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俺にだけ物理が厳密適用される楽しい異世界ライフ――今回の死因は「断熱圧縮」です――  作者: かっぷ


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23:水中放電と爆鳴気

 視界一杯に広がる鏡のような湖面。その全てに青空が映り込み、まるで空に浮かんでいるかのような気分になる。


 フラノ湖は海と見紛うばかりの雄大さを備えた、静かで美しい淡水湖だった。


「ようやく水辺だよー! いまこそ私の本領発揮!!」


 明るい声を上げたノエラが水際へと駆け寄り、とんがり帽子とショートマントを脱ぎ捨てる。


「おぉっ、凄いぞノエラ! それがお前のフルスペックなのか!!」


 あまり描写しないので忘れがちだが、ノエラは普段から水着同然の格好をしている。さらには小麦色の肌にショートヘア、小柄だがスタイル抜群で非常に水着映えのする娘だ。


 それが波打ち際に立ったならどうだ!? 誌面を飾るグラビアアイドルも裸足で逃げ出す総天然色の健康的美少女が爆誕する!


「いいぞノエラ! 何がどうイイのか言葉にするのは難しいが、とてもイイ! 最高だ!!」


「えっへへぇ……そんなに褒められたら照れちゃうよー!」


 頬を赤らめてモジモジするノエラ……その仕草がまた非常にキュートだ。


 内股がわざとらしい? 上目遣いがあざとい? 上等ではないか! あざと可愛い、どんとこい! もっとやってくれ!!


「さて、痴女とムッツリスケベはほっといて調査を進めよう」


「同意。こちらでも異常を確認しています」


 オルフィアとサリエルが湖の中程を注視する。


「調べるべきは、あの辺りなのだが……調査を進めるにあたり、一手間が必要なようだ」


「敵性体の接近を検知。3、2、1――エンゲージ」


 サリエルのカウントダウンに合わせ、黒い影が湖面をうねる。


 そして水飛沫と共に姿を現したのは巨木のような太い胴をした、超巨大な電気ウナギだった。


「エレキ・リーチを確認。対処を開始」


「チッ、飛び道具持ちか。単なる大ウナギであればナイト・ザッパーのみで片付けられたものを」


 サリエルが上空へ舞い上がり、オルフィアが剣を抜く。そんな二人を威嚇するかのように電気ウナギが身をくねらせると、水面にバチバチと電気が走る。


 下手に近づけず攻めあぐねるオルフィアと、聖句の詠唱に入ったサリエル。そこへイチャコラ遊んでいた真田とノエラも慌てて駆け付けた。


「でかぁい! コイツを排除しないと調査は出来ない感じだな!? なら俺が重力制御でペチャンコにしてやる! ノエラ、電撃用の防御魔法くれ!」


「わかった! サンダー・プロテクション!」


 真田の体表が薄黄色の防御膜に包まれる。


「これで雷が落ちても平気だよー!」


「ナイスだノエラ! ちょっくら行ってくる!」


 真田がザブザブと水中へ泳ぎ入る。そんな彼に向け、大ウナギは電撃を放つが――。


「ふははっ! 全然平気!! ノエラの魔法、防御系だけは信頼に足る凄まじい性能だ!!」


 防御膜が電撃を弾き、真田としては珍しく余裕の笑みを浮かべる。


 その際、辺りの水が不自然に泡立ったのだが真田は気付かない。


「よし、今のうちに重力場でウナギを囲むぜ!」


 バチャバチャ泳ぎ、ウナギの周囲を回る。時空操作スキルの重力制御を発動するには、移動経路によって座標を指定する必要があるのだ。


 大ウナギは水面にもたげた首を巡らせて、泳ぐ真田を鬱陶しそうに見やる。そして再び身を震わせて――。


「ふはははっ! 無駄無駄ァ! お前の電撃なんざ冬場の静電気よりカスぃ――おぱァ!?」


 大ウナギから電撃が放たれた、次の瞬間。凄まじい爆発が湖を包んで真田を吹き飛ばす。


 強烈無比な圧力に水面がヘコみ、押し寄せる強大な衝撃波が瞬時に男の鼓膜を破って全身を砕き、内臓をシェイクして破壊する。


「な、何事だ!? 電気ウナギがどうして爆発を!? まさか爆破ウナギなの!?」


 オルフィアが驚きの声を上げる中、上空のサリエルが聖句の詠唱を終えた。


「よくも真田を! 邪なる存在を浄化せよ――ジャッジメント・レイ!!」


 瞬間、天空から光の柱が地上へと伸びる。神々しく清らかで力強いその光は、うねる大ウナギを包んで――。


「んぎょエえぇぇぇーーー……ッ!!」


 水面及び爆発によって舞い上がった水滴に乱反射。湖面を眩く美しい光の芸術で満たし、水面に浮かんでいた男を全方位から焼いた。


「あ、ススムが沈んでく」


 斯くして真田は黒焦げとなって女神空間送りとなった。




 そして女神様のお膝元。


「どうされたのです真田さん。やけに今回は積極的に前へ出てましたけど」


「ノエラの水着グラビアでテンション上がって、たまには女の子たちにイイ所を見せたくて、つい」


 欲望に素直な男だ。


「ってか、まだ向こうはウナギと戦闘中だから早く転送して!」


「まあ落ち着いて。今回の死因を紐解いてからにしないと戻ってもすぐに死んでしまいます。まずは爆発の方ですね」


 転送準備をしつつエントロピアが解説する。


「電気大ウナギの電撃によって水が電気分解されて水素と酸素が発生します。それが混ざり爆鳴気と呼ばれる非常に激しく爆発する混合気体が出来上がります。そこへ再度の電流で点火されて大爆発、という流れです。電撃は防いだのに残念でしたね」


「着火するトコまでセットとか、確実に殺しに来てるだろ異世界ファンタジア……!」


「次にサリエルさんの光線による被害ですが……これは説明不要ですね。極太ビームが水で乱反射して全方位から真田さんを灼き、止めを刺した……ミラーボールか万華鏡みたいにキラキラして、とてもキレイでしたよ」


 異世界転生して二十一回目の死因は、レーザーによる焼死と相成った。


「ではお急ぎでしょうし転送します。場所はフラノ湖ですね」


「うん、お願い。しかしオルフィアがやってる異常の調査って何なんだろ?」


「……!」


 直後、視界が暗転。


 ざぶん、とフラノ湖に水柱が立った。


「ぶはっ! なんで湖のド真ん中に転送すんの!? もうちょい戦闘に有利な位置取りさせてくれても良いんじゃね!?」


「さ、真田殿!? よく分からんが無事だったのか!」


 膝まで水に浸かって戦闘中であったらしいオルフィアが駆け寄ってきた。


「えっと始末書には真田4と記載して……」


「死んでなかった、でいいだろ! 電撃が来るぞ!」


 大ウナギが震え、電撃を発生させた! 狙いは湖岸のノエラらしく、彼女へ向けて激しい雷が水面をギザギザに走る。


「ススム、私なら平気! 電プロ(サンダー・プロテクション)してるから!」


 ならば安心、と真田が思った直後。


「あががががっ!?」


「んぎぎぎぎっ!?」


 電撃が真田とオルフィアの方へ急カーブ。二人に直撃した!


「な、何故……日頃の行いなのか……? だとしたら、どうして私に当る!?」


「日頃の行いだとしたらお前にしか当らねぇよ!! 原因は鎧だ! ここ淡水湖だから伝導性の高い金属鎧に電撃が引っ張られてるんだ!」


 とか言ってる間に電気ウナギが次の電撃を放つモーションに入った。


「大丈夫、ターゲットは上空のサリエル殿だ! 彼女にも電プロは掛かっている!」


「だから誰が目標でも電撃はこっちに来――ギャアァァッ!!」


「な、何故またこっちに電撃が……!? なんと奇っ怪!」


「そろそろ分かれ……! ってか、お……お前が真っ先に電プロ貰え……或いは、鎧を脱げ……!」


「なァっ!? こ、この非常時に脱げだと!? やはり貴様も女騎士のクッコロ狙いか! どいつもこいつも、私がそのようにチョロい女騎士だと思ったら大間違いだ! 男の前でホイホイ鎧を脱いだりはしない!!」


「台詞長くない!? 喋ってる間に攻撃……うぁまた電げキギエェェェッ!」


 その後も二発、三発と電撃を食らいまくったものの、辛うじて耐えきって水中から離脱。


 真田を効果範囲外に退避させた後、遠距離から魔法とナイト・ザッパーを叩き込み、電気大ウナギは極めて安全に処理された。

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