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【終わりと始まりの創星神話 0巻 終章】

 目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。

 真っ白な清潔感のあるその部屋は、天井に魔晶クォーツのようなものがあり、それが魔力光を放って部屋を明るくしていた。

「ーー目が覚めたかね?」

 声をかけられると、首の動きだけでそちらを見る。

 そこには、何やら分厚い本を読むヨミの姿があった。

「ここ……は……?」

 呆として声が上手く出せない。だが、徐々に記憶が思い返される。

 確か、クルスの神器に肩を斬り裂かれてーーそれでーー

「クロネは……!?」

 身体が思うように動かない。怪我のせいかと思ったが、それは違った。

 胸の上にかけられた毛布が、こんもりと山を作っている。

 その正体は、すやすやと眠るクロネだった。

「先に彼女は起きていたのだがね。彼女は真っ先に君の元に来ると、そのまま寝てしまったのでそのままにしておいたのだ」

 見れば、隣にも僕が横たわる寝具と同じ物があった。元々そこでクロネも寝ていたのだろう。

 無事な様子のクロネの姿を見てホッと胸を撫で下ろす。

「ーーということは、僕たちは……負けたんだね」

「うむ。十数年ぶりに私の第二の神器まで用いたのだ。誇るが良いぞ」

「……うわ、二つも神器があるのか。無茶苦茶だね……」

「あわや、第三の神器まで発現するところだった。危うかったな。あれを用いていれば、確実に君たちは死んでいたぞ」

「……もう驚かないよ。今、僕の中の常識が侵されようとしている……」

 ふう、と。溜息を吐いた。

 ヨミは読んでいた本を閉じると、その視線を僕に向ける。

「ゼロ。君たちには選択肢がある」

「うん? 選択、肢?」

「ああ、一つ目は君たちを私の庇護の下、生徒にならないかね? 魔導帝国が帝都、学院都市にて学徒となるのだ」

 聞いたことがある。魔導帝国には、その帝都の大部分を学院として運営していると。

「はあ……それって最初から選択する余地があるのかな……」

 だからこそ、最初にヨミは提案したのだろう。

 ……随分とお優しいことだ。とても一国の主、その帝王様だとは思えない。

 僕たちの危険性は十分理解しているだろうに。

 それでも、その提案を最初にしたのは、ヨミなりの優しさなのだろう。

 思わず笑みを浮かべると、ヨミも僕の考えに気が付いたのか意地悪さを浮かばせて口の端僅かに上げた。

「無論、打算もある。君のその特性ーー神器であるその肉体は自身では魔力を生み出さない。そうであろう?」

「ああ、うん。そうだね、もう隠し事も出来ないしね。ーーそうだよ、僕の肉体はクロネの神器だよ」

 それ故に自ら魔力を生み出すことは出来ず、また外部からの魔力供給がなければ魔法を使うことが出来ない。

「稀有な存在だ。それ故に利用価値があると言ってもいい」

「ああ……それで、随分と昔から苦労していてね……」

 この身体の特異性を調べようと、ある研究機関でありとあらゆる実験を受けた苦い記憶が思い返される。

 全身の血液をギリギリまで搾り取られたりとか、意識があるまま腹を割かれたこともある。

 幸いにも、魔力を得ることによって再生させることが出来たからある意味では不死身とも言える。凄く痛かったけど。

「安心し給え。そう悪いようにはしないのである」

「それはーー本当かなあ……」

 それこそ、ヨミは僕たちの生殺与奪を得ている。

 本当だったら、きっと僕たちは殺されてもおかしくはないのだ。それか、実験動物よろしく解剖されてもおかしくないし、一生を牢の中にでも閉じ込めることも出来るだろう。

「不安に思うだろうが心配ないのである。ーー彼らもきっと、君を助けてくれるだろうさ」

「ん? それはどういうーー」

 意味と言い切る前に、部屋の扉が勝手に開く。

 ヨミが黒い靄を生んで扉を開けたのだ。

 その先には、聞き耳を立てていたであろう、ユウキら三人がおり、しまったといった表情を見せている。

「盗み聞きとは感心しないな。見舞いに来たのであれば普通に入って来給え」

 部屋に入ってくる彼女らに先ほどの会話を聞かれてたのかと思ったが、ヨミが念話で先ほどまでの会話は防音魔法をかけていたから聞かれていないと伝えられた。細まで気の回るお人である。


「あ、あはは……やっぱり先生にはバレちゃっていたわね」

 照れくさそうにするユウキ。その後ろにいるカイとレイスは明後日の方向を向いていた。誤魔化そうとカイは口笛を吹いているが、下手くそなのか鳴っていないぞ。

 しかし、その更に後ろにいた人物ーー人物と言っていいのだろうか、義父さんもそこにいた。

「おう、元気そうで何よりじゃわい」

「義父さんこそ……。ところで、何でまだ鍋を被っているの?」


「む、う。それはな、儂は気にせんのだがここにいる連中が儂の顔を見る度叫び声を上げて武器を取り出すものじゃから仕方なくのう……」

「俺らも最初はビビったぜ。何で独房ん中に骸骨人がいるんだーーってな」

 聞けば、どうやら保護された際に人語を介する魔物だと思われたらしく、ヨミが解放するまで牢屋に閉じ込められていたらしい。

 誤解が解けた後でも、それでもやはり骸骨人が闊歩していれば驚きはするだろう。

 いまだに僕も、夜に暗いところから現れると驚く。

「聞いたわよ、ゼロ。貴方も私たちと一緒に先生の生徒になるらしいわね」

「ぅえ?」

 聞いていないわよ? ーーと、首をヨミに向けるが、彼はふっと笑みを浮かべていた。

 なんて事だ。初めから選択肢なんてなかったじゃないか。

「まあ、何じゃ、ゼロよ。前にも言ったがこの男はお前さんを悪いようにはしん。ーー多分な」

「だから最後が余計なんだってば……!」

 呵呵と笑う骸骨は置いといて、ガヤついて五月蝿くしたのか、胸の上で眠るクロネが身動ぐ。

「にゅ……う、るさい」

 僕の腹上から聞こえた声に怪訝そうな表情を浮かべたユウキらは、しかしヨミの魔法によって押し出されて退出させられる。

 静かになった部屋は、僕とクロネ。そしてヨミが残されたが、彼も立ち上がり部屋から出て行こうとする。

「さて、私も自室に戻る。何か用向きがあれば、そこの釦を押し給え」

 ヨミが指し示すのは、紐が繋がれた棒状の物が枕元にあった。その先端には球状のような物があり、釦とはこれのことだろう。

「それでは、な。明日には帝都に到着するだろう。それまで休んでおき給え」

 そう言い残して、ヨミは部屋から退出する。

 溜息を吐いて、静かになった部屋にはクロネの寝息だけが聞こえていた。

 

 そっと、手を伸ばして頭を撫でる。そう言えば、クロネとの約束がまだだったことを思い出した。


「にゅ……お兄ちゃん……」

 そっと、起こさないように抱き寄せて、額に口付けをする。

 取り敢えず、守ることができて良かったと心から安堵した。

 目閉じて考える。この先もクロネを守ることが出来るのだろうかと。

 いや、実際に守られていたのは僕の方だ。僕は何も出来やしなかった。

 虚無感が晴れない心の内を埋め尽くす。


 ーーいや、ヨミが僕を利用したいと言うのであれば、逆に僕もそうすればいいのではないか。

 思い返すのはユウキの魔導器ーー拳銃。カイの直槍。レイスの手甲。

 初めて目にした時から考えていた。あれは、あれらは魔力のない、魔法の使えない僕にとって得難い武器となる。


 ならば、帝都で学びを得よう。そして、魔導器を手に入れようじゃないか。

 きっとそれは、クロネを守る武器になる。


 自己弁護染みた目標を得た僕は、そっと目を閉じる。

ここまでお読みしていただきありがとうございます。

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