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【終わりと始まりの創星神話 0巻 第七章4話】

「…………」

 ーーそこは、暗闇だった。


「…………」

 ーー真っ暗な、何も感じない虚無が広がっていた。

 それはまるで、僕自身のようで、いつもそこにあったものである。


「…………」

 ーーこのまま微睡みのような空間に浸っていれば、いつかは僕自身が消えてなくなってしまうのだろうか。


「…………?」

 ーーどこかから、声が聞こえたような気がした。


「…………」

 ーーだが、何も見えない。感じない。

 見えてるのかさえ不確かなのだ。声が聞こえるはずもない。


「ーーーー!」

 ーー今度は確かに聞こえた。

 誰かの叫び声のようなーー泣き声のような。


「…………っ!」

 ーー意識が虚無に溶ける。

 知覚さえできない手足を必死に手繰り寄せ、少しずつ形を取り戻す。




「ーー起きてって言ってるでしょ!」

 その瞬間、胸に衝撃を受けて目が覚めた。


「ーーボクが起こしてあげたのに、また寝ちゃうの?」

 すぐそばにいるというのに、遠くにいるように聞こえる。

 

「クロネ……良かった、無事ーーみたいだね」

 目の前には、いや僕の胸に跨るクロネがいた。

 僕は上体を起こそうとして、しかし思うように身体が動かず仕方がなく目の動きだけでクロネを見た。

 彼女は僕の腹部にのしかかり、目を細めて見下ろしながら、口元を笑みの形に変えてその顔を僕に近寄らせる。

「このままだとーーお兄ちゃん、死んじゃうね?」

 クロネの吐息が頬にかかる。彼女の言う通り、僕の命はーーそう長くはないだろう。

 チラと左肩を見やると、ざっくりと抉り斬られた傷口から、夥しいほどの鮮血が溢れ出していた。

 今も流れ出していく血液が僕の体温を急激に奪い取っていくのにつれて、覚めたばかりの意識が遠退いていく。

 このままでは、いずれ出血多量で死んでしまうだろう。

 離れた所からは、未だ続く戦闘の音が響いている。このまま意識を手放してしまえば、どれほど楽な事だろうか。

 辛うじて繋ぎ止めている意識もそう長くはない。微睡むような感覚に襲われて視界が霞む中、近寄らせたクロネの頭に無事な方の手を寄せて、そっと撫でる。

 そして、喉を鳴らして喜ぶクロネを抱き寄せて口付けを交わす。

「ーーお兄ちゃん、良いんだね?」

 恍惚の笑みを浮かべるクロネに僕は頷いた。

「ああーー全部、終わらせよう」

 そうして、僕はクロネと溶け合うように一つになる。

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