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五里霧中の戦場で新人士官の俺だけが視たものは。  作者: linka
窮鼠。

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熾黒。

気に入っていただけたならば作品を育てるつもりで評価、コメント、ブックマークの方をしてもらえたら幸いです。

その先には朱色の甲冑を着た男が一人だけ立っていた。

…いや、その後ろに微かに人が列を成して居る。

もしやあの男が。

そうなると小隊どころか、中隊全体がやられかねない。

周囲の霧は既に晴れきっていて、夏のような暑さがこちらに襲いかかる。


「総員構え!!」


熱気が立ち込める。

拡声器が熱を帯びる。

熱い。


「準備でき次第撃て!!」


そう叫んだ。

そして肌を焼きつつある拡声器を高橋は手放した。


―――射撃音は聞こえない。


高橋は咄嗟にあたりを見渡す。


隊員は銃を手放していて、焼けた手を冷やそうともう片方の手であおいでいた。


…次はどうするべきか。

何かやらないとそのままやられる。


…熱が、あたまをむしばむ、かんかくの中、高橋はひっしに手をうとうとする。


しかし


―――あぁ。もうだめだ。


高橋の意識がその次を考えることはなかった。


____________________


「思ったより近くに来たのう。雷徳遠よ。」


鬼熊は眼前の将にむけて言葉を吐き捨てた。


「鬼熊…か。実力は如何なものか…。」


将は熱を向けてきた。


「総員!!引けぇ!!」


鬼熊の声が周囲一帯に響く。

それに伴って隊員は速やかに下がる。

恐らく十分に引いただろう。

そして鬼熊は皮膚を炭のように黒く、硬く変える。


「わしと...お前さんしかおらんくなったのう。」


鬼熊の言葉に眼前の将は頷く。


そうして、雷徳遠は陽炎を押し付ける。しかし、鬼熊はそれに向かい走りだした。


鬼熊は熱を受け、汗は水を失い白い塩に変わる。

しかし、鬼熊は動じない。


「効かんわ!!」


眼前の将は手に大きな赤い火球を作る。


鬼熊はこれを避けようとするが避けきれない。


…熱い。肌の下の肉が焼けそうになる。

…が少しなら耐えられる。

鬼熊はそう確信して相変わらず前に進む。


その様子に相手は後退を始める。

火の玉も明確に鬼熊の進路を阻む軌道で飛んでくる。


…そして鬼熊の肺が熱を蝕み始めた。


「ここで…やるのは…」


鬼熊は火球を躱す。


「いや、厳しいな。」


鬼熊は呼吸を浅くして後退を始める。

ここで己を捨ててまで賭けに出る必要はない。


―――そして、2人の男の間には灼けた空気のみがあった。

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