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第三章:学院編  27話:夜のパーティータイム

とーーーーーーーーっても遅くなりました。

ごめんなさい


では、27話をどうぞ。

27話:夜のパーティータイム


アウガスとの重要な話し合いが終わり、智春ともはるは屋敷のメイドさんに連れられて今夜宿泊をする部屋に案内をしてもらっていた。

「ん?今から何かあるのか?パーティーの来客が来るにはまだ早いんじゃないか?。」

智春は話し合いの前とは違いにわかに騒がしくなった雰囲気に首を傾げる。

「はい、本日はもともと『記念式典』の話し合いが予定に入っておりまして、ダラス侯爵領内の下級貴族や『ダラベスト商業組合』の代表の方などがお見えになっております。話し合いは『降光の刻 4時』からなのであと半刻で始まりますのでもうほとんどの方がいらっしゃっているようです。」

「ふーん、じゃあ俺らは忙しいときにお邪魔してたんだな。他の日程とかは詰まってたのか?」

智春は忙しい中わざわざ時間を取らせたことに少しの申し訳なさを感じ尋ねる。

「いいえ、トモハル様方に謝礼と歓迎の意を込めて夜はパーティーを開くと決まった時に旦那様が『人を集めるのならいっそ会議も一緒にしてしまえば『一矢ひとやコカトリス』じゃないか。』とおっしゃられて、本日はこのようなスケジュールになったのですからトモハル様はお気になさらなくて結構なのですよ。」

メイドは柔らかい笑みを浮かべる。

ちなみに、『一矢ひとやコカトリス』は地球で言う『一石二鳥いっせきにちょう』と同じ意味である。これは伝説で勇者の放った一本の矢が二羽のコカトリスを倒したことからできた言葉らしい。

「そうだったのか、てか、結構スラスラ答えてたけど屋敷のメイドってそこまで主人のスケジュールを把握している物なのか?」

「ええ、だって私はメイド長ですから。」

「え?・・・メイド長?君が?・・・」

智春の素朴な疑問にメイドはなんでもないように答える。

しかし、智春の失礼な驚きはわからないものでもない。

なぜなら、彼女は紫色の綺麗なロングヘアに紅い目、出るところは出、締まるとことは締まった20代前半くらいの容貌なのである。

さらに、この屋敷にはこのメイドよりももっと年上のメイドが何人もいるのだ。

「えっと、あの、ごめん、その、君が頼りないとかじゃなくて、他の人よりも若かったからつい、ごめん。」

智春は自分の失礼な発言に気付いて慌てて弁解する。

一方、メイドは笑顔でそれに答えた。

「ふふふ、大丈夫ですよ分かってますから。私がメイド長だというと皆さん驚かれるのでなれているんです。実は私は『血魔族ヴァンパイア』と『人族』のハーフで、見た目は人族なのですが寿命が『ヴァンパイア』なんです。だから本当は私がこのお屋敷の中で一番年上なんですよ。」

「ヴァ、ヴァンパイアか・・・」

「はい、見た目はこんなんですがヴァンパイアの能力は一通り使えますので、トモハル様やシスティーナお嬢様にはかないませんがこれでも結構強いのですよ。」

メイド長は茶目っ気たっぷりに言いながら、『えっへん。』と胸を張るのだった。


智春がメイド長とそうこうと話しているうちにある一室の前にたどり着いた。

「ここがトモハル様の客室になります。パーティーの準備ができましたらお呼びに伺いますのでそれまでは自由におくつろぎください。また、何かあったり部屋の外を歩きたい場合は机に置いてある『鳥呼鈴よびりん』をお使いください。屋敷の者がすぐ伺います。よろしいですか?」

「ああ、分かった。っと、セリアたちはどこにいるんだ?」

「はい、セリア様たちは奥様の茶話室さわしつで奥様やお嬢様とガールズトークの最中です。なにかことづけをいたしましょうか?」

「いや、いい。ありがとう。少し休憩させてもらうよ。」

「はい、ではお休みなさいませ。」

メイド長は綺麗なお辞儀を見せると部屋のカギを智春に渡し、去って行った。

部屋を開け、智春は部屋を見渡した。

部屋には絵などの簡単な装飾品の他にベッドと机といすが一つずつ置いてあった。

机の上には水差しとフルーツの盛られたさらの他にハンドベルが置いてある。

このハンドベルが『鳥呼鈴よびりん』と言って、一つの母機と多数の子機で構成される魔法具である。

どんな道具かというと、ゴングのような据え置き型も母機から半径100m以内のところでハンドベル型子機を鳴らすと母機からも音が鳴り子機から母機へと合図を送ることができる。

この時母機からは鳥の鳴き声がなるようになっており、子機によって違う種類の鳥の鳴き声が聞こえることでどの子機を鳴らしたのかが判別できるため高級宿などでは重宝されている魔法具なのである。

閑話休題


智春は一通り部屋の中を確認すると一眠りしようとベッドに寝転がろうとした。

すると、枕もとには洗濯してもらっていた智春の制服がピシッとたたまれて置いてあった。

「おお、もうできたのか早いな・・・」

智春はとりあえず制服を机の上に置くと借り物の執事服を脱ぎ、部屋着に着替えてベッドに寝転がった。

昼間のシスティーナとの模擬戦で疲れていたのか智春はすぐに眠りに落ちて行った。



少々時間をさかのぼり、昼食が終わり智春がアウガスたちと別室に言った頃、セリアたちも別の部屋に通されていた。

部屋の中心には小さな円卓が置いてあり、椅子が周りに6こ並べてある。

部屋の広さからみて、部屋を使用する人数に合わせてテーブルや椅子を出しているようだ。

また、部屋の端では給仕メイドたちがお茶の準備をしていた。

「ふふふ、ここは私がよくお茶会で使う茶話室さわしつよ。今からガールズトークとしゃれ込みましょう。」

ラベスト侯爵夫人リーベラ=ラベストがセリアたちに微笑む。

「じゃあ、改めて自己紹介をしましょう。私はリーベラよ。侯爵夫人なんて肩書もあるけど今日は気にしないでね。さあ、お次はシスティーナよ。」

リーベラは右側に座るシスティーナの肩に手を置きながら促す。

ちなみに、現在はリーベラ→システィーナ→セリア→レイラ→メイア→ソフィーアの順で円卓を囲んでいる。

「はい、お母様。私はラベスト侯爵家長女、システィーナ=ラベストです。趣味は武術ですの。」

システィーナは堂々と宣言するように言う。

リーベラはニコニコしながら次にソフィーアに促す。

わたくしはラベスト侯爵家次女、ソフィーア=ラベストです。考えることと知ることが趣味ですわ。」

ソフィーアは落ち着いたしゃべり方がその氷のような美貌によく似合っていた。

そして、セリアたちはまず精霊組から自己紹介を始めた。

「私は氷姫精霊ひょうきせいれいのセリア・ウォルトスールです。トモハルとは帝国北の森にある洞窟で契約しました。」

「そ、それはどんな経緯で?」

智春と聞いた瞬間システィーナは目をキランと光らせて食いついてきた。

「は、はい、私は森奥の洞窟で生まれたのでそこから脱出したいと常日頃から考えていたのですが、そんなときにトモハルが洞窟の天井に空いていた穴から滑り落ちて来たんです。そこで私から契約を申し込んだのです。」

「ふーん、その前はトモハル様は何をしていらしたのですか?」

「そ、それは・・・」

セリアがどうごまかそうかと考えあぐねていると、リーベラから救いの手が差し伸べられた。

「システィーナ、まだ皆さんの自己紹介が終わってないのよ。それはまたあとで聞きなさい。」

「はい、お母様。ごめんなさいウォルトスールさん。」

「いいえ、お気になさらずに。それとお嬢様私の事はセリアとお呼びください。」

「そう、では私の事もシスティーナの呼んでください。」

「いえ、それは・・・ではシスティーナ様とお呼びいたします。」

セリアの返答にシスティーナは不満そうだったが次のメイアの自己紹介へと移って行った。

「私は炎姫精霊えんきせいれいのメイア・イフラルガです。私は『ボルカーラ火山』で要石を失い瀕死のところをトモハルに助けてもらってそこで契約しました。」

「あら、なんだかロマンチックな出会いね。」

リーベラは少しうっとりしたようにつぶやく。

「では、最後は私ですね。私はレイラ=オルモナークといいます。帝国北部の小さな農村のバーシュ村というところ出身で、トモハルさんとセリアさんから『一角熊ホングル』に襲われていたところを助けていただき、さらに森の生態系が崩れて貧困していたバーシュ村まで救ってもらって、その、一緒に旅をさせてもらっています。」

「うふふ、青春ね~、システィーナには強いライバルが三人もいるのね。」

レイラの話す様子からその感情を察したのであろう、リーベラは楽しそうに笑った。

「もう、お母様!はあ、それよりもトモハル様の事をもっと聞かせて下さらない?」

「はい、では私たちがバーシュ村でしてきたことやここに来るまでの事をお話しましょう。」

セリアはそう言うと今までの旅の出来事を話すのだった。



リーベルたちとのガールズトークも終わり、セリアたちは各自の客室に案内されていた。

「こちらの3室が順にセリア様、レイラ様、メイア様の客室となっております。トモハル様の客室は一番奥の4室目です。トモハル様は現在、客室で休憩中だとメイド長から伺っています。パーティーの支度が整いましたらお迎えに上がりますのでそれまでは客室でごゆるりとお過ごしください。また、御用の際や客室の行き来以外の外出の際は『鳥呼鈴よびりん』でお知らせください、屋敷の者がすぐに伺いに参ります。」

メイドはそう言って、3人に客室のカギを渡すと部屋の前を去って行った。

「じゃあ、今から何をする?」

「えーっと、トモハルさんの所に一旦行って、そのあと各自の部屋で休憩にしましょう。」

「私はレイラに賛成だな。」

「そうね、じゃあそうしましょう。」

そう話し合ってセリアたちは智春の部屋を訪れる。


コンコン


「トモハル、ちょっと入っていいかしら?」

『・・・・¥@*#&%%$・・・・・』

「え?ちょっと、トモハル?」

セリアは智春の部屋から帰って来た小さな意味不明の言葉に困惑する。

「ねえ、トモハル!大丈夫なの!?」

セリアはどこかで聞いたことがあるような言葉の気がしたがそれよりも智春の方が心配になり、その考えを捨て置いた。

『・・・・リア・・サキ・・@*3&%$%$』

「え?ちょっと、どうしたのよ!」

名前を呼ばれたような気がして、それが助けを求めているように聞こえたセリアは焦燥感に駆られる。

「ねえ、セリア、どうしてそんなに慌てているんですか?」

と、急にレイラが焦ったように扉に話しかけるセリアに首を傾げた。

見ると、メイアも同じように首を傾げている。

「どうしてって、それは中からトモハルの声なんだけど意味不明な声が聞こえるからよ。あなたたちも聞こえたでしょう?」

「へ?いいえ、そんなの聞こえませんでしたけど・・・」

「嘘でしょう、確かに聞こえにくいけどちゃんと聞こえたのよ。」

セリアはまだ続く智春の意味不明な言葉とそれが他の二人に聞こえないことに混乱する。

「ねえ、セリア、そのトモハルの声ってどんな風にきこえてる?」

「え?うーん、なんだか少しぼやけてる感じね。たぶん部屋のドアを通して聞いてるからだと思うのだけど。」

「じゃあ、その声は耳というよりも頭に聞こえてない?」

急なメイアの言葉に『え?』っと首を傾げるセリアだったが言われてみればそう言う感じに聞こえると気づき、メイアに尋ねた。

「そんな感じに聞こえるわ。どういうことなの?」

「ああ、やっぱりね。トモハルは今睡眠中よ。それできっとセリアの夢を見てるの。それは『共感覚シンクロ』っていう現象で、私たち精霊契約を結んだ契約者か精霊のどちらかが相手の事を強く考えていたり、夢に見たりするとその考えや夢での言葉が相手の脳に直接伝わってくる現象よ。・・・ちょっと妬けちゃうよ。じゃあ、失礼して、」

メイアは説明をし終えると急に実体化を解くと。

「不用心ね。鍵開けたまま寝てたよ。トモハル。」

と言って智春の部屋から出て来た。

中を覗くとベッドに寝ている智春の胸が規則正しく上下しており、穏やかに眠っているようだった。

「ふぅ、もう心配させるんだから。なんだか見てると小憎らしくなる寝顔ね。」

安堵したように智春のベッドに近寄って行くと、セリアは最近は間近でしっかり見ることの少なくなった智春の寝顔に少しドキッとしてしまった。

「もう、セリア驚かさないで下さいよ。」

レイラも智春を確認すると安堵のため息をつき、ベッドのセリアとは反対側に腰かけた。

「あれ、そう言えばもう聞こえないわよ。トモハルの声。」

セリアはちょっと残念そうにメイアに聞く。

「もう、セリア、あんたもっと精霊じぶんのことについて学びなさいよ。今声が聞こえなくなったのはあれだけ感情の変化があったんだからトモハルとの波長にずれが生じたのかトモハルの夢が終わったのかのどちらかよ。」

「そうなの・・・・」

セリアは残念そうに、申し訳なさそうにつぶやく。

「あの、トモハルさんも寝てることだし自分たちの部屋に戻りませんか?」

「そうね。セリア、行きましょう。」

レイラの提案にメイアがセリアを連れて出ようとした。

しかし、セリアは首を横に振った。

「セリア?どうしたんですか?」

「その、ここに居たらまたトモハルの声が聞こえるかもしれないからもう少し、ここにいるわ。」

「なっ!、セリアがそうするなら私もまだここにいます。」

「え?ふ、二人がそう言うならわたしも残る。」

三人とも一向に引かず、結局三人で寝ている智春のベッドに腰掛けていた。

そして、静かな中に智春の穏やかな寝息だけが響く雰囲気に一人、また一人と夢の世界へと旅立って行った。

〖・・・セリア・・待ってくれみさきが・・・・〗

四人が寝静まった部屋に少しだけ響いた智春の寝言が日本語(・・・)で話されていたことを三人は知る由もなかった。



(んぅぅぅ、これは・・・・・)

智春は夢の中で触っていた髪と同じ感触の髪が手に触り、寝ぼけた思考でその髪を撫でる。


ゆさゆさ、ゆさゆさ


そんな智春を何者かが揺さぶっていた。

「あの、トモハル様。お楽しみ後の休憩中に申し訳ないのですがパーティーの準備が整いましたので起きていただけないでしょうか。」

聞き覚えのある声に目を開けると、ベッドの脇に自称最年長で『ハーフヴァンパイア』のメイド長が立っていた。

「あれ?もうそんな時間か・・・っと、お楽しみって・・・・・・・・・・・・・・・・・っておい!なんでセリアたちがここで寝ているんだ!」

智春は知らないうちにセリアとレイラに両脇を挟まれ、メイアが智春の左足を枕にして寝ていたことに寝起きのはっきりしない頭で完全に混乱する。

「まさかトモハル様は無意識に女をむさぼるようなお方だったのですか!それにまだ日の高いうちから三人も抱くなんて・・・」

「いや、誤解だ!本当に誤解なんだよ・・・」

「そうやって幾人の女を泣かせてきたんですね。おいたわしや・・・」

「はあ、信じてくれよ。」

智春は涙目でつぶやくことしかできない。

「では冗談はここまでにして、お嬢様方起きてください。そして、トモハル様は私たちは外でお待ちしていますので着替えを済ませてきてください。」

今までの雰囲気がなんとやら、一瞬でもとの表情や口調に戻したメイド長は唖然とする智春にそれだけ伝えるとまだはっきり目の覚めていない三人娘を軽々と担いで部屋を出て行った。

メイド長が強いというのは本当の事らしい。

メイド長が出て行って正気に戻った智春は自分がからかわれていたことに気付き、苛立ちと共に安堵感に包まれ、そして思い出したように急いで学院の制服に着替えた。

部屋を出ると廊下には完全に目を覚ました三人とメイド長が立っていた。

メイド長は智春が出てきたのを見るとさっと、頭を下げた。

「からかいが過ぎました。申し訳ございません。では、会場に参りましょう。」

「あ、ああ。」

会ったら文句の一つでも言ってやろうと考えていた智春だったが、メイド長に先手を打たれて謝られ言うに言えない状況になってしまい、仕方なしにメイド長の後をとぼとぼついて行くのだった。



パーティーではラベスト領内の貴族や豪商との挨拶と自己紹介から始まった。

彼らは皆ラベスト侯爵と懇意にしているだけあってただの冒険者である智春たちにも礼節を尽くしてくれた。

また、皆必ず智春に対してダラス準男爵家の事についての感謝を述べ、完全に自分個人の理由からダラス家にとどめを刺した智春は少し居心地の悪さを感じていた。

貴族たちとの挨拶を終えるとパーティーが本格的に始まった。

立食形式のバイキングスタイルの食事とホールでのダンス、ホールではクラッシック系の音楽を演奏家たちが弾き、それに合わせてやってきていた貴族の令嬢や子息、婦人たちが楽しそうにダンスを踊っていた。

智春にもいろいろな女性が集まり、ホールで幾度となく相手を変えながらダンスを踊る。

幸いにもこちらのダンスも地球の社交ダンスとつながるものがあり、多才の智春は難なくダンスをこなしていた。

勿論、セリアやレイラにメイアともダンスを踊り、食事も十分に楽しむことができていた。

食事は智春がまだ見たことのない料理がたくさんでており、智春はとりわけ役に立っている使用人から料理の内容や可能ならレシピなどを聞いて集めていた。

かなり充実た時間だったと言えよう。

パーティーも終盤に差し掛かり、テーブルに並ぶ料理がデザート類に変わった頃、少し疲れた表情のシスティーナが智春のもとにやって来た。

「トモハル様、一曲お相手してくださらない?」

システィーナは頬を紅く染め、智春に向かって手を差し出した。

「はい、お嬢様。喜んで。」

智春は内心疲れていてもう休みたいな~なんて考えていたのが今まで貴族の子息に囲まれていたのをやっとのことで抜け出してきたのを目にしていたので断るなんていう選択肢は一切なかった。

システィーナは嬉しそうに笑いながら曲に合わせて踊り出す。

智春もそれをリードする形で踊る。

終盤の少しゆったりとした優雅な曲の中、ダンスホールに一輪の花が咲いていた。

システィーナと智春の息のぴったりと合ったダンスは周りからため息が聞こえるほど優雅で美しかった。

システィーナも智春もこの息の合ったダンスを心から楽しんでいたが、しかし、体力のある二人にはこのゆったりとした曲には少し物足りないものがあった。

すると、それを何んとなく察したのであろう演奏家たちが少しテンポが速めでさらに場の空気を壊さないくらいに激しい曲を奏で始めた。

その曲を智春たちはこれまた息ピッタリに踊った。

曲が終わり、二人の動きが止まると会場から拍手が鳴り響いた。

どうやら、この素晴らしいダンスに会場が釘づけになっていたらしい。

貴族の子息たちの中には智春に対して嫉妬ややっかみのこもった視線を向ける者もいたが、全体的に皆智春たちを称賛していた。

拍手が鳴りやみ、パーティーの流れがもとに戻ってから、智春はシスティーナと二人でベランダに出てダンスで火照った体を冷やしていた。

「お嬢様。お飲み物をどうぞ。」

智春はベランダの入り口近くにいた使用人から飲物をもらい、システィーナに差し出す。

しかし、システィーナはそれを受取ろうとはせずに智春を上目づかいで見上げる。

「その、名前で呼んでくださいまし。」

「へ?どうしました?」

「っつ!!、だーかーらー、そのセリアたちを呼ぶようにように私の事もシスティーナと呼んで欲しいのです。」

「いえ、それは・・・ではシスティーナ様とお呼びいたします。」

「っつ!!!!、」

システィーナはセリアと全く同じ受け答えをした智春の言葉に深くセリアたちに嫉妬の念を抱いてしまった。

「い、いやですわ。様など付けずに、システィーナと呼んでください!!」

「ですが、それは・・・・・・・、!」

困り果ててしまった智春はあることを思いついた。

「では、二人だけの時にのみ、システィーナとお呼びいたします。それでよろしいでしょうか?」

「・・・仕方ないですね。今のところはそれで我慢しておきます。トモハル。」

困り果てた顔をしている智春を見てシスティーナは仕方ないと思ったが、二人だけの時は自分の要望が叶うと思うとうれしくなって、微笑みながら智春の名前を読んだ。

その笑顔に智春は不覚にもドキッと胸を高鳴らせてしまった。

それから二人はとりとめのない話をかわしながらただ時間をゆっくりと過ごしていた。

そして、だいぶ冷えて来た風と体に智春が室内に戻ることを提案したとき、システィーナは勇気を振り絞って一歩攻めて来た。

「その、トモハルはやはりもうセリアやレイアたちと愛し合っているのですか?」

「へ?どうしてそうなるのですか?」

「いえ、私には皆魅力的な女性たちでトモハルとも信頼しあっていて私の入り込む隙の無いほど幸せそうに見えました。」

システィーナは少し寂しそうにつぶやく。

「そうですか。確かに俺たちは信頼しあっていますが愛し合っているというほど深い関係ではありません。それに俺から見てシスティーナも十分魅力的な女性ですよ。」

「本当ですか?」

智春の言葉にシスティーナは少し期待するように尋ねる。

「ええ、もちろんです。」

「そうですか、うふふふ。嬉しいですトモハル。」

嬉しそうに微笑むシスティーナに智春は今日何度目かの胸の高鳴りを感じた。

「し、システィーナ。もう戻りましょう。あまり長居してしまうと体に毒ですよ。」

「ええ、戻りましょうかトモハル。」

ご機嫌な様子で智春の手を取って歩き出すシスティーナに付いて智春は室内に戻った。

それから少しして、パーティーはお開きになり、夜も更けていった。

少女たちの(戦争)はまだ幕を上げたばかりであった。









このお話を読んでいただきありがとうございます。

今回は結構長めです。

今回の主役だったシスティーナお嬢様は残念ながらメインヒロイン(旅の同行者)ではありませんが、作者の暴走で予定より濃ゆい印象のキャラになってしまいました。

また、旅の途中で出てくることを願います。

(数話後にまた出てきますが、そのあとのことです。)


前回の投稿でなんと、ブックマーク者数が100人を超しました。

一話目からお付き合いしていただいている方々ありがとうございました、まだ、これからも智春たちの冒険は続きますのでお付き合いよろしくお願いします。

また、今回新しくこの作品に触れていただいた方々。

本当にありがとうございます。

これからも頑張って週一更新していきたいと思っています。


最後にこの作品は常時感想をお待ちしております。

どんな内容でも構いませんので気付いたことや伝えたいことがありましたらよろしくお願いします。

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