第四章:王都訪問編 31話:祭りの前(3)
何も言わずに一日遅れました。
すみませんでした。
では31話をどうぞ。
31話:祭りの前(3)
ギルドにある一室で五人の男女が一つの机に椅子を並べていた。
「ん、じゃあ、最後の一人もやって来たことだし打ち合わせを始めるよ~。まずは自己紹介、ダレンから左回りにね。」
カールした赤い髪の女性が真黒に日焼けした短髪に男を指して言った。
「おう、俺はダレンだ。これでもC1ランクの冒険者でCランクのチーム『狼月』のリーダーをやっている。チームは俺ともう一人の大剣使いだけだよろしく。俺の得物はバトルアックスだ。」
傷のある頬に人懐っこい笑みを浮かべて日焼けの男、ダレンはみんなに一礼した。
「じゃあ次は私ね。私はライラ。C1ランクで同じくCランクの三人チーム『妖精たちの花嫁』のリーダーをしているわ。私たち三人は位の高い精霊ではないけど全員精霊使いのチームよ。よろしく。」
フード付きローブを着た紫の髪の美女が妖艶に微笑んだ。
「わしはガナッシュ。ランクはB3だ。チームはランクCの『小騎士』で、現在はわしを含めて三人。剣が二人に槍が一人だ。よろしく。」
白髪の老騎士が真面目な表情のまま端的に言う。
そして三人の目は最後の一人、この街に有る学院の制服を着る青年に向かった。
「えっと、最後になったが俺はC3ランクの冒険者智春だ。チームはEランク、名前はまだない。構成は俺を入れて5人内二人が上位の精霊で俺と契約している。残り二人は一人がヒーラー、もう一人が後方支援だ。俺は・・・戦士かな?よろしく。」
智春が自己紹介を終え着席する。
「残りのは私とバローナちゃんの二人、全員合わせて十五人になるわ。多少の増員はあったけどこの人選は私と侯爵の二人で話し合った結果よ。それにしても流石はCランクのチームを率いているだけあって騒がないね。」
赤い髪の女性、ビビアは自分に視線を集める面々を見て笑う。
すると、みんなを代表してダレンが言葉を返した。
「そりゃあ、騒がなくても後からちゃんと説明してくれんだろ。なら騒ぐ必要なんてねえし、それにここにいるってことはランク関係なしに実力があるってことだろ?そんならチームランクがEだろうがFだろうがかんけいねぇよ。」
豪快にそう言い切る彼の耳に「Fランクは無いぞ。」というガナッシュの突っ込みは入ってこなかった。
「うんうん、いいよその合理的な考え!やっぱり私が選んだだけあるな~」
嬉しそうに頷きながら無い胸を張るビビアはダレンの「結局自画自賛かよ。」というつぶやきをすっぱり聞き流して表情を改めた。
「うん、じゃあまずトモハル君の説明からね。彼はまあ色々あって依頼主である侯爵直々のご使命だよ。まあ実力は問題なし。彼は一人で『ドラゴン』倒せるし、精霊の二人はもちろん残りの二人も実力はCランクだって学院に偵察に行ってもらった私の『器官』が言ってたよ。」
「そうか、なら問題なさそうだな。」
「うむ」
「そうね」
「いやいや、ちょっと待てその『みみ』ってのは何なんだ?まさか学院の中にあんたの諜報員が潜んでるのかよ?」
智春は聞き逃せない言葉に思わず言葉を上げる。
「ん?そっかトモハル君は知らないんだったね~。私はギルドマスターとして多忙だからちょっとした召使みたいなのを持ってるのよ。でー、その人たちの総称が『器官』て言って、今回はその諜報担当の『耳』に行ってもらったのよ~。あ、ちゃんと学院の許可のもと入ってるからご心配なく。」
「そ、そうか・・・・」
その言葉に安堵と不安の両方を感じる智春だったが、そんなことは関係なく打ち合わせは進行された。
「よーし、じゃあ自己紹介も終わったことだし、簡単に今回の仕事の内容を話しちゃおうか。まず、十人は会場の観客に紛れて警備をする役、そして二人はアウガス侯爵のそばで衛兵と侯爵の私兵と共に直接警護する役。あ、この役職は私とトモハル君に決まってるから。トモハル君反論はなしね。」
「はぁ、分かったよ。」
「よし、で、最後の三人には会場になる広場の周りの高い建物のの二階屋屋根の上から会場内の監視をする役よ。まあ役職決めは次の全員が集まれる時の打ち合わせでその個人の実力や能力に合わせて割り振るからよろしく。で、今日の本題は、さっきの自己紹介が一つ、もう一つが次の打ち合わせの日にち決めなんだけど、いつがいい?」
ビビアが尋ねるように見回すと、今までの話を腕を組んで難しそうな顔をしていたガナッシュが口を開いた。
「学院生がいるんだ。光か影の日がよかろう。わしたちもその方が予定がいいしな。」
「うーん、確かにね~。他に意見はある?」
「私たちはいつでもいいわよ。今は依頼受けてないから話し合いに予定を合わせられるもの。」
「俺もだな。今受けてるクエストも明日には終わるからな。」
「俺も特に他に意見は無い。ガナッシュさん考慮ありがとうございます。」
三者否定の意見は出ず、智春の礼にガナッシュは頷きを返した。
「う~ん、それじゃあ次の打ち合わせは今週の光の日に決定。頂光の刻までにギルドに集合ね~、いい?」
「おう」
「ええ」
「うむ」
「ああ」
「よーし、じゃあ今日はかいさ~ん。」
ビビアの号令で皆席を立ち、扉に向かった。
「あ!トモハル君ちょっと待って。伝言を預かってるんだった。」
「ん?誰からだ?」
ビビアに呼び止められ智春は首を傾げながら戻ってくる。
「ふっふっふ、心当たりはな~い?」
「う~ん・・・・あっ!あった。でっかいのが。ブリジッドからか?」
「正解。なら内容も分かるわよね?」
「あ、ああ。」
忙しかったとはいえすっかり忘れてしまっていた智春はばつの悪そうに頭をかく。
「そう、じゃあそれに加えて、『延滞料を取るから伝えた金額よりうんと多い額を持ってくること。』だって~。あっはっは、災難だね~」
「はあ、分かった。今から行くから口座から降ろせるか?」
「ん?あそこはギルドと直接契約結んでるからカード払いできるよ。
「え?ならなんでブリジッドは多い額を持ってこいなんて言ったんだ?」
智春は伝言の矛盾に首を傾げる。
「ん~、あの子なりのジョークを言ったんじゃないの?」
「じょ、ジョークか・・・・はあ、まあいいじゃあ伝言ありがとな。」
「ふふふ、ブリジッドちゃんによろしくね。」
楽しそうな笑みのビビアに送られ、智春は鍛冶屋を目指すのだった。
♢
とある王城の一室に五人の男女がいた。
「テレジア、ミレーユ、王城の留守は任せたよ。」
「はい、お父様。」
「ええ、あなた。あなたも馬車での長旅お気を付けて行ってくださいませ。マリア、お父様を困らせるようなことを言ってはなりませんよ。向こうでの学院体験で我がまま言って他の人やリリオに迷惑を掛けないようになさよ。」
「はい、母上。分かっているのじゃ。」
マリア姫の返答に皇妃テレジアはため息を漏らした。
「リリオ、この娘を頼みますよ。」
「はい、皇妃様。お任せください。」
「むう~、リリオに任せなくてもちゃんと大人しくするのじゃ。」
母の言葉にむくれるマリアに父が優しく声をかけた。
「マリア、母さんはお前が心配なんだよ。そうむくれるな。テレジア、この娘はモーガンやミレーユよりは少し元気だが同じくらい聡い子だ。安心していいんだよ。」
「あなた、ですが」
「失礼します。馬車の準備が整いました。」
テレジアが何かを言い返そうとしたときに重なってメイドが皇帝たちを呼びに来た。
「テレジア、すまない時間だ。ミレーユ母さんを任せたよ。」
「はい、お父様。」
テレジアの頬にキスをし、ミレーユの頭を撫でてから皇帝、マルクス=A=A=ハンガリアは部屋を出た。
マリアとリリオもそれに続き二人に出立の挨拶をして部屋をだて行くのだった。
♢
「すまん!来るのがかなり遅くなってしまった。」
鍛冶屋に着いてすぐ、出迎えてくれたブリジットに対して智春は頭を下げる。
親方はいつものごとくまだ工房から出て来ていない。
「頭を上げてくださいトモハルさん。ビビア姉さんからトモハルさんが色々あって忙しかったのをきいていますから、師匠なんてトモハルさんの『カタナ』に刺激されて新しい武器をいっぱい作っちゃったくらいですから。私にも一本打たせてくれたんですよ!」
ブリジットは姉妹共通の赤い髪を揺らしながら楽しげに話す。
「そ、そうか・・・それならよかったんだが・・・」
「おう、やっと引き取りに来たか。これがあると創作意欲が湧きすぎてなかなか店に出られなかったんだ。」
智春がまだ申し訳なさそうにつぶやいていると奥の工房から『土魔族』の店主が出てくる。
「それはいつもの事じゃないですか師匠。」
「あっはっは、そうだったか!っと、トモハル、この刀の代金なんだが打ち直しに『魔連銀』を使ったから少し高くつくぞ。」
「ああ、それは覚悟できてる。ギルドカードで直接支払ができるんだったな?」
「ええ、できますよ。代金は100万ピクルです。」
「じゃあ頼む。」
智春はそう言って青色のギルドカードをブリジットに渡した。
ブリジットは何か四角い物体にカードを差し込むとすぐに返した。
「はい、終わりました。あのトモハルさん提案なんですが、私の力作買ってくれませんか?」
ブリジットは智春に黒い刀袋に入った『雲雀』を渡しながら提案する。
「ん?別にいいけどどんな武器だ?」
「えっと、トモハルさんのそのカタナをモデルに狭い場所でも振り回せるように短く作ってみたんです。」
ブリジットはそう言いながらカウンターの下から一振りに刀を取り出す。
そのカタナは新緑色の柄と鞘に黒い金属の鍔で色以外の見た目は『雲雀』にそっくりだが大きさがちょうど脇差くらいの大きさであった。
「おお、ちょっと抜いてみてもいいか?」
「はい」
智春は手に取った脇差を見て、ブリジットに確認を取ってから鞘から引き抜く。
シャン
透き通った音を立てながら姿を現した刀身は桜色をしており、刃に歪みもなく綺麗な形で芸術品として価値が出るほどの出来栄えだった。
「これはまた美人な刀だな。」
「あ、ありがとうございます。」
智春の素直な感想にブリジットははにかみながら返す。
「よし、これは喜んで買わせてもらうよ。いくらだ?」
「ありがとうございます。これはまだ修行途中の私の作品なので5万ピクルです。」
「ああ、じゃあカードで頼む。」
「かしこまりました。」
ブリジットは喜色満面の笑みでカードを受け取る。
「はっはっは、どうだ?弟子よ。自分の作品が買ってもらえる感覚は?最高だろ?」
「はい!まるで自分の子ども立派になって旅立っていくような嬉しさと寂しさがあります。」
「はっはっは、そうだろそうだろ!」
鍛冶師の師弟は上機嫌である。
「なあ、そう言えばこの刀身が赤いけど何の金属を使ってるんだ?」
「はい、それは『花鉄』と呼ばれる金属でいろんな色があるんですけど、その色に合わせた魔力に親和性を持つと言われていてその金属は『火』に親和性のある鍛冶見習いに必須な金属なんです。」
「ふーん、そんな金属もあるのか・・・そう言えばこいつの名前は?」
「へ?・・・・な、名前ですか?」
智春の言葉にブリジットが固まる。
「そうだな、確かにその刀はなかなかの出来栄えだ、それにお前の初めての完成品だ。名前を付けて見てもいいかもしれんな。」
「そ、そうですか・・・・・と、トモハルさん、何かいい案はありませんか?」
「はっはっは、のっけから人頼みとはなさけねぇな弟子よ。」
「し、仕方ないじゃないですか!初めてなんですしそんな急に言われても・・・」
「まあ、これはブリジットの作品なんだし、俺の意見は参考までにしてくれ。」
智春はワタワタと焦っているブリジットにそう前置きしてから言う。
「俺はこの刀身を見た時、最初に俺の故郷の『桜』っていう花を思い浮かべた。そして刀全体を見て『桜の木』や柄や鞘の色から『桜の葉っぱ』を連想したな。」
「『桜』ですか・・・『ソメーノ』みたいな花でしょうか・・・そうですね『桜』『葉っぱ』、桜葉っぱ桜葉っぱ桜葉っぱ桜葉桜葉桜葉桜!思いつきました。『葉桜』っていうのはどうでしょう?」
ブリジットは我が意を得たりといった表情で聞いてきた。
「ああ、ブリジットがそれがいいと思うなら俺はいいと思うぞ。」
「そうですか、ではこの子は『葉桜』です。」
「『葉桜』かいい名前だな。どれトモハル、ちょいっとそれを貸してみろ。」
智春から『葉桜』を受け取ると、店主はポケットから『柄付き針』のような道具を取り出しその持ち手にあるボタンを押した。
すると、針の部分が加熱され、その針を使って葉桜の刀身に何かを書き込む。
「ほらよ、できた。」
店主から返され、刀身を見るとそこにはこの世界の文字でこそあったが『葉桜』と刻んであった。
「これは鉄製の物に文字を刻み込む魔法具なんだ。鍛冶師はこうやって名前を書き込むんだ。まあ、場所はまちまちだが、これはお前の爺さんが何か彫ってたところに合わせてみ。」
「そうか・・・ありがとな。」
「っは、礼はいらねぇよ。それは俺の一番弟子の作品だからな大事に使えよ。」
「ああ、もちろんだ。今日はありがとな。」
「いいえ、こちらこそありがとうございました。また何か御有用の際はいらしてくださいね。」
「ああ、またな。」
そう言うと智春は鍛冶屋を出た。
帰り道、ギルドの口座の残り残金を計算して智春が重大な事に気付き悲鳴をあげたのはまた別の話である。
このお話を読んでいただきありがとうございます。
次回から作者の私的理由で投稿を木曜か金曜のどちらかに変更することにしました。
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