第三章:学院編 17話:白き兎姫
名前の間違いを訂正しました。
名前が紛らわしかったので変更しました
内容
セシリア→エリーゼ
17話:白き兎姫
この世界の『魔族』について話しておこう。
『魔族』とは魔力に精通した亜人種の総称であり、『獣人族』は魔法を苦手とするため魔族のくくりに入っていない。
魔族は『森魔族』、『土魔族』、『血魔族』などが存在しており、その中でもまた細分化されていたりするがそれはまた追々。
この魔族であるが、彼らはもともと南西大陸と呼ばれる大陸で暮らしていたため中央大陸の東の辺境であったバーシュ村やクルーペの街では見かけなかったのである。
ちなみに、この世界は中央大陸、南西大陸、北東大陸に加え、小大陸が二つと諸群島からなっているが詳しくはまた追々説明しよう。
そして、今、智春たちがいるダラベストの街は規模的のはクルーペの三倍くらいの街で、ダラス侯爵家が統治している。
この大きさの街となる街にはそれなりの数の魔族が生活しているのだった。
部屋にさす薄明かりに智春は目を覚ました。
寝ぼけた思考で寝返りを打とうとするが、何かが邪魔になって動けない。
智春がその何かに向かって手を伸ばすと、何か柔らかいものがすっぽりと手に収まった。
(ん?なんだこれは?)
智春はその心地よい感覚にその何かを手のひらで探った。
「ひやっ、はぅ・・・んぁ。」
するとその何かがなまめかしい声を上げるのを聞いて、智春の意識は一気に覚醒する。
「んなっ!、せ、セリア!お前いつの間に!」
「あら、おはようトモハル。もう、私の胸で遊ばないの?」
至近距離にあったセリアの翡翠色の瞳にいたずらの光がともる。
「な、何言ってんだ。たく、部屋のカギは閉めてただろう。」
「ええ、開かなかったから、一旦実態を解いて部屋の中でまた実体化したのよ。」
セリアは悪びれもせず答える。
「はあ・・・もういいや。着替えるから自分にの部屋に帰ってくれ。」
「むう、はーい・・・・・トモハルの唐変朴・・・」
セリアは最後に小さく何かつぶやくと部屋を出て行った。
ちなみに精霊であるセリアは服を自分で構築できるのだが、それにも気力が必要なため大体は人と同じように服を着ている。
しかし、戦闘や寝るときなど服が破れたりしわになりそうなときは構築したものを使っているようだ。
智春はクルーペのウニクロで買った平民の服を着て、簡単に食事を済ませる。
この寮は残念ながら食堂は付いていないが学院の方に行けばカフェや食堂があり、部屋には炊事場があるので智春は食材を買ってきて自炊をするつもりでいる。
智春は部屋にあった学院の通学カバンを手に取ると、中に入っている筆記用具の確認をした。
筆記用具と言っても鉛筆やシャープペンシルがあるわけもなく、羽ペンとインク、そしてノート代わりの紙束が二冊入っていた。
智春が鞄を覗きながら手持無沙汰でいると、今まで枕もとで丸くなっていたティアラがすり寄って来た。
「にゃ~」
「ん?どうした?あっ、こら」
ティアラは鞄の中に進入しようとして智春に捕まる。
「にゃあ、にゃにゃあ。」
ティアラは抗議を上げるように鳴いて、智春の手から逃れると今度は智春の肩に陣取った。
「ん?ティアラも一緒に行きたいのか?」
「にゃあ。」
どうやら肯定の様だ。
「うーん、大丈夫かなー。」
智春が首を傾げていると部屋のドアがノックされた。
「トモハルさん、準備ができていますか?」
声から判断して、昨日の銀髪エルフのお姉さんのようだ。
「はい。」
智春はとりあえずティアラを肩に乗せたまま部屋を出た。
廊下にはすでにレイラやセリアたちが集まっていた。
そう、実はこの寮、男女建物が一緒なのである。
ワンフロア5室ある寮部屋は一人暮らし用のマンションみたいな造りになっており、智春たちのフロアは1室は空き部屋であるため実質ワンフロア貸し切り状態なのである。
ちなみに、なぜ男女が一緒の建物なのかお姉さんに聞いてみたところ、苦笑いを浮かべながら「別々の建物にしたところで意味がありませんので。」というコメントを頂戴した。
昨日智春は寮を探検したときに男女が同じ部屋から出てきたのを見て(なるほど。)と心の中で納得してしまったのだった。
智春たちはお姉さんの先導で校舎に向かった。
まず最初に着いたのはセリアたち精霊グループの教室だった。
セリアたちの教室は一階の端にある教室だった。
教室の形は大学の一般的な教室を思い浮かべてもらえばいい。
このほかにも一階には職員室と保健室があった。
「じゃあ行ってくるわね。」
「おう、頑張って来いよ。」
「トモハルもね。」
セリアとメイアは楽しみだったようで、一言言葉を交わして早々に教室の中に入って行った。
二人が抜けた後、三人は階段を上り、たくさんの教室が並んでいる二階、三階を過ぎ四階にでた。
「ここがレイラさんのクラスです。レイラさんの階級は二等生、『蕾』で、クラスは水クラスです。っと、説明を忘れていましたが、階級は一等生から四等生までの四階級で、数字が若いほど才能があるグループになります。また、同じ階級でも火、水、風、土の四クラスに分かれています。この振り分けは無作為に行われており、その人の適性の系統と同じクラスに分かれているわけではありません。」
「ふーん、十六クラスとはまた結構多いんだな。」
「はい、生徒数もそれだけ多いという事です。」
「はぁ、なんだか緊張してきました。」
レイラはこわばった表情で深呼吸をした。
「はは、大丈夫だ。レイラ、何かあったら頼って来いよ。俺がお前を守ってやる。」
「と、トモハルさん。」
「まあ、ルークと約束したからな。」
レイラは智春の言葉に顔をあからめた嬉しそうな表情から一転、智春の最後の言葉に険しい顔を見せた。
お姉さんは後ろでやれやれといった感じで頭を振っている。
「トモハルさん、」
「ん?な、なんだ?」
レイラは落ち込んだ低い声で智春に詰め寄る。
「トモハルさん。今日のお昼は一緒に食べませんか?」
「へ?いや、それは昨日のみんなでクラスの仲間と親睦を深めるためにみんなクラスの人と食べるってことにしたじゃないか。」
「ええ、それはそうですが・・・・だって、トモハルさんクラスの女の子にちやほやされそうだし・・」
後半は小さすぎて聞き取れなかったが、レイラはうつむいてつぶやく。
「んっん、お取込み中すみませんがホームルームに遅れますのでそろそろ。」
「あ、すみません。じゃあレイラ、今度の休日に一緒に出掛けるってことじゃダメか?」
「そ、それって、デートですか?」
「んー、まあ、そうなるかな。いやか?」
「い、いえ。行きます。行きたいです。」
「そうか、じゃあ、また放課後にな。」
「はい、トモハルさんも勉強を頑張ってください。」
「ああ。」
レイラが教室に入っていくのを見届けると智春たちは最後の智春の教室を目指した。
「そう言えば、授業をこいつと一緒に受けたいんだが、ペット同伴は可能なのか?」
「はい、可能です。他の生徒たちも使い魔や低位の精霊などと一緒に受けていたりしますので問題はありません。」
「そうか、よかったなティアラ。」
「にゃあ。」
肩に乗るティアラを一撫ですると、ティアラは嬉しそうに鳴き声を上げた。
階段を上り、五階の智春の教室に着いた。
「ここがトモハルさんのクラスの一等生『花冠』の火クラスです。」
「ふーん、ここか。っと、そのブルームやバッドっていうのはなんだ?」
「はい、これはその階級のニックネームみたいなもので、一等生が『花冠』二等生が『蕾』、三等生が『幼芽』、そして四等生が『種』となっています。」
「ふーん、その階級の間に確執的なものは無いのか?」
「はい、少々のいざこざはありますが、年に二回開かれるクラス対抗戦で大体解消されるのであまり大きな確執といったものはありません。」
「ふーん、うまいこと回ってるんだな。色々ありがとな。」
「いえ、これからも困ったことがありましたら受付の方までお越しください。」
お姉さんはそれだけ言うと階段の方に歩いて行った。
智春は高ぶる気持ちを抑え、扉の前で深呼吸した。
「よし。」
扉を開けるとそこにはセリアたちの教室同様の教室であり、机には赤やピンクなどのいろいろな髪の色の者や耳や角が生えた者までいろんな種族の少年少女が座っていた。
「おう、来たか新入り。私がお前の担任のバスラだ。ホームルームの前に自己紹介をしろ。」
教壇にたった白衣に赤渕の眼鏡をかけた美女が話しかけてくる。
「は、はい。トモハル=アオヤマだ。これから卒業までよろしく頼む。」
智春は緊張しながらもクラスに微笑みかける。
クラスの生徒たちはざわざわと近くの友達と話している。
「っと、これをやるとお前たちは長くなるから好かんが、恒例だ・・・何か質問があるものは挙手。」
バスラの号令にクラスのほとんどの(女子は全員)が手を上げる。
「ったく、じゃあ、成績が優良なものから優先する・・・アリエル=ヴァレリ。」
「はい。」
ピンク色の髪の人族の少女が元気よく立ち上がる。
どうやら彼女がこのクラスの成績トップらしい。
「トモハル君の好きな食べ物を教えてください。」
またまた定番の質問である。
「うーん、好きな食べ物か・・・しいて言うなら肉料理が好きだな。」
「ふーん、やっぱり男の子はお肉好きなのね・・・」
アリエルは納得したように着席する。
「では、次の者。」
再び多くの手が上がる。
「ふむ、お前か、珍しいな、エリーゼ=テレキウス。」
次はうさ耳を生やした白髪の少女が立ち上がる。
「はい・・・好きなタイプは何?・・・女性の・・・」
少女は無表情でこれまた定番である。
「うーん、好きなタイプか・・・そうだな優しくて料理の上手な子かな?」
「私・・・得意・・・」
うさ耳少女はポッと顔を赤く染める。
「な、なに!あの『百人斬り兎《Never sey YES》』が初対面の相手にデレただと‼」
「ウソだー、ウソだと言ってくれー。」
うさ耳少女の爆弾発言でクラス中が沸き立つ。
が、そんな中智春だけは何があったのか分からない様子だった。
「あー、うるさい、うるさい、うるさい!お前ら静かにしろ。エリーゼも座れ!」
バスラの呼びかけでクラスは鎮まるが、まだ智春に敵意を向ける少年が何人かいる。
「はあ、ホームルームもあるし、次が最後だ。」
ブーイングが起こる中、まだ多くの生徒が挙手する。
「では、サルバダ=カダラクタ。」
「はい。」
眼鏡をかけた真面目そうな少年が立ち上がる。
「では、私からの質問だが、トモハル氏の適性のある魔法はなんだ?」
眼鏡君の固い口調の質問は皆興味があるようでクラス中が智春に注目する。
「あー、俺の魔法属性か・・・・」
智春は言った時のクラスの反応が心配で言いよどむ。
「ったく、どうせすぐばれるのだしなぜためらう必要がある。」
バスラの苛立った言葉に智春はしぶしぶ従った。
「はぁ、俺の魔法属性は全系統全属性だ。」
「「「「「「へっ?」」」」」
クラス中が呆けた顔をする。
「よーし、質問タイム終了だ。おい、トモハル、適当な席に座れ、ホームルームを始めるぞ。」
「は、はい。」
智春が机の方に歩いていくと一人呆けた状態から脱出していたうさ耳少女が目で『こっちに来い。』とアピールしているがそれをスルーして程よく人の少ないサルバダ少年の前に座った。
「うん、じゃあホームルームを始める。」
「「「「「ええええーーーーーーーーーーーーーー」」」」」
「うわっ、お前らどうした。」
フリーズ状態から立ち直ったクラスメイトたちの絶叫が教室に響く。
「いや、先生、どうしたもなにも、全属性ですよ。」
「私の隣・・・・」
「ああ、私も学長から聞いたときは驚いたが、前例がないわけでは無い。庭の草取りの時にマンドレークを引き当てる方が珍しいくらいだぞ。」
「いえ、それは比較対象が飛躍しすぎです。」
「なんで遠く・・・」
クラスメイトが口々に騒いだり、バスラが落ち着いた対応をしたりする中、時々うさ耳少女の声が智春に届く。
「あーもう、とりあえずホームルームを終わらせるぞ。そのあとトモハルを取り囲むなりなんなり好きにしろ。」
「えっ、マジで・・・」
バスラの無慈悲な言葉に智春は額に汗を浮かべる。
クラスメイトたちは何とか収束するがその眼は智春に向いており、みんな質問攻めにする気満々の表情である。
「連絡だが、植物科から明後日の放課後に庭園の整備に数名の募集がかかっている。対象者は土の属性の生徒のみだ。報酬小銅貨数枚とカフェテリアのスイーツ半額券だ。参加希望者は受付に行くこと。先行順だから早めに行けよ。」
バスラはクラスを見回す。
どうやらこの学院ではバイト感覚の募集がたびたびあるらしい。
「あとは、トモハル、お前の教材はその机の上に置いてある。内容はお前が履修可能な教科だけだがすべて受ける必要はない。受けない科目の教材は今週末までに私のところにもってこい。」
「はい。」
バスラは教室の隅の机の上の本の束を指して言った。
「今日はこれくらいかな。ではみな、勉強に励めよ。ホームルームを終了する。」
バスラは仕事を終えるとさっさと教室を出て行った。
バスラのいなくなった教室でクラス中の視線が智春に突き刺さる。
智春は蛇ににらまれたカエルの心境で何とか脱出を考える。
そんな中、さっきアリエルと呼ばれた少女が智春に詰め寄ってくる。
「ねえ!トモハル君は本当に全属性の適性なんですか?」
「あ、ああ。検魔機の反応はそうなってるし、今までに使った属性の魔法は全部発動してる。」
「ほへー、すごいです。見せてください!」
彼女を皮切りにクラス中が智春に詰め寄り、智春はもみくちゃにされる。
「ちょ、ちょっと、分かったから、とりあえずみんな離れてくれ!」
智春の声も空しくみんな収まる気配がない。
智春は近くに寄って来ていた少女たちの胸やらお尻やらがあたり顔を赤く染める。
「トモハルこっちへ。」
そんな言葉と共に智春は誰かに手を引かれる。
智春は急に手を引かれたことでバランスを崩し、何とか体勢立て直したのと同時に視界が真黒に染まる。
「な、なんだ!」
「ちょっと、何なのよ!」
「くそっ、誰かが『目隠し(シャドーミスト)』使ったんだろう。」
クラスメイトたちのそんな怒声の中を智春は誰かに手を引かれながら真黒な視界のまま走る。
時々机をつまずいたりしながら何とか廊下に出たのを智春は音で認識する。
「おい、どこに行くんだ。とりえず視界を戻してくれ。」
「ダメ・・・もう少し、走って・・・」
返って来た声は、同じクラスのうさ耳少女の声だった。
「な、お前は確かうさ耳の、」
「着いたわ・・・」
少女はどこかの教室に入って足を止めた。
智春は少女の声と共に視界を取り戻したが、まだ明順応できておらずあたりをまぶしそうに見回す。
「ここどこだ?」
「・・・・教室・・・・」
「どこの?」
「・・・次の授業の・・・」
元々口数の少ない質なのかなかなか会話が要領を得ない。
「んで、えっと・・・」
「・・・エリーゼ・・・」
「ああ、すまん、エリーゼさんは俺を助けてくれたのか?」
智春の問いかけにエリーゼは首をフルフルと横に振る。
うさ耳が風になびいて少し可愛い。
「エリーゼ」
「へ?だから、エリーゼさんだよね?」
「セシリア」
「んー、セシリア?」
「そう、エリーゼ・・・さんなんていらない」
どうやら彼女は呼ばれ方にこだわりがあるようだと智春は納得する。
「そうか、なら、エリーゼ。助けてくれてありがとな。」
「・ん・・・」
「でも、悪いんだが教科書を取って来てないからまた戻らないといけない。」
「・・問題ない・・・」
エリーゼはそう言うと影の中から教科書を取りだす。
「・・・持ってきた・・・」
「あ、ありがとう。」
どうやらエリーゼはシャドウクローゼットを使って回収していたようだ。
「ん、お礼はいい・・・嫁が夫に尽くすのは必然・・・」
「は?・・・・どゆこと?」
智春は身に覚えのないことに志向が停止する。
「私は星読み・・・星は私にあなたの伴侶を示した・・・」
「へ?じゃあ、そういう未来を見たからってことか?」
「ん、それもある・・・」
「それも?」
「ん・・・あとは一目ぼれ・・・」
エリーゼは顔を赤く染め、頬に手を当て上半身をくねらせる。
「はあ、つまり一目ぼれしたから嫁宣言したと。」
「ん・・・」
「俺の意思は?」
「大丈夫・・・明日には私にメロメロ・・・にして見せる。」
最後の方は完全にエリーゼの決意だったがまあ聞き流すことにしよう。
「はあ、まあいいや。とりあえず席に着くか。」
「ん、」
智春は廊下の方から生徒の近づいてくる喧騒を聞き、促す。
エリーゼは頷くと相変わらず無表情だがうさ耳と尻尾が機嫌よさそうに動いていた。
智春は二人掛けの机にエリーゼと座る。
エリーゼが左の腕にぴったり引っ付くように座っており、エリーゼの凶悪なメロンが智春の腕に自己主張をする。
智春はその柔らかい感覚にドギマギしながらも『そう言えば最初の授業って何だろう?』と自分の教科書に視線を落とした。
『水魔法を学ぶ水魔法使いのための水魔法の本』
それが教科書の題名だった。
(ん?水魔法ってことならもしかしたら・・・)
そう智春が考えている矢先、ある女子生徒の軍団が教室に入って来た。
「ふーん、で、レイラちゃんその男の人に惚れてここまで来たんだ。」
「は、はい、その、幼馴染や村長が後押ししてくれて。」
「いーなー、今までの暮らしを捨ててでも付いていきたくなる男。私もあってみたいな~」
その女子軍団はペチャクチャおしゃべりしながら智春たちの机に近づいてくる。
智春はその軍団の中に聞こえた聞き覚えのある声に振り返った。
「おお、やっぱり、レイラか。水魔法だからそうじゃないかと思った。」
「へ?あ!トモハルさん。同じクラスだった・・・・・・・・・・・・・」
智春に気付いたレイラは嬉しそうに声を上げ、智春のそばに寄り添ううさ耳少女に気付きフリーズする。
「ん?どしたの、どしたの?」
「あ、もしかしてこの人がレイラがいってた男の人なんじゃない。」
「えー、でも、他の女の子・・・ほ、『白き兎姫』‼」
智春の隣に座る少女に気付き、皆絶句する。
そんな中、何とか正気の戻ったレイラは智春の胸倉をつかみ、詰め寄る。
「ど、ど、ど、どうしてですか!トモハルさん。私たちのアピールには全く気付かないくせに女の子をもう籠絡して!確かに今日できるだけクラスメイトと親交を深めようってことになりましたけど。これはいくらなんでも早すぎです!ずるいです!うらやましいです!」
「お、落ち着け、レイラ。急にどうしたんだ。く、首が苦しい。」
レイラは混乱して最後の方は自分でも何を言っているのかわからなくなっていた。
「む・・・私のトモハルに乱暴はやめて・・・」
「わ、わ、私のトモハル!?、きゅ、急に出て来てトモハルさんを取らないでください。この泥棒兎。」
エリーゼの言葉がレイラに稲妻を走らせる。
「む・・・急に出てきたのはお前。この軟弱女。」
「な、軟弱!勝手な事言わないでください!」
「うるさい、バカ女。」
「バカっていう方が馬鹿なんです。このバカ兎。」
「だったらお前はもっとバカ。」
「うるさいです。アホ。」
「ドジ。」
「マヌケ。」
もうなんだかばかばかしくなるほど低レベルな争いである。
残念ながらこの争いは、授業担当のバスラの鉄拳制裁が落ちるまで続くのだった。
♢
暗い部屋の中二人の男がいた。
「おい、ターゲットは見つかったのか?」
「へい、それがですね。どこの宿でも見当たらないんですよ。」
「おいおい、なにちんたらやってやがる。さっさとしねーとお得意様が怒り出すぞ。」
「へ、へい、ボス。ですがもうこの街に探してない宿なんて・・・」
片方の男の言葉にボスと呼ばれた方の男が苛立ちを見せる。
「テメー、何年この街に住んでやがる。若い冒険者が宿以外に宿泊しているとこなんざ簡単に検討がつくだろうが!」
「へ、へい。・・・・っあ、魔法学院!」
「そうだ。分かったならさっさと調べてこいこの間抜け。」
「へい!」
片方の男は怯えたように返事をすると素早く部屋を出ていく。
「ったく、頭のわりー野郎だ。」
ボスの男はいらだたしげに鼻を鳴らし、部屋の隠し扉から出て行った。
部屋には沈黙と嫌な空気だけが残っていた。
さーて、智春たちの学院生活が始まります。
彼らの恋路に波乱の予感が!?
このお話を読んでいただきありがとうございます。
第三章は少し長くなる予定です。(あくまで予定ですが。)
では、これからも「進異世界」をよろしくお願いします。
ps:無口キャラ書くの難しい・・・・、アドバイスとか欲しーなー




