【終わりと始まりの創星神話 0巻 第四章1話】
先ずはこの町を出るのが先決という事で、僕らは町の出入り口ーーその西側を目指す事にした。その理由は東側は【聖宗救国】方面となるので、待ち伏せを避けるためだ。
時折、何処かで戦闘の音が町中から響いていた。恐らく、【聖宗救国】の手の者が、何処かで争っているのだろう。
なので、町の中央を両断する主街道を避け、住宅街の小道を抜けて町の中央付近までは何事もなく進む。
しかし、その途中で義父さんは立ち止まる。
「おう、ゼロよ。悪いがここからは別行動じゃ」
「うん? どうしたの急に」
突然、義父さんは町の西口とは違う方向へ行こうとする。
「なに、ミュラーには世話になったからのう。下手をすれば此処は酷い戦場になる。その前に彼奴を町から逃がすつもりじゃ」
「へえ……義父さんにも人情があったんだね。でも、大丈夫なの?」
「ふん、余計なお世話よ。全く錬金術が使えんわけでもないしのう。自分の身ぐらいは守れるつもりじゃ」
「そうーー分かったよ。まあ、何があっても骨の一つも拾えないけどね」
「はん、お前さんこそクロネが居るからと言って油断するでないぞ」
そう言うと、義父さんは背を向ける。
これ以上、軽口を交わす時間も勿体無いので僕も行こうとすると、義父さんは僕を呼び止めた。
「おう、待てやゼロ」
「うん? どうしたの、何か忘れ物でもあった?」
「……死ぬんじゃないぞ」
義父さんはそれだけ言うと、歩き出した。
「ああ……うん、分かってるよ」
義父さんと別れた僕は、主街道を避けながら町を進む。
だが、この様子だと、町の周囲は恐らく包囲されているか、東西の出入り口は封鎖されている可能性が高い。
しかし、町からの脱出は別に東西の出入り口以外にもある。町の下水を川に流す場所が町の北側にあるのだ。いざとなった時に、義父さんと予め決めておいた脱出口である。
しかし、その為にはどうしても主街道へ出て通り抜けねばならない。取り敢えず状況を確かめる為に、物陰に身を潜ませながら主街道まで接近する。
家の隙間小路から主街道を覗き込んだ。
ーーだがその様子は、一言で言えば凄惨だった。
主街道には、荒れ果てた露天商や街道沿いの店々は破壊されたのが数多く見受けられた。
「これはーー酷いね」
街道を警戒しながら彷徨く兵士が手に持つ片手剣には、まだ真新しい血が付着していた。
そして、道には倒れ伏した町の人達が大勢居た。夥しいまでの血溜まりをそこら中に広げており、無差別に町の住人を襲っていた事が窺い知れる。
そして、騎士団の連中は中央に向かって進軍して、目に付く者を手当たり次第襲っているのだ。
「こんなんじゃ見逃しては貰えなさそうだね……」
いずれ、この町を制圧するのも時間の問題だ。しかし、出入り口を封鎖されている今のまま、潜伏を続けていてもどうしようもない。
「封鎖はーー無理矢理にでも突破出来るけど、義父さんがなあ……」
僕ら二人だけなら町からの脱出は出来るだろう。しかし、義父さんを置いて行くのも気が引ける。
そこで、周囲を警戒する兵士らが、何やら叫びながら急いで走って行った。彼らが向かう方角は町の中央方面である。あっちには確か『組合』があった筈だ。町の衛士を含め、未だに抵抗を続けているのだろう。
どちらにせよ、今の内に街道を抜けてしまおうと思い、周囲を警戒しながら通りに出る。
「……それにしても、ここまでやるか」
街道には息絶えた町の住人の遺体がそこら中にある。
その中の一人に、見覚えのある人の姿があった。大鍋を修理するように依頼した衛士の姿である。
彼が最期の瞬間まで持っていた槍は中から折れており、この町を守る為に勇敢に戦ったのだろう。
埋葬する事も、黙祷すら捧げる時間もないことをどうか許して欲しいと思いながら、街道を通り抜ける。




