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【終わりと始まりの創星神話 0巻 第六章4話】

 カトリアは語る。

 『バルバロッサの悲劇』ーーそして、僕が『バルバロッサの亡霊』と呼ぶ出来事が起きた経緯を。

 それはまるで、宣告を受ける罪人かのような気分である。一体僕が何をしたというのだ。


「『バルバロッサの亡霊』。ーーそれは、我らが救世教会並びに聖王家に対する重大な損害を与えたとされる人物だからです」


「事を辿ればその原因となった『バルバロッサの悲劇』。その顛末は、都市一つの壊滅と、ある人物が暗殺された事でした」


「あのバルバロッサ市は、市長と駐在する司教が結託し聖宗救国から独立しようとしておりました。これは聖宗救国に対する明確な離叛行為ですので、誅伐の為に騎士団ーー守護百合清騎士団が送り込まれました」


「ここまでは実はよくある話なのですよ。ですが、その結末は『バルバロッサの悲劇』です。都市は封鎖されており、その内にいた住人は虐殺の限りを尽くされておりました」


「調査の為に法務機関である調査団が遅れて派遣されました。ーーそれが、私たち四法睡蓮正騎士団です」


「しかし、そこにはあってはならない人物の亡骸があったのです」


「その人物とは、聖王家の傍流ーークリザンテム家の者でした。末席とは言え聖王家に連なる人物の亡骸です。何故その場にいたかは存じませんが、亡くなったその理由も責任の所在もあやふやとなり、結果として救世教会と聖王家はこの事実を隠匿したのです」


「その人物は実は、ニンファルテトラ家を陰ながら支える後援者でしてね。後ろ盾を失った私としては、最早あの国での味方はいないのですよ。適当な理由で私を団長の任から降ろし、孤立無援となった所を秘密裏に抹殺する計画である、と」

 そして、横目でクルスを見ると、彼が息を呑む悲鳴を上げた。

 成程。それならば、一見自暴自棄にも見えるカトリアの計画が読み取れる。どうせいずれ抹殺されるのならば、徒花となったとしても行動に移したのだ。

 自身の命を含め、これまでの功績や名誉を全て捨てたとしても、その代償を勘定に入れていないのだ。


「一連の主犯とされる市長と司教。そして、誅伐を行った守護百合清騎士団の団長ですが、全員その場で死亡が確認されております」

 この場合、どちらが被害者で加害者なのか。

 どちらにしても正義の所在など、僕には関係のない話である。

「ーーですが、ここにある組織の名前が浮上します。国際的に有名な暗殺者集団ーー『砂漠の蠍』。その幹部がその場にいた事が確認されています」


「どうやら彼らは、ある人物を亡命させたようでしてね。その人物こそが『バルバロッサの亡霊』なのですよ」


「騎士団の手から逃れた『バルバロッサの亡霊』はその目撃証言から、白髪の老人とも、黒髪の美女とも言われていましてね。私が追ってきたそちらの少年と少女は、老人とも美女とも言い難いですが、髪色の特徴は合っていますね」


「ーーそれでは、もう一度尋ねます。少年、君が『バルバロッサの亡霊』ですか?」


「ーー違う、とも言えない、かな? ふうん……これで納得がいったよ」

 脳裏に蘇る、彼らと過ごした数週間の出来事。

 僕は組織の一員でもなければ、一時の協力関係だっただけに過ぎないけれどーーあの時は確かに『家族』だった。

「少年、君は一体、何を知っているのです?」

「あー……うん、これはーーどうかな。僕の安全にも関わる話だから、本当は教えても良いんだけどさ」

「ではーー」

 僕はカトリアが言い切る前に言葉を被せる。

「ーーでも、残念だけど、ある人との約束でね。カトリアさん、貴女には教えることはできないよ」

「そう……ですか。ーーでは、当初の予定通り、君を拘束します。尋問や拷問に耐えれる自信はお有りでしょうか?」

「無いね。僕は痛いのが嫌いなんだ。ーーそれと、当たり前だけど捕まる気なんてないよ」

「では、強行致します。ーークルス、彼の手足を捥いでも構わないので捕らえなさい」

「ーーッ!」

「どうしましたか? クルス・ニンファルテトラ副団長。ーーああ、間違って殺してしまう事を危惧しているのでしょうか? 当然ですが、そのような事は認められませんので。……私が言っている意味が、分かりますよね?」

 みしり、とクルスの肩を握るカトリアの手から音がする。

「ぐうッ……⁉︎ ーー承知、しましたッ……カトリア団長……!」

 苦渋の表情でクルスは頷くと、カトリアは肩から手を離す。

 彼女が握っていた鎧の肩当て部分は、しっかりと彼女の手形が付いていた。

 ひえっ、あの人素手で金属製の鎧を凹ませたよ……!

「それで良いのです。ーーでは、参りますよ……‼︎」

 そう言ってカトリアは両手を広げ、その五指を開いた。

 それが、開戦の合図となる。彼女は両手を広げながらこちらへと走り寄る。

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