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【終わりと始まりの創星神話 0巻 第七章2話】

 瞬く間の出来事に、戦場は静まり返っていた。

 誰もが今、目の前で起きた出来事に対応できず、騎士たちは呆然として自らの大将であるクルスが伸びていても誰も介抱しようとしていない。

 そんな様子をクロネは、何事もなかったかのようにこちらへと振り返ってとぼとぼとして足取りで歩き始める。

 ーーその瞬間だ。

 突如として、真横から家庭用の大きな机がクロネに向かって飛んでくる。

 その勢いはかなりのもので、瓦礫や木片、硝子を巻き込んだ最早散弾といったものだ。

 それを極めて面倒とも言わんばかりの動作で打ち払うと、次から次へと様々な物がクロネに向かって放たれーーいや、投げつけられていた。

 投射物の出所は先ほどカトリアが吹き飛ばされていた家屋からで、投げつけられる物に一貫性がないことから手当たり次第にクロネに投げつけているのだろう。

 破れかぶれのようにも見えるが、次はカーテンに包まれた何かが飛んでくる。

 億劫にそれを打ち払うと、広がった布がクロネの視界を塞ぐように広がった。

 中からは粉々になった金属製の鍋が地面に打ち付けられる。

 そして、そのカーテンを刃物が突き破り包丁が投射されていた。

 クロネは小首を傾げると、欠伸を噛み殺しながら余り袖で口元を押さえ、もう片方の手で包丁を指先で器用に掴み取ると至極つまらなさそうに背後へと放る。

   

 家屋の中からカトリアが本人が飛び出すと、一瞬でクロネに肉薄した。

 片腕は先ほどクロネの回し蹴りを受けてかだらんとさせていたが、もう片方の腕でその五指を広げてクロネへと掴み掛かろうとする。

 だが、その手を欠伸を押さえる手とは反対の手で打ち払う。

 まるで、邪魔な羽虫でも払うかのような気軽さが感じられる動作で、鞭を鳴らしたような乾いた音が鳴った。


 そこからは、カトリアとクロネの攻防が目まぐるしく始まる。

 掴み、時には手刀。拳を交えながら。それを、クロネが面倒臭そうに打ち払う。

 しかし、その速度が異常である。

 彼女たちの攻防は僕には残像しか見えておらず、何重ものやりとりが追えていなかった。

 だがそこで変化が起きる。

 痺れを切らしたクロネが反撃に出たのだ。

 カトリアの横面をやる気のなさそうな、しかし殺人的な速度で殴りつけようとしたのだ。

 しかし、その拳は振り抜かれる事なく止まってしまう。

 それと同時に響く澄んだ破砕音。

 それは、カトリアの神器ーー【聖方四陣コンプスクエア】である。

 結界に使用していたと思っていたが、そうか、単独で防御陣として用いることも可能なのか。

 四重に重なった防御陣の内、三枚まで割砕いたところでクロネの拳は止められたのだ。

「侮りましたね……!」

 カトリアは片足をしならせて持ち上げ、それはまるで断頭台ギロチンのように、クロネの頭上へと踵を落とす。


 ーーその瞬間、僕は勝利を確信した。


 クロネは手癖も悪ければ寝相も悪いがーー




 何より足癖が一番悪いのだ。


「にゅっ!」

 クロネは驚異的な反射で振り下ろされる踵に合わせるように宙返りしながら上段蹴りを放つ。

 カトリアの踵とクロネの足先が激突すると、お互い弾かれるように後方に飛び退いた。

 だが、片方はくるりと宙空で一回転して優雅に着地し、もう片方は膝からあり得ない方向に曲がった片足を庇うような着地だ。

 片手片足を負傷した状態で、クロネに勝てるとは僕は到底思わない。これで勝敗は決しただろう。

「ーーむっ、避け給え!」

 隣で魔法を構築していたヨミが叫ぶ。

 咄嗟に回避行動を取ったが間に合わず、何か冷たいものがが僕の身体を通り抜けた感触がした。

 瞬間、それは熱に変わる。

 クルスの神器が、背後から僕の右肩辺りを貫いていったのだ。

 柄まで突き刺さるそれは、僕の身体ごと勢いのまま連れ去ろうとする。

「にゅっーー!」

 咄嗟に動いたクロネが空中で僕を捕まえる。即座に突き刺さる神器を引き抜くと、クロネの手から抜け出そうと暴れ狂うように振り回された。

 その衝撃で僕とクロネは吹き飛ばされる。幸い窓から飛び込んだようで、衝突の痛みはそれほどだったが、割れた硝子を身体が噛んで小傷を追っていく。

 それまで、よく意識を保っていられたと我ながら思っていたが、最後に箪笥の角に頭をぶつけて僕はあっさりと意識を手放した。

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