表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/51

【終わりと始まりの創星神話 1巻 第三章3話】

 その後、カレハに促されて人の形をした模型の前に立つと、慣れた手つきで魔導兵装を外していく。

 外した側から模型に取り付け、待つこと数十分。

 全ての魔導兵装を取り外すと、何やら計器らしき物を取り出して数値を確認し始める。


「ほーん、これが噂の魔導兵装かー」

 いつの間にか復活していたリオンが魔導兵装を眺めながら言う。


「ふぅん、リオンは知らなかったの?」

「ワイは一般の生徒やで? 帝都の奥の院にはおいそれと近寄れんて」

 よく言う。

 カレハはリオンの事を認知していた。

 少なくとも関係者でなければ、こんな所に入れないだろう。


「それで、僕に何か用でも?」

「おお、せやせや。実はな、先生にゼロはんを連れて来いって言われとってな、迎えに来たんや」

「先生?」

「せやで。ワイらが先生言うたらヨミ先生のことや」


 確かにユウキらもヨミのことを先生と呼んでいた気がする。

 進んで皆がそう呼んでいるのか、呼ばせているのか定かではない。

 

「ーーうわ、何この数値! 一体どんな無茶な飛び方したらこんなことになるの!?」

 突然、カレハが叫び出す。

 そして、脚部の【妖精の靴フェーンシューエ】を取り外すと、靴底を外して呻きはじめる。


 ……すいません、それは多分僕が調子に乗ったせいです。


「何か僕にやることってあるかな? どうやらヨミに呼ばれてるみたいなんだけど」


「え? ーー先生が? うーん、本当は生体波長とか色々と検査しておいた方がいいんでしょうけど……まあ、いいんじゃないでしょうか」


「随分と適当だなあ。本当に大丈夫なの?」


「ええ、【ワルプルギス】に大体のことは記録されていますのでー。体温、脈拍、呼吸回数、発汗量から動作、思考、思念、武装の使用方法ーーとにかく、ゼロ先輩の行動は丸っと記録されてますよ」


「そうなの……?」

 え……怖……。

 確かに、思念で色々と操作できるのは体感していたが、その時どんな考えで、どのように思っていたのかまで分かってしまうのか。


「ええ。だから、あんまりえっちなこと考えていると私たちに筒抜けなので気を付けてくださいね?」

 誰がそんなことを考えるか……!

 憤慨する僕は、今日のところはこれ以上カレハと話すこともないだろうと思い、背を向けて歩き出す。


「ちょいちょーい。どこ行くねん?」

 その後ろをリオンが追いかける。

 構わずに行こうとするが、そう言えば僕はこの建物の地理を知らない。


「……ほら、ヨミの所に行くんでしょ? 僕、ここのこと知らないからリオンが案内してよ」

「はーそうやと思ったわ。ほんでもな? ワイもここのことよう知らんのや」

「は? じゃあ、どうやってーー」

 言い切る前にリオンは両手を合わせて拍手をする。

 その瞬間、足下に魔法陣が浮かび上がる。


「せやから直接行くねん。ーー簡単やろ?」

 そういえば、先ほどここに僕を送り込んだのもリオンだった。

 成程ね。他人を送るなら来るのも容易く、またどこかへ行くのもお手のものか。

 

 リオンが合わせた手で輪を作ると、視界が暗くなる。

 この独特の浮遊感にも慣れたものだ。

 

 ーーしかし、今回の瞬間移動は何かがおかしかった。


 抵抗感があるというか、身体が押し戻されるような圧迫感を感じる。


 すると、突然足下が抜けた。そして、引き摺り下ろされたように地面に叩き付けられる。


「ーーぐえッ!? いたた……もう、何なんだよ」 

 幸いにも倒れた先は柔らかい毛布のような敷物が敷いてあり、そこまで痛くはなかった。

 だが、倒れ伏した僕の上に何か重たいものがのしかかる。


 それは、一緒に転移してきたリオンで、僕の腰上にお尻から着地したようだった。


「いやあ、ゼロはんが下敷きになってくれてほんま助かったわあ」

 抜け抜けと言うリオンは僕の上から退く。

 腰を摩りながら僕も立ち上がると、そこは執務室らしき場所だった。

 しかし、内装がやたらと豪華である。

 黄金か何かで装飾された机と椅子。天井から吊るされた魔晶の照明はこれでもかと言うぐらい宝石が散りばめられ、眩い輝きを放っている。

 見れば見るほどお金がかかっている部屋だった。

 それもそのはずだろう。

 その先にいた人物を見て、僕は一人納得する。


「ーー騒々しいのであるな。不法に侵入するのであれば、他にやり方はなかったのかね?」

 そこにいたのは、オルクスヴェーク・ビブリオライヒ・アルプトラウム。

 その名にある通り、この国【魔導帝国(ビブリオライヒ)】の帝王。

 皆からは先生と呼ばれている人だ。


 僕としては、初めに名乗っていた『ヨミ』の方が馴染み深い。


「いやあ、流石は『校長室』やわ。防護結界を抜くのはえらいしんどかったで」 

「ふむ、結界の強度に見直しが必要であるな」

 淡々としているヨミは、こちらを見向きもせずに目の前の書類に目を通し、何やら大仰な判子を空中に浮かべて次々と押印していく。

 

「お仕事中のところ悪いんだけど、何で僕は呼ばれたの?」

「うむ。それについてはーーいや、少々待ち給え」

 そう言いながらヨミは次から次へと書類をさばいていく。

 その様子から察するに、随分と忙しそうだ。


「ほな、ワイらは茶でもしばいとろか」

 リオンは慣れた動作で棚から茶器と菓子を取り出して、お茶を淹れ始める。

「いいのかなあ、勝手に飲み食いしてて」

「先生が何も言わへんのやからええんちゃう?」

「まあ、それもそうか。ーーで、何でリオンは帰らないわけ?」

 ヨミが呼び付けたのは僕だ。

 確かに送迎役としてリオンが採用されていたまでは分かるのだが、この後の話にリオンは関係ないはずだ。

「はえ? ーーついでやついで。ゼロはんの経過報告を先生にするからやけど?」

 茶菓子を頬張るリオンはきょとんとした顔でこちらを見る。

「……やっぱり、監視を付けていたんだね」

 明け透けに言うということは、そこまで重要というわけでもないのだろう。

 だが、監視されていたというのは気分が良いものではない。

「いやあそない大袈裟なもんやないで? 心配に思うた先生がワイを付けただけやで」

「本当かなあ……」

「疑り深いなあ、ゼロはんは。そない気にしはるんやったら直接聞いてみたらええやんか」

 ……それもそうか。

 チラとヨミを見やると、僕らの会話が聞こえている筈なのに顔色一つ変えず書類と向き合っている。

 つまり、僕にバレても問題ないと考えているのだろう。

 それならば、リオンを僕に当てがったのも織り込み済みだったのだろうか。

「せやけど、今日の件は別口や。あれは博士からの依頼でゼロはんを送り届けたんやで」


「そうなの?」

 なら、ヨミとジルドは連携はしていても組織的には別働なのか?

 確か【多目的遂行複合魔導兵装マギ・エアヴァイターバヴァッフェ】の試用には本当は別の人が担当する所をヨミが強引に僕をねじ込んだとか。そんな事をジルドが言っていた気がする。

 それで大なり小なり恨みを買うこともあるようなことを言っていたが、いい迷惑だ。

 苦情があるなら僕じゃなくてヨミに言って欲しい。


「しっかしゼロはんもこれから忙しくなるで」

「え、何で?」

「新型の魔導兵装、【多目的遂行複合魔導兵装マギ・エアヴァイターバヴァッフェ】や。あれの試験人を狙つらとった者は多かったでなあ。それがポッと出の普通科の生徒から選ばれたんや。そりゃあ納得いかへん生徒も多いやろうて」

「そんな事……言われてもなあ」

「いくらなんぼでも先生からの勅令でもやな。感情的になる輩ちゅうもんはおるもんや。そのへん、ゼロはんもよぉ分かっとるーーやろ?」

 それはーー確かにリオンの言う通りだ。

 理性と感情なんて紙一重なものだ。そういう人間を今までも何人も見てきたから。


「でも忙しくなるってどういう意味?」


「ん? それはーーまあ、今後のお楽しみやなあ」

「巫山戯ないで教えてよ。あのね、僕にとっては死活問題なんだよ。ただでさえ自衛する手段が限られているだからさ」

 生徒の中には、ユウキのように武器を携行している者もいる。

 しかし、今の僕はまるっきり非武装だ。元素魔力や液体魔力は持ち歩きしてはならないことになっている。


「そないなことワイに言われてもなあ。ワイかてチンピラに絡まれたら逃げるしかないんやで? ま、いきなり襲撃されるなんてこともないやろ。知らんけど」


「最後の一言で台無しだよ……」

 ケラケラと笑うリオンを見ていると思わず手が出そうだ。

 気を落ち着けようと茶菓子を食べようとすると、しかしそこには空になった容器が残されていた。

 コイツ全部一人で食べたのか……!


「ーーふむ、待たせたのであるな」

 そこで、書類を片付けたヨミが声をかける。

 立ちあがろうとすると、それを手で制した。


「そのままで構わない。ーーああ、リオンは私の分の紅茶を淹れてくれないかね」


「ワイは先生の小間使いやあらへんのやで?」

 そう言いつつもリオンは手を叩くと目の前に新しい茶器が現れる。

 それに紅茶を注ぐと、再び手を叩いた。

 すると、紅茶の入った茶器が消えてヨミの前に現れる。


 随分と器用な真似をする。

 このような限定的な瞬間移動など、そうそう出来るものでもない。

 巫山戯た言動が多いものの、やはりリオンは侮れない力を持っているのだろう。

ここまでお読みしていただきありがとうございます。

勝手なお願いにはなりますが、ブックマーク・高評価をしていただけると励みとなりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ