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【終わりと始まりの創星神話 1巻 第一章2話】

 数分の休憩時間の後、次の授業は同じく魔導兵装の基礎訓練だった。

 教師は生徒を集めると、授業の内容を説明し始める。


「さて、君らには先程木剣の魔導兵装を使って貰ったが、次は防御についてだ。君ら着けている防具も魔導兵装だが、それには【防護魔法プロテクト】が使えるようになっている。【防護魔法】について、習った事をーーリオン、答えてみろ」

 教師に指名されたリオンと呼ばれた生徒は、自分を指差して驚いている。

 愛嬌のありそうな顔立ちの彼は、困ったように口を引き攣らせながら頭を掻いていた。

「あちゃー……ワイ、座学は退屈で寝ていたもんで分かりませんわあ」

 独特な方言で話す彼ーーリオンの言う通り、この一ヶ月授業の殆どを寝て過ごしていた。

 教師からは何度か叱られていた光景をよく見ていた気がする。

「はあ……なら、他に答えられる生徒はいるか?」

 すると、ゴドリックが勢いよく手を挙げる。

 教師はゴドリックを指名すると、彼は意気揚々と【防護魔法】について説明し始めた。

「【防護魔法】は防御魔法の一種だ。身体を膜状の魔力が覆い、物理的な攻撃や魔法なんかを弾いて防ぐ効果がある。ーー常識だぜ、こんなの」

「ふむ、概ね正解だ。しかし、試験でその言い方だと失格にするから気を付けろ。君らも分かったな? 今から行うのは、【防護魔法】を使い、木剣からの攻撃を防ぐ訓練だ」

 装備した防具は、両腕と胸、そして脛当てだ。

 それぞれがその部位を守る【防護魔法】を発動出来るようになっている。

「最初は木剣で打ち付けてみるだけにしろ。危ない真似はーーしないようにな」

 教師は、二人一組を作るように生徒を分けていき、僕は先程質問に答えれなかったリオンと組む事になった。

 彼はヘラヘラと笑いながら僕に近寄ると、挨拶をする。

「よろしゅうなあ。ワイはリオン・ラナンキュラスちゅうもんや。落ちこぼれ同士、仲良うしよな」

 軽薄そうに笑うリオンは、こちらに握手を求める。

 今まで他の生徒は僕の事を不気味がる人が多かったので、これは意外だった。

「あ、ああ、うん。僕はゼロ・アーベント。よろしくね」

 僕は握手に応じると、リオンは面白可笑しそうに笑みを浮かべる。

「おおーほんまに魔力が感じられへんわ! けったいな人やで、ゼロはんは」

「はあ……それは、どうも?」

「なんや堅苦しいなあ、気楽に行こうやないの」

「う、うん……よろしくお願いね?」

「ちゅうても、ワイは剣術も魔法もからっきしやさかい、ゼロはんの胸を借りるつもりで頼んますわあ」

「そう言われてもなあ……」

 周囲を見渡せば、他の生徒たちは木剣を対面の生徒に振り下ろし、タイミングよく発動させた【防護魔法】がその木剣を弾き返している。

 まあ、見よう見真似で何とかしてみよう。

「ーーじゃあ、試しに僕の腕当てに木剣を当ててみてくれる?」

 僕は木剣の充填器を握り、魔力を得ると腕当てに意識を向ける。淡く光を灯す腕当てからは、腕を包む魔力の膜を形成した。

「おおーやるなあゼロはん。ほなーー行くでー!」

 気の抜けた掛け声と共に、リオンは木剣を振る。木剣が腕に当たる瞬間、【防護魔法】が魔力の光を放ちそれを防いだ。

 しかし、腰の抜けたその一撃は、逆にリオンの木剣を強く弾き、その反動で木剣は弾き飛ばされる。

 宙をくるくると舞う木剣は、数Mメターを飛ぶと、ある人物の後頭部に直撃した。

「痛ってえなあーーあぁん……?」

 片手で頭を押さえ、振り向きながら低い声で唸るのはゴドリックだった。

 木剣が飛んできた方向を向くと、唖然とする僕に気付いたゴドリックは額に青筋を浮かべ、こちらへとずんずんと歩み寄る。

「『無能』……手前の仕業か!」

 いや、どちらかと言うとリオンのせいだと思ったが、彼は何時の間にか逃げ出していた。

 忽然と姿を消した彼は、凄まじい速度の逃げ足で走り去っており、僕だけが取り残されていた。

「いやーー不慮の事故と言うか、わざとじゃないんだよ、うん」

「ほお、わざとじゃねえんだな? ーーそれなら、訓練の相方もどっか行っちまったみてえだしよお、俺と組もうぜーーなあ?」

「い、いや……遠慮したいかなってーーうわっ⁉︎」

 有無を言わず、ゴドリックは木剣を振る。咄嗟に背後へと跳んだ先に、風切り音が鳴った。

「反応がいいじゃねえか。でもよお、これは訓練だからなあ、ちゃんと受け止めねえとなあ!」

 ゴドリックの振る木剣の速さは、明らかに訓練を目的とした速度ではない。一撃でも受けてしまえば、骨が折れてしまう程だ。

 僕は紙一重でゴドリックの木剣を躱し続ける。すると、彼は大きく一歩を踏み込み上段から木剣を振り下ろした。

「まずーーッ⁉︎」

 これは流石に躱せないと判断した僕は、片腕を挙げて【防護魔法】を発動して防ごうとする。

 鈍い音が響いた。一瞬だけ木剣と【防護魔法】が拮抗すると、僕は勢いに押されて弾き飛ばされる。

 地面を転がった僕は、頭上を覆い被さる影に気付くと、ゴドリックの木剣が振り下ろされる。

 咄嗟に横っ飛びすると、地面を抉る勢いで木剣が振り下ろされていた。

「こ、殺す気かよ……!」

 しかし、ゴドリックの勢いは止まらない。

 訓練という名目で、僕をいたぶるつもりなのだろう。

「はっ、今のを避けるとはやるじゃねえか。それならよお、これならどうだ⁉︎」

 ゴドリックの手に持つ木剣に魔力の光が灯る。

 まさか、対人で【衝撃波】を放つつもりか?

「こんな基礎の授業じゃ習わねえだろうがよお、本当の魔導兵装の使い方を見せてやるよ……!」

 ゴドリックは何をするつもりなのか、よろめきながら立ち上がる僕に向けて、彼は振り上げた木剣に【衝撃波】を形成する前の状態を纏わせながら振り下ろす。

 それは、木剣の一撃に【衝撃波】の威力を乗せたものだ。

 その勢いは、単純に防ぐだけではその威力を防ぎ切れないだろう。そう考えた僕は、ゴドリックと同じように木剣に【衝撃波】を纏わせる。

 そして、木剣同士が衝突した。

 元が木製とは思えない激突の音が鳴り響く。それは、音というより、互いの魔力が干渉し合って生まれた現象だ。

「俺の真似をしただと⁉︎ ーーはッ、でもよお、力比べで俺に勝てるかよォ!」

 互いの木剣が同じ出力なら、後に勝るのは単純な膂力の違いだ。

 ゴドリックの言う通り、押し負けた僕の木剣はその衝撃に跳ね飛ばされた。咄嗟の判断で胸当てから【防護魔法】を発動させるが、木剣から放たれる【衝撃波】が僕の身体を吹き飛ばす。

「おい⁉︎ お前たち何をやってるんだ! ゴドリック、お前の相手は別だろう⁉︎」

 そこで、教師が騒ぎを聞き付けてやってきた。

 しかし、ゴドリックは何食わぬ顔で木剣を肩に担ぐと素知らぬ顔で言う。

「ーーなあに先生よお、ゼロの相方が腑抜けてどっか行っちまったもんでな。俺に稽古を付けてくれて言うもんだから、仕方なく引き受けてやったのさ」

 本来、ゼロの相方となるリオンは逃亡して現場には居らず、ゴドリックの取り巻きはそうだそうだと言っている。

「だとしてもやり過ぎだ。実戦訓練もまだだと言うのにーーおい、大丈夫かゼロ?」

 教師が僕の元に駆け寄ってくる。教師は僕の様子を確かめると、他の生徒に担架を用意させ、薄れゆく視界の中で僕は担架で運ばれながら不明瞭な意識を失った。


 ゼロを打ちのめしたゴドリックは、担架で運ばれていくゼロを見据えると、最後に放った【衝撃波】が不自然に防がれたのを思い返す。

「あの野郎……【衝撃波】を食らう直前に【防護魔法】を発動した……? まさか、複数の魔導兵装を同時に発動しただと……⁉︎」

 それは、まだ基礎の訓練では習わない、魔導兵装の応用訓練で習得するものだ。

 一つ一つは扱いが単純な魔導兵装でも、同時に複数となると途端に難易度が跳ね上がるというのが一般的な認識であり、ゴドリックもそう考えていた。

 何故なら、自らの意思で発動するのが魔導兵装の利点だが、その数が増えるとその分意識が散漫しやすい。

 それを、打ち合ってる最中に咄嗟に出来るものかとゴドリックは考えていた。

「おい、どうかしたかよ、ゴドリック?」

 ゴドリックの相方だった生徒が、怪訝そうな顔をしていたゴドリックに問いかける。

「い、いや、なんでもねえよ……」

 偶然だと思い、ゴドリックは先程の出来事を頭から追い出して忘れる事にした。




「ーーってな事があったんですわあ。いやあ、ほんまに驚きでしたわ」

 所変わって、逃亡していたリオンは、校舎の影に隠れて、離れた場所にいる人物と【心念話テレパシー】で連絡を取る魔導器ーー【携帯端末サイフォン】を取り出し、誰かと話していた。

「んんん、魔力を持たない身で魔導兵装の変則的な使い方をしたと。また、複数の魔導兵装の同時使用、と。ーー彼、外部からの新入生という事に間違いはありませんか?」

「せやで。力量を測るつもりでおったんやけど、丁度都合良くゴドリックはんがゼロはんとやり合ってくれたんでよおく観察出来たわあ」

「んんん、察するにリオン君が何か手を加えたのでは?」

「はて、何の事でっしゃろな。ワイにはてんで思い当たりませんわ」

「お痛が過ぎると『先生』に叱られますぞ? ーーまあ、バレても私は関係ないフリをします故、その時はご自身で何とかするのですぞ」

「何でや⁉︎ ゼロはんの実力を見て来い言うたんは『博士』やろ⁉︎」

 しかし、リオンの叫び声に返事はなく、【心念話】が一方的に切られてしまった事を察する。

「はぁーほんまいいように使われてますわ……」

 そう言うと、リオンの足下に魔法陣が浮かび上がる。

 一瞬だけ光り輝くと、次の瞬間にはそこには誰も居なかった。

ここまでお読みしていただきありがとうございます。

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