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第三章:学院編  28話:とある主人公の引きこもり生活(結果)

遅くなりました


28話をどうぞ

28話:とある主人公の引きこもり生活(結果)


あくる日、智春ともはるたちはラベスト侯爵家の屋敷で朝食をとるとすぐに馬車に乗って学院への帰路に着いた。

「にしても、なんかこんなにもらっちゃって悪い気がするな。」

「気にしないでいーのよー、それには今回の盗賊団討伐の報酬も入っているんだしー」

智春が手に持った物を見ながらつぶやくと、朝に弱いビビアが気の抜けた声で返す。

「でもな、これ『魔錬銀ミスリル』でできてるんだろ、結構するんじゃないか?」

「いーのよ、それが信頼の証だから身分の証明として使えるのよー」

「そう言うものなのか・・・・」

智春はそう言うとまた、手に持ったそれを見つめていた。

それは『魔錬銀ミスリル』製のプレートで、表には横向きの船とそれに乗った鳥の絵が彫ってあり、裏にはアウガス侯爵の名前とこれを持っている者の身分を保証する旨、そして最後に智春の名前が彫ってある。

このプレートは王都にある帝国鍛冶協会でのみ作成が可能で、侯爵家と公爵家の者のみが発行することを皇帝より許可されている正式な身分証明書で、表には発行者の家紋つまり今回はラベスト侯爵家の家紋が刻んであるのだ。

どういう経緯で智春がこれを手に入れたかというと、今朝、智春たちが出発前の最後のあいさつとして最初に会った応接室に行ったところ、アウガスから今回の盗賊団討伐の報酬と共にダラス家に打撃を与えられたことへの謝礼としてこのプレートの他に金貨十枚とアウガスの権力の及ぶ限りの魔法技術についての資料を閲覧する権利をもらったのだ。


「まー、もらっちゃった者は今更返せないんだしー、有効利用しなよー」

「有効利用ね・・・・」

「そうそう、有効利用、って、まあ今そんなことを考えても仕方ないんだし、それよりこの娘達に例の依頼の件を話さなくていいの?」

報酬の有効利用について真面目に考え込もうとしていた智春をビビアが促す。

「ん?何なのトモハル、例の依頼って!私たちに内緒でどんな話をしてきたのよ!」

ビビアの言葉を聞きつけたセリアが智春の右腕に抱き着いたまま攻めるように問う。

反対側のレイラも向かいのメイアも目で説明を要求する。

「あっと・・・えっと・・その・実は昨日アウガス侯爵から重要な依頼を頼まれて引き受けて来たんだけど、エリーゼも関わる俺たちのパーティーとしての初依頼になる。だから、全員一緒の時でさらに機密性が高い依頼だから絶対に他人の耳の無いところで話したい、だから依頼内容については学院に着いて、あと、エリーゼやパーティーのギルド登録を済ませてからじゃダメか?」

智春が尋ねると三人は『しょうがないなぁ』という表情を浮かべた。

「まあ、トモハルさんが私たちに内緒でそんなに悪い話を決めてくるとは思いませんし、私は別にいいですよ。」

「まあそうね。私もよ。」

「ああ、私も。」

「そうか、ごめんなみんな。とりあえず帰ったらすぐ放課後にでもエリーゼを連れて冒険者ギルドに行こう。」

嬉しそうに言う智春だったが、そこにセリアが水を差す。

「ねえ、トモハル。貴方、学院に帰ってから研究室で謹慎処分じゃなかったかしら?」

「あ!そ、そうだった・・・・」

「え?謹慎?なーになーに、トモハル君何やらかしちゃったのー?」

人の不幸は蜜の味、ビビアは落ち込む智春に興味津々で尋ねる。

「いや、ダラスの末っ子をトモハルが規則違反の決闘で倒したのよ。」

「ふーん、トモハル君ってとことんダラス家とぶつかっちゃってるんだねー、もうそれは運命!」

メイアに理由を聞いて納得したビビアはなんだか楽しそうに告げる。

「はあ、そんな運命は欲しくねーーーーーーーーーーー」

智春の叫びはまだ始まったばかりの一日に遠く響くのであった。




河川による貿易で栄える街、『ダラベスト』、

その街の一角、広大な敷地を有し、将来有望な貴族や平民の子ども達が分け隔てなく自らの能力を伸ばすことのできる学び舎、『ダラベスト魔法学院』

その学び舎にある、ある一部屋で中世の城を思いうかばせるその建物に全くそぐわない格好の少女が三人椅子に座っていた。

その四人の横で板状のものに浮かび上がる棒グラフや波を見ながら何かメモを取っている少年がいた。

少年の名前は青山智春あおやまともはるぶっちゃけ、この物語の主人公である。

智春はラベスト侯爵家から帰宅してからすぐに研究室で謹慎を始め、からこれ二週間ここで暮らしていた。

この二週間の間にすでにエリーゼの冒険者登録や智春たちのパーティー(冒険者ギルドではチームと呼ばれるため後記からチームとする。)の登録を終えていた。

また、四人ともにアウガスからの依頼の説明も終え、各自それに向けてのパワーアップなどを智春主導のもと行っていた。


ちなみに、冒険者ギルドではチームにもランクがあり、Aランク以上か何か功績を上げるまで独自の名前を名乗ることができず、代わりに代表者の名前がチーム名になる。

その為、独自の名前を持つチームは『冠付かんむりつき』と呼ばれ、特別視される。

チームのランクはメンバーのランクや依頼の達成数によっておのずと上がっていくのでメンバーたちの働きが重要なのである。

閑話休題


智春はこの二週間の研究で開発した機械を使い、これまた発明品を四人の内誰が一番使いこなせるかを探していたのである。

「じゃあみんな、『ヘッドギア』を外していいぞ。」

智春がそう言うと四人、セリア、レイラ、メイア、エリーゼがその建物の景観に似合わない格好、フルフェイスマスクを外した。

そのフルフェイスマスクは地球にあったバイク用のヘルメットそのままの形をしており、色はすべて黒色でエリーゼの『ヘッドギア』だけは頭に耳を出す穴があけられていた。

この『ヘッドギア』が智春の開発した研究用機械で、顔を覆っておる上方開閉式の半透明のプレートに映像を映し出すことができ、装着者の脳波を棒グラフと波によって表現して対になっているタブレット型の機械に映し出すことができるという装置である。


「ねえ、トモハル、いい加減何の検査をしていたのか教えてくれないかしら?」

「そうですね。急に呼び出されて、『ちょっと検査したいからこれ着けてくれ。』て言われただけで私たち何の説明もされてないんですよ。」

セリアとレイラがご立腹気味に尋ねる。

「ああ、すまん。みんなの自然体でのデータが欲しかったんだ。だって、みんな俺が開発した新装備のユーザーを決めるための検査っていったら張り切ってただろう。」

「ええ、まあそうかもね・・・って、新装備!?」

智春の問いかけに納得するメイアだったが後半の不穏な言葉に過剰反応を見せる。

「し、新装備って何かしら?ま、まさかあの、れ、『レールガン』とかいうのより危険なものじゃないっでしょうね?」

セリアの怯えたような問いかけに智春は研究室の金庫から黒い金属塊を二つ持って来た。

「んー、まあ、『レールガン』を実験的に取り入れたやつもあるし、危険度で言えばどっこいどっこいかな。で、これが発明品の『魔銃マジック・ガン』と『拳銃』だ。」

智春が四人に見せたのは二丁のリボルバー式の拳銃だった。

片方は銃身が長く、そこに何らかの魔術回路が刻まれており、もう片方は銃弾を入れる部分がやけに大きく作られていた。

四人がその二丁の武器に質問を飛ばす前に智春が話し始める。

「これは俺の元居た世界の武器をこちらの技術で魔法的に改造、つまり魔改造を施したものなんだ。ここまでで何か聞きたいことは?」

「色々ありすぎるわよ!でも今聞くと話が進まないでしょうし、先を話して。」

「・・・元居た世界?・・・」

智春の質問にセリアが呆れたように返す。

そして、小さくつぶやいたエリーゼの疑問は昼下がりの喧騒に飲まれ、誰にも届かずに消えた。

「ん、じゃあ続けるぞ。この装備はまず『拳銃』の方だが、これは金属と色々な鉱石でできているだけどとりあえずこれをこの六つ空いた穴に一つずつ入れる。そして、あとは敵に向かってこの引き金を引くだけで終わりだ。」

智春は説明をしながら実際に先端が青く着色された銃弾を一発だけ装填した。


ドパンッ


智春が引き金を引くと研究室に乾いた銃声が鳴り響いた。

しかし、その銃口からは何も飛び出すことはなかった。

「す、すごい音ね・・・で、音以外は何にも起きなかったけど失敗かしら?」

「いや、今銃に装填したのは牽制用の不発弾だ。薬きょうに詰められている火薬、『発火砂バーストサンド』の量を調節して発砲と同時に銃弾が粉々に砕けるようにしたものなんだ。」

「ば、『バーストサンド』ですか。あれは確か火を近づけると爆発する危険な砂じゃなかったですか?」

「そうだけど。俺の世界ではそれは火薬って呼ばれてて、色々な武器の使われてたんだよ。で、これがそれの模倣及び応用。」

智春は拳銃からからの薬きょうを取り除き机の上に置いた。

「まあ、あれの性能はまたこの後訓練場でまた見せるとして、次はこいつだ。」

智春は白衣のポケットから白い魔石を取り出しながら『魔銃マジック・ガン』を示した。

「こいつはこんな風に魔石を装填して、こう引き金を引くと魔石に記録した魔法を撃ち出せるっていう訳だ。」

智春が実演すると魔銃の銃口から光の球が飛び出し、空中で数秒停滞したのちに消え去った。

「ま、こんな風になるけど、この魔銃にはバナード先生の作った射出の魔法回路をこ取り入れているだけなんだ。これは魔石を俺が作った特別な機械で加工してどんなふうにどれだけ飛ばすっていう情報を刻むことで武器としての性質を持たせたんだ。」

「んー、説明聞いててもいまいちよくわかんない。トモハル、結局その武器は誰が使うの?」

智春の説明にメイアは頭が痛そうに言う。

「ん?ああ、これは検査の結果一番能力的に相性の良かったエリーゼに使ってもらうことにする。エリーゼはいい?」

「ん・・・別にいい・・・でもその前にトモハルと二人だけで話がしたい。」

智春の問いかけに一瞬の迷いもなく頷いたエリーゼだったが、真剣な目で智春に主張した。

「ん?別に俺はいいけど・・じゃあセリアたちは先に訓練場に行っててくれるか?訓練場の使用許可と俺の外出許可はバナード先生にもらっているからこれを持っていけば大丈夫だ。」

智春は引き出しから丸まった羊皮紙を取り出し、レイラに手渡してから三人を見送った。

扉を閉めて智春が振り向くと、

至近距離にエリーゼが居て、逃がさないという意思を示すように智春を抱きしめた。

「え、エリーゼ?きゅ、急にどうしたんだ?」

とっさのことに驚く智春だったが、エリーゼはその目を真剣に見つめながら尋ねた。

「・・トモハル・・故郷の事を聞かせて・・・」

「へ?そ、それは今聞かないといけないことか?」

「ん・・・トモハル私に何か隠してる・・・ちゃんと話して・・」

上目づかいになっているエリーゼの可愛さやその凶器むねによって心臓の鼓動が早くなり、顔を真っ赤に染めていた智春だったが、エリーゼのその真剣なまなざしに意識をしっかり取戻した。

「ああ、確かに俺はエリーゼに隠し事をしている。ただ、それは話しても信じられない話だし、もしかしたらエリーゼは俺のことを不快に思うかもしれない、それでも聞いてもらえるか?」

「もちろん・・・私がトモハルの事を不快になんて思うはずがない・・・話して・・」

エリーゼは一切の動揺も見せずに言い切り、智春に抱き着く腕にさらに力を込めた。

智春はエリーゼのその真っ直ぐな瞳に白旗を揚げ、全て正直に話す決意をしたのだった。











このお話を読んでいただきありがとうございます。

今回は話の関係上短めで終わり方も少し中途半端ですがご容赦ください。

また、第三章はこのお話で終了です。

次は『第四章:王都訪問編』です。

これからも応援よろしくお願いします。

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