第二章:クルーペ編 14話:モンスターボックス
14話:モンスターボックス
朝の明るい日差しの中、智春はアレのあと特有の気だるさを感じていた。
昨夜はセリアを説得し何とか実体化させて話し合った。
その結果、火山であったことや智春がセリアを大切に思っていること、今度はセリアと『フルコネクト』する約束、などを話してなんとか和解。
結局二人でアレをしてしまった。
ん?アレって何かって?そりゃあもちろん『夜更かし』に決まってんじゃないですか。
レイラに関しては、ちゃんと話したら不満そうな顔ではあったが、別に難色は示さなかった。
ティアラはお利口なので反対などしない。
最終的には智春が寝た後もメイア含め、三人で話をしていたようで、まだ誰も起きていない。
智春は眠い頭をなんとか起こすために大浴場に向かった。
珍しく実体化したままベッドで寝ているセリアたちを起こさないように智春は部屋を出る。
「はぁーーー、生き返る・・・」
誰もいない大浴場で智春はのびのびとお湯につかった。
チャプン
誰もいないはずの浴場に誰かが湯船に浸かる音が聞こえた。
「ん?って、め、メイア!」
智春が起き上がってみると、そこには火山でみた顔立ちの肩までで切りそろえた真紅の髪に炎のようなオレンジ色の目をした美少女が一糸まとわぬ姿でお湯に浸かっていた。
「おはよう、トモハル。実体化できるくらい気力が回復したのよ。」
「あ、ああ、それはよかったが、ここ男湯だぞ。」
「大丈夫、大丈夫、誰か来たら実体を解けばいいんだし。」
「はあ、俺がいるんだが・・・」
「トモハルになら裸を見せても嫌じゃないわ。ふふふ、私を食べてもいいのよ。」
メイアの言葉に、一瞬、智春は理性が飛びそうになるが何とか持ちこたえる。
「め、メイア、女の子が軽々しくそんなことを言うもんじゃない。」
「ふふふ、そうね・・・いつか絶対振り向かせてやるんだから。」
後半は小さすぎて智春に届かなかった。
「トモハル、改めてお礼を言わせて。私はあなたがあそこで助けてくれていなかったらきっと今ここに居られなかったわ。ありがとう。」
メイアは頭を下げる。
「別に気にすんな。俺がいたのはたまたまなんだし、契約をしたんだから俺もメイアの力をもらったみたいなもんだろ。これでそのことは終わりだ。」
「ふふ、力だけじゃなくて、私の体ももらっていいわよ。」
「そんなことばっかり言って、本当に襲ってやろうか。」
「ふふふ、いつでも大歓迎よ。」
智春の脅し交じりの冗談にメイアは平然とかえす。
「はあ、もう上がるからメイア、実体を解いてくれ。」
「うーん、分かったわ。」
メイアは渋々実体を解く。
智春は最後に大きなため息をひとつつき、大浴場を後にするのだった。
部屋に帰って、セリアたちにメイアとお風呂に入ったってことがばれることも無く、平和にメイアが実体化のお披露目をして、朝食をとり、ギルドへ向かう。
ギルドに着くとすぐにエリナさんからギルドマスターの執務室に通された。
「おう、よく来たな。で、その紅い嬢ちゃんが新しく契約した『炎姫精霊』か。」
「ああ、メイアっていうんだ。」
「メイア・イフラルガです。」
メイアはぺこりと一礼しながら言う。
「はっはっは、トモハルよう、お前の仲間全員女で構成されていく気がするのは俺だけか?」
「いやー、そんなことは無いだろう。そ、それより、ギルドランクの更新とやらはどうすればいい?」
智春は隣に立つセリアの機嫌が悪くなるのを感じ、話題を変える。
「ああ、そのことなら、手続きはもう済んでるからカウンターでカードを預けただろう?」
「ああ、エリナさんに言われて渡してきた。」
「おう、それなら話が終わるころにはできてるだろう。今回は色々特例だったけどこれからも上のランクを目指して頑張ってくれよ。」
「了解、っと、後は火山でのことの報告か?」
「ああ、それと明後日のモンスターボックス討伐の簡単な説明だ。」
「ああ、火山の事はメイアからも話をした方がいいだろう。」
「そうだな、メイア嬢ちゃん頼む。」
「はい、分かりました。」
それから、智春とメイアで火山であったことの一部始終を語った。
「うーむ、ボルケイノタートルが現れたのは不幸な偶然だったんだろう、やつはもともといろんな火山を巡り暮らす生き物だからな。まあ、適当にまとめて報告すれば本部の方で何とかするだろう。二人ともよくやってくれた。あの亀の素材引取り代金はギルドカードと一緒に帰るときに渡すことにしているからちゃんと受け取って帰れよ。」
「ああ、わかった。で、討伐依頼の方は?」
「そっちは、モンスターボックスの所在が分かった。ここから歩いて半日くらいのところにある森の中で発見された。大きさからみて、できて一年そこらだろう。」
「ふーん、で、俺たちの役目は?」
「ああ、お前たちはギルドに集まる参加者と共に敵と戦いつつ、モンスターボックスを破壊してくれ。」
「了解。じゃあ、明後日また来ればいいんだな?」
「ああ、昼前には出発するから遅れないように、今日と明日はゆっくり休んでいてくれ。」
「おう、わかった。それと、その依頼が終わったらこの街を出ようと思う。」
「なに!もうか?」
ディベラは驚いて声を上げる。
「ああ、昨晩のうちに話し合ったんだ。俺はひとところにとどまらず、いろいろなところに行ってみたいんだ。」
「そうか、まあ、俺には止める理由もないが、どこに行くか教えてくれ、その町のギルドマスターに俺からの紹介状を書いてやろう。」
「ありがたいが、ギルドマスターがそんなに一個人に肩入れしていいのか?」
「普通はよくないが、お前は普通じゃないからな。」
「それってひどくない?・・・・はあ、まあいいや。次は魔法をもっと学べる街に行きたいと思ってる。」
「そうか、なら南にある『ダラベスト』にある魔法学院が一番近いな。学院長にも紹介状をかいてやろう。」
「魔法学院なんてあるのか。」
「ああ、魔法を主体にしたい冒険者や貴族の子息とかいろんなやつがいる。まあ、学費は少しかかるが無利子分割払いができて、冒険者ならどこのギルドからでも払えるから行って損は無いと思うぞ。」
「そうか、それは助かる。」
「ああ、まあ、そこに行くためにも今回の依頼でへまして死なんようにな。」
「ああ、肝に銘じとくよ。」
そう言って、智春たちは執務室を後にした。
階段を降りると待ち構えていたようにエリナさんがやって来た。
「トモハルさん、ランクの更新が完了しました。それと、こちらがボルケイノタートルの引き取り金になります。」
エリナさんが差し出したボードには、Cランクを表す青色のギルドカードと金貨と大銀貨が5枚ずつ乗っていた。
「おお、ありがとう。Cランクは青色なんだな。」
「はい、ギルドカードはランクによって、白、緑、青、銅、銀、金、黒となっています。ランクによって受けられる特典も変わるので上のランクを目指して頑張ってくださいね。」
「ああ、もちろんだ。っと、エリナさん、この近くで服を安く売っているところ教えてくれ。」
「服ですか?確かにトモハルさんはいつも変わった服を召されていますね。」
「あ、ああ、これが俺の地元の戦闘服だ(いろんな意味での)。」
大抵は着慣れた地球の学生の制服を着ていた。
急に指摘されたことに動揺する智春は後ろでレイラが訝しげな表情を浮かべてことに気がついてはいない。
「ふーん、珍しい作りの服ですね。っと、服屋さんでしたね。それなら、中央広場の『ザ・ウニクロ』というお店をお勧めします。あそこはたくさんの服があってなおかつ安いので私もよくいくんです。」
「ふ、ふーん、『ウニクロ』か・・・」
智春は日本でもかなりの勢力を持った某服飾店を想像してしまった。
「じゃあ、そこに行ってみるよ。ありがとな。」
「いいえ、明後日の討伐頑張ってくださいね。」
「ああ。」
智春たちはギルドを出ると中央広場を目指した。
実際に店のについて服を選んでいると智春はすぐに飽きてしまい、自分の分を適当に見繕ってセリアにお金と一緒に預けると店の外の噴水に腰をかけた。
(ふーん、結構いろんな店があるんだな・・・)
智春はあたりのいろいろな店をを見回す。
あたりには店だけでなく屋台も出ており、食欲をそそる香りが智春の方にも漂ってくる。
(うーん、昼はこういう屋台で食ってみるのもいいかもな・・・)
匂いのつられた智春は腰を上げ、近くの焼き鳥みたいなものを売っている屋台に近寄っていく。
「トモハルさん、少しお話があるのですが・・・」
そんな言葉と共にレイラが智春の行動を阻む。
「ん?どうした?」
「いえ、少しお聞きしたいことがあって、こっちに来てください。」
レイラは智春の腕を引っ張って狭い路地に入り込んだ。
「お、おい、レイラ、どうしたんだ?」
智春の戸惑った声にレイラは真剣な表情を向ける。
「トモハルさん、正直に答えてください。トモハルさんは私に隠し事をしてますよね。」
「へ?隠し事?何のことだ?」
レイラの予想外の質問に智春は本気で首を傾げる。
「とぼけないでください。トモハルさんは私に隠してるじゃないですか。」
「いや、本当にわかんないんだ。すまん、どういうことだ?」
「トモハルさん、記憶喪失で過去の事覚えてないって嘘ですよね。」
「っつ、そ、そんな事ないぞ。」
「どうして、私は言ってくれないんですか?セリアやメイアには教えてるんですよね。」
レイラは瞳に涙を溜めながら問いかける。
「ん?なんでそう思うんだ?」
「さっき、お店でメイアさんが水兵風の服を身ながらこれはトモハルさんの故郷の服だからこれを着たらきっと喜ぶだろうってセリアと二人で話していたんです。」
「っつ、そ、それは・・・」
智春はセイラー服を手に取りながら話す二人を想像して心の中で舌打ちをする。
智春の苦虫を噛み潰したような顔を見てレイラは悲しそうにした。
「やっぱり、私には教えてくれないんですね。」
「い、いや、教えるのがダメっていうか・・・たぶんレイラ信じないぞ。俺だって立場が逆だったら絶対に信じないからな。」
「私は信じます。だから教えてください。トモハルさんのこともっと知りたいんです。」
「っつ、そうか・・・はあ、まあ、レイラなら心配ないと思うがあまり他人には話さないでほしいんだ。」
「はい、もちろんです。」
レイラは一転、嬉しそうな顔で頷く。
「はあ、えーとな、俺は実は異世界から故あってやって来たんだ。」
「へ?異世界?」
予想外の回答に本気で不思議そうな表情を浮かべるレイラ。
「ああ、色々あってな、この世界にやって来たんだ。その、この話を聞いて俺のそばに居たくないと思ったら言ってくれ。ここで別れることはできないが、ちゃんとバーシュ村までは返すか。」
「そ、そんな、私がトモハルさんから離れたくなるなんて絶対にありえません。」
「そ、そうか。それはよかった。」
レイラの必死さすら伝わる言葉に智春は気圧される。
「それにしても異世界ですか・・・まあ、確かに秘密にされるのも仕方がありませんね・・・むう、でも、それをセリアにはともかくメイアに教える前には私にも教えて欲しかったです。」
レイラはむくれて上目づかいで智春を睨む。
「す、すまん。でも、あいつには俺が直接教えたわけではなく、契約の時に俺の記憶を覗いて知ったんだ。」
「そうだったんですか・・・まあ、それなら私が一番最後だったのはしょうがないかもしれませんね。」
レイラは少し残念そうなでも納得した表情を浮かべた。
「ふふ、でもよかったです。トモハルさんが私に話してくれないのは、私が信頼されてないからなのかと思っていたんです。」
「そんなことはない。レイラの事は信頼しているし、離れてほしくなかったんだ。ごめんな。」
「ふふ、いいんです。それよりも戻らないとセリアたちがきっと探してますよ。」
来た時とは反対にセリアは本当に嬉しそうに智春の手を引くのだった。
それから、四人はクルーペの街を観光した。
それなりに大きな街であるクルーペにはいろんな店があり、宿に帰るときには四人ともへとへとになっていた。
次の日、智春たちは一日を翌日の依頼のための準備や簡単な鍛錬などをして各自思い思いに過ごした。
まあ、なんだかんだでモンスターボックス討伐当日、智春たちは事前にもらった指示の通り、ギルドに集合していた。
「ふーん、こいつらみんなCランク以上の冒険者か・・・」
智春たちの周りには強そうな雰囲気の冒険者たちが十数人集まっていた。
「おいおい、兄ちゃんここはEランクの雑魚が行ける仕事じゃねーぞ。」
「はは、後ろの嬢ちゃんたちおいてさっさとうせな。」
どっかで見たことがあるような二人組が智春たちに下卑た視線を向けながら寄って来た。
「いや、俺はCランクだし、どっちにしろ仲間をおいていくつもりはない。」
「ふん、うそついても無駄だぜ。俺たちはお前らが白いギルドカード持ってんの見たんだ。こんな短期間で二つもランクを上がれるわけねーだろ。」
「そうだ、酔っぱらった俺たちに勝ったからって調子にのってんじゃねえ。」
どこかで見た顔だと思ったら、初依頼の日にギルドでからんできた酔っ払いの二人組だった。
「いやー、嘘つくなっていわれても、Cランクなのは本当のことだし・・・そうだ、ほら、ギルドカード青だろ。」
智春はポケットから新しく青色になったギルドカードを取り出して二人に見せた。
「はん、偽造に決まってる。ギルドマスターに突き出してやる。」
元酔っ払いAが智春の腕をつかもうとしたとき、何かがその手を叩き落とした。
「やめるんだ!」
「あん?なんだ?俺様を誰だと思ってやがる。」
元酔っ払いAがガン付けた先には赤い髪を後ろでまとめ、軽鎧に身を包んだ美女が立っていた。
「あんたが何者かなんて知りもしないし興味もない、だが、人様に迷惑をかける奴は見逃さない主義でな。」
「はあ?俺たちはこの不正野郎を突き出そうとしてるだけじゃねえか。邪魔すんな。」
「ふん、ギルドカードに細工ができないことぐらい知っているだろう。それに、その者は不正などしていない。ギルドマスターのちゃんとした采配でCランクになったのだ。」
「ふん、信用ならねーな。たった、数日で二つもランクが上がってたまるか。」
「確かに異例の事だが、マスター議会の決めたことだ、仕方あるまい。それともまだ難癖をつけるか?それならばこの『苛剣』が相手になるが?」
「か、苛剣だと、っち、テメーら覚えてろよ。」
「くそ、」
二人の元酔っ払いは急に顔色を変えてその場から去って行った。
「すまん、助かった。」
「いや、礼はいい、こっちも用があってお前たちを探していたんだからな。」
「ん?何の用だ?」
「ああ、私はバローナ=ロードヴィヒという。これでもBランクの冒険者だ。」
「ふーん、ってことはこの中でもかなり強いのか。」
「まあ、それなりの強さは自負している。っと、それはいい、今回の依頼は主にCランクの冒険者たちで簡単な攻略本体を作り、私やお前などの少数精鋭でモンスターボックスから生まれる敵の殲滅をする。という手順になっている。でだ、この攻略隊の総指揮はギルドマスターであるディベラどのが取るのだが、周りの遊撃部隊のリーダーは私になってな、それで私の指揮する者たちの顔を見て回っていたわけだ。」
「ふーん、って、俺も遊撃隊なのか?」
「そうだが、ディベラどのから聞いてないのか?」
智春が驚くとバローナは首を傾げる。
「ああ、今日ここに来いとしか言われていない。」
「そうか、まあ、じゃあ、お前の所属は遊撃隊だ。そういうことで、よろしくな。」
「ああ、こちらからもよろしくたのむ。」
「うーし、お前ら全員そろったな。」
智春とバローナの挨拶が終わったのを見計らったようにディベラがみんなの前に立つ。
「今日はよろしくたのむ、今回のモンスターボックスはあまり大きくない、だが、みんな気を抜かずにやって行こう。事前に指示が無かったものはまとまって進むぞ。じゃあ、出発。」
ディベラはそう言って街の外へ歩き始めるとそれにみんなが追従する。
「じゃあ、私たちも行こう。」
「ああ・・・レイラは救護班の人と一緒に行くんだったな?」
「はい、トモハルさんお気を付けて。」
レイラが去っていくと智春たちも街の外に向けて歩き出した。
モンスターボックスのある森はかなり木や丈の高い草が生えており見通しが悪い。
智春とバローナは適度に広がって時々襲ってくるホングルやフォレストファングを撃退していた。
セリアとメイアも魔法で撃退に参加している。
時々出てくる下級の魔獣もバローナや智春の前では物の数ではなかった。
討伐隊が着々と森を進んでいると、先にすり鉢状に地面がえぐれた場所に行き当たった。
「なんだ、この痕は・・・まるで何かが地面からはい出してきたみたいじゃないか。」
先行していたバローナがうめき声を漏らす。
「おい、トモハル、バローナ、警戒態勢だ。」
後ろからこの光景を目の当たりにしたディベラが声をかけてくる。
「了解、モンスターボックスは近いのか?」
「ああ、近いというか、そのくぼみの中心部に核があるはずだ。」
「って、まさか、この痕は、」
「ああ、おそらく何らかの魔物か魔獣が生まれた跡だな。」
「魔獣だ。それも最悪なことに、亜竜種だ。」
「バローナ、なぜわかる?」
「あれだ。」
うめき声を漏らしてからずっと黙って穴を見ていたバローナは今は空を見て何かを指差していた。
「な、まさか・・・」
「ど、ドラゴン!」
上空を西洋風のドラゴンの形をした生き物二匹が旋回していた。
「くそ、モンスターボックスはここまで成長していなかったはずだ。」
「ボヤいていても仕方ないぞおっさん、俺とバローナであいつらは食い止めるからその間にモンスターボックスを倒して撤退できるようにしていてくれ。」
「っく、いや、亜竜種の相手をするなら『対竜魔法』が使える精霊契約者の方がいいだろう。バローナ、現場指揮を頼む。」
「ああ、それが妥当だな。」
「なんだ?その『ドラゴンスレーヤー』って?」
智春は聞き覚えのない単語に首を傾げる。
「っつ、セリア嬢ちゃんはこれも教えてなかったのか、いや、知らなかったのか?まあ、どっちでもいい。とりあえず、メイア嬢ちゃんに聞けばわかる。フルコネクトを発動しろ。」
「あ、ああ。って、セリアとメイアどっちとすればいいんだ?」
「知るか、俺に聞くな。大体上位の精霊二人と契約なんて前代未聞なんだぞ。」
「そうなのか?初耳だ。」
二人が焦っているのか漫才しているのかわからない会話をしている間に、上空のドラゴンが智春たち討伐隊に気付いたようで、急に降下してきた。
「っち、トモハルもういっその事『祝詞』は適当に考えて二人とフルコネクトしちまえ。」
「んな、うーん、やってみる『我求むるは太古の力、全てを燃やしつくさん力、世界を凍らせ包まん力、今、我に宿りその武器と成せ。』」
智春は即興でそれらしい言葉を考え、『古代語』で紡いだ。
すると、智春の周りを一陣の風が包み、それが晴れたところには右目の下に赤、左目の下に水色のラインがはしり、背中からは超低温の霧と炎の双翼を生やした姿で智春が立っていた。
「な、なんて気力の量してやがんだお前は、っつ、来るぞ。」
仮面舞踏会のファントム見たく、顔の半分をマスクで覆った状態のディベラが身構える。
《え?何?急にフルコネクトなんてしてって、セリアも!?》
《うぅ、初めてを二人同時になんて・・・》
頭の中で二人が緊張感無く話しているが智春は、必死でドラゴンの急降下アタックを避ける。
《メイア、ドラゴンスレーヤーってなんだ?》
《ん?ああ、ドラゴンスレーヤーってのは精霊が使える対ドラゴン用魔法で、ドラゴンの魔法耐性を貫通してダメージを与えられるわ。》
《ふーん、便利だな。で、どうすればいいんだ?》
《私のは普通攻撃に混じってるから、普通に攻撃してれば大丈夫よ。》
《了解、セリアは?》
《私は防御に力が偏ってるから、魔法も氷壁のオートガードなの。ドラゴンスレーヤーとしては対ドラゴン用の盾になるから気にしなくて大丈夫よ。》
《そうか、ならいつも通りやるか。》
《そうね。》
智春はドラゴンの急降下アタックを避け、すれ違いざまに刀で切りつける。
ガキンッ
《な、はじかれたぞ、メイア。》
《ど、どうして、》
メイアは焦ったように声を上げる。
「トモハル!お前のその羽、たぶん気力の暴走だ。精霊の気力をちゃんと纏え。そうすればちゃんとドラゴンスレーヤーも発動する。っと、」
ディベラがもう一方のドラゴンをサーベルで切りつけながら叫ぶ。
「了解、やってみる。」
智春は背中の翼があるという違和感を全身に広げるように念じるがうまくいかない。
「くっそ、おっさん、よくわからん。」
智春はドラゴンの攻撃をかわしながらディベラに叫ぶ。
「っつ、たく。心の底からお前の相棒たちを求めるんだ。」
「やってみる。」
智春はが真剣な表情で立ち止まると、そこに再び一陣の風が吹き、過ぎ去った後には、セリアのドレスと同じ水色のマントを羽織、メイアのドレスと同じ真紅の手袋とブーツを身に着けた智春が立っていた。
「はあ、ようやくか。俺はこっちに集中するからな。」
「ああ、ありがとう。」
ディベラは叫ぶとともに仮面が反面から全面に変わり、ディベラの影から飛び出した無数の影がドラゴンの体を貫き地面に落とした。
「はあ、こっちも負けてらんねーな。セリア、メイア行くぞ。」
《ええ》
《もちろんよ》
二人の威勢のいい返事を背に智春は再び急降下アタックをしてきドラゴンの頭を蹴り、背に駆け昇る。
「安元流剣術壱陣一目、通剣『柳鳴り(やなり)』」
智春は片方の羽にたどり着くと、刀を振りぬいた。
グァァァァァァァぁ
ドラゴンは羽の根元を切られ、そのまま墜落する。
「っと、さあ次は地上戦だ。」
智春はうまく着地して、まだ地響きの治まらない地面を駆けてドラゴンに肉薄する。
ッガァ
ドラゴンはすかさず火球を放って迎撃しようとするが、セリアの自動氷壁によって撃ち落される。
「チェックメイトだ。トカゲ野郎。安元流剣術二奥義、『薄刃蜻蛉』」
ドラゴンのもとにたどり着いた智春は、メイアの化身であるブーツに気力をこめ、急加速と共に刀を振りぬいた。
ガキンッ
ドラゴンは声を上げる間もなくその身を分断され、二つの肉塊となった。
その場には、ドラゴンが地面に崩れ落ちる音と、智春の刀が根元から砕けた音だけがが響き渡のだった。
どうも、進異世界を読んでいただきありがとうございます。
次の投稿は5月の6日を予定しています。
ただ、少し遅れる可能性もありますのでご了承ください。
では、アスタラビスタ!




