遠覚。
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「斯様な男よ、玄は。」
水月は天幕を出てすぐに樺に聞こえる声で言った。
樺は「成る程。」とだけ返した。
しかし、彼の内面は全く掴めない。
ただ、彼の世界に樺も、そして水月さえも居ないような、そんな感覚が樺にはあった。
「さて、影についても見過ごせぬが。
そなたに関しては指揮の出来不出来についても同様に大切であろう。」
「統率…ですね…」
樺は水月の言葉に対して小さく呟く。
「げに。
…そなたの征く道を楽しみにしておるぞ。」
「私は寝る。」と続けて言い、水月は樺と別の方向へと歩き去った。
樺はその背を少し見つめた後、同様に自分の天幕へ戻ることにした。
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その日から2日経った未明。
不意に樺は目を覚ました。
天幕を出るが辺りは未だ暗く、熱で捉える輪郭に頼らなければならなかった。
時間を持て余した樺は当てもなく歩き、最終的に丘の上に辿り着いて座ることにした。
統率とは何か。
…件の襲撃での水月の部隊は無駄がなく、手際良く動いていたように見えた。
何かが違う。が何がそれを変えているかわからない。
漠然と考えているうちに微かに辺りが色を取り戻す。
丘の側を通る通路に歩く熱が居ることに樺は気付く。
それはそのまま横切って去っていくように思えたが、暫く立ち止まった後、熱はこちらへ向かって来た。
「誰かと思ったが…小隊長様じゃねぇか。」
それは久方ぶりに聞いた声であった。
「竹戸さん、久しぶりです。」
「久しぶりですな。
話に聞くが、俺が抜けた後中々に活躍してるようで、成長したらしいな。」
「えぇ、そうですね…」
竹戸の称賛に対して、樺の反応は鈍かった。
「…どうした。悩み事か?」
竹戸の問いに対して樺は
「えぇ。統率について…」
と返した。
その言葉の裏には微かな期待があった。
エマス・クンプルタナに降り立ったあの時、樺は竹戸が的確に荷下ろしの指示をしていたからである。
しかし、
「統率か…俺の一兵卒には分からんよ。」
目の前の男はそう返す。
樺は狼狽えた。
その様子に気が付いたのか竹戸はこう言葉を補った。
「そりゃ一兵卒といえどまとめ役として人を動かしたことは幾度もあるから指示はできるぜ?
でも統率の仕方とか統率とは何かとかはさっぱり分からんよ。」
「…なら、人を動かす上で気を付けていることはありますか?」
樺はせめて何か得られないかと問う。
「そうだな…1つ言えるのは次に何をするか、何が起きるかというのは考えながら指示しているな。」
太陽が出切った具合だろうか、辺りは白に包まれていた。
樺が観測の任務に向かう頃合いとなっていた。
「…ありがとうございます。これから任務ですのでそろそろ行きますね。」
樺はそう言って丘を降りていく。
「おう、頑張れよ。」
竹戸はそう返して樺を見送った。




