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第四章:王都訪問編  30話:祭りの前(2)

今回は急に投稿日を変更してすみませんでした。

30話どうぞ。

30話:祭りの前(2)


「はあ、災難だ・・・創立式典の警備があるのに問答無用で一部とはいえリーダーをやらないといけないなんて・・・・」

「はっはっは、それは災難だったな。だが、どちらも手を抜くなよ。もし、お前のせいでクラスが優勝を逃すようなことがあれば分かっているだろうな?」

ぼやきながら歩く智春にその半歩前を歩いていたバスラが釘をさす。

「はあ、笑いごとじゃないですよ。でもまた話し合いを抜けてしまったからまた何か面倒事を押し付けられるかも・・・・」

「しょうがないじゃないか、お前の受けた依頼の打ち合わせなんだ。」

そう、今智春が智春ともはるがクラスの話し合いを抜け出してバスラと廊下を歩いているのは、決してサボタージュを決め込んでいるわけでは無く、『アウガスから受けた依頼に参加する冒険者が決まったので今日顔合わせをしたい。』という旨の使者がビビアから来たため、急きょ話し合い中の智春をバスラが呼びに来たのであった。

「まあ、なんだ、今回は私の方からアリエルたちに減刑を頼んでやろうじゃないか。」

「げ、減刑って・・・まるで犯罪じゃないですか・・・・」

「ん?なんだ?私がせっかく優しい心を出してやったのにいらんというのか、ならいい私はかばってやらんぞ。」

「あー、すみません、すみません。お願いします、どうかこれ以上の負担は流石にきついです。」

拗ねたように言うバスラに智春は慌てて謝った。

「ふん、最初から素直にそう言えばいいものを。」

そんな事を話しているうちに智春たちは正面門に着いた。

門にはギルドの制服を着た『犬人族けんじんぞく』の青年が待っていた。

「トモハル=アオヤマ様、お待ちしておりました。他のメンバーはほとんどそろっています。お急ぎください。学院の職員の方ですね。お手数をおかけしました。」

犬人族の青年は智春に呼びかけた後、バスラに丁寧に頭を下げた。

バスラはそれに礼を返し、簡単に挨拶を終えると学院の建物の方に帰って行った。

「では、アオヤマ様、行きましょう。」

「ちょっと待ってくれ。他の仲間たちが来ていないんだが。」

出発を促す青年に智春は待ったをかける。

「はい、今回は依頼に参加するグループのリーダーのみでの会議になっておりますので、詳しくはギルドでギルドマスターから説明があるでしょう。」

「そう言う事か。なら了解だ。行こう。」

そう言って智春たちはギルドの方向へと駆けていくのだった。





一方、智春の抜けた教室では一人抜けたことなどお構いなしにいろいろなことを話し合っていた。

「じゃあ、屋台の方はリーダーが逃げたから先に教室での出店を考えるよ。まず、何か考えがある人挙手!」

アリエルの呼びかけに眼鏡をかけた小太りの『洞窟魔族ダークエルフ』の少年が挙手する。

「ふっふっふ、吾輩の情報網を駆使した調査の結果、現在、『花冠ブルーム』の教室が並ぶこのフロアの中に休憩ができる出店で意見がまとまっている教室は一つもない。そこでだ、吾輩の提案は他の出店で疲れた客が休憩に足を運べる出店、そう『美少女喫茶』を出店することを提案する。」

芝居がかった話し方で堂々と宣言する。

すると、クラスの主に男子生徒から賛成の歓声が上がる。

「はーい、ストーップ。ちょっと落ち着いて頂戴。盛り上がっていること悪いんだけど、その出店、喫茶店をするのが『美少女』である理由、教えてもらえるかしら?」

アリエルの質問にダークエルフの少年は眼鏡のアームをくいっと上げ、眼鏡をキランと光らせながら自信満々に応える。

「それはズバリ、『癒し』ですな。アリエル殿、思い浮かべてくれ、蒸し暑い祭りの熱気、酔ってしまいそうになる人ごみ、連日の祭りで歩き疲れた足、軽くなり紐がしめなおされそうな財布、そんな絶望的な状況の中に笑顔あふれる見目麗しい『美少女』たちが給仕をしてくれる喫茶店があったらそれはまさに、砂漠の中にポツンと存在するオアシスも同然、男女関係なしにその喫茶店に『癒し』を求めて集まってくるのだ。どうだ?納得していただけたかな?」

その自信満々の説明を聞いた後もまだ釈然としない表情の生徒が数人いた。

「うーん、そんなにうまくいくかしら・・・・」

「ふむ、この説明を聞いてまだ納得してくれないとは・・・・これをしたら男はイチコロなのに・・・」

「・・・やる!・・・」

ダークエルフの少年が最後にポツリと残した言葉がその大きな耳に入った瞬間、絶賛恋する乙女のエリーゼがものすごい反応を見せた。

「え、エリーちゃん?・・・」

「アリエル・・・やろう・・・」

「いやいやいや、さ、流石にみんなの意見を聞かないわけには・・・・」

エリーゼの迫力に押され気味のアリエルだったが、そこはクラスをまとめる役職としての自覚を持ち周囲の意見を求める。

「男の子がイチコロ・・・・」

「わ、私も頑張ればきっと彼に・・・」

しかし、クラスの意見はもう固まりつつあるようだった。

「そ、そんな・・・みんなが煩悩に負けてる・・・・」

「アリエル・・・恋する乙女は盲目・・・」

「いや、それはに気付いてる時点で盲目なのは故意でしょう。」

アリエルが力なく突っ込む中、クラス出店は『美少女喫茶』に決定したのだった。

「じゃあ、クラス出店の方のリーダー決めちゃおうか・・・誰がする?」

沈み込んだアリエルの代わりに同じく実行委員のエドワードが話し合いを仕切る。

エドワードの呼びかけに対して一本の手が上がった。

「・・・私・・やる・・」

「え、エリーちゃん!?」

「トモハルが露店のリーダー・・・私がクラス出店のリーダー・・・・おそろい。」

小さな声で呟きながら頬を染めるエリーゼを見てアリエルは『これはもうダメだ。』と頭を抱える。

「えっと、他にもう立候補者がいないならテレキウスさんに任せるけど、皆それでいいですか?」

エドワードがクラスに呼びかけるが反対の意見は上がらなかった。

「では、クラス出店のリーダーはテレキウスさんに任せます。では、引き続き喫茶店のメニューを考えましょう。」

エドワードの呼びかけで話し合いは続く。

「まず、私の意見としては出店が二つもあるので双方に負担を掛けないように、喫茶店では飲物と簡単な軽食、スイーツの販売に専念し、調理の負担を減らすのが妥当かと思います。それを踏まえて意見のある人は挙手をお願いします。」

呼びかけに答えて複数人が挙手をしたので、エドワードはまず、リーダーであるエリーゼを指名した。

「・・・私もエドワードの意見には賛成・・・ただ何か喫茶店の『目玉』になる商品が欲しい・・・」

「そうですね・・・・それについても皆に意見を求めましょう。」

次に指名されたのは赤髪の孤人族こじんぞくの少女だった。

「うちは目玉商品にするんやったら『デフトチェリー』を使ったもんが一番やと思います。なんせ『デフトチェリー』はこの『ダラベスト北方の森』でしか取れんし、しかもうちのおとんの商会でも滅多に扱わんようなもんやで、これ使わんで何使う言うんや。」

「ですが、ホルドアさん。『デフトチェリー』は貴女が今言ったようにこのダラベストでも滅多に手にはいらないんですよ。どうやってそれを調達するんですか?」

エドワードの問いに孤人族の少女、ガネット=ホルドアは待ってましたとばかりに答える。

「エブリはん、どうして『デフトチェリー』が滅多に採れひんのか知ってるか?」

ガネットの質問にエドワードは首を横に振る。

「実は『デフトチェリー』って言うんは、その名の通りめっちゃ高速で森ん中を動き回っとる魔獣なんや。『魔獣植物』って言ってな、本体は一本の木なんやけどその木からは生き物を引き付ける香りが出ていて、それに惹かれてふらふら近寄って来た生き物を一般に『デフトチェリー』で知られとる直径30セルくらいの球でぶん殴って殺すんや。その遺骸の栄養を地面から吸うっちゅうのが『デフトチェリー』の生態や。やから、木の周りには凶暴な生き物、木に近づけば木に襲われるっちゅうわけで普通のもんではなかなか手に入らん。冒険者に依頼したくても『デフトチェリー』を取れるくらいのもんやったら『ダンジョン』に潜った方が儲けられるってことで採りに行ってくれる冒険者も居らん。これが『デフトチェリー』が貴重な理由や。」

ガネットの語りを聞いてエドワードはさらに困惑した表情を浮かべる。

「それならさらに『デフトチェリー』の調達は難しではないですか。ホルドアさんは露店の時も『デフトチェリー』を推していましたけど何かあてでもあるんですか?」

「あるかゆうたらあるわ、『デフトチェリー』の想定捕獲ランクはC1以上、冒険者ギルドでは『ダンジョン』への探査許可が下りるランクの冒険者や。今この街にC1ランクの冒険者はおらへん。これはうちがよう調べとるさかい確実や。ただ、知り合いにやったらランクは足りひんけど腕は十分のがおるで。」

「それでですか、その人は貴女が頼めば『デフトチェリー』捕獲の依頼を受けてくれるんですか?」

エドワードは一応納得はしたようでガネットに確認を取る。

「なんもうちが頼まんでもこうゆうたらええねん『あんさん抜きで話し合いすすめったったさかい、あんさんはその分体で返し。』ってな。」

「へ?どういうことですか?」

エドワードを始めほとんどのクラスメイトは頭にクエッションマークを浮かべる。

「なるほど、ホルドア氏、なかなかの提案だ。」

「そやろそやろ、まあほとんどのもんは彼の実力を知らんやろうからピンとこんのやろうけど、今唯一この話し合いに参加しとらん彼や。」

「ん?アオヤマ君のことですか?彼は確かに全属性持ちの天才ですが、ただ属性が多いからって強いとは限りませんよ?」

サバラダとガネットの言葉から導いた答えにエドワードは懐疑的な視線をガネットに向けるが、戦闘科に所属する生徒は納得したように頷いた。

「エブリ氏、心配無用だ。奴の強さはとんでもないからな。なにせ魔法を一切使わずに建物の屋根を飛び移って移動するやつなんだぞ。」

「へ?や、屋根を・・・・」

サバラダの言葉に戦闘科以外のメンツの空気が凍り、エリーゼはなぜか誇らしげに胸を張る。

「なんや、そんなとんでもないこともしっとったんかい。まあ、でも納得やな。なにせ彼は史上初の冒険者登録を済ませてからたったの5日でC3ランクの冒険者になったようなやつやで。それに『亜竜』も一人でヤッとる。どうや?何の問題もない人材選択やろ?」

「「「「・・・・・・」」」」

智春のこれまでの経歴に戦闘科に生徒までが空気を凍らせる。

しかし、やはりエリーゼだけは誇らしげに胸を張っているのだった。










ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

進異世界は30話に到達しました。

皆様の応援のおかげです。

これからも智春たちの活躍をご期待ください。


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