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第四章:王都訪問編  29話:祭りの前(1)

ね、眠い


29話どうぞ

29話:祭りの前(1)



『私はトモハルの全てを受け入れる覚悟がある・・・今更そんな些細な事関係ないわ・・』

珍しく饒舌じょうぜつな彼女の言葉が心に響き、安堵感と喜びを感じさせる。

まっすぐ伸びた純白のうさ耳が揺れ、その金色の瞳が智春ともはるを強く射抜いていた。


パンッ


朝の暖かな光の中、その光景に似つかわしくない破裂音が教室に鳴り響いた。

「おーい、アオヤマ、二週間ぶりに朝礼に出て来て早々現実の世界とおさらばとは、なかなかに崇高な事を考えていたんだろうな?え?」

智春は額に走る激痛といら立ちを隠しきれないバスラの声によって意識を現実に引き戻された。

「あー、いえ、この二週間少々夜型の生活をしておりまして・・・はい、すみませんでした。」

額と机に残るチョークの飛沫を払いながら言い訳をする智春だったが、バスラの一にらみにより素直に謝罪した。

「はあ、たく、貴様は罰則として二週間謹慎していたのだろうが・・・ああ、もういい。みんな、話を戻すぞ。」

なんともマイペースな智春にバスラは頭を抱えるが、諦めたように話を戻す。

「今月は毎年恒例だが、月半ばにある『ダラベスト創立式典』に合わせる形で二日後に『魔活祭まかつさい』が開催される。『魔活祭』のこのクラスの実行委員は以前決まった通り、女子はアリエル=ヴァレリ、男子はエドワード=エブリに任せる。ここまでは昨日まで居なかった誰かさん(・・・・)のために話したが、今日の本題はここからだ。昨日の職員会議で、我がクラスは、正面門脇のでの活動権を手に入れた。」

「よっしゃああぁぁーーーー!!」

「やったわね!」

バスラの報告を聞くや否や、クラスに喜びの歓声が響き渡った。

しかし、智春は周りが喜んでいる理由がよくわからず、一人取り残された感じになってしまった。

「あっと、そこの手の妬けるバカへの説明はテレキウス、任せるぞ。」

「・・・はい・・・」

「よし、じゃあ今日の朝礼は以上だ。今日も皆勉学に励めよ。解散。」

バスラは呼びかけにエリーゼが頷くのを確認すると、手早く朝礼を終わらせ教室を出て行った。

「・・・トモハル・・・移動しながら『魔活祭』の説明をする・・いい?」

「ああ、頼む。」

首を傾げるエリーゼに智春は謝意を伝えると二人で『雷』の魔法の授業に向かった。


『魔活祭』とは、

この『ダラベスト魔法学院』で年に二回行われるクラス対抗で魔法競技と露店による売り上げで競う大会であり、地球で言う体育祭と文化祭を合体させたようなものである。

この大会は秋終わりと夏始めに開催されている。

また、こちらの世界では学校は秋に始まるので、智春たち編入組以外の生徒は一度体験済みなのである。

秋の開催は新しい仲間と絆を深めるため、夏の開催は学院全生徒で切磋琢磨し残りの半年を有意義にするためだというのがこの開催時期が決定した理由である。

閑話休題


エリーゼから説明を聞いて納得の表情を浮かべた智春は、まだ生徒の疎らな教室の中で話を続ける。

「なるほど、正面門脇での活動の権利っていうのはその露店とかの営業場所の権利ってことか。」

「ん・・・そう・・正面門は来客が一番多い・・・だからとっても人気の場所・」

「そうか、じゃあ本当に今回はラッキーだったんだな。で、俺たちのクラスはどんな店をするんだ?」

「それは検討中・・・候補は『コカトリスの炭火焼屋』・・・あと、『デフトチェリー』を目玉とした『果汁100%ジュース屋』・・・」

智春はまだ簡単な構想くらいだろうと踏んで尋ねたのだが、その予想を裏切ってエリーゼから聞けたのは具体案だった。

「け、結構話が進んでるんだな・・・俺いなかったのに・・・」

「ん・・・みんな張り切ってるから・・・特にアリエルが・・・」

エリーゼは落ち込む智春を何とか慰めようと考えるが、結局思いつかず事実を述べるだけに終わる。

「はあ、まあこれから頑張ればいいか・・・」

「ん・・・私も頑張る・・」

何とか気持ちを持ち直した智春は入って来た教師の姿に姿勢を正し、教科書を取りだすのだった。





とある場所で主人のあまりの暴挙に悲鳴をあげるメイドがいた。

「マリア様!ですからお荷物はもっと少なくしてくださいと、」

「なんじゃ!これもまだ駄目なのか?」

「はい、それでは長旅のお邪魔になりますゆえ・・」

「うーむ、じゃが、これは妾が必要だと考える最小限のものからさらに三度の検討を経てたどり着いた荷物じゃ。これ以上はリリオの言葉といえども減らすことはできん。どうするとよいのじゃ。」

主人である少女、マリアは困ったようでありながらどこか威張った様子で言う。

それをメイド、リリオが涙目で返す。

「ですから!旅支度は我々メイドに任せて、マリア様はお勉強をなさってくださいと何度も申し上げたではありませんか!」

「むー、勉強は嫌じゃ・・・それに皆いろいろな準備で忙しいではないか。父上は数日空ける分の公務に加え、次々に増えていく新しい案件で忙しく手を離せない、メイド隊は旅支度だけでなく日ごろの仕事や旅に随行する者の担当の仕事の引継ぎの最終確認、姉上も母上も自分の仕事で他に回す手はない、では誰が妾の旅支度をするのじゃ?妾じゃろ!」

マリアは長々と自分が旅支度をする理由を話す。

「あぁぁぁぁぁ、もう、マリア姫殿下(・・・)!勉強をしたくない言い訳は後にしてください。それに私はマリア姫殿下お付きのメイドなのですよ。旅支度は私の仕事です。あんまりしつこいと皇帝陛下に進言してマリア姫殿下の『ダラベスト』訪問をなしにしていただきますよ?陛下のお手を煩わすつもりですか?」

「むぅ、リリオが言わなければ済むではないか・・・」

「マリア姫殿下?」

まだ食い下がろうとするマリアにリリオは威圧感満載に呼びかける。

「わ、分かったのじゃ。ちゃんと勉強する、じゃから姫殿下はやめたもう。リリオからはそう呼ばれたくないのじゃ。」

「はい、マリア様。ではお勉強部屋へお行きください。」

「はい、なのじゃ・・・」

トボトボ歩くマリアの後ろでリリオは少し嬉しそうに微笑んだ。

マリアの前では厳しくああ言ったが、幼少の頃からマリアのお付きのメイドだったリリオにはマリアの言葉はサボりの口実だけではなく、本当にみんなの負担を軽くしたいという優しい心が隠れていたのが分かっていたのだ。

「では、マリア様の準備を始めますか!」

マリアが出ていき、一人になったその部屋にリリオの気合の入った声が響く。

心優しい主人のために、リリオは今日も王城の一角で悲鳴と共に頑張っていた。





放課後、研究室に籠ろうとした智春はエリーゼによって教室に連行された。

「はあ、今から『魔活祭まかつさい』の話し合いするのか?」

「ん・・・トモハルが謹慎中だった時遅くなってたのもこのせい・・・」

智春の問いにエリーゼは一つ頷きで返す。

「はあ、これは『魔活祭』が終わるまでは研究が進みそうにないな・・・」

「おっそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」

「のわ!」

「!」

智春が愚痴りながら教室のドアを開けると、教壇に立っていたアリエルが怒りあらわに叫んだ。

教室の中にはすでに彼ら二人以外の生徒が集まっていた。

「もう、遅いわよトモハル君!」

「まあまあ、落ち着きなよヴァレリさん。アオヤマ君、テレキウスさん早く席について。」

プリプリ怒っているアリエルをなだめながらエドワードは智春たちに着席を促した。

二人が席に着くとまだ怒っていますよという顔をしたアリエルが話し合いを始めた。

「じゃあ、二週間もいなかった人もやって来たことだしさっさと始めるわよ。まず、今まで話し合ったことは全部エリーちゃんに聞いたわよね?トモハル君?」

「へ?エリーちゃん?」

「・・わたし・・・アリエルその名前はよして・・・いっつも言ってる・・」

首を傾げる智春の横でエリーゼが顔を赤く染めながら抗議する。

「ん?それ却下、で、トモハル君、聞いたの?聞いてないの?」

「ああ、聞いたよ。」

「そう、じゃあ前回の続きから始めるわよ。」

エリーゼの抗議などものともせず、アリエルは話し合いを進める。

「前回言ってた『露店の場所がいいところ取れても教室出店するのか』って議題、私たち実行委員の間では『今回はいい場所が取れたけど、どうせなら優勝目指そう』ってことで、クラスを二分してやろうって意見になったわ。多数決を取りたいのだけれど、賛成は挙手をお願い。」

アリエルの号令でクラスの全員の手が上がる。

「うーん、満場一致か・・・じゃあとりあえず決定とするけど賛成でも理由が聞きたいわね・・・トモハル君、理由は?」

「っな、俺かよ。」

完全不意打ちで智春に白羽の矢が立つ。

さっきの怒りはまだ治まっていないようだ。

「はあ、俺はこれが初めての『魔活祭』だからどれだけ大変とかは全然わかんないんだけど、まあ、やるからには優勝したいからな。」

「よし、よく言った。じゃあ、その意気込みのあるトモハル君が屋台の方のリーダーね。」

「なっ!!そんなの勝手に決めていいのか!?」

とんとん拍子で決められ、智春は慌てふためく。

「ん?だれか反対のひとー、挙手。」

見事智春以外誰一人として手をあげる者はいなかった。

「あ、あれ、みんないいのか?」

クラスを見回すが誰も味方はいない。

「え、エリーゼ!」

「・・・ごめん・・頑張って!・・」

気まずそうに視線をそらすエリーゼ。

その視線の先に居たのはアリエルだった。

「ふっふっふ、エリーちゃんは買収済み。」

愉快そうに笑うアリエルに智春ははめられたことに気付いた。

「よーし、じゃあ、露店側のリーダーが決まったことだし、みんなの割り振りと教室側のリーダーをきめよう!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「ん?それ却下!よぉし、みんな話し合いを始めよう!」

すげなく却下される智春の抗議は悲しく教室に響いたとさ。










どうも、このお話を読んでいただきありがとうございます。

四章に入りました。

この章ではみんなドタバタします。

みんなの関係が進展するかも・・・


応援してくださっている皆さん、ありがとうございます。

感想はどんなものでも構いません。

お待ちしております。

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