【終わりと始まりの創星神話 0巻 第四章3話】
「話はそこまでだ。敵が来るぞ」
レイスの言葉にカイは直槍を構えると、その先から幾人かの兵士が現れた。
兵士姿が二人と騎士が三人。その内の一人は一際身なりの整った姿をしている。
僕はそっと片手を腰帯に手を伸ばし、いつでも試験管を取り出せるようにする。
「おっと、アイツは他の奴らとは違うぜ……!」
カイはその身なりの良い騎士を見て呟く。
その出立は錬金鋼を惜しげ無く使われた白銀の鎧を身に纏い、上級騎士だというのが見て取れた。
しかし、それだけではない。見に纏う圧のような魔力が段違いなのだ。
「私は四法睡蓮正騎士団副長クルス・ニンファルテトラである」
ニンファルテトラ……?
聞いた事がある名前だなと思ったが、瞬時に思い出す。確か、カトリアの名がニンファルテトラだった。
という事は、彼女の家系の人だろうか。
「ーー貴様が『亡霊』だな? 成程、確かに魔力を感じない。【隠匿魔法】やそれに類ずる魔法具を身に付けている訳でもなさそうだ」
「カトリアといいあんたといい……また人の事を『亡霊』呼ばわりして。これでも健気に生きている人間に対して失礼じゃないかな」
「ほう、既に姉上と接触していたか。どうだ、『亡霊』よ。大人しく投降すれば、命の保証はしよう」
命の保証、ね。
これははっきりと嘘だと分かる。それも、隠そうともしない殺気のような気配が魔力を通じて明らかなのだ。
ふうむ、これは少しかまをかけてみるか。
「姉上……という事は、カトリアの弟さんかな? ーー分かった、僕は投降しよう。だけど、僕の妹は見逃して欲しい。それに彼らは帝国の学生で非戦闘員だ。彼らも出来れば見逃してくれないかな」
ユウキらが驚いた顔をしているが、今は無視だ。
「それはならん。貴様らは我々の兵士に被害を与えるほどの存在だ。秘密裏に応援を呼ばれても困る。拘束して捕虜とさせて貰う」
「……分かった。なら、もうこちらは抵抗しないよ。だけど、良いのかな。お姉さんの援護に行ったらどうだい? あの人が相対しているのは『魔導王』だよ?」
「そんな事は承知している。だが、相手は貴様ーー『亡霊』の確保が最優先だ。私自ら、貴様を捕らえ我が国へと連行する」
「お姉さんを見捨てる事になるかも知れないけど、それでも良いのかな?」
「ふっ、寧ろその方がこちらとしては都合が良いというものだ」
「……そうか。つまり、あんたが裏切者か」
クルスの薄ら笑いを見て、これで確信を得た。
「貴様……何を知っている……?」
少しばかり動揺を見せたクルスの瞳が、より殺気強くこちらを射抜く。
「いや、ね」
先程知り得たばかりの、カトリアは教団に騙されているという情報から、騎士団に内通者が居たんじゃないのかと考えていた。
それを知っているのは、現状それを伝えた魔導王ことヨミとカトリア、そして僕たちぐらいだろう。それを他の人が知っているとしたら、その人がカトリアの敵対者である可能性が高い。
それを騎士団の中でも地位の高い副長ーークルスに伝え、あわよくば交渉または内部分裂を計りたかったが……。
これは、当てが外れたね。カトリアの身内が、しかも騎士団を預かる副長が裏切っているのならば、彼女を助けるような動きは絶対にしないだろう。
ましてや、絶対に僕を生かす事もないのだ。カトリアは可能なら生きて僕を証人にしたかったようだが、殺気溢れるクルスにはその気は無いように見える。




