表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

あと三日

 エリックとの関係がなくなるまで、あと三日。

 絶対にそんなことさせない。そのためにマルセルと同盟を組んだ。


 作戦はすごく単純。まず、ふたりに噂のことを直接聞かない。これで、泳がせるとかなんとか。

 次に、エリックにはユリアのことを、ユリアにはエリックのことを、私がふたりにさり気なく聞いてみる。噂とは関係ないですよ〜という雰囲気を出しながら聞くのが重要らしい。その間、マルセルは噂の出処を調べてくれるらしい。

 そして、大事なのはこまめな連絡。放課後に集まって、作戦会議をすることになった。


 よし、頑張るぞ!





 ユリアにエリックのことを聞くなんてことはお茶の子さいさいで。ずばり、ご飯を食べるときに聞いてしまえばいい。朝食のために向かった広い食堂で、目立つ金髪を探す。


「ユリア。お、おはよ」

「おはよう、クラリス。寝不足?」

「えっ!? そ、そんなことないよ〜」

「クマできてるよ。あとで隠してあげる」


 昨夜は寝付きが悪かった。だって、ふたりのこと気になって考えてたんだもん。いけない、もう動揺してる。

 落ち着くために、なんともない動きを装いながらパンを一口。噛んで、飲み込んで、深呼吸。いざ、質問。


「ゆ、ユリアって、エリックのことどう思ってるの」

「急に何よ。クラリス、変なもの食べた?」

「なっ、な、何も!? で、どう思ってるの」

「ダメな同級生」


 どういうこと? ダメって好きな人を表す言葉じゃない。

 というか、ユリアってエリックのことそういう風に思ってたんだ。エリックのどこがダメなの? あ、格好良すぎるところ? わかるよ、私もエリックなかなか直視できないもん。


「他にも言おうか? バカでアホであんぽんたんで」

「いっ、いい。もう十分! ありがとうユリア」


 慌ててユリアの言葉を遮る。完全にマイナス方向の言葉だった。どう考えても好きな人に思うことじゃない。良かった。ユリアはエリックのこと好きじゃない。ふたりは恋人じゃないってことだ、多分。

 にやけていたら、優雅に食事を終えた金髪美女はにこやかな笑みを浮かべた。


「そろそろ食べないと授業遅れるよ、クラリス」

「うん」

「ほら、サラダもね」

「うん……」


 いつものようにサラダを残そうとしていたら、毎度のように食べさせられた。朝からピーマンはさすがにキツい……。





 今日のお昼休み、当然のようにユリアは空き教室にいた。

 ユリアはエリックのことを悪く言っていたし、エリックとユリアがお昼を一緒にしてなかった。これだけで舞い上がってしまう私はだいぶ性格が悪い。

 最低なるんるん気分で午後の授業のために教室に戻ると、あんまり話したことないクラスメイトに話しかけられた。不在中に私に来客があったらしい。名前は、エリック。

 エリックがわざわざ来てくれたということは、それなりに重大な話ということ。私とエリックの間にある重大な話は、婚約破棄の話しかない。

 

 婚約破棄の話に何か進展があったのかな。両親に破棄報告の手紙が届いたとかかな。だって、もうあと三日しかないもん。エリックの両親側が今から相談し合ったりして、もうじき本家に連絡が行くはず。

 学園の荷物検査は時間かかるから、あと一日はあると思ったのに。想定より想定よりちょっと早い。エリックが候爵家だから早く通されたのかもしれない。

 まぁそんなの、今はどうでもいい。気にするだけ、落ち込んじゃうから。




 放課後になって、昨日同盟を結んだ約束の地、図書館の奥に向かう。マルセルとの報告会である。開口一番、触角をぴょこぴょこさせながら、マルセルがニッと笑った。


「昼休みにうちの教室にエリック来たんだってな。クラスの女の子が騒いでた」

「らしいね。珍しい」


 私が軽く受け流すと、赤茶髪のつんつんボーイはきょとんとした顔になった。


「ファンなのに、あんま興味ねーの?」


 む。興味はあるよ。あるけど、きっと私にとって不幸なお話内容だっただろうから、興味を持つだけ無駄なのだ。


「わ、私のことはいいの!」

「おお?」


 ほっぺたを叩いて気合を入れ直す。いきなりの私の行動に、マルセルが驚いた表情を見せた。

 もう、これは報告会なんでしょ? エリックの話は関係ないない。代わりに、朝入手したすごく良い知らせを教えてあげよう。ふふんと笑ってマルセルを見ると、怪訝な顔をされた。


「マルセルが喜ぶこと、言っていい?」

「なんだよ」

「ユリア、エリックのことダメな同級生だと思ってるんだって」

「……つまり?」

「好きじゃないっぽい!」

「マジか!」


 マルセルの口が緩みだす。ふたりでにやにや。


「じゃあ、恋人ってことは無いってことか。はー、良かった。クラリス、マジありがとう」

「良い情報だったでしょ。どういたしまして!」


 それで、それで? 私はすごく良い情報を手に入れたけど、マルセルは? ワクワクしながらマルセルのほうを見たら、マルセルは困った表情になった。


「俺のほうは微妙なんだけど」

「何がわかったの?」

「噂の原因、最近ふたりがよく一緒にいるかららしい」

「……それだけ?」

「今んとこは。こんな曖昧なとこから、あんな噂広まるかよとは思うけど」

「一緒にいるだけなら、エリックの女友だちとも、そういう噂が流れてるはずだもんね」


 ふたりきりでいるからという理由なら、私とマルセルだって今ふたりきりで話している。そんなことで恋仲認定されたら、この学園中が恋人ばかりになってしまう。


「噂の本当の根本は別にあるのかな」

「ありそー。なんか、ふたりで話してるのを見かけたって聞いたの、中庭以外でもあってさ」


 あ。なんとなくわかった。


「それ、街のほう? お酒が出てくるお店がたくさんある方面の」

「街っちゃ街だけど、飲み屋街のほうでも見かけたのか?」

「え、そうじゃないの?」

「俺は普通に街でデートしてるって聞いたぜ。アクセサリー店とか雑貨屋で」

「でっ、デート!?」


 思わず大きな声が出てしまった。慌てて自分の口を手で塞ぐ。マルセルが小さく笑いながら、しーっとジェスチャー。そうだ、ここは図書館なんだった。静かにしないと。

 

「まぁ、驚くよな。それ聞いて俺もビビったもん。でも、あのふたりは恋人じゃないんだよな?」

「ユリアがそう言ってたよ」

「そうだよな」


 マルセルと顔を見合わせて、首を傾げる。となると、ふたりは恋人でもないけど、学内外問わず一緒にいて、しかもあのお洒落商店街でデートしてた、と。

 ダメだ、意味がわからない。デートって、普通は好きな人以外としないはず。そういうものだと聞いている。


「マルセル、私全然わかんないよ……」

「俺も。今日のところはここまでにするか。俺、次までに飲み屋街のほう調べとくわ」

「私も明日はエリックに聞いてみる」


 今日の報告会はお開きだ。埃っぽい空間で伸びをすると、赤茶髪つんつんボーイの触角がぴんとなった。


「明日? クラリス、明日と明後日は休みだぞ」

「えっ」


 手で日にちを数える。本当だ。明日と明後日は授業無い。でも、明々後日を待っていたら、婚約破棄を阻止する時間が足りない!

 婚約破棄が阻止できなければ、キスできなければ、今頑張って調べている意味もない。困る、困る! なんとかして、このエリックユリア恋仲噂事件を早く解決しないと!


「ま、まま、マルセル!」

「慌ててどうした」

「えっと、そうだ! エリックとユリアは街でデートしてるんでしょ? 私たちも、明日街に潜入してみない?」

「その言い方はなんなんだよ」


 あそこは危ない街だから潜入で合っている。何をこんなことで呆れているんだ、マルセルは。当然のことだろうに。


「とっ、とにかく、明日、どう?」

「いいぜ、乗った。あ、でも、変な格好してきたら一緒にいてやんねーからな」


 ひどいなぁ? マルセルこそ、変な服で来ないでよね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ