第3章:学院編 19話:真夜中の訪問者
お待たせしました。
注意
セシリアの名前がセリアと紛らわしいので変更しました
セシリア→エリーゼ
19話:真夜中の訪問者
ダラベスト某所のある一室で三人の密談をする影があった。
三人は真剣な顔をして今夜の議題について話し合う。
「で、その女って言うのはどんな子なの?」
水色の髪の少女が茶色の髪の少女に質問する。
「はい、獣人族の『兎人族』で、白い髪に薄黄色の瞳の、む、胸の大きな娘です。」
「ふーん、貴方から見て胸が大きいんだ・・・・・ふっ」
水色の少女は真紅の髪の少女に視線を向ける。
「おい、ちょっと待てそこの『氷姫精霊』なぜ私の胸を見て笑った。当てつけか?いじめか?」
真紅の少女は自分の薄い胸と水色の少女の胸を見て、半泣きで畳みかける。
あえてここで胸の大きさを表現するなら、水色のセリアが小さい品種のメロンくらい、茶色のレイラがオレンジくらい、真紅のメイアがコタツの上でよく見るみかんくらいとだけ言っておこう。
「いいえ、女の価値は胸だけではないわ。まあ、頑張りなさい。」
「なによその上から目線は。完全に見下してるじゃない。」
メイアは涙目でセリアをにらみつける。
「お二人ともじゃれあうのは後にしてください。それより、トモハルさんにくっつく害虫もとい、その少女にをどうするかについてが今日の議題でしょう。」
そうなのである、これは『第二回トモハル攻略会議』なのである。
「ええ、そうね。確かにそのうさぎは気に食わないけど、トモハルが受け入れてしまっているから私たちじゃどうしようもないんじゃないかしら。」
セリアはため息交じりに考えを告げる。
第二回の会議は最初から暗礁に乗り上げてしまっている。
「それはそうですが・・・むぅ、」
「そうは言っても、なんだかモヤモヤするのよ・・・」
レイラとメイアは釈然としない表情でうつむく。
「はぁ、もう、レイラ、今日はあなたの番でしょう。部屋の鍵開けてあげるから行くわよ。」
「あ、ちょっと待ってください。」
さっさと部屋を出るセリアをレイラは慌てて追いかけ、メイアは何となくそれに付いていくのだった。
入学初日の学院生活を満喫した智春は、今日はいつもより早くに床に就いていた。
部屋の明かりを消し、バナードにもらった『射出』の魔法の安全な利用方法について模索しているうちに智春は眠りに落ちていった。
智春が眠りに落ちた少しあと、部屋の中に急に気配が生まれた。
智春は少し意識が覚醒しかけたが、『どうせまたセリアあたりだろう』と再び眠りに付こうとした。
パサリ
少しの衣擦れの音と何かが床に落ちる音を聞き智春は心の中で首を傾げた。
(ん?なんの音だ?)
意識のはっきりしない智春は寝ぼけ眼でぼんやりと部屋を眺めると、視界の端で何か白いものが揺れた。
智春が疑問を感じる間もなくその白い影は智春のベッドに進入し、智春に抱き着いた。
フニュン
そんな擬音語がぴったりの二つの凶悪なメロンが智春の腕に押し付けられる。
「な、な、」
智春は驚き、言葉にならない声を漏らす。
視線を向けるとそこには妖艶な笑みを浮かべた白うさがいた。
白うさは何も言わず、智春の上に乗り服を脱がせにかかる。
「ちょっ、え、エリーゼ何してんだ。」
「・・・夜這い・・・」
「どっから入って来たんだよ!」
「・・・窓よ・・・」
白うさ、エリーゼは何でもないように答えると服を脱がせる作業に戻る。
「ちょっと待て、エリーゼ、とりあえず落ち着こう。な?」
「む・・・なぜ抵抗するの?・・・『シャドウウィップ』・・・」
「おい!エリーゼ!っと、あぶ。」
「はぁん・・・トモハル積極的・・・」
智春が肩を押し返そうしたのに不満顔を浮かべたエリーゼが『シャドウウィップ』で智春を拘束しようとした。
しかし、それを逃れようと智春がもがいたせいでエリーゼと智春の位置が入れ替わり、智春がエリーゼを押し倒したような形になった。
智春は『ライト』の魔法を使い部屋に明かりをともして、改めてエリーゼの姿を見た。
「お前、ちょっと落ちつ!な、なんて格好してんだ。」
「・・・トモハル、服着てする方が好み?・・・」
そう、エリーゼのその白い肌を隠すものは何もなかった。
智春は慌てて胸やその下に行きそうになった視線を何とか食い止める。
「え、エリーゼとりあえず落ち着け、そして服を着ろ。」
「いや・・・」
「いやって・・・とりあえず話あっ!」
智春の言葉が終わらないうちにエリーゼの唇が智春の言葉を遮った。
(目がやばい!このままじゃヤられる。)
そう感じた智春は自分の試作中にある理由で没になった魔法を発動した。
(『スリーピング』!)
エリーゼは唇から流し込まれた魔力の流れに一瞬驚くが、すぐに目を閉じて小さな寝息をたてはじめた。
そう、この魔法は口内からなど内部に直接魔力を送り込まないといけないため智春は没にした魔法である。
「はぁ、どうなることかと思った。」
「ふーん、どういうことかしら?ト・モ・ハ・ル?」
どこからともなく現れた声に智春はまるで錆びついた機械のようにぎこちなく振り返る。
「せ、セリア、いつからそこに?」
「ん?あなたが嫌がる女の子を無理やりキスで眠らせたあたりかしら?」
まるで絵画の美少女のように美し笑顔を浮かべたセリアだがその眼は笑っていない。
心なしか部屋の気温が下がっている。
「ま、待ってくれ。これは違うんだ。その、えっと。」
「今の状況を見てどう違うのかしら?説明してほしいわ。」
セリアの棘のある言葉に改めて智春は自分の状況を確認する。
暴れて乱れたベッド、脱ぎ捨てられた女性用の下着とネグリジェ、裸で眠っている少女、その少女に覆いかぶさる智春、服は(エリーゼによって)前がはだけ鍛えられた胸筋が見える、詰んだ。
今の智春の状況は『眠る美少女を襲うレイプ魔』そのものの姿であった。
「あの、えっと、これは事情があったんだ。」
「ふーん、いいわ。ならその事情とやらをたっぷり聞かせてもらいましょうか、レイラ、メイア、入ってきなさい。」
セリアは扉の鍵を開け、外に呼びかけた。
「遅かったですが何かあ・・・・」
「ん?どうしたのレイア?へ?・・・」
部屋に入って来た二人はその場で固まり、レイラは瞳に涙をメイアは怒りを溜めた。
「「どういうこと(ですか)トモハル(さん)!!」」
二人は声をそろえて智春に詰め寄る。
「ちょ、ちょっと待ってくれーーー」
智春の叫びはダラベストの暗い夜空に響くのだった。
「ふーん、夜這いに来られて仕方なくねぇ。」
「証明できるの?ただそのおっきなおっぱいに骨抜きにされただけじゃないの?」
「き、き、キスまで・・・・・」
メイアの言葉にはかなり棘が混じっている、まあ女の子には色々あるのだろう。
見下ろす三人の前で正座した智春は事の顛末を何とか説明し終えたところであった。
「はぁ、で、その子はいつになったら起きるのかしら?」
「ん?ああ、エリーゼは俺の魔法で眠らせてるからすぐにでも起こせるぞ。」
「じゃあ、起こして。」
「ああ。・・・『ディスペル』」
智春の魔法でエリーゼにかかっていた魔法がはじける。
「ん・・・んぅ、トモハル。最初は女の子が欲しいわ・・・ん?」
エリーゼは寝ぼけながら起き上がると首を傾げた。
「?・・・トモハル服着てる・・・あと、誰?」
「あら、初めまして。私はトモハルの契約精霊のセリアというの、で、貴女が裸でトモハルのベッドにいる理由聞かせてもらえないかしら?」
セリアは額に青筋を浮かべながらぎこちない笑顔を浮かべ問いかける。
「・・・夫婦の営み・・・これ以上は無粋・・・」
エリーゼが頬を赤らめながら言い、それにセリアたち三人は目を怒らせる。
「ふ、夫婦というのはどういうことかしら?私たちは聞いてないのだけれど?」
「・・・そのままの意味・・・星に導かれたの・・・話す必要がある?・・・」
「か、か、勝手な事をいわにゃいでよね!」
大事なところで噛んだが、セリアはめげない。
「・・勝手もなにも、星に導かれた事・・・いわゆる、運命よ・・・」
「あーーーーー、もう、トモハルは私たちの物なんだから勝手なことしないでちょうだい!!」
セリアは今までにないほど取り乱している。
ちなみに、智春の『俺は俺の物なんだが・・・』というつぶやきは全員スルーする。
「ふっ・・・負け犬の遠吠え?・・・」
「だ、だ、誰が負け犬よ!こうなったら決闘よ!!」
セリアが冷気を放ち始め、エリーゼは魔力を練り、場は張りつめる。
「ちょ、待て、二人とも室内はまずすぎる!レイラ、メイア止めるの手伝ってくれ!」
「いいえ、トモハルさん。泥棒兎には灸をすえるべきです。」
「トモハルは黙ってなさい。」
後ろで成り行きを見ていた二人も凄まじい怒気である。
(や、やばい、建物が崩壊する。)
智春がそう覚悟を決めた時、その声は響き渡った。
「うるさーーーーーーーい、今何時だと思っている!!」
とびっきり不機嫌な表情を浮かべたバスラが部屋のドアを蹴り飛ばして部屋に入ってくる。
智春たちは皆驚き、固まる。
「おい、テレキウス。服を着ろ。」
「は、はい。」
エリーゼはその場に落ちていたネグリジェを素早く身に纏う。
「おい、お前ら。」
「「「「「は、はい」」」」」
「全員、朝まで廊下で正座だーーーーーーーー!!」
バスラの怒号は深夜の学生寮を震わせるのだった。
夜の騒ぎの罰則として智春たちは翌日の午前中を寮内の清掃をさせられていた。
この学院の寮は一フロア五室の八フロアあり、その建物が他に三つ存在している。
智春たちはこれから三日間かけてその全部の建物を清掃するのだ。
一階には簡単な売店と飲食スペース、あと、多目的ホールなどがあり、今智春たちは清掃を終え多目的ホールで一息ついているところだった。
智春は不幸な状況に溜息をつくが、嬉しい誤算に、この清掃を通じてなぜかエリーゼとセリアたちが和解していたのだ。
四人は智春と別の階を掃除していた時に、口喧嘩からなぜか智春の魅力を出し合う戦いに変わり、その結果、青春の喧嘩のようにお互いを認め合ったのである。
しかし、昨日の今日なので今日の夜這いは無しという事もそこで全員の同意のもと決定していたのだった。
午後の最初の授業はエリーゼが受ける科目がなっかたので智春の希望で『魔獣学』の授業の指定場所である校舎裏の開けた場所に向かった。
その場所にはすでに幾人かの生徒と数匹の魔獣獣がいた。
どうやら生徒のペットらしい。
智春たちもその生徒の中に紛れ待つこと数分、中年、小太りの女性教師がやって来た。
「はい、皆さんお待たせしました。今から授業を始めます。ふふ、君が初日から罰則をくらった新入生か、職員室で話題だったぞ。っと、私がこの『魔獣学』の担当を務めるアシリー=サッチャーだ。よろしく。」
女性教師、アシリーはいたずらっぽい笑みを浮かべて言った。
「では、授業の初めにこの学問の基本的内容を確認しよう。まず、この学問の主目的はやはり『魔物や魔獣、獣の生態研究』だね。それとこの授業では魔獣の飼育、契約方法を学ぶ。何か質問は無いかな?」
アシリーの快活な声が開けた裏庭に響いた。
この世界にもやはりファンタジーお決まりの魔獣契約というものがある。
これは無属性魔法の『コントラクト』を用いて魔物や魔獣、獣と契約し、使役するというものである。
そして、この授業はアシリーの言った通り、魔獣たちの生態系を知り、契約、使役を学ぶ授業である。
ちなみに、智春とティアラは『コントラクト』をしていな。
まれにではあるが、人と魔獣が絆を結んで魔法契約以外で仲間になることがある。
智春とティアラはその好例である。
アシリーの話は続く
「魔獣と契約するにあたって一番重要なのはその魔獣との相性だが、それと引け取らないほど重要なのが魔獣について知ることだね。魔獣をよく知っていればその魔獣の能力を最大限に引き出すことができるし、簡単なミスで契約した魔獣を死なせないで済むんだよ。」
生徒たちは頷きながらメモを取ったりしている。
エリーゼはマイペースにティアラを抱っこして撫でながら相変わらず智春を見つめている。
「そして、魔獣についてよく知るためにはやはり、魔獣を研究することが重要になってくる。では、まず私の契約魔獣を召喚してみよう。『サモン』」
アシリーの呪文と同時に空中に魔法陣が浮き上がる。
魔法陣から出てきたのは一匹の青い龍だった。
「この龍は『四神龍』の眷属と言われている竜族の血を引く亜龍の幼龍なんだ。この子は研究のために竜族の知り合いから預かっているんだよ。ちなみに、ランクは中級上位だよ。」
アシリーは少し誇らしげに語り、生徒は感心した様子だった。
「魔獣の研究でまず最初に行う事は、触ることだ。誰かやってみるかい?」
アシリーが問いかけるが、やはり上級に近い魔獣は怖いらしく誰も手を上げない。
そんな中、智春はこれ幸いと手を上げた。
「ほお、新入生やってみるか。じゃあ、前に出てきて。」
「はい。」
智春はみんなの前に立つと龍に向かい合った。
「では、まず頭を撫でてやってくれ。」
「ああ。」
智春は慎重に手を伸ばす。
龍は智春の手を受け入れ、気持ちよさそうに頭をこすりつけた。
「うん、いい感じに接せているじゃないか。では、次のステップだ。手に魔力を纏わせてこの子に干渉してみるんだ。」
「ああ。」
智春は言われたとおりに手に魔力を属性変換する前の状態で纏わせて龍に触れた。
すると、智春の中で何かはじけたような感触があった。
「ん?うまくできてるぞ。どうした?」
智春が変な感覚に顔をゆがませたのを見てアシリーが不思議そうな顔をする。
「いや、何でもない。」
「そうかい。じゃあ、今ので何が分かったか分かるかい?」
「ああ、この龍が水属性の魔獣で、中に何か強い力を秘めているってことくらいだ。」
「ほお、初めてでそこまで分かれば上出来だ。そう、こんな風に魔力を纏わせて触ることで相手の魔獣の魔法的性質が分かるんだ。これは結構重要だからな。では、次に・・・・」
まだ、アシリーの授業は進んでいるが、智春の頭の中はさっきの感覚でいっぱいだった。
智春にはなんの心当たりもなかった。
智春は休み時間などを使ってバナードにそれとなく尋ねてみたが結局分からず、その日の授業が全部終わるころにはすかっりそのことなど忘れているのだった。
夜、智春は掃除の疲れがあることや、明日の掃除が朝早くからあるので、今夜も少し早目にベッドに入り眠っていた。
今日はティアラはエリーゼのところにお泊りで、智春の部屋は本当に一人だった。
深夜を過ぎたころ、一つの人影が智春の部屋に忍び込んできた。
智春は祖父に教え込まれた気配察知の技術ですぐに意識が半覚醒した。
(はあ、最近の夜は千客万来だな~)
智春はのんきなことを考えながらベッドの中から相手の気配を探る。
すると、侵入者がハッと息をのむ気配がした。
そして数秒の間があり、侵入者智春の上にまたがった。
しかし、今夜は相当眠かった智春はうまく相手を引き倒し、強引に唇を奪うと『スリーピング』を発動し、そのまま確認もせずまた眠りに落ちて行った。
最後に智春の視界の端に残ったのは黄金色の耳だった。
♢
暗い部屋の一室、二人の男が向かい合っていた。
「首尾はどうだ?」
少し上等な服を着た方の男がこの部屋の主である相手の男に聞く。
「ああ、問題ない。今夜決行した。明日には奴の首が町中に晒されるだろうって伝えてくれ。」
「ほう、それは主も喜ぼう。しかと伝えよう。」
上等な服の男は嬉しそうに頷くと立ち上がり、ドアの方に向かう。
「金はいつもの通りだ。受け渡しは明日、主が奴の首を確認してからだ。」
「ああ、」
上等な服の男はそれだけ伝えると部屋から出て行った。
「ふふふ、今回は大金が入るぞ・・・・」
もう片方の男も嬉しそうにつぶやきながら隠し扉を使って部屋から出ていった。
部屋にはもう沈みかけの月が部屋にかすかな光を届けるのみであった。
遅くなりました。
これからも、これくらいの時間になることもあるかと思いますが何かとご容赦ください。




