第三章:学院編 20話:黄金色の記憶
ついに、20話到着
応援してくださった皆様本当にありがとうございます。
20話:黄金色の記憶
※今回はころころと人称が三人称から一人称に変わります。
《View Point⇒???》
あたしは不安になる気持ちを何とか抑える。
最近はなんだかあの人の顔を思い浮かべると少し楽な気持ちになった。
この嫌な仕事が決まった日にぶつかったみすぼらしい身なりあたしを気遣ってくれたあの優しい笑顔を。
家元からさらわれ、盗賊のところに来てから何人もの人を殺した。
最初の時は一晩中眠れなかった。
頭領はあたしに殺しの経験を積ませるとすぐに私の隠密性を鍛えはじめ、そのおかげであたしは人を殺すことから離れることができていた。
なのに、今夜の仕事は暗殺・・・気持ちが重くなる。
準備のできた私は二階にあるあたしの部屋の窓から飛び出し、屋根を伝って夜の街を駆け抜ける。
フードの穴から外に出たあたしの黄金色の耳は気配を探るために隠すことができないが、月明かりに紛れて周りに見えないことを祈ろう。
あたしのふさふさで先っぽが少し銀色でそれ以外は耳と同じ黄金色の尻尾、いつもお母様がほめてくれていた自慢の尻尾は今はマントの中にしっかり隠れている。
だから、今はあたしはあたしじゃない、こんなことしているあたしはあたしなんかじゃない。
認めたくない・・・・
そんなくらい考えばかりが頭をよぎる。
最近は楽しかったあのころのことはあまり思い出さなくなった。
その代り、ここ数日は彼のあの笑顔が私の支え。
はあ、やっぱり暗殺なんて嫌だ。
今までの盗みや毒を盛るのだってとても嫌だった。
嫌だ嫌だと考えると棟梁の言葉が頭に浮かんでくる。
『暗殺の依頼なんて今まで来てなかった方がおかしいんだ。ただ、今回成功すればこれからももっと暗殺することになるんだ。今日のうちになれておきな。まあ、わざと失敗したら生きて帰って来ても次の暗殺者を生み出す道具になってもらう、死んだ方がましって思いが続くぞ。』
頭領の下卑た表情を思い出し、私はブルっと身をふるう。
はあ、考え事をしているうちに目的の建物が見えて来た。
魔法学院、今回のターゲットの冒険者が今暮らしている建物だ。
あたしは事前の情報で聞いていた学生寮のある一室に窓から音もなく入り込んだ。
部屋の中を照らすのは月明りだけだ。
あたしはベットの足元まで地下より暗殺ようの短剣を引き抜く。
そしてベッドで眠る少年の顔を見てはっとした。
あの人だった。
あたしが遮っていた月の光が照らしだした少年はここ数日あたしの心の支えだったあの彼だった。
あたしは運命を呪った。
いくら彼でも暗殺はやめられない、あたしのために。
あたしは震える手を押さえつけ彼にまたがる。
首を一突きしようとしたその瞬間、視界が回った。
彼の顔が目の前に見える。
唇に柔らかい感触がくる。
そんな混乱した思考の中、あたしは眠りに落ちて行った。
心の端で幸せを感じたのは秘密である。
《Regular Point》
智春はふわふわした感覚でどこかの空間をさまよっていた。
(ああ、これは明晰夢ってやつだな)
智春不安定ながらも自分の状況を分析していた。
(んー、どうやったら起きれるだろうか・・・・・ッ!?)
さまよいながら智春は出口を探す。
すると、その智春を眩しい光が包み込んだ。
気がついた智春の目にはどこかの壁が飛び込んできた。
「ふふふ、カノンちゃん。あんまり寝てると夜眠れないわよ。」
突然の声に智春が振り向くと、部屋にあったソファーに女性が座っていた。
その女性はこちらに背を向けているので表情は見えないが、膝に乗った何かを撫でながら優しそうな雰囲気が伝わってくる。
だが、智春が一番気になったのはその女性の頭に付いている綺麗な黄金色をした三角の狐耳だった。
「うぅん、お母様・・・・」
「ふふふ、全く、こんなだらしないところはお父さんに似てしまったのね。」
その女性は全く困ってなさそうな感じで膝枕で寝ているであろう少女を撫でる。
「あ、あの、すみません・・・」
智春はおずおずとその女性に話しかけるが女性は気づく様子が無い。
「お母様、お父様はまだなの?」
「ええ、カノンちゃん。お父さんが帰ってくるのは夕方よ。それまでにお料理作ってお父さんを驚かせましょう。」
「やる!」
ソファーの背もたれの影から活発そうな12、3歳くらいの少女が起き上がり、目を輝かせる。
その少女も母であろう女性とおそろいの黄金色の狐耳が頭に付いていた。
「ふふふ、じゃあカノンちゃん、厨房に行きましょう。」
「はい、お母様!」
智春を取り残して二人は部屋を出て行った。
(おそらくだが、この夢はあの女性か少女の物だろう・・・)
智春が考察していると急に場面が変わる。
気がつくと次は食堂にいた。
食堂には先ほどの二人の孤人族の女性と新しく耳も尻尾も美しい銀色の孤人族の男性が食卓を囲んでいた。
「ふふふ、あなた。そのサラダはカノンちゃんが作ったのよ。」
「ん!なに!本当かカノン?」
「うん、お父様。あたしが作ったの。おいしい?」
「ああ、もちろんだ。カノン。これならいつか母さんに負けなくらい料理が上手になるんじゃないか?」
「やった!頑張る!」
「うふふ、そうね、頑張りましょう。」
三人の孤人族の団らんを智春はただ傍観する。
(うーん、時間がたてばきっと出られるだろう・・・)
智春はボーっと二人の黄金色の耳を眺める。
智春は二度寝の時に視界の端にとらえた黄金色の物を思い出す。
(ははは・・・・まさかな・・・)
智春が乾いた笑みを浮かべる。
しかし、部屋に侵入してきたのが彼女たちのどちらかだとしても、なぜ見ず知らずの彼女が智春の部屋に侵入してきたかが分からない。
智春がそんなことを考えているうちに周りの風景がまた変わった。
今度は寝室に出る。
部屋の真ん中にある天蓋付のベッドに寝ていたのはさっきの少女の方だった。
(なるほど、つまりこれは彼女の夢だったか・・・)
智春が納得した風に頷いていると急に窓の外が騒がしくなった。
「ッ!・・・・」
さっきまで眠っていた少女は騒ぎに気付いたのか飛び起きて窓の外を見て、顔を真っ青にする。
廊下を誰かが走っていく音や剣の打ち合う金属音、怒号や悲鳴などが部屋まで届いた。
少女は怯えてベッドの下に潜り込む。
少したって剣戟の音が止み、複数の足音が近づいてくる。
バンッ
乱暴に部屋のドアが開けられ、盗賊風の男たちが入ってくる。
「おい、金目の物は全部奪え。後、ここにはいなかったが屋敷のどこかに小娘がいるはずだ。そいつも捕まえろ。獣人族の奴隷は出すところに出せば金になるからな。」
「「「へい」」」
男たちは部屋の物を物色しては袋に詰め、部屋を出て行こうとした。
「ちょっと待て。」
しかし、リーダーっぽい男の呼び声で男たちは立ち止まる。
「どうしたんですかボス?」
「いや、何となくだがこの部屋に小娘がいる気がする。おい、お前、ベッドの下も見ろ。」
リーダーの男は一番下っ端の男を指名した。
「へい」
(なっ!・・・)
智春は息をのむ。
他人の夢だからか一切の干渉ができない智春は人間はおろか物体にも触れることができず、辟易しながら盗賊たちを見ていた智春はどうにかならない物かと頭を巡らせる。
「頭領。下にいやした。おい、こら、出てきやがれ。」
「いや!離して!お父様!お母様!助けて。」
ベッドの下から引きずり出された少女は精一杯の抵抗をするが、非力な少女の力では逃げることができない。
「はっはっは、威勢のいいガキだ。それに一度だが俺の目を騙すほどの隠密性か・・・使えるな。おい、てめえら。こいつには一切手を出すな。こりゃあ竜の卵だぜ。」
リーダーの男は下卑た笑みを浮かべる。
(ん?・・・竜・・・そうだ!)
智春は昼間の授業を思い出して、ある方法を思いついた。
智春は抵抗する少女を引きずっている男に近寄ると、魔力を拳に纏わせてぶん殴った。
「がはっ!?」
「!!?」
「よし、成功だ。」
男が吹っ飛び、少女が初めて智春の存在に気付いた。
智春は他の男たちも倒そうと男たちの方を向いた。
「な、なんだあいつは!どっから入ってきやg・・・・」
リーダーの男が狼狽した声を上げ、智春がそれを攻撃しようとした矢先、世界が闇に包まれた。
「ど、どうして、貴方がここに?」
少し大人っぽくなった声に振り向くと、さっきの少女が今度は17,8歳くらいの姿で立っていた。
少女は耳を出す穴がついたフードを目深にかぶり、全体に闇に溶け込みそうな黒い服装をしていた。
「あー、それは俺もわからないんだ。気付いたここにいた。」
「!、全部見てたの?」
「ああ、済まない。ただ、どうやって出るかがわかんないんだ。」
「出るも何も、ここは死後の世界じゃないの?」
「へ!?」
少女の突拍子の無い言葉に智春は驚きの声を上げる。
少女は不思議そうに小首を傾げながら話す。
「あたしはあなたの暗殺に行ったんです。そこで貴方からの反撃の魔法にあって、そこで命を落としたと思っていたのですが。違うのですか?」
「え!?暗殺?・・・てことはやっぱり部屋に入って来たのは君だったのか。」
「ええ。貴方もいるってことは相討ちだったのでしょうか?」
「そう言う事か・・・幸運なことにここは死後の世界じゃないぞ。夢の中だ。君のな。」
「夢の中!」
今度は少女が驚く番である。
「ああ、俺が使った魔法は催眠魔法だ。その、唇を奪って悪かった。」
「き、気にしてないです。」
少女は気を失う前の事を思い出したのか顔を赤らめてそっぽを向く。
「そうか、そう言ってくれるとありがたい。」
「っつ、貴方はどうしてそんな優しい態度なんですか!私はあなたを暗殺に来たんですよ。責められるいわれはあっても、感謝されるいわれはありません!」
少女はどこか縋るように智春に感情をぶつけた。
「そんな事言われてもな・・・あんなの見た後じゃ・・・」
「っつ、ど、同情なんていりません。起きたらすぐにわ、あたしを殺してください。」
「それは・・・無理だ・・・」
「っつ、何言ってるんですか?私はあなたを殺しに来たんですよ!あたしは貴方に殺されて当然なのですよ!」
「じゃあ・・・なんで君は泣いてるんだ?」
「へ!?、な、なんで・・・ヒクッ、」
少女は自分の頬を触って涙に気付くと、そこからはダムが決壊したように泣き出した。
「うぅ、お、おかーさま、おとーさま、うわぁぁぁん。」
「・・・・・・・」
「ッ!、うわぁぁぁん、ご、ごめんなさい、でも、でも、ごめんなさーい」
泣き崩れそうになった少女を智春が無言で抱き留める。
少女は智春の胸に頭を預け、泣きじゃくる。
数分経って、落ち着いた少女は智春から離れないままぽつぽつと語り始めた。
「あたしのお母様とお父様はあの時すでに殺された後でした。あの男はそれをあたしに見せつけて、あたしが弱ったのを見計らって隷属の魔法をかけたんです。」
「なっ!じゃあ、君はそのせいで暗殺なんてことをしていたのか?」
「ええ、あたしはお母様たちの最期を見て死がとても怖くなったんです。自分勝手な理由ですよね、ごめんなさい。」
少女は悲しそうにつぶやく。
隷属の魔法は、それを掛けられて隷属させられたものが、かけたものの命令に従わなかった場合隷属させられたものの命を奪う禁忌の魔法である。
その為、現在では使用が禁止されており、その魔法によって犯してしまった犯罪は減刑される。
「そんなことはない。誰だって死ぬことは怖いさ。ましてや君はあんなことをされたんだから。」
「ふふふ、貴方はやっぱり優しいですね、トモハルさん。その、言いにくいのだけど一つお願いを聞いてもらえないですか?」
「ん?なんだ?」
少女は恥じらうように頬を紅く染める。
「その、あたしの今回の命令は『明日の昼までに帰還すること。』なんです。こんなこと聞いたら貴方は優しいからあたしを殺さずに帰してくれるつもりでしょ。でも、今回失敗したらあたしはあの男たちの性処理道具にされるんです。ですからお願いします、あの男たちに穢される前にあたしを抱いて欲しいんです。あたしが初めて恋をした貴方がいいんです。」
「なっ!え!」
智春は突然の事に面喰い、うまく言葉が出ない。
「ふふ、ごめんなさい。迷惑ですよね・・・ありがとうございます、最後に貴方に会えてよかったです。そして、こんなとこで言うのは卑怯ですけど、あたしは貴方の事が好きです、トモハルさん。」
少女、カノンは一瞬微笑みを浮かべると、また笑みを消した。
不覚にも智春はその笑顔に心をときめかせた。
「さよならです、ありがとうございました。」
カノンがそう言い残すとあたりは白く染まり、カノンの姿が影のようにドンドン薄くなった。
「ま、待って!」
智春は慌てて手を伸ばすが、つかむのは空気ばかりだった。
カノンの姿が消えて数秒のちに、智春の魔法が破られる感覚がした。
《View Point⇒カノン》
あたしは幸せだった夢から覚めるとすぐにトモハルさんの手を跳ね除け、部屋の窓へ駆ける。
飛び出す瞬間、トモハルさんが目を覚ましたように身動きをした。
魔力の流れを感じ、トモハルさんが何かの魔法を使おうとしたようだけれどあたしはそれから逃げるように飛び出す。
時間帯はもうすぐ夜が明け、太陽が顔を出すくらいだった。
あたしはまだ残っている街の影に潜むようにしてアジトまで疾走した。
途中、これからの事を考えると何度も足がすくみそうになる。
あたしはそのたびに、トモハルさんの唇の温かさと柔らかさを思い出し、何とか駆け抜ける。
心の中で、お母様とお父様に(もうすぐ会いに行きます。)と、語り掛けながら走る。
意外と怖くはなかった。
トモハルさんの温もりがあたしを支えていてくれた。
アジトに着いた。
いつみても陰気くさい、不快感しかわいてこない建物だ。
どうしてだろう、周りの建物とはそんなに変わんないのに。
あたしは今までで一番勇気を振り絞って小屋の戸を開ける。
「おう、首尾はどうだ?ノン?」
ここの男たちはあたしのことを『ノン』と呼ぶ。
これは、この盗賊団に仲間入りしたときに頭領が勝手につけるのだ。
あたしは入り口の男に首を横に振った。
「はぁ?まさか失敗したとでも言うのか?」
「ええ、殺せませんでした。」
「っち、クソが!この役立たずめ!来い、頭領から裁きを受けるんだな。」
男は忌々しそうに唾を吐き捨てると顎であたしに来いと示し、奥に入っていく。
あたしは素直に従って歩いた。
一番奥の部屋に着く。
「頭領、ノンが帰ってきました。」
「おう、入れ。」
中からあの憎い男の声がする。
あたしは男に促されて入った。
入り口の男は肩をいからせながら、また入り口の戻って行く。
頭領は机に付き、何かの資料を読んでいた。
「おう、ノン。首尾はどうだった?ちゃんとやれたか?」
「いいえ、殺せませんでした。」
今までニヤニヤしていた頭領の顔つきが変わる。
「おい、お前はその意味が分かって言ってんのか?」
「はい」
あたしが即答してやると、頭領の額に青筋が立った。
「テメー、役立たずが!今すぐそんな口叩けなくしてやる!」
頭領は立ち上がりあたしの腕をつかむと、部屋のもう一つの扉の中に叩き込んだ。
「きゃあ!」
中は頭領の仮眠室になっていて、小さな部屋にベッドが一つだけ置いてある。
「おい、命令だ『今すぐ服をすべて脱げ。』」
あたしは隷属魔法のせいで、服を脱ぎたいという気持ちが湧き出て来て、逆らうこともできずに服に手をかけた。
「はん、舐めた口きいたのを後悔させてやる。」
頭領は下卑た笑みを浮かべ、一糸まとわぬ姿になったあたしをベッドに押し倒した。
頭領の臭い顔が近づき、あたしは恐怖と嫌悪で震える。
ドガンッ
そんな音と共に一瞬で頭領の顔が視界から消える。
「な、なに?」
私が驚いて見つめた先には・・・・・
《Regular Point》
智春はカノンの夢から出るとともに、意識の覚醒を急ぐ。
何とか意識がはっきりしてきたとき、窓辺へ急ぐ気配がした。
(やばい・・・間に合え・・・)
智春は一瞬で魔力を練ると、自作魔法の『シャドウチェイサー』を発動した。
この魔法は対象者の影にマーキングをして、対象者の位置情報を把握するという魔法である。
智春の魔法は何とか窓から飛び立つカノンの影にマーキングを施した。
智春は魔法の発動状況を一旦確認すると次の行動に移った。
(セリア!今すぐ来てくれ!)
智春は首にかかったメイアの『契約石』の着いたネックレスに通している、セリアの指輪に念じた。
「ふぁぁ、何よ急に・・・まだ、早朝よ・・・」
セリアは眠たそうに目をこすりながら、智春の部屋に現れる。
「すまん、セリア。緊急事態だ、助けたい人がいるんだ。手伝ってくれ!」
「な、なによ大声出して・・・その人って女なの?」
「ああ」
智春が即答すると、セリアは不機嫌層にそっぽを向いた。
「・・・・・て・・・・のよ」
「へ?なんだ?」
そっぽを向いたセリアは小さな声で何かつぶやく。
「何でもないわ!ただし、条件として今度の週末、一日デートすること。いいわね?」
「ああ、そのくらいなら簡単なもんだ。」
「で、何すればいいわけ?」
セリアは首を傾げる。
「ああ、あともう少ししたら盗賊団のアジトを襲撃する。セリアはそれのサポートをしてほしい。」
「へ?なにがどうなってんのよ!」
「すまんが、説明している時間が惜しい。とりあえず、今から冒険者ギルドに向かうから・・すまん。」
「え?なに?・・・きゃあ!」
智春は一言言って、セリアをお姫様抱っこした。
「しっかり掴まってくれ。」
智春はそう言うと窓から飛び出す。
「世界を漂う大気の流れは、人をも持ち上げ空を漂う、『エアウォーク』」
智春は即興で魔法を作り上げた。
簡単に言うと風を操って空を歩く魔法である。
智春は陽が差してきてだんだん明るくなって来た街を疾走した。
セリアが智春の胸に顔をうずめ、震えていたのは触れないでおこう。
数分もかからず智春たちは冒険者ギルドに到着した。
冒険者ギルドは基本的に24時間営業なのでこんな時間に訪ねても安心である。
「すみません、ギルドマスターに会わせてくれ!」
智春が駆け込むと、なんと受付にはビビア本人が座っていた。
「あーれー、トモハル君にセリアちゃんじゃない!なになに?二人で逃避行?駆け落ち結婚?」
ビビアは智春たちを見るとすぐにはやし立てる。
「な、ち、違う!これは時間節約のために、じゃない!すまんが協力をしてくれ!盗賊団のアジトを襲撃したいんだ!」
「へ?なになに?なんか面白そーだね!よし!協力しよー!」
「へ?な!ビビア様?」
急な展開にビビアの隣に座っていた女性職員が涙目である。
「うん、盗賊退治だから立派な冒険者の仕事だよー、君は今すぐ街の衛兵の詰所にすっ飛んで行っちゃいなさーい。で、もうすぐでバローナちゃんが帰ってくると思うから、衛兵たちを連れて私のところに来るように言ってね~おねがーい。」
「は、はいーー」
職員の女性は涙目ダッシュである。
「よし、じゃあ、いこーか!盗賊退治♪」
早朝とは思えないテンションで事態があっという間に流れていく。
「あ、ああ。そのすまない、ありがとう。」
「いーよーいーよー、別に、で、私たちはなにをすればいい?」
「ああ、ビビアとセリアは衛兵たちが来るまで建物の外で逃げ出す構成員の捕縛と周りへのひがいを抑える役をやってほしい。」
「りょーかい、じゃあ、久しぶりに頑張っちゃいますか!」
「あ、ありがとう。っつ、少し事態がやばそうだ!二人ともすまん。」
「「へ?きゃあーーーーーー」」
智春は二人を両手に抱き寄せて、早朝の街を跳んだ。
智春は一軒のぼろ屋の前に二人を静かにおろすと全速力で移動して、奥の方の壁を中の人ごと蹴りぬいた。
「な、なに?」
中のベッドではカノンが一糸まとわぬ姿で横になっていた。
彼女の目の端には涙がたまっていた。
智春は『シャドウクローゼット』からマントを取り出すと、カノンにかけてやる。
「すまん、遅くなったが助けに来た。」
「グスッ、本当に貴方は優しい人ですね・・・」
カノンは智春がかけたマントを愛おしそうに抱きしめた。
「っつ、何だ?クソが・・・」
「おい、お前がこの盗賊団のリーダーか?」
吹っ飛ばされた瓦礫の中から、ボロボロになったリーダーの男が出てくる。
「はん、だからどうしたっていうんだ!たった一人で何ができる。おい、テメーらやっちまえ!」
男のごうれいで、どこからともなく何人もの盗賊たちが襲い掛かってくる。
智春は冷静に、あるものは腕を取り投げ飛ばし、あるものは足を絡めて骨を砕き、またある者は魔力の塊を直接ぶつけ意識を借りとるなど襲い掛かってくる男たちをドンドン無力化していった。
「な、何なんだこいつは・・・」
リーダーの男は忌々しそうに吐き捨てるようにつぶやく。
「と、頭領!衛兵です!衛兵たちがこっちに向かって来ています!」
「っち、クソが!お前ら撤収だ!ふん、ここは破棄だ!」
リーダーの男が何かしようと魔力を練り上げたのを感じた智春は、一旦襲い掛かってくる者たちの対処の手を止め、リーダーの男に肉薄した。
「『ブレイクマジック』」
智春は魔法でリーダーの男の体内の魔力の流れごと破壊した。
「がはっ!な、何を!?」
男は自分の体内の魔力を乱され、苦しそうにうめく。
「いっぺん黙ってろ!」
智春は男を投げ飛ばし、意識を刈り取った。
全部の男たちを縛り終えた智春は、まだベッドの上で震えていたカノンを抱き上げ、外に出た。
「ああ、トモハルもう終わったの?」
「ああ、終わったぞ、後は衛兵の人たちに任せる。」
「ふーん、で、その子がトモハルの助けたかった人ね・・・・」
「か、カノンと言います。」
「あら、私はセリアよ。あと、レイラとメイア、ついでにエリーゼっていうのがいるわ。」
「ん?なんの話だ?」
「唐変朴には関係の無い話よ。」
セリアは意地悪そうに笑った。
「トモハル!もう片付いたか?」
「ああ、すまん。後は頼む。」
「ああ、了解した。で、その娘は捕虜か何かか?」
「いや、それは・・」
「いいえ、仲間でした。」
言いよどむ智春の声にかぶせるようにカノンが声を張る。
「なっ!どういうことだ?」
「違うんだ、この娘は隷属魔法で無理やり従わせられてたんだ。」
「でも、人を殺したりしていました。なので同罪です。」
「そうか・・・隷属魔法か・・・」
「ああ、だから、この娘には減刑とか便宜をはかってくれないか?」
「そうしてやりたいのだが、どんな活動を行ってきたのかも関係するしな・・・」
「そうか・・・」
智春はうつむく。
「顔を上げてくださいトモハルさん。別にここで最後の別れになるわけでは無いでしょう。なので、また会える時まで笑顔でいてください。」
「ああ・・・」
「トモハル、彼女の刑が決まったらすぐに知らせよう。それまで彼女の身柄はこちらで預からせてもらうぞ。」
「ああ、すまん頼む。」
「ああ、心得た。」
「トモハルさん、本当にありがとうございました。チュッ」
カノンは智春に触れるだけのキスをして離れる。
「「あああーーーーーーーーーーーーーー」」
バローナとセリアの絶叫は朝の街によく響くのだった。
今回は少し最後の方が急ぎすぎた感じがしますが、読みにくかったらごめんなさい。
このお話を読んでいただきありがとうございます。
皆様のおかげで、20話まで来ることができました。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
ps:どんなことでもいいので、感想をお待ちしております。




