第二章:クルーペ編 15話:先輩おねーさんの道端授業
15話:先輩おねーさんの道端授業
「なっ、ひ、雲雀・・・」
智春は呆然と砕け散った自らの愛剣を眺める。
「こっちは終わったぞ。っと、これはすごい光景だな・・・ん?どうした?トモハル?」
モンスターボックスを倒し終えたバローナが戻ってきて、智春の様子に首を傾げる。
「バローナ、こっちもちょうど終わったところだ。」
「ああ、ディベラどの、その、トモハルはどうしたんだ?」
首と胴体が別々になったドラゴンに背を向けてやって来たディベラにバローナは戸惑いながら尋ねる。
「ああ、ドラゴンと戦っている途中に奴のあの妙な形の剣が砕けてな・・・」
「そうか・・・大事なものだったんだろうな・・・」
「ああ、帰るの準備ができるまではそっとしておいてやろう。」
「そうだな、慰める役なら適任者が別にいるだろう。」
二人が話、去っていくのと入れ違いにフルコネクトを解いたセリアとメイアが実体化して智春に両隣に現れた。
「と、トモハル、その、げ、元気出しなさい。きっと、鍛冶師にお願いしたら元通りに打ち直してくれるわよ。」
「そ、そうよ、私の魔法でひとかけらも残さず集めるから、鍛冶師のところに持っていきましょう。」
「メイア・・・セリア・・・すまん・・・ただ、爺さんが打った剣がこんな簡単に砕けるとは思ってなくて・・・」
智春はまだ信じられない物を見るかのように、砕けた刀身を見つめていた。
「い、いや、こんな簡単って、亜竜種を真っ二つにしておきながらそれはないでしょ。」
メイアがジト目で慰めている横で、セリアは砕けた刀身を氷塊に閉じ込め、ひとかけらも残さず回収する。
「はあ、まあ、刀も形ある物だからいづれはこうなるものだったんだろう。すまん、心配をかけたな。」
「いいのよ、それより、街を移動する前にこれを打ち直してもらえそうな鍛冶師をギルドマスターの紹介してもらいましょう。」
「ああ、そうだな。」
セリアに元気づけられ、智春は表情を入れ替える。
「トモハル、帰還準備が終わったが、その、大丈夫か?」
戻って来たバローナが控えめに智春に声をかける。
「ああ、すまん、心配をかけたな。」
「大丈夫なようだな・・・まあ、冒険者なんてやっていたら大事な武器の一本や二本は持っていかれる。ただ、仲間はそうならないように気を付けるんだぞ。」
「そうだな、ありがとう。バローナ」
智春はバローナと頷きあうと、みんながいる方へ戻った。
帰りの行軍は目立った障害もなく楽なものだった。
智春を心配してか、メイアがそばにつきっきりになっていた。
セリアはというと、智春が最後の攻撃の時、メイアの魔法で作った異常なスピードの代償で制服がぼろぼろになったため、フルコネクトをしてマントで智春の服替わりをしている。
《それにしても、あなたの剣術はどうなっているのよ。》
「ん?どうなってるって?」
「技を使った代償に服がそんなことになっていることを言ってるのよ。」
「んー、実はあの技は相手が突っ込んで来るスピードも利用する技だったんだけど、メイアのおかげで自分一人で必要スピード作れるようになったと思ったから試してみたんだ。」
「《は?》」
頭の中と隣で声が綺麗にハモる。
「いやー、うん、だから、本当に必要なスピードの約2倍のスピードで放ったわけだ。」
《えっと、メイア、これめちゃくちゃな事言ってるわよね?それとも私の勘違いかしら?》
「いいえ、セリア、私も同感よ・・・はあ、トモハルと一緒にいたら驚くことが絶えないわ・・・」
《ええ、そうね・・・》
「なっ・・・二人ともそんなに嫌なら契約は破棄して別のところに行ってもいいんだぞ。」
「《それは絶対に嫌‼》」
「そ、そうか・・・」
二人の言葉に智春は押されつつも、心から安堵を覚えるのだった。
「よっし、みんな、今日はよくやってくれた。今回の依頼料は明日までに各人の口座に振り込んでおく、口座開設をしてないものは、今日中にギルドの方で開設申請をしていてくれ。では、解散。」
ディベラの合図で各々散開していく中、バローナが智春の方にやって来た。
「トモハル、刀の事は残念だったが、その、もし打ち直すのなら、私は腕のいい鍛冶師を知っているのだがどうだ?」
「それは本当か?」
「ああ、ただ、その鍛冶師がいるのはここから少し帝都の方に行ったところにある『ダラベスト』という街なのだが、それでも大丈夫か?」
「『ダラベスト』か、渡りに船ってこういう事か・・・」
「ん?なんだ?」
「ああ、実は俺たちはこの依頼が終わったら、ちょうどその街に行くことにしていたんだ。」
「ほう、そうだったのか。それならば都合がいいな。」
「ああ、じゃあ、紹介状かなんか頼めるか。」
「いや、私はもともとその街を拠点とした冒険者なんだ。一緒に行こう。」
「それは頼もしい。三人もいいよな?」
「「《ええ(はい)、もちろんよ(です)》」」
「そうか、それはよかった。今回は帰りに同行できるような商隊が見つからなくてな、Bランクといってもひとりでに旅はなにかと心細かったのだ。」
「そうだったのか。それなら、よろしく頼む。で、出発はいつになる?」
「私は明日にも出て行けるが、その前にトモハルのダラベストに行くまでの代わりの武器を選ぶ時間がいるだろう。そっちの都合のつく日でいいぞ。」
「ん?なら、明日の早朝でいい。俺は無手でもホングルくらいなら倒せる自信があるぞ。それに魔法もあるしな。」
「「「《は?》」」」
「な、なんだよ。」
智春の爆弾発言に一同はあぜんとする。
「い、いや、ほ、ホングルを素手でか?」
「ん?ああ、あれくらいなら余裕とまではいかないが、倒せると思うぞ。」
《はあ、まあ、トモハルだしね・・・》
「トモハルさんですしね・・・」
「まあ、トモハルだもんね・・・」
「確かに、ドラゴンにあれだけできたトモハルならばな・・・」
「な、ちょっとそれなんかひどくない?」
四人の納得に仕方に智春は抗議を上げる。
「おい、トモハル、お前まだ口座開設してないだろ。紹介状もあるし、少しギルド寄ってけ。」
なんとも間の悪いことにディベラに会話を遮られる。
「あ、ああ、エリナさんにティアラを預けてるからどっちにしろこの後行くつもりだった。」
「そうか、ん?そういえば、バローナはダラベストからの支援で来てくれたんだったな。帰りは智春たちと一緒か?」
「ああ、そのつもりだ。」
「そうか、なら行道は問題ないな。」
「ああ、来る時と同じモンスターの少ない道を行くつもりだ。」
「おう、じゃあ、ビビアによろしく言っといてくれ。」
「ああ、承った。じゃあ、トモハル。明日の日の出の刻に南門に集合だ。遅れるなよ。」
「了解、よろしく頼む。」
バローナはディベラに一礼すると去って行った。
「うし、じゃあ、ギルドに入るか。」
智春たちはディベラについて、ギルドマスターの執務室まで入った。
「よし、これがまず、ギルドへの紹介状だ。まあ、バローナと行くならあまり要はなさないだろう。マスター議会でもお前の名前は上がったしな。」
「ん?そのマスター議会ってのは?」
「ああ、マスター議会ってのは、その名の通り小さくて国単位、大きくなると世界中のギルドのギルドマスターが集まったり、魔法会話などで行う会議の事だ。今回のお前の昇格を決めたのもこの議会での判断だな。まあ、簡易的なものだっからお前の名前はこの国の全員とはいかないが、ほとんどのギルドマスターに知られている。」
「ふーん、まあ、それで不便しないならいいが。」
「ああ、こんなことでちょっかいをかけてくるような奴はギルドマスターになれないからその心配はないだろう。で、こっちが魔法学院の学院長のミディウス=バルマン氏への紹介状だ。これを持っていけば、入学試験を受けられるだろう。今の時期だと途中入学になるが別に珍しいことでもない。まあ、早ければ数か月で卒業もできる。ただ、実力至上主義の場所だから頑張らないと一生出られなくなるぞ。」
「おお、何から何まですまんな。」
「いや、俺はお前がこれから大物になるためのお膳立てをしてやっただけだ。あとは自分で頑張れよ。」
「だから、大物とかになるつもりはないんだって。」
智春は苦笑しながら頭をかく。
そんな時、執務室の扉がノックされた。
「失礼します。口座開設用紙をお持ちしました。」
扉から入って来たのはエリナさんだった。
その肩にはティアラが座っており、エリナさんはお盆を持っている。
「はい、こちらをレイラさんとトモハルさんは記入してください。で、これは遅くなりましたがメイアさんの登録証です。」
エリナさんは用紙を智春とレイラの前に置くと、メイアにセリアとは色違いで赤い色のチョーカーを渡す。
ちなみにティアラは入室と共に智春の膝の上である。
「おう、ありがとな。ティアラおとなしくしてたか?」
「ええ、職員の癒しとなってもらってました・・・それにしてもトモハルさんすごい格好ですね。」
「ああ、ちょっと、無茶な使い方をしてな。」
エリナさんは智春の格好に少し驚いたようだった。
「そうなんですか。まあ、お怪我もないようですし、よかったです。」
「ああ、ありがとな、っと、これでいいか?」
智春は出来上がった用紙をエリナさんに見せる。
この口座は、ギルドに所属している冒険者なら誰でも簡単に開設できるのだ。
「はい、大丈夫です。開設は今日中に終わります。預けるときや引き出すときはギルドカードを受付で出すだけなので気軽にご利用ください。」
「了解。じゃあ、用事も済んだし帰るか。おっさん、シャリアさん、エリナさん、世話になったな。」
「おう、達者でな。っつても、お前さんの動きは俺の方で勝手に探らせてもらうがな。」
「ああ、おっさんは信用してるからかまわない。」
「はは、まあ、なんかあったらまた戻って来いよ。」
「おう、じゃあまたな。」
「シャリアさん。色々教えていただきありがとうございました。」
「お世話になりました。」
「では、失礼します。」
智春たちは、そう言い残してギルドを出て行った。
ギルドを出てから智春たちは、ダラベストまでに必要な食材の仕入れや消耗品の補充をして宿に戻った。
「はあ、クルーペでの日々はあっという間でしたね・・・」
「そうね、でも、色々あった割には10日くらいしか過ごして無いのよね・・・」
「あれ?そんだけか?」
智春の体感ではすでに1か月くらいは過ごしている気がしていたのである。
「ええ、それにあなたは三日くらいは街の外だったのよ。」
「そうね、私はまだ3日目くらいだしね・・・」
「うーん、それだけ色々あったってことだな・・・まあ、ダラベストでは結構長い間滞在するつもりだがそれでいいか?」
「はい、私も魔法学院に通ってみたいですし。」
「そうね、あなたたちが学院を卒業するまではいることになりそうね。」
「そう言うことだ。まあ、明日は早いし今日はもう寝るか。」
「そうね・・・じゃあ、おやすみなさい。」
そういって、智春がろうそくの火を消し、セリアとメイアは実体を解いて眠りにつくのだった。
翌朝、まだ日の登らないうちから智春たちは南門に来ていた。
この門は智春たちが最初に訪れたものの反対側にある門である。
智春たちが来て数分もしないうちにリュックを背負ったバローナがやってくる。
「すまん、待たせたな。」
「いや、俺たちも今来たところだ。」
「そうか、では、日の登り始めぬうちに出発するか。」
「ああ、そうしよう。」
バローナを加え、5人になった智春たちは次の目的地である『ダラベスト』に向かって歩き始めた。
会話も少なく、黙々と歩いて小一時間もたたないうちに太陽が昇り、あたりがだいぶ明るくなる。
「そう言えばトモハルは冒険者になってまだ間もないと聞いたのだが、そのあたり、何か心配な事とかないのか?」
陽が差してきて、朝食休憩をとっている時にバローナが智春に話をふる。
「うーん、心配な事か・・・じゃあ、ぶっちゃけ、冒険者ってどんな仕事なんだ?」
「「「「は?」」」」
智春の爆弾発言に、バローナだけでなくセリアたちまでが唖然とした表情を浮かべる。
「と、トモハルは、冒険者がどんな職業か知らずになったのか?」
「ん?ああ、旅をするのに役立ちそうだったからな。」
あたりに寒々とした一陣の風が通り抜ける。
「そ、それならば、わ、私がトモハルに冒険者について教えてやろう。」
「おお、それは助かる。」
バローナによって凍り付いた空気も何とか動き出す。
「まず、冒険者というものはな、その名の通り冒険をして世界を開拓する職業なのだ。」
「ああ、まあ、そこは常識だな。」
頷く智春にセリアたちのジト目が突き刺さる。
バローナは話が長くなりそうなので、歩きながら話すことにした。
「ああ、そして、その仕事とというのが迷宮攻略や危険区の調査、また、国の派遣する調査団の護衛などだ。調査についてはギルドから指定依頼や普通の依頼として出されるが、迷宮攻略はよっぽどの被害が出ない限り依頼には出されない。だが、迷宮は稼ぎになるし、攻略をすればそれこそ数年は遊んで暮らせるだけの額は稼げるから腕に自信のある冒険者は大体迷宮攻略を目指す。」
「ふーん、迷宮ってのはどのくらいあるんだ?」
「それは、小さいものを合わせれば三桁に上るが、有名なのは九つだな、そのうちこの大陸にあるのは『ディタンミラの森林迷宮』、『バドリーネの怪洞窟』、『ルルララル砂漠迷宮』、『ダボリマリアの大渓谷』の四つだ。どれも百層を超す大迷宮まで育っている。まあ、どれかに挑戦してみるのもいいだろう。」
「そうか、なかなか面白そうだな。」
智春は好奇心を抑えきれない表情でバローナに続きを促す。
「まあ、迷宮の話はこれくらいでいいだろう。でだ、冒険者の仕事にはもう一つある。それが一般依頼の遂行だ。これは討伐から採集、それに小規模な調査など多種多様な依頼がある。冒険者はこれを月に数回、ランクに見合った数成功させる義務が生じる。まあ、義務と言っても暗黙の了解みたいなものでそれをしないからと言って直接裁きを受けることはないが、ランクが上がらなかったり、逆に下がったりするため、冒険者は絶対に守るのだ。」
「ま、マジか・・・ん?でも、ギルドでそんな説明は受けてないぞ。」
「ああ、それはこれがギルドの規則としてあるわけでは無いし、冒険者を志す者は皆知っていることだから、いちいち説明などされんのだ。」
「そうなのか・・・バローナのおかげで失敗せずに済みそうだ。」
「ああ、まあ、冒険者の仕事と言ったらこのくらいだろう。」
「助かった。ありがとな。」
「い、いや、礼はいい。」
智春の笑顔とセットのお礼にバローナは頬を少し朱に染めそっけなく答えた。
「「「む!」」」
セリアたちは不機嫌そうな顔で智春を睨む。
「ん?どうしたんだ三人とも?」
「ふん、トモハルなんて冒険ばっかりしてればいいのよ。」
「そうです、それで一生独身でいればいいんですよ。」
「燃え尽きろバカ。」
三者三様な言葉を残して早足で智春たちを置いていく。
「な?本当にどうしたんだよ・・・」
智春は三人の急な態度に困惑する。
「ふふふ、智春は本当に愛されているんだな。」
「へ?何のことだ?」
智春の心底不思議そうな返しに、前の三人は歩調を上げる。
「ちょ、俺なんかしたかな?」
「何にもないのがダメなのではないのか?」
「ん?それってどういう?」
「まあ、安心しろトモハル。一夫多妻は珍しいことではないし、それを禁止する法律なんてないぞ。」
「ぶふっ、きゅ、急にどうした?・・・全く、あの三人が俺なんかを好きになるはず無いじゃないか。」
盛大に吹き出す智春。
前を歩く三人の肩も、ビクンっと跳ねるが、そのあとの智春の言葉にさらに肩を怒らせて歩くのだった。
(はあ・・・この四人はなんだか面白そうだが、修羅場にならないことを祈るばかりだなあ・・・)
バローナの思いの裏で、智春は三人の機嫌を直すのに夜までかかったのだった。
その夜、セリアたちは野営地近くの小川で水浴びをしながら作戦会議を始めた。
「トモハルの唐変朴ぶりは、私の想像以上だったわ・・・」
「そうですね、せめてセリアさんの気持ちぐらいには気づいていいはずなんですけどね・・・」
「そうね、私がトモハルの記憶を覗いたときはにもどちらの好意にも気づいてなかったわね・・・」
「「「はあ」」」
三者そろってため息をつく。
「ん?待ってください。メイアさん、記憶を覗いたときトモハルさんの気持ちもわかるんですよね?」
「え?ああ、そうよ。トモハルが思ったことなんかは大体わかるわね。」
「そうですか、ならそれでトモハルさんが今私たちのことをどう思っているのか分かるんじゃないですか
?」
「そうね!その手があったわね!」
「へ?」
レイラの言葉に勢いよく反応したセリアにメイアが訝しげな視線を向ける。
「もしかしてセリア、契約者の記憶が覗けるのは契約して24時間以内だってことも知らないの?」
「え?・・・い、いいえ、し、知らなかったわけでは無くて、ただ、その、えっと、そう、忘れていたっだけよ!」
セリアは目を泳がせながら言い切る。
「はあ、まあどっちでもいいわ。ただ、レイラのその作戦は不可能よ。」
「そうですか・・・」
「ええ、残念ながれね。」
レイラは残念そうに肩を落とす。
「ねえ、私から提案があるのだけど。」
セリアが少し恥ずかしそうにしながらも自信を持って声を上げる。
レイラとメイアは無言で先を促す。
「えっと、その私たちで順番を決めて、毎晩交代でトモハルを誘惑するというのはどう?」
「ゆ、誘惑ですか・・・」
「そうね・・・」
二人が肯定気味に思案するところにセリアは最後の一押しを加える。
「これをすれば、担当の日の夜は邪魔されることなくトモハルと過ごせるのよ。それにうまくいけばトモハルに愛してもらえるかもしれないし、あわよくば全員でトモハルのものになれるかもしれないわよ。」
「う、うーん、わ、私はその話乗りました。」
「そ、そうね、私も乗るわ。」
賛同する三人の心の中は奇しくも一致していた。
(((他の二人を出し抜いて、私がトモハルに愛されてやる!)))
腹に一物を抱えながら、三人は順番の決め方を話し合う。
「うーん、ここで戦って決めるっていうのも悪くないのだけど、モンスターを呼び寄せる可能性がね。」
「ん!それなら、くじ引きで決めるのはどうでしょう?」
「それが一番無難ね、あと、一巡ごとに順番決めをしましょう。トモハルに気付かれては効果がないからね。」
「ええ、じゃあ、 この小枝で長い方から順ってことでいい?」
「ええ」
「じゃあ、好きなのを選んで、いい、せーので抜くわよ、せーの。」
メイアが三本の小枝を持ち、三人同時に引き抜く。
「やった!」
一番長いのを引き当てたのはセリアだった。
「むー、私が二番です。」
「ちぇー、私が一番短いわね・・・」
奇しくもそれは智春に出会った順であった。
「ふむ、長いと思ったら三人とも何を騒いでいるんだ?」
「「「べ、別になんでもないわ(です)。」」」
三人が遅いと心配したバローナが様子を見に来たことで、セリアたちの『第一回トモハル攻略会議』は幕を閉じた。
第二回があるかどうかはこれからのトモハル次第である。
全員が水浴びを終え、智春たちは睡眠をとる。
最初の見張りのトモハルはティアラを膝に乗せ、焚火のそばで星を見上げていた。
「おっ、ティアラ!異世界なのにオリオン座があるぞ。」
「にゃあ?」
智春は空に地球のオリオン座と同じ星の配列を見つけ、ティアラに話しかけるが、もちろん、ティアラがオリオン座を知るわけがない。
「はあ、地球だったら今頃大学の受験勉強中かな・・・」
智春は郷愁の念に駆られてつぶやきを漏らした。
「元の世界が恋しいの?」
「せ、セリア!」
考えに気をとられ油断していた智春にセリアが背後から抱き付いた。
「元の世界に帰りたいの?」
「い、いや、帰りたくないって言ったらうそになるが、もう絶対に帰れないんだ。」
「どうして?こっちの世界に来れたんだから帰る方法だってあるんじゃないの?」
「セリアも俺の記憶を覗いたんなら無理なことは分かるんじゃないか?」
「ええ、確かに覗いたのだけれど、あなたの記憶、こっちの世界に来る少し前から靄みたいなのがかかってて見えなかったのよ。」
「そうだったのか・・・実は俺、元の世界で事故にあって死んだんだ。それでたまたまこの世界に神様が来させてくれたんだ。」
智春は黒歴史に触れず、簡単に話す。
「そうなの、それは悪いことを聞いたわね・・・」
セリアは少しばつの悪そうな顔をした。
「別に悪いことばかりじゃないさ。そのおかげでセリアやレイラ、それにメイアに会えたんだ。今はあの時事故にあってよかったと思ってるぐらいなんだぞ。」
「ふふふ、嬉しいこと言ってくれるわね。」
セリアは微笑みながら抱き着いた体をさらに密着させた。
「せ、セリア、その、あ、当たってるんだが。」
智春は背中に感じる二つの柔らかいふくらみに動揺する。
「ふふふ、当ててるのよ。」
セリアはその声にさらに体を密着させる。
智春の背中でセリアのリンゴサイズの塊が柔らかく広がる。
「せ、せ、セリア、と、とりあえず落ち着こうな。」
「ふふ、慌ててるのはトモハルの方よ。チュッ」
「ぅわ、せ、セリア」
あたふたする智春の首筋にセリアがキスをする。
智春は背筋にゾクゾクとした感覚が走り、情けない声を上げる。
ティアラはいつの間にか『こんなおとなな世界見てられないわ。』とでも言うようにテントに避難していた。
この夜、智春が安心して眠れた時間はセリアが見張りをしている時だけだった。
行為に及んだかどうかは、智春の鋼の精神に賞賛を送るとだけ言っておこう。
夜が明け、朝食の後出発する一行だったが、智春の明らかな寝不足の様子にレイラたちはセリアを問い詰め、バローナは心配そうに智春の横を歩く。
『セリアさん!昨夜は何があったんですか!』
『トモハルが寝不足ってことはまさか!・・・』
『な、何にもなかったわよ。ただ、話して、誘惑して寝ただけよ。』
『った、たったそれだけ?』
『ええ、どんなに誘惑しても智春は反応はするのだけど、その手を出してきたりはしなかったのよ。』
『むむ、それは今夜も難しそうですね・・・』
『『『はあ・・・』』』
小声で盛り上がる三人は、智春の攻略難易度にそろってため息をついた。
そんなことは露も知らず、智春は今日もバローナにこの世界の事について教えてもらっていた。
「今向かっている『ダラベスト』は、この『ハンガアリア王国』で首都の『ウィール』の次に大きな街だ。」
「ふーん、結構すごいところなんだな・・・(ここ、王国だったんだ)」
「ああ、街の真ん中に大きな運河が流れていてな、そこが大きな観光スポットにもなっているんだ。まあ、水棲の魔物や魔獣が時々やってくるのだが、まあ、それは滞在すれば分かると思う。ほら、あの川だ。」
バローナが差した先にはかなり大きな川があり、かなりの距離離れている智春たちからもよく見えている。
「あと、街までは二日くらいだ、その間に森をひとつ抜けるがな。まあ、私たちならすぐだろう。」
バローナは疲れ気味の智春を元気づけるように言った。
「ああ、まあ、着くまでは気張っていくか。」
「そうだな。」
笑いあう二人を後ろから三人が恨めしそうに見ていたことは言うまでもないことかもしれない。
ついに、二章が終わりました。(まあ、まだ20話到達してないけど・・・)
三章は『学園編』新キャラも考えていますし、学園ならではの恋もあったりなかったり。
とまあ、これからも智春君の活躍をご期待ください。
ブックマーク20人到達しました。
この『進異世界』を愛読していただいている皆さん、本当にありがとうございます。
これからも、このお話をお楽しみください。
ps:感想欲しーなー(外山は今、感想に飢えております。)




