流転。
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囮という言葉を踏まえれば辻褄が合った。
護衛の数、鹵獲した物資の数、その内訳。
記録を見れば見るほど、寧ろそうでなければならない様にさえ思えた。
…しかし、一つだけ囮では説明できないものがあった。
「―――影。」
樺はそう呟く。
「…それは解せぬな。」
水月がそう返した後、再び沈黙が場を包む。
結局、彼らのなかで影の目的を暴くときが来ることはなかった。
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「さて、大凡整理は終えたな。」
情報整理に行き詰まりを感じた頃、水月がそう呟き、続けてこう言った。
「…私が旅団長の元に行こう。」
「あいわかった。今回も任せるぞ。」
鬼熊が任せた直後、水月は樺に目をやる。
「樺よ、そなたは付いてこい。件の影の証言を求められよう。」
樺は頷いた。
そして鬼熊と別れ、水月と樺は旅団長の居る天幕に向かうとき、水月は樺に尋ねる。
「そなたは既に旅団長と面識はありや。」
「玄孝太郎団長…でしたよね。会議のときに2度見かけ、そして任命のときに会いました。」
「如何に思うた。」
樺は少し躊躇いながらも口を開く。
樺の記憶の中でその男は
「…率直に言えば結果だけを見て、現場の犠牲に気が向かない人だと。」
「…強ち間違いではなかろう。」
水月はそう小さく言い、それ以上は何も言わなかった。
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水月と樺は天幕に入る。
…そこには紙を凝視している男が居た。
彼が旅団長、玄孝太郎である。
「玄団長、件の作戦につきましての分析結果を整理を終えにけり。」
玄は2人を一瞥し、「見せてみよ。」とだけ言う。
それに応え、水月が資料を提出する。
玄は紙に一通り目を通す。
そして読み終えた後、玄はこう言葉を漏らした。
「あぁ…そう来るか。しくじったなぁ…」
その言葉はあまりにも軽く、樺には戦場の指揮官の言葉とは思えなかった。その直後に資料を突然広げて独り言を呟き始める。
「これなら多分必要な物資は軒並み届いちゃってるな…
となれば今後は向こうに余裕が出てきてしまうだろうから今の作戦は使えなくなるしあっちの作戦を使うか…」
そうして暫く絶え間ない喋りは続くが、玄はそれをいきなり止め、
「あぁ後。」
思い出したように樺に顔を向ける。
「樺か、貴官は影についてどう思う。」
「観測の目的があったことは推測できましたが、それ以上は何も…」
樺は当惑しながら返事を返す。
「そりゃまぁそうか…」
そう少し落胆したかのように言った直後、玄は更に質問を投げかけた。
「じゃあ何か気になったことどうだ。」
「その前後で、撫でるような風が吹いてきました。
そしてその風には覚えがあったのです。」
玄は軽く頷き、応える。
「成る程。撫でるような風といえば恐らく劉だろうな。
それで、覚えというのはどの時だ。」
「…最初の偵察任務――ムノンジョル陣地を攻略することになったきっかけとなる任務でした。
そこで突如襲撃を受ける前に…
撫でるような風が吹いていたことを覚えています。」
…少し沈黙を挟んだ後、玄は呟くように言った。
「そうか、分かった。
多分何かバレてしまったなぁ…」
そして再び玄は独り言を続ける。
そして暫くして突然言葉が止まり、玄は2人の方に顔を向ける。
「…あぁ、悪い。水月、樺、戻っても良いぞ。」
「…ありがとうございます。」
水月と樺はそう言い、天幕を出る。
出る時にも玄の独り言が聞こえていたことがやけに印象に残った。
1時間半程度遅れてしまい申し訳ありませんでした…




