第三章:学院編 24話:嫉妬と自覚
今回も遅くなりました。
では、24話をどうぞ。
24話:嫉妬と自覚
ダラス侯爵家三男ルドラス=ダラス、中肉中背の筋肉質の男で長男と違い自分にちゃんとした実力がある。
ただ、無いのは知能と道徳心だけであって、その二つが欠落したせいでかなり最悪な性格をしている。
長男と同じイケメンだが日ごろの行いがたたり全くモテない、だが、自信過剰なせいでいろんな女性に言い寄っては口説こうとして時には強引なことをして周りの反感を買う。
取り巻きはダラス侯爵家の権威に預かりたい貧乏貴族のダメ貴族の子息ばかりでそれがルドラスの性格の悪さに拍車をかけている。
これが今回の智春のターゲットであるルドラス=ダラスのプロフィールみたいなものである。
現在ルドラスは個人的な事情で学院を一時休学していたが数日後に帰還するらしい。
そして、それを聞きつけたアルージャたち『戦闘科男性組合』の組員が何とかしようと智春に依頼に来たのが今回の出来事の内容である。
智春は新しく入った戦闘科の授業に参加しつつ今回の事を考えていた。
(う~ん、引き受けたのはいいけど実際どうなることやら・・・・)
現在は準備運動の時間で全員が固まることなくひらいて各々自分でストレッチを行っている。
今回の授業は武器を使った戦闘演習の授業で、皆、自分の得物を(無いものは倉庫から自分の物と同じ種類の武器を)持ってきている。
智春は得物に穂先が刃になっている槍を選んだ、理由としては『刀が無かったから』の一言に尽きる。
この世界には両刃の西洋風の剣しかなく、刀のような片刃の剣はサーベルなど無いでもないがやはり使いにくいためこの選択に至ったようだ。
他の生徒はハンマーや大剣、弓など一般的な武器がそろっているが、その中で異彩を放っているのがサバラダの鎖やアルージャの手甲のように手に引っ付いている小さめの盾であった。
サバラダの鎖には両端にそれぞれ槍の先みたいな刃と錘がついていて武器に見えるのだが、アルージャのに関しては思いっきり防具である。
だが智春は知っていた、盾を武器として使う戦い方があることを。
なので、特に疑問もなく皆に混じってストレッチを続けていた。
ちなみに、この授業だけはエリーゼは『支援魔法』の授業があるため珍しく別行動であった。
皆の体が程よくほぐれてきた頃、バスラがやって来た。
「みな、準備は終わったか?今日は簡単なチーム戦での模擬戦を行う。買った方のチームにはちょっとした賞品を用意したあるからみんな頑張れよー」
「「「「「はいっ!」」」」」
バスラの言葉に生徒たちは一糸乱れぬ返事を返す。
「よっし、じゃあ今回の模擬戦は『攻城戦』で行う。ルールは『魔活祭』で行われるのと同じで、それぞれの陣地に旗を立て、敵の旗を自陣の最奥まで運ぶか相手を全員戦闘不能にしたチームの勝ちだ。審判は私が勤める、異論はないな?」
バスラは生徒たちを見回す。
さっき言われた『魔活祭』というのは年に二回行われるクラス対抗戦の事で、夏のはじめと秋の終わり、こちらの世界で言うと『5番目の月』と『12番目の月』に行われるのだ。
「よし、異論はないようだな。試合を始めるぞ。人数は全員で20人ちょうどだな、では一列に並んでこのくじを引いて出た色の陣地に別れろ。最後の者が陣地に入ってから5分間が作戦タイムだ。作戦タイム終了後に1分の移動時間を挟んで試合開始だ。今回は『遺跡フィールド』を使おう。では、並べ。」
戦闘科の授業には三つの場所が授業の場所として提供されている。
ひとつが今智春たちがいる裏庭の訓練場。
二つ目が座学に使う教室。
最後が模擬戦や魔法の練習などに使える可変屋内訓練場だ。
この最後の可変屋内訓練場はその名の通り魔法によって形が変わる機能の付いた屋内訓練場であり、訓練場全体に張り巡らせてある結界のおかげで攻撃による衝撃は精神的なものに変換されるので傷を負う事もない万能な訓練場である。
ちなみに一定以上の攻撃を受け、実戦では戦闘不能だと判断された者や致命傷に至る攻撃を受けた者は自動的に操作室に転送される機能まで付いているのである。
今回のような模擬戦のフィールドに使われるのはこの可変屋内訓練場である。
バスラの先導で智春たちが屋内訓練場に入ると中はすでに遺跡フィールドに変化しており、両端にある二、三個の建物の色がそれぞれ左側にある建物が赤、右側にある建物が青色をしていて、どうやらそれらが今回の陣地のようだ。
さっきのくじで決まった通りに智春は赤の陣地へ向かう。
「おお、トモハル一緒だったか!よろしくな!」
陣地へ行くとアルージャが笑顔で迎えてくれた。
『では、作戦タイムを始めろ、一分後に終了の放送をする。』
チームの全員が集まったくらいにバスラの声が壁に備え付けてある魔石から聞こえた。
この魔石は『送声石』と言って、主にスピーカーに使われる。
遠距離用通信システムとしては使用可能範囲が狭すぎてあまり使えないのが玉に瑕である。
まあ、マジックアイテムの説明はさておき、智春たちは作戦会議に入る。
「では、俺とトモハルとロッカ、あと、ザガリでアタッカーを務める、他の連中はディフェンサーを頼む。」
アルージャが智春の他に『人族』の少年と『森魔族』の少年を指して言う。
二人の得物はそれぞれハンマーと弓である。
「おい、アルージャ!そいつの腕は確かなのか?」
「そうだぞ、この模擬戦は中途半端な強さじゃ務まらないくらいあんたも分かってるだろうアルージャ。」
ロッカ少年とその隣の『虎人族』の少年が訝しげに智春を見る。
どちらも『戦闘科男性組合』にはいなかったメンツだ。
「はは、問題ないぞ二人とも。トモハルはあの『目利きの砂塵』ことサバラダ=カダラクタが連れて来た人材だぞ。」
「そうか・・・まあ、それなら納得はしてやろう。」
ロッカ少年が偉そうに頷くと『虎人族』の少年も引き下がった。
どうやら、この二人はルドラスの腰巾着の一員らしい。
そのあと、簡単にアルージャが作戦や連携指示を話し終えるのと同時に『送声石』からバスラの声が聞こえた。
『作戦タイム終了だ。では、総員配置に付け。』
バスラの言葉に全員指示された位置へ急ぐ。
智春は陣地線ぎりぎりの建物の屋根に潜んだ。
開始合図前はこの陣地線を越えてはならないのである。
全員が配置に付き終わった頃にまた放送が入る。
『では、これより『攻城戦』を始める。全員ルールは守り、正々堂々全力を尽くせ・・・では、始め!』
掛け声とともに智春は屋根から屋根に飛び移りながら駆ける、その姿はさながら忍者。
智春が中央の神殿のようなところに着くころに左の方から戦闘の音が聞こえて来た。
(うっわー、結構激しいみたいだな・・・よし、気を抜かずにってうわぁ!!)
智春がよそ見をしながら空中を『エアウォーク』で蹴り、神殿の屋根に着地しようとしたとき、足に鎖が巻き付き智春は地面に引きずりおろさせた。
「屋根の上を行って地面の我々を出し抜こうとは、だがそうはいかんぞトモハル氏、というか、どうやってあの距離を跳んでいるのだ!!」
「ん?空中を蹴って?」
智春が降りた先には鎖の反対側を引っ張るサバラダがいた。
サバラダは智春の返しに唖然としながらも『今はそんな場合じゃない』と気を入れ直す。
「く、空中を蹴るとは・・・まあ、いい。では、トモハル氏ここでお引き取り願おうか。」
サバラダはそう言うと鎖の刃がついている方を投擲する。
智春はそれを槍でいなしながら接近する。
「安元流槍術壱陣二目、通槍『望月』!」
智春は足のばねを使ってサバラダの心臓に向けて突きを放つ。
サバラダは鎖をうまく使って槍の穂先をそらしながら動きに合わせて回転し、横を通り過ぎようとした智春の頭めがけて錘を叩きつける。
「っつ、ぶな!」
「やはり、私の目に間違いはない。だがトモハル氏、負けんぞ。」
首を振って何とか錘の攻撃を避ける智春にサバラダは好戦的な笑みを浮かべた。
「我らがそたる大地よ、我の腕となりて、我が怨敵を薙げ『サンドブロウ』」
「っつ、安元流槍術参陣三目、豪槍『山崩し』」
サバラダの魔法で迫ってくる砂の塊を智春は槍を棒のように振るい叩き壊す。
「ふっ、ここは地面が基本的に砂漠の『遺跡フィールド』、私にとって最高のステージだ。これならどうだ!我らが祖たる大地よ、その猛威は生命を拒絶する『サンドストーム』」
激しい砂嵐が智春を包み、智春の視界は限りなくゼロになる。
「っく、これはやばいな・・・大地を漂うその風も、時の苛烈に猛威を振るわん『ウィンドボム』」
智春はとっさに風魔法を放って砂嵐を蹴散らすが、周囲の砂まで吹き上がり視界は一向に良くならない。
っと、不意に背後に殺気を感じた智春は後頭部に迫る鎖の刃を素手で掴むと思いっきり引っ張った。
「のあぁぁ!?」
思いがけない反撃にとっさに鎖を取られまいと握ってしまったサバラダは智春にリーチ内で体制を崩し、最大の隙を見せた。
「もらった!安元流槍術初奥義『千突万斬』」
智春の斬撃交じりの乱れ突きをくらい、サバラダは戦場を退場した。
「ふう、結構危なかったな・・・っと、じゃあ、攻めるか!」
智春は一息ついてまた空中を蹴って屋根に上がり、敵陣を責めるのだった。
智春の活躍で模擬戦に勝利し、バスラから商品のカフェテリアでの30%OFF券をもらってから智春たちは更衣室のシャワールームで汗を流す。
「にしても完敗だ、トモハル氏。して、あの『やすもとりゅう?』というのは何なんだ?」
着替えながらサバラダが智春に問いかける。
「ああ、あれは俺の武道の流派の名前なんだ。」
「ふむ、あんなに強いのに聞いたことがねえな。」
「あ、ああ、田舎の隠れ里の少数派流派だったからだと思うぞ。」
混じって来たアルージャの疑問に智春は額に汗を浮かべながらごまかす。
「ふむ、そう言うものか・・・して、どうしてトモハル氏はそんなに急いでいるのだ?」
「ん?ああ、この後カフェで待ち合わせがあるからな。」
「ふーん、噂のホワイトプリンセスか、お熱いことで。」
アルージャが人の悪い笑みを浮かべながら言う。
「ふん、なんとでも言え!じゃあ、俺は先の行く。」
智春は着替えを済ませると急いでカフェに向かった。
カフェに着くと何か人だかりができていた。
「ん?どうしたんだ?」
「は、はい、なんだか『花冠』の誰かがホワイトプリンセスとそのご友人に手を出してケンカのようになってしまっていて。」
「なに?エリーゼたちが?」
智春は説明してくれた猫耳の少女にお礼もそこそこカフェの中に人ごみをかき分けて突入した。
「だから、人を待っているからあんたとご飯食べるなんてお断わりって言ってるでしょう!」
「そう照れなくてもいいぞ。分かっている、分かっている、みんなの前が恥ずかしいのだな。では、裏庭にでも行こう。」
「っつ!だ・か・ら、全然分かってないじゃない!」
「・・・しつこい・・・」
「ははは、そう邪険にするな我が愛しのエリーゼよ。」
カフェの中では、ご立腹の様子のセリアとエリーゼ、そして、見たことの無い男子生徒が気持ちの悪いイケメンスマイルを浮かべながら拒絶されているにも関わらず、何度もセリアたちを昼食に誘っていた。
「ふふ、さあ、愛しの水色の君、そう怒らずに行こうじゃないか。」
「っちょと、「勝手に触んな」いでよ!・・へ?あ、トモハル!」
男子生徒がセリアの肩に手をまわした時、智春は黒い感情と共に思わず声を上げた。
「おい、貴様!ルドラス様に失礼だぞ!」
急な智春の参戦に一瞬場が止まったが、背景と化していた男子生徒、ルドラスの取り巻きの一人が声を上げた。
「まあ、待ちたまえ君、彼もこの美しい女性がまた私の虜になってしまうのに我慢が出来なかったのだろう、そうだろう?」
ルドラスは自信満々にご都合解釈を述べるが、その隙にセリアとエリーゼは智春の後ろに隠れた。
「二人とも遅れてすまん。」
「いいわ、それよりさっさと行きましょ。」
「・・・同意・・・」
本当に嫌そうな表情でセリアたちは移動を促すが、ルドラスがそれを許さない。
「何をしてい居るんだい?愛しの君たち。まさか、その冴えない彼がさっき言ってた待ち人ではないだろね?」
「そうよ、なんか文句でもあるの?」
セリアが怒ったように言い返す横で智春は地味に傷つく。
「ふっ、とんだ妄言を、いいからこっちに来るんだ!」
ルドラスはイライラしたようにセリアの腕をつかむと引き寄せる。
とっさの事に反応できなかったセリアはそのままの勢いで抱きしめられた。
「いや!離して!」
「大人しくしろ、この私の女になれるんだ名誉なことではないか。ほら、エリーゼもこっちへ来なさぶふっ」
「きゃあ、」
エリーゼに手を伸ばしたルドラスはそのまま後ろに吹っ飛び、取り巻きたちを盛大に巻き込んで倒れる。
もちろん、智春が蹴り飛ばしたのだが、智春はセリアからルドラスに抱きしめられた跡を消すかのように強く抱きしめる。
(あれ?何だろうこの気持ち・・・この前よりもイライラする・・・そうか、俺は・・・)
「痛いわ、トモハル」
「あ、ああ、すまん!」
「あっ!」
何かの結論に至った智春だったが、セリアに思考を遮られて自分の体制に気付き、セリアを離す。
セリアは名残惜しそうに声を漏らしたが、ルドラスが起きて来たせいでそれどころではなくなった。
「き、貴様!!この私を蹴り飛ばすとは!決闘だ!かけるのはお互いの命だ!!」
頭に血を登らせたルドラスは手袋の片方を外し、智春に投げつけた。
「いいだろう、受けて立つ。」
「ダメよ、トモハル!」
「・・・危険・・・あいつは何してくるかわかんない・・」
「いや、二人には悪いがこれは引けない。今すぐに決闘でいいか?」
「当たり前だ!貴様など一分たりとも長生きさせてやるものか!」
頭に血が上っているルドラスは肩をいからせながら取り巻きを連れて外へ出る。
冷静に見えるが何気に頭に血が上っているのは智春も同じだった。
外へ出るとルドラスが剣を構えて待っていた。
「最期の別れは済ませたか?ふん、殺される相手の名前ぐらい知っておきたかろう。私はルドラス=ダラスだ。この決闘はどちらかの息が絶えるまで続ける。審判はロッカ!貴様がやれ。」
「はい、謹んで。」
取り巻きの中からロッカが出て来て二人の間に立った。
「おい、貴様、武器を倉庫からとって来い、それまでの間くらい待ってやろう。」
「いや、お前ごとき素手で十分だ。」
「なに!」
「貴様!ルドラス様になんて口を!!」
智春の態度にルドラスはさらに怒りを募らせる。
「そんなに死にたいならいいだろう。殺してやろうじゃないか!おい、始めろ。」
「はい、では、両者位置に付いてください。では、始め!」
ロッカの掛け声とともにルドラスが切り込む。
「はっ!避けてばっかりで口ほどにもないやつだ。さっさと後悔しながら死ね!」
剣を避けるばかりの智春を馬鹿にし、ルドラスは追い詰めるように剣を振るう。
「くそ、くそ、くそ、バカの一つ覚えの様によけるだけしやがって早く死ね!」
20、30と智春が剣を避けるうちにルドラスは苛立ったように剣を振るう。
「ふん、バカはお前だ。剣を振るうのに気を取られ過ぎだ、バカ。」
智春は剣を避けながら死角からルドラスの足をかけ、こけたところの襟首をつかみ引き寄せてからその手に持った剣を蹴り飛ばす。
「とどめだ!」
「ま、待ってくれ!」
智春が喉を突こうと手刀を作り腕を引いたところでルドラスが待ったをかける。
「待ってくれ、俺が悪かった、この件からは手を引くからどうか、命だけは助けてくれ。」
醜くも命乞いをするルドラスに智春の中で熱く燃え上がっていたものがスッと覚める。
「くそ、興ざめだ。二度とその面見せるな。」
「あ、ああ・・・・・・なんてな!は!馬鹿め!『ファイヤーランス』」
智春がルドラスを地面に放り棄て、踵を返したところでルドラスがポケットから何かを取り出し魔法を放つ。
「『カウンター』」
「な、なに!ぎゃあああああああ」
智春が振り向きもせず放った自作魔法『カウンター』に『ファイヤーランス』があたり、その効果通りに『ファイヤーランス』はルドロスに跳ね返りその体を焼いた。
自業自得、この言葉が似合う結果となた。
「と、トモハル・・・行こうか・・・」
「・・・ごめんなさい、・・・」
申し訳なさそうで、心配そうな二人の元に智春は戻る。
セリアの顔を見ると智春は自然と顔が赤くなる。
「お、おう、待たせたな。」
智春は不自然にならないくらいに目線をそらしながら移動しようとした。
「おい、そこの二人。ちょっと学園長室まで来てもらおうか。」
だが、そんな智春たちの前に人影が立ちはだかったのだった・・・・・
毎度毎度、遅くなってすみません。
もう、遅れるた時間が正規の時間という事で・・・ダメか orz
今回もこのお話を読んでいただきありがとうございます。
まだまだ、続くのでよろしくお願いします。
感想もお待ちしております。




