそうともう片方の手であおいでいた。
…次はどうするべきか。
何かやらないとそのままやられる。
…熱が、あたまをむしばむ、かんかくの中、高橋はひっしに手をうとうとする。
しかし
―――あぁ。もうだめだ。
高橋の意識がその次を考えることはなかった。
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「思ったより近くに来たのう。雷徳遠よ。」
鬼熊は眼前の将にむけて言葉を吐き捨てた。
「鬼熊…か。実力は如何なものか…。」
将は熱を向けてきた。
「総員!!引けぇ!!」
鬼熊の声が周囲一帯に響く。
それに伴って隊員は速やかに下がる。
恐らく十分に引いただろう。
そして鬼熊は皮膚を炭のように黒く、硬く変える。
「わしと...お前さんしかおらんくなったのう。」
鬼熊の言葉に眼前の将は頷く。
そうして、雷徳遠は陽炎を押し付ける。しかし、鬼熊はそれに向かい走りだした。
鬼熊は熱を受け、汗は水を失い白い塩に変わる。
しかし、鬼熊は動じない。
「効かんわ!!」
眼前の将は手に大きな赤い火球を作る。
鬼熊はこれを避けようとするが避けきれない。
…熱い。肌の下の肉が焼けそうになる。
…が少しなら耐えられる。
鬼熊はそう確信して相変わらず前に進む。
その様子に相手は後退を始める。
火の玉も明確に鬼熊の進路を阻む軌道で飛んでくる。
…そして鬼熊の肺が熱を蝕み始めた。
「ここで…やるのは…」
鬼熊は火球を躱す。
「いや、厳しいな。」
鬼熊は呼吸を浅くして後退を始める。
ここで己を捨ててまで賭けに出る必要はない。
―――そして、2人の男の間には灼けた空気のみがあった。




