第三章:学院編 23話:ファッションショーと戦闘科
先週は休んでしまいごめんなさい。
今週も大変遅くなりました。
23話:ファッションショーと戦闘科
あくる日、智春は与えられた研究室にこもっていた。
研究室は授業に使っている教室の半分くらいの大きさで、小学校の教室くらいの大きさがある。
現在、智春の研究室にはバナードからもらった研究資料や資材しかない。
この学院では、生徒のいろいろな方面での活躍を支援するため、教師からの推薦さえあればいろいろなことが行え、また、少額ながらも予算さえつけてもらえる。
そして智春は現在、支給された予算で研究材料を注文し、それが届くのを待っている状態である。
智春独自の研究ができない現在は、バナードから借りた研究資料をあさったり、彼の研究の助手を務めたり、頼まれた研究を進めたりしているのだ。
セリアたちには週末の内どちらか一日は研究室に籠ることを宣言しているため、買い物の誘われることはない。
智春は授業が無いことをこれ幸いに研究室に閉じこもって一人で黙々とバナードに頼まれた研究を進めていた。
内容は『飛空艇の動力装置の省エネ化』というもので、内容の通りバナードから預かった飛空艇の動力装置を図面をもとにいじりながらどれだけ魔力コストを減らせるかの実験を繰り返しているのだ。
朝から研究室に閉じこもってもう十数時間、お昼を少し過ぎた頃であったが智春は昼食もとらずに実験を続けていた。
「んーと、ここの魔法式にはもう少し遊びを入れて・・・そうすればここがこうで、っと、ダメだ。どこかの魔法回路が詰まってる。んー、どこだ?・・・っつぉあ!」
智春は首筋に冷たいものがあたり、驚いて飛び上がった。
「な、なんだ?」
「・・・飲物・・・お昼持ってきた・・・食べた?・・・」
振り向いた先には、金属製の水筒を手に持ったエリーゼがかわいらしく小首を傾げていた。
「はあ、エリーゼか・・・びっくりした~」
「ん・・・何度読んでも気付かなかった・・・・だからお仕置き・・・」
「そうだったか、すまん集中していて気付かなかった。」
「ん・・・それはもういい・・・お昼食べた?・・・」
苦笑しながら謝る智春にエリーゼが再び尋ねる。
「いや、まだ食べてない。」
「そう・・・じゃあ休憩・・・一緒に外で食べよ・・」
「そうだな、じゃあちょっと購買でお昼買ってくるから待っててくれ。」
智春はそう言って部屋を出ようとしたが、エリーゼに服の裾をつかまれた。
「必要ない・・・トモハルの分も作って来た・・」
「え?エリーゼの手作り?」
「ん・・・最初に言った・・・私料理得意・・」
エリーゼはその凶悪な胸を張って言うと、智春の腕を取って歩き出した。
「おっと、エリーゼ待って、鍵、鍵閉めないと。」
智春は引っ張られながらもワタワタと戸締りをして、二人仲良く歩いて行った。
校庭に着くと二人は木陰の草の上に腰を下ろした。
あたりには日向ぼっこをする学生やカップルが数人いた。
「・・・召し上がれ・・・」
エリーゼは二つのお弁当箱を取り出す。
一つ目のお弁当箱にはサンドイッチがぎっしり詰まっていた。
もう一つには、唐揚げやウインナーなどのおかずが入っている。
「うお、うまそうだな。いただきます。」
智春はまずサンドイッチにかぶりつく。
「うまい!」
サンドイッチには、少しあぶった厚切りベーコン、トマトとレタスに似た野菜の三種類の具材が入っており、マスタードも効いていた。
「そう・・・口に合ってよかった・・・」
エリーゼは嬉しそうに頬を染めて笑う。
それから二人は談笑をしながらランチタイムを楽しんだ。
「なあ、エリーゼ、土魔族って種族の特徴ってどんなのだ?」
「ん?・・・ドワーフの特徴は他種族よりも土系統の魔法を得意とすること・・・手先が器用な事・・・あと、頑固なところ?・・」
「ふーん、そうか・・・外見の特徴は?」
「・・・個人差があるけど、大体のドワーフはひげが長い・・・それくらい・・・」
「ふーん、背丈とかは人と変わんないんだな。」
「ん・・・当たり前・・・どうして今頃?・・」
「あ、ああ、俺は人族だけしかしないところで生まれたからドワーフを見たことが無かったんだが、昨日会ったドワーフが想像と全然違ったから気になったんだ。」
「そう・・・」
智春の必死の言い訳にエリーゼは小さく頷いた。
「・・・どんな想像だったの?・・・」
「ん?ああ、みんな背が低くて、太っていてひげの長いずんぐりむっくりな姿だと思ってたんだ。」
「っぷ、ふ!・・・・ぷはっ!あはははは・・・トモハル・・それは失礼すぎる・・・」
エリーゼは目に涙を溜めて大爆笑していた。
智春は思いがけないエリーゼの反応に驚く。
「はは、エリーゼもそんな風に笑うんだな。」
「む・・・なんだかトモハル失礼・・・」
不機嫌そうに頬を膨らませるエリーゼに智春は笑いかける。
「ごめん、ごめん、そういうつもりじゃなかったんだ。」
「むう・・・まあいい・・・それより、トモハルの故郷の話聞かせて・・・」
エリーゼのうさ耳は好奇心に揺れる。
「んー、俺の故郷か・・・また今度じゃダメか?」
智春はエリーゼに自分が異世界から来たことを知られるのにためらいを感じた。
自分をこんなにも慕ってくれ、色々よくしてくれるエリーゼが離れていくのが怖くなったのだ。
「む・・・そう・・・じゃあまた今度・・・約束よ」
「ああ、すまない、きっと話すよ。」
何かを察したように引いてくれたエリーゼに感謝をしながら智春はきっと卒業までに話そうと心に決めたのだった。
研究室に戻る途中で二人はバスラと会った。
「おお、アオヤマ。ちょうどいい、お前を探しているところだった。」
「ん?どうしたんだ?」
「ああ、お前たちの制服が完成したから一階の小教室に集まるってくれ、一度着てみて裾などを縫う作業をするんだ。」
「おう、了解だ。」
「・・私も付いて行っていいですか?・・・」
「ああ、特に問題はないだろう。では、急げよ。」
「おう、」
バスラが去った後、二人は一階に向かう。
指定された部屋に着くと、眼鏡をかけた細身の女性がいた。
「ああ、貴方がトモハル=アオヤマさんね。これが貴方の制服よ。そっちが更衣室だから着替えてきなさい。」
女性はハンガーにかかった制服を智春に渡し、部屋の右隅のドアを指す。
「ああ、」
「・・・着替えるの手伝う・・・」
「いや、一人で大丈夫だぞ。」
エリーゼの提案に智春は子供じゃないんだからと断る。
「・・・手伝う・・・」
「い、いや。」
「手伝う」
「あ、ああ。頼む。」
「ん・・それでいい♪・・」
エリーゼの威圧に智春は冷や汗をかきながら首を縦に振る。
エリーゼは機嫌よさそうに耳と尻尾を揺らしながら智春の腕をつかんで更衣室に入る。
更衣室に入ると下着姿のセリアたちが・・・なんてことも無く、
エリーゼにカッターシャツのボタンを留めてもらったり、裸の時に筋肉を触られたりしながらも制服を着終える。
「トモハル・・・かっこいい♪・・」
制服姿の智春を見て頬を紅く染めながらエリーゼはつぶやく。
「あ、ああ、ありがとな。じゃあ、出るか。」
ぴったりと右腕にくっついてきたエリーゼに苦笑しながら部屋を出ると、そこにはすでに制服を着終えたセリアたちが待っていた。
Let's Show Time
この学院の制服は男子はブレザーとネクタイにズボン、女子はブレザーとリボンにスカートという形だが、デザインは生徒の要望で少々アレンジできるのだ。
また、制服の色も生徒本人が決めることができ、それにうまく合わせるように服飾店の技術者がアクセントなどを入れるのである。
まずは智春から見ていこう。
智春は地球の制服を意識した無難な黒のブレザーに藍色に白と水色のラインの入ったネクタイと深い藍色に薄い水色でチェックの入ったズボンで、左肩には智春の学生証のバッチと同じ模様が刺繍してある。
サイズもきつ過ぎず、緩すぎないフィットサイズで、まあ、地球にいる学生そのままである。
味気ない野郎の描写はここまで、
次はセリア、
セリアは、髪の色に合わせた薄水色のブレザーとスカートに翡翠色のリボン、そして、袖口やスカートの裾に純白のレースをあしらった制服で左肩に氷の模様が刺繍されている。
サイズはゆったりめだが必要なところは締まっており、やぼったいところはない。
胸元もゆったり目にしているのだが、凶悪なふたつの塊は自己主張を忘れていない。
彼女の美貌と合わせるとまるでおとぎ話のお姫様のようであり、精霊らしく神秘的な美少女である。
二番手レイラ、
レイラは智春と同じ黒のブレザーとグレーと白のチェックのスカートに藍色に白のラインの入ったリボン、特にオプションは付いていないいかにも ま・じ・め な印象の制服で左肩に学生証と同じ模様が刺繍されている。
サイズはディス・イズ・ザ・ベストにフィットしている。
フィットした胸元はセリアに後れを取るものの程よい大きさの自己主張がある。
彼女の雰囲気と合わせるとまるでクラスのしっかり者、学級委員長のような雰囲気を醸し出している美少女だ。
三番手メイア、
メイアは髪の色に合わせた紅のブレザーと瞳の色に合わせたオレンジ色のスカートに薄黄色のリボン、オプションは無し、左肩には炎をあしらった刺繍されている。
サイズは少しタイトにしている。
胸元は・・・・まあ、彼女の魅力は別にある。
彼女はうまく着崩した制服で、活発なスポーツ少女の雰囲気を纏った美少女だ。
最後、飛び入り参加エリーゼ、
エリーゼの制服の描写もここで入れておこう。
彼女はその二つ名『白き兎姫』の名が表すように制服の全てがその髪の色と同じ純白、袖口とスカートの裾にはセリアの物に似た純白のレースがあしらわれた制服で、左肩には青と黄色、白の布地に黒で幾何学模様が書かれた刺繍が施されていた。
サイズは胸元以外はフィットしている。
その胸元は自己主張が四人の中で一番激しく、とても窮屈そうである。
彼女はそんの二つ名の表す通り、純白の儚いお姫様のような美少女だ。
「見たところ手直しは必要なさそうですね。では、これで終わりなのでかえっていいですよ。」
服飾店の女性は四人を観察し、自分の仕事に頷くと解散の意を伝える。
「「「「「ありがとうございました。」」」」」
智春たちはお礼を言うと部屋を出て、智春の研究室に向かった。
「ねえ、トモハルどう?似合ってる?」
「あの、私もどうですか?」
「わ、私も!」
「・・・似合ってる?・・」
研究室に着くなり、四人は(なぜかエリーゼまで)智春に聞いてきた。
「あ、ああ、みんなよく似合ってる。」
「・・・可愛い?・・」
「あ、ああ、可愛いよ。」
「・・やった♪・・」
正直に感想を述べるとエリーゼに「可愛い」を求められ、それのせいで全員に「可愛いよ」と言ってあげる羽目になった。
キザったらしくて赤面ものである。
そんなこんなで智春が恥ずかしい思いをしている時に不意の訪問者が現れた。
「トモハル氏!ご助力願いたい!」
ノックの音と共にそんな声が扉の外から聞こえて来た。
廊下には智春のクラスメイトのサバラダ=カダラクタが立っていた。
「ん?君は確かカダラクタさんだったか。どうした?」
「私の事はサバラダでいい、それよりトモハル氏内密に話がある。少し時間をくれないか?」
「ん?別にいいが」
「そうか、それはありがたい、付いてきてくれ。」
智春はセリアたちに一言詫びを入れて、エリーゼに戸締りを任せてサバラダに付いて行った。
サバラダは智春を連れると人気のない屋外訓練場の道具倉庫に向かう。
『我らの牙は?』
「己が信のために。」
『携えし武器は?』
「知恵と砂塵、信貫くは鎖なり。」
『よし、サバラダだな。入れ。』
道具倉庫に着くと、サバラダは扉越しに合言葉みたいなのを経て倉庫の中に入った。
「よし、こっちは全員そろっている。じゃあ、作戦会議を始めるぞ。」
「ああ、」
中には学院の制服を着た少年たちが六人くらいいた。
「まずは、アオヤマ殿我々の誘いを聞いてくれて感謝する。俺は『ブルーム』の〈風〉のクラスで、この『ブルーム戦闘科男性組合』のリーダーをさせてもらっているアルージャ=ナッジャーだ。以後お見知りおきを。」
「戦闘科男性組合?」
「ああ、それは私から説明しよう。」
智春は聞き覚えのない言葉に首を傾げるとサバラダが声を上げた。
「ああ、頼む。」
「この組織は戦闘科に所属する男子生徒の内現状に危機感を持っている者たちが勝手に集まってできたもので、まだできて間もない。現在ここにいるのはいち早く情報をつかめた者たちだ。ちなみに、アルージャはブルームの代表だったから『ブルーム戦闘科男性組合』と名乗っただけで組織には『シード』や『スプラウト』の生徒もいるぞ。」
「ふーん、なんだかすごそうだな・・・で、その危機感っていうのはどうして?」
「ああ、今回来てもらったのは、その危機関することなんだ。」
「んー、内容にもよるぞ。」
「そうだな、じゃあ単刀直入に言う。アオヤマ殿には戦闘科に入ってもらって倒してもらいたい奴がいるんだ。」
「ん?どういうことだ?」
智春は状況がつかめず尋ねる。
「ああ、まず、この前長男裏で色々やって捕縛されたダラス侯爵って知ってるか?」
「あ、ああ」
心当たりがありすぎる智春はなずく。
「その侯爵家の三男なんだが、俺たちと同い年の奴がこの学院にいて戦闘科に所属しているんだがそいつを倒してもらいたい。なんでも、アオヤマ殿は全属性適性者でさらにCランクの冒険者なんだって聞いてな、頼むことになったんだ。」
「ああ、別に倒してもいいんだが、そいつもなんかやっているのか?」
智春の問いかけに一同に緊張が走る。
代表してサバラダが口を開いた。
「トモハル氏、奴は自分の家の権威をかさに着て威張り散らし、他の貴族出身の生徒を取り巻きにして気に食わない奴を影でいじめたりしているんだ。其れなのに本人はかなりの実力を持っているから手が付けられないんだ。」
「そうか・・・」
「それだけじゃない!」
智春の言葉をアルージャは怒鳴り声で遮る。
「それだけじゃないんだ、奴は、奴は、あのホワイトプリンセスに言い寄るばかりでなく、嫌がるプリンセスを無視して肩を抱いたりいろいろと極悪非道なぁぁぁぁ!」
怒りが湧き上がって来たのか、もう言葉が出てこなくなったが怒気だけは伝わってくる。
「え、えっと、エリーゼになら俺も親しくしているんだが。」
「ああ、君の場合はプリンセスが望んでいることだ、俺たちに口出しする権利はない。」
「そ、そうか。」
智春は心の中でホッと胸をなでおろす。
「そう言うことだ、トモハル氏、願いを聞いてもらえないか?」
「ああ、どっちにしろ突っかかってきそうだから協力をしよう。」
「そうか、それはありがたい。アオヤマ殿、感謝する。」
「智春だ。そう呼んでくれ。」
「ああ、俺のこともアルージャと呼んでくれ。よろしく頼む。」
「おう、」
智春はアルージャと硬い握手を交わす。
「じゃあ、まず担任に教科変更を伝えに行くか。」
「ああ、私も付き添おう。」
「トモハル。」
「ん?なんだ?」
出ていこうとしたところアルージャに呼び止められ、智春は振りかえる。
「明日までにここの合言葉を考えておくから明日は放課後にサバラダと一緒に来てくれ。」
「おう、」
今度こそ智春は倉庫を出て職員室に向かって行くのだった。
「バスラ先生、戦闘科の授業もとることにしたんだが変更を頼む。」
「ん?そうか、じゃあ手続きをしておこう。ああ、そう言えばまだ一度も授業に来てないから知らないだろうが担当教師は私だ、よろしく頼むぞ全属性。」
「へ?は、はい!」
智春はバスラの笑顔に恐怖を感じ、丁寧な返事を返してしまった。
これ以降、智春はバスラには敬語で話すようになったのだった。
閑話休題
最近執筆の時間が取れず、ずっと押し気味です、はい、何とかします。
このお話を読んでいただきありがとうございます。
なんとか一週間間隔を保ちたいのですが、善処しますが時々空くかもしれません、その時は活動報告でお伝えしますのでご足労をおかけしますがそこでご確認ください。
では、また来週もよろしくお願いします。
どんなものでもご感想をお待ちしています。




