鳥瞰。
気に入っていただけたならば作品を育てるつもりで評価、コメント、ブックマークの方をしてもらえたら幸いです。
第五小隊が旅団の司令部にたどり着く頃には既に往来は消えており、篝火と少しの電灯が辺りを照らすばかりであった。
―――尤も、樺には電波が盛んに行き交う様が見える。
暗流が人々を水底へ引き摺り込まんと機を窺っている。
そして電波の往来も次第に減る。
樺は高地側の電波に注視した。
始めは不確かだった電波がいくつかの場所を示す。
そしてその内の一つ―――ムノンジョル台地のものに樺は意識を向けた。
電波がそこから放たれるたびに樺は位置を絞る。
―――ここか。
樺は位置を捉え、伝令係―直前に急遽決めた暫定的な役割―に伝えた。
…しばらくして砲撃音が絶え間なく響く。
と同時に陣地周辺に熱の柱がいくつも立ち上がる。
樺は息を呑んだ。
先ほどまで流れていた信号の一部が不自然に途切れる。
残る信号も動揺を覚えたようだった。
…そして柱の根元から熱が広まっていく。
恐らく火が付き始めたらしい。
樺は現実感をそこに見出せなかった。
「どうなん?上手くいっとるん?」
呆然と立ち尽くす樺の隣から室井は問いかける。
樺は我に返って告げる。
「…えぇ。燃えていますね。
…伝令、目標地点に砲撃成功と伝えてください。」
樺は再び電波に集中する。
電波は移動しつつあった。
通信は次第に別の地点に集中する。
…ここに次は陣地を再構成するか。
樺の伝達を受けて再び砲撃音が鳴る。
そしてそこに再び熱の柱が上がる。
筈だった。
一切熱が見えない。
砲弾は着弾したはずだ。
通信も途切れた。
しかし熱の痕跡がない。
明らかに矛盾した現象がそこで起きていた。
樺は伝令に告げる。
「着弾確認。…しかし熱は未確認です。」
…奴か。
樺の脳裏に熱を自在に操る男―雷徳遠―がよぎる。
あの男ならやりかねない。
「…恐らく雷徳遠が来ました。」
樺は続けて告げた。
語句解説じゃなくて申し訳ないですが代わりに一つお知らせを…
今回同時に短編の方に怪文書として烏瞰。を投稿しました。
良ければ見ていただければなと。




