【終わりと始まりの創星神話 0巻 第五章3話】
再びレイスはクルスに肉薄しようと拳を構えながら前へ踏み込む。
レイスの拳は、一撃でも食らえばかなりの威力となる事はクルスも理解しているのだろう。
先程まで両手で構えていた幅広剣を片手で振り回し、レイスを近寄らせまいと牽制する。
当然それを許さないカイは、クルスの鎧の隙間を狙うように背後から槍を突き入れる。それなのにも関らず、クルスは振り返りもしない。
カイの直槍の穂先がクルスに届く。その瞬間に、澄んだ音が響いた。
「硬っ……てえっ!」
クルスは背後に魔法防盾を作り出し、カイの一撃を防いだのだ。
見向きもしないで発動させたのは、己の勘なのか経験則なのか。騎士団の副長の実力は伊達ではないと言うことの証左でもある。
ーーそれからは、剣と拳、槍と魔法の盾の応酬である。
二人を同時に相手にしているはずなのに、クルスの動きはより鋭くなっていった。
逆にレイスはどちらかと言うと防戦一方である。いや、刀剣相手に素手で立ち向かう方が凄いのだが。
クルスの剣撃を躱し続け、時折反撃を試みるがその度に振り払われるように近寄れず、それどころか少しずつ後退している。
カイはクルスの背後から直槍を叩き込もうとしたり突き入れているが、その度に魔法防盾に阻まれる。
消耗した魔法防盾はいずれ砕け散るが、その都度クルスは新たな魔法防盾を発動させる。
ちら、とクルスは一瞬だけカイを見やるが鼻で笑って向き直る。
そして、クルスの動きが激化した。
先程までの剣撃はレイスを両断しようとした動きだったが、片手で振る幅広剣は手数を重視しており、兎に角レイスに反撃を許さないようだ。
それでも一瞬の間隙を縫って踏み込み、拳を突き入れるのだが、クルスは空いた片手には小型の魔法防盾を発動させ、その拳を防ぐ。
その隙を狙い、クルスは上段から幅広剣を振り下ろした。
レイスの頭上に迫る幅広剣を、避けるのも間に合わないのかレイスは動こうとしない。
万事休すかと思われたが、レイスは両の拳を挟み込むように幅広剣に打ち付けた。白羽取りと呼ばれるそれは、幅広剣の動きを止める。拮抗する両者は僅かだが互いに動きを止める。
「ーー今だカイ!」
レイスの叫びに呼応して、カイは槍を振り上げる。
しかしそれでも、クルスは振り返る事すらしない。
「このやろーこっちを見向きもしねーで。それなら……これならどうよ⁉︎」
叫ぶカイは直槍を一度振り回すと、その穂先が赤くなった。それは、穂先から熱を発すると、勢い良く燃え上がったのだ。
火を纏う直槍は火槍となって、クルスを背後から襲う。
「人の背後を取ったからといって調子に乗り続けて、それを甘いと言うのだ!」
叫ぶクルスはそこから、驚くべき行動に出た。
有ろう事か、クルスは唯一の武器であろう幅広剣を手放したのだ。
力の支点を失った幅広剣は、それを押さえ込もうとしていたレイスを僅かに硬直させる。
その一瞬の間にクルスは前蹴りを放った。それは、レイスの空いた胴体に蹴り込まれ、レイスは後方へと吹き飛ばされる。
そして、更にクルスは手放された幅広剣を掴み取ると、振り向きながら空いた手に展開した魔法防盾で槍を防いだ。
だが、強度が足りなかったのか、すぐさま魔法防盾は魔力の光となって砕け散る。
「貰ったぜ……!」
一瞬だけ直槍を引き溜め、突き入れられる火槍は、的確にクルスの急所を狙ったものだ。
手前にある魔法防盾を貫き、クルスの胴体を的確に狙う。
しかし、魔法防盾は効力を発揮しなかったが、本の僅かだけだが、火槍の勢いを落としていた。
クルスは半身を回すと鎧の上に纏う外套が翻り、それを焼き焦がすもののクルスは火槍の一撃を回避する。
半回転したクルスはそのまま、燃え盛る燃え盛る火槍を掴み取る。その手も炎上するが、しかしそれを意にも返さずにクルスは手繰り寄せるように火槍を引っ張る。
ぐんと引っ張られたカイは直槍を手放しはしなかったものの、すれ違うようにカイとクルスの位置が入れ替わった。しかも、その瞬間にクルスはカイの背後を蹴り飛ばされる。
「ぐあっ‼︎ ーーぐえッ⁉︎」
二度悲鳴を上げるカイ。
蹴り飛ばされたその先には、先に同じく蹴り飛ばされていたレイスがおり、二人はもつれるように衝突して更に後ろへと吹き飛ばされる。
倒れ込む二人は、幸いにも泥の沼よりも先に倒れた為沈むような事はなかった。
地面に伏した二人は体勢を立て直そうとするも、その隙を逃すはずもないクルスが、幅広剣を脇に構えて薙ぐように振る。
再び魔力の斬撃が飛んだ。
防ぐか回避しなければ、立ち上がろうとする二人の胴体を薙ぎ払われるだろう。
腰を落として姿勢を低くすれば回避できるのだろうが、それを読んでいたであろうクルスは横薙ぎの斬撃を放った直後走り出していた。
二人は魔力の斬撃を回避しなければならず、しかしその後詰でクルスは急接近し体勢を立て直す前に二人を切り捨てるつもりなのだろう。
二段構えの攻勢に、今度こそ手詰まりかと思った。
だが、ここまで様子を伺っていたユウキが動く。




