第二章:クルーぺ編 13話:火山と少女と初試験
13話:火山と少女と初試験
目の前にそびえたつのは標高約1500メルの火山、日本の長崎、雲仙普賢岳を想像するといい。
現在も活動中のこの火山は獣や火系統に属する魔獣、魔物の宝庫でギルド指定ランクはCである。
そんな危険区のふもとに智春は一人の男性と立っていた。
「本当に一人で登るのかい?」
「ああ、ここまで連れて来てくれてありがとなおっちゃん。」
「いいさ、どうせ俺らの商隊の通り道だったんだし。それに、ギルドからの依頼じゃ断れねーからな・・・兄ちゃん試験頑張れよ。」
「おう、おっちゃん達も商売頑張れよ。」
「ああ、じゃあ、またな。」
「おう、ありがとな。」
男性は智春に背を向けて自分の仲間たちの方へ歩いて行った。
「うっし、じゃあ、異世界に来ての初試験頑張りますか。」
智春はそう言って山を登り始めた。
なぜ智春が一人で山登りをしているのか数日さかのぼってみよう。
智春たちがフォレストファングの討伐依頼で森に行き、そこでデュラルグと戦ったのは四日前の事である。
この日、疲れていたこともあって街についてからはギルドのもよらず宿に直帰した。
翌日、智春たちは依頼の達成報告をしにギルドへ行ってからの事である。
「エリナさん、これ、達成証明のフォレストファングの尻尾です。」
「はい、確認をしますので一緒に換金する素材などはありませんか?」
「んー、じゃあ、こっちの袋も一緒に。」
「はい、中身をはいけ・・・・・・えっと、この素材って、」
「ん?フォレストファングとデュラルグの革とか爪とかだけど。」
智春がトレイの上に乗せた素材を見て、エリナさんの顔が驚愕に染まる。
「や、やっぱりデュラルグの物なんですね。た、倒されたのですか?」
「ええ、そうよ。やったのはトモハル一人なんだけどね。あんな森に棲んでる魔獣ではないのだけれど・・・・」
「ひ、一人で倒されたのですか・・・・ちょっと、お待ちください。」
エリナさんはそう言ってどこかに走って行った。
少したつとギルド内の職員たちが騒がしく動き始めた。
「お、お待たせ、し、しました、はぁ、はぁ、ギルドマスターからお話があります。」
カウンターの奥から走って来たエリナさんが途中で息を整えながらいつもの扉を指す。
智春たちはおとなしくギルドマスターの執務室に向かった。
「おう、来たか。お前、デュラルグを一人で倒したそうだな。」
「ああ、そうだが、なんかやばかったのか?」
「ん?なぜそう思う。」
ディベラは不思議そうな顔をする。
「いや、それを報告したら急にギルド内が騒がしくなったから・・」
「ああ、それはな、お前らの報告のおかげでこのクルーペの近くにモンスターボックスが出現した疑いがほぼ確信に変わったからだ。」
「ん?なんだ、モンスターボックスって?」
「なんだお前さん知らんのか?」
「ああ、知らん。」
なぜか偉そうに頷く智春。
「そうなのか、モンスターボックスってのはな、自然災害に分類される特殊生命体の穴の事で、そこからはその土地に似合わないレベルの獣や魔獣、魔物なんかが生まれてくる。こいつは周囲の土地の魔力を吸って成長するが核を壊せば消滅させることができる。まあ、迷宮の仲間みたいなもんさ。で、最近のこの街の周辺の生態系の異常はモンスターボックスが出現したせいではないかって疑いがあってな、今日のお前らの報告でそれが確信に変わったわけだ。」
「ってことは、昨日のデュラルグはモンスターボックスから生まれたのか?」
「ああ、それと、お前がバーシュ村倒したガバスもおそらくはモンスターボックスのやつだ。」
「あれ?バーシュ村の話、私たちしましたっけ?」
レイラがあれっと首を傾げる。
「ん?ああ、トモハルの魔法がとんでもなかったことから独自で調べさせてもらった、まあ、バーシュ村より前はわかんなかったがな。」
それより前が無いから当たり前である。
「ふーん、そ、そうか、ってことは俺が記憶喪失だってことも?」
「ああ、そんな報告が上がって来たな。まあ、それは置いといてな。今回のモンスターボックスの件はギルドでCランク以上の冒険者を集めて討伐をすることになったんだが、それにお前たちも参加してほしい。」
「え?でも、俺たちはEランクだぞ。」
「ああ、分かってる。しかし、今このギルドは戦力不足でな、他のギルドに要請して人員は集めてはいるんだが心もとない。だから、指定ランクCのデュラルグを倒せる実力を持ったお前に力を貸してほしんだ。」
ディベラはばつの悪そうな表情で言う。
「ん、それはいいんだが、ランクの問題はどうする?特例にでもするのか?それにレイラたちも連れていくのか?」
「ああ、レイラ嬢ちゃんは救護要員として同行願いたい。こっちは戦わないからランクは関係ない、で、トモハル、お前さんはランク昇格試験を受けてもらいた。まあ、こっちはこの件が無くてもほぼ決まってたんだがな。お前さんたちこの街に来る途中、盗賊団を壊滅させてだろ?」
「ん?壊滅っていうか、警備の兵士に突き出したな。」
「やっぱりお前たちか、その盗賊団が危険ランク指定D1で、前回の討伐依頼をCランクの冒険者が失敗したからC3に引き上げられるところだったんだ。で、お前らの経歴を探った時にそれを聞いてな、お前の昇格試験が決まったんだ。」
「ふーん、あんま強くなかったけどな・・・で、試験って何をすればいいんだ?」
「ああ、今回の試験は飛び級でC3ランクまで引き上げる。通常の飛び級での試験では一週間以上はかかるような試験内容にするんだが、今回は特例で、ここから二日ほど行ったところにある火山、『ボルカーラ火山』の山頂付近に咲く花『ボルケイノフラワー』の採取だ。おそらく五日くらいでこの内容は終わるお思う。が、討伐依頼の開始は一週間後だ。連続になってしまうがやってくれないか?」
「ああ、別にいいが、セリアは連れていけるのか?」
「いや、今回の特例のための条件としてセリア嬢ちゃんは連れていけない。だが、安心してほしい、セリア嬢ちゃんはその間、うちのシャリアが特訓を兼ねて面倒を見るつもりだ。あと、お前さんの猫とレイラ嬢ちゃんも必要ならギルドで面倒を見るが?」
「いや、そこは本人の意思に任せる、ティアラはレイラに任せたが、セリアは俺から離れて大丈夫なのか?」
「ええ、実体化はできなくなるけれど問題無いわ。それに、影精霊は契約者から離れた精霊が実体化できる空間を作ることができると聞いたことがあるし。」
智春の不安そうな問いにセリアが答えた。
「ええ、可能よ。貴方の契約精霊は私に任せなさい。色々教えたいことがあるし。」
「そうか、じゃあお願いするとして、レイラはどうする?」
「じゃあ、私は宿で依頼や旅の準備をして待ちます。」
「了解。じゃあ、その試験はいつから始めればいい?」
「そうだな、明日火山の近くを通るキャラバンがいるからそれに同乗で行くと一日でつけるだろう。話はこっちでつけておこう。」
「おう、了解。よし、じゃあ、試験の準備をするか。」
「なら、セリアちゃんはもうこっちで預かっていいかしら?」
「ん、分かった。セリア。」
「ええ、トモハル。試験で死んだら承知しないわよ。」
「ああ、安心してまってろ。」
こうして火山に行くことになった二日後の現在、『ボルケイノフラワー』を探しに智春は山登りをするのであった。
「はあ、この火山暑いなー、うーん、こうなったら・・・水の力で涼をなせ、ウォータークーラー。」
智春は即興で考えた魔法で涼む。
「ふー、これで少しはましになったか・・・にしてもなんか聞いてたよりも危険な場所じゃないなあ。まだ、一匹も危険な生き物に遭遇してないぞ・・・」
登り始めて一時間くらいたって、まだ山の中腹くらいだが智春は一向に生き物と出会っていなかった。
智春は休憩に水分補給をし、先を急ぐ。
山の景色は頂上に近づくほど草木は無くなり、荒れた山肌が見えてきた。
と、頂上まであと少しというところで智春は不思議な跡を見つけた。
まるで、その部分で爆発が起きたのかのように地面にクレーターができていた。
「なんだこりゃ・・・」
智春は呻きながらクレーターを右に迂回する。
頂上に着くと、目的に花は見つかった。
智春は試験に必要な分の花を摘んで、シャドウクローゼットにしまうとすぐに道を引き返した。
「はあ、なんかただのきつい登山だな・・・これがCランクの昇格試験って簡単すぎてなんかありそうで怖いな・・・」
つぶやく智春の予感はクレーターのところまで戻った時に的中する。
登りとは逆の方側にクレーターを迂回していると智春はとんでもないものを拾った。
「え?いやーそんなはずはないだろう・・・」
現実逃避したくなる智春の目の前には灰に埋もれて見えにくいながらも浅い呼吸をする赤い髪の少女が倒れていた。
「おい、大丈夫か?生きてはいるよな?・・・」
智春は少女を抱き起すと、皮袋の水を掛ける。
「くっ、に、人間か・・・ひぅ。」
少女は目を開いたが、悲鳴を上げると起き上がりそっぽを向く。
しかし、体は万全ではないようで肩で浅い息をしている。
(や、やっばーい、どうしよ、し、死にかけのこんな時に・・・ちょ、ちょー好みなんだけど、この人・・・)
「なあ、君大丈夫か?なんでこんなとこで倒れてたんだ?」
少女の内心も知らず、智春は心配そうに声をかける。
「え、ええ、大丈夫ではないのだけれど・・・」
(どうしよ、どうしよ、どうしよ、このまま死ぬのはいやすぎる・・・そ、そうだ、この人に精霊契約してもらえばいいんだ。事情とかは後でもいいやとりあえず早くしないと私消滅しちゃう)
少女は何かをひらめいたように慌てて智春の方を向いた。
「あ、あの、わ、私と精霊契約して。」
「へ?君精霊なのか?」
「ええ、じ、事情などは後で話すから、じ、時間が無いのお願い。」
「ん?よくわかんないが、いいよ。」
智春は少女の焦った様子に首を傾げるも頷く。
「よかったあ、いくわよ。『我は炎、山をいからせ、全てを灰と化す灼熱の化身なり。今この者をわが主と認め、死に消ゆるまで仕えんことを誓わん。我が、メイア・イフラルガの名において我が魂をささげん。』」
少女、メイアは焦るように智春に口づけをした。
「んっ!」
智春は覚悟はしていたが、メイアの勢いに驚いて声をあげた。
ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ
メイアの姿が解けるように消え、智春が首周りに熱さを感じた時どこかで何かが叫ぶ声が聞こえた。
「ん!なんだ!?」
智春は慌ててあたりを見まわす。
《『ボルケイノタートル』よ、こいつが私の要石を食べてしまったの、だから私は気力を失ってもう少しで消滅するところだったの。早く逃げないとやつがくるわ。》
智春の頭にメイアの声が響く。
要石とは精霊の本体となる結晶の事で、セリアの場合は洞窟の奥にあった氷の結晶がそれである。
「ああ、分かった。すぐに降りよう。」
智春は足元に注意しながら疾走する。
「なあ、メイア、この山の生き物がこんなに少ないのは、」
《そうよ、あいつのせいよ。って、なんで私の名前を?》
「ああ、俺は『古代語』が分かるんだ。」
《なっ、古代語が分かるの・・・って、もしかして・・・・・》
メイアが急に黙り込んだと思ったらとても不機嫌そうな感情が智春に流れ込んできた。
《まさか、二人目だったなんて・・・・トモハル、あんたどんな気力の量してんのよ・・・》
「ああ、セリアのことか、まあ、記憶を読んだんだったら分かると思うけど、まあ、俺の出自は内緒で頼む。あと、セリアとは仲良くしてくれよ。」
《ええ、善処するわ・・・・はぁ、》
(くそー、なによ、運命的な出会いだったのに・・・女がもう二人もいるじゃない、しかも、契約精霊としては二番手・・・むーーー、せめて二人とも人間とかだったら私が有利だったのに、でも、トモハルは二人の思いに気付いてないわ、今なら私がかっさらえる!よーし、やってやるわ・・・)
メイアの決意を知らず、智春はだんだん近づいてくる足音から逃げるようにスピードを上げて走る。
「メイア、どっかに近道はないのかっふ。」
《馬鹿ね、頭の中で私に話しかけようと思いながら話せばいいのに、知らなかったの?》
全速力で走りながらしゃべっていた智春はついに舌を噛んでしまった。
《ん?こうか?》
《ええ、まったく、こんな基本の事も教えないなんて・・・・って、まさか、『フルコネクト』も教えてないなんて・・・》
智春の記憶を詳しく探ったメイアが絶句する。
《ん?なんだ『フルコネクト』って?》
《『フルコネクト』って言うのは、精霊が契約者に憑依して、契約者の力になるの・・・》
《ふーん、なんか強そうだなっと、やば!》
緊張感のない脳内会話とは違って、現実は絶体絶命の危機に陥っていた。
智春の目の前には普通乗用ワゴン車ぐらいの大きさの黒い亀が佇んでいる。
亀は頭に怒りマークが浮かび上がりそうなほど怒っている。
ゴォォォォォォぉぉ
《な、なんでこいつこんなに怒ってんだよ・・・》
《それは奴の自業自得よ。私の要石がお腹の中にある状態で私たちが契約したから、それがお腹の中で燃え上がってはじけたのよ。》
《そりゃ、ご愁傷様で・・・メイア、こいつって、どのくらい強い?》
《んー、あんたがこの前戦ったデュラルグ二体分くらいかな・・・》
《なんだ、そのレベルならいけるな・・・》
智春は刀に手をかけ、その鯉口を切る。
ゴガァぁ?
ボルケイノタートルは智春の臨戦態勢に身構える。
《そ、そのくらいって・・・まあいいわ。トモハル、『フルコネクト』を使うわよ。》
《ん?別にいらないと思うぞ。》
《それでもいいの・・・・・私が初めてを奪ってやる・・・》
《なんか、言ったか?》
《な、何でもないわよ、それより私が今からいう言葉を復唱しなさい。》
《別にいらないのに・・・》
《いくわよ・・・『我求むるは太古の力、全てを燃やしつくさん力、今、我に宿りその剣と成せ。』》
『我求むるは太古の力、全てを燃やしつくさん力、今、我に宿りその剣と成せ。』
智春が復唱するとともに周りを炎が渦巻く。
グゥゥゥ
ボルケイノタートルは突然の炎に驚き様子を見る。
炎の渦が解けると、中からは右目の下に紅いラインが入り、背中に炎の右翼のみを持った智春が立っていた。
《ふーん、こんな風になるのか・・・なんか恥ずかしいな。》
《ええ、まあ、どんな姿になるかは人それぞれだけど、こんな派手な姿になるとはね・・・・》
二人は外見の変化に少し羞恥を覚えた。
しかし、様子見の間に体制を立てていたボルケイノタートルは待ってくれない。
その巨体に似合わず、かなりのスピードで智春に突進をかます。
「おっと、って、あっぶね。」
軽いステップで避けようとした智春だったが、『フルコネクト』で上昇したパワーで、オーバーワーク気味に回避距離が伸び、体制を崩す。
《おい、メイア、これ体軽すぎ‼》
《ええ、私はもともと力が攻撃に偏ってるからよ。》
《そういうのは先に言ってくれ。》
《あら、ごめんなさい。以後気を付けるわ。》
《ああ、で、この状態はどんなことができるんだ?》
《私の場合は、攻撃に炎を付与させるわ。とりあえず、その亀倒しちゃえば分かるわよ。》
《そうだな、こいつ倒してから色々聞こう。》
智春はいったん会話を打ち切り、刀を抜いて構えた。
「よし、でかぶつ。待たせてな。」
ボルケイノタートルは体制を立て直して、溜を作った。
《あ、そういえばこいつ、口から高熱の岩石飛ばすから気を付けてね。》
《だから、そういうの先に言ってよ!》
メイアの遅すぎる警告を聞きながら智春は岩石をかわす。
背後の着弾点には大きな穴があき、ただでさえ少ない草木がなぎ倒される。
「うっし、じゃあ、次はこっちから行くぞ。」
智春はボルケイノタートルへ直線で肉薄し、刀を振るう。
グガァァァぁぁ
刀は炎を纏って、ボルケイノタートルの皮膚の中身を焼きながら足に大きな傷をいれた。
その巨体のせいで切断はできなかったがもう突進はできないだろう。
「っと、あぶね」
接近していた智春にボルケイノタートルは噛みつこうとするが宙を切る。
智春はよけながら刀を振るい顔に小さな傷をつけた。
返す刀で切りつけるが、首を縮めて避けられる。
「っつ、ならこれはどうだ。」
ガァァァァァァァァ
智春の投げたナイフがボルケイノタートルの左目に突き刺さる。
「今だ!・・って硬てーーーーー」
ボルケイノタートルが硬直した瞬間、頭に向かって刀を振り下ろすが全く刃が通らない。
「っつ、なら・・・」
ボルケイノタートルの噛みつきをかわしながら智春は刀の刃を外向きに、腹を肩に乗せて剣道の担ぎ技の要領で構える。
「安元流剣術参陣二目、剛剣『兜割り』」
智春は手首をひねって峰打ちをボルケイノタートルの脳天に叩き込みむ。
ゴキっという嫌な音があたりに響き、ボルケイノタートルは物言わぬ者となった。
「はーー、硬かった、これ『雲雀』じゃなかったら刀が折れてたな・・・」
《いや、ボルケイノタートルの頭蓋を叩き割って脳までつぶすなんておかしいでしょ・・・》
《んー、なんかできた。っで、こいつはどこの部位が売れるんだ?》
《はあ、そいつは全部売れるから、このまま引きずって行きましょう。フルコネクト状態なら余裕よ。》
《でも、それだとメイアが実体化できないじゃないか。灰まみれの姿しか見てないぞ。》
《いえ、その亀に要石を食べれれた影響で実体化は二、三日は無理だから大丈夫よ。》
《そうか・・・なら、そうするか。この状態なら少し早く走れそうだから可能なペースで走っていこう。》
智春は首に巻かれた紅い結晶のはまったネックレスに触れながら優しく言った。
「メイア、これからよろしくな。」
智春が火山に行ってる間、レイラはティアラと共に鍛錬をし、セリアはシャリアのもとで精霊としての鍛錬に励んでいた。
「あなた、どうしてサバイバル術や薬草の種類なんて覚えてるのに、精霊として当たり前のようなこと知らないのよ!」
シャリアが作り出した特別な空間でセリアはシャリアの前に正座している。
「いえ、えっと、旅で役立つから?」
「それは、精霊としての常識を知らないことの返答にはなってないわね。」
「いえ、その、えっと、決してめんどくさかったとかそう言うわけでは無くって、その、重要なわけがありまして・・・」
「ふーん、常識も知らないで契約者の力に十分になれなくてもしょうがないわけだったんだ・・・」
「ごめんなさい。冒険の知識が楽しすぎてその他がおろそかになっていました。」
セリアはシャリアの威圧に平伏する。
「はあ、全く。これからはちゃんと、『フルコネクト』とか、教えたことをちゃんとするのよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「人との間に生まれた半精霊の子育てとか・・・」
「こ、こ、子育て!、そ、そんな、私とトモハルはそんな関係じゃ・・・」
シャリアのつぶやきにセリアは慌てふためく。
「あらら、誰もあなたとトモハル君の子どもなんて言ってないのにぃ」
「むーー、からかわないでください。」
「ふふふ、でも、そうなりたくないわけでは無いんでしょ。」
「うう、そうですけど、あいつ全然気づかないし・・・だって、森で水浴びしている時も覗きにすら来ないんですよ。」
「ふふ、自分の気持ちが分かってほしいなら、まず、相手の気持ちを分かってあげないといけないのよ。」
「そうなんですか・・・」
「ええ、それにトモハル君だってあなたの事は嫌いではないはずよ、頑張ってアピールしてみたら?」
「アピールって、どんな風にすればいいのですか?」
「ふふ、それは自分で考えないと、って、ん?うそ、それはなんでも、」
「どうしたんですか?」
急に驚いた顔をするシャリアにセリアは尋ねる。
「実はトモハル君が帰って来たみたいなの。」
「へ?トモハルが?」
「ええ、実はこの空間は外の世界より時間の流れが遅くしてあるのだけど、外の時間で三日目よ。」
「え!じゃあ、一日早く帰って来たってわけですか?」
「そうみたいね、じゃあ、外に出て、トモハル君と会いましょうか。」
「ええ、では、お願いします。」
そう言うとセリアは目をつむった。
遠くに感じる智春の気配にセリアは少しの違和感を覚えたが、それよりも嬉しさが勝る。
(ふふふ、やっぱりトモハルね。でも、怪我とかしてないかしら?ちゃんとご飯食べたのかしら・・・)
セリアは外も見えない指輪の要石の中から外が騒がしいことを感じ取る。
(何かしら?まさかトモハルが怪我してたとかじゃないわよね・・・・)
セリアは不安になり、智春が指輪を身に着けたの感じると同時に実体化した。
「トモハル、おかえっつ!・・・どういうことよトモハル!」
嬉しそうな表情から一転、驚きと怒りが混じった表情を浮かべるセリアは智春の首元にある、真っ赤な結晶のついたネックレスをにらみつける。
そのネックレスからは他の精霊の気配がする。
「い、いや、どういうことって聞かれてもな・・・新しい仲間が増えた?」
「なんで、疑問形よ!それにあんた!さっさと実体化しなさいよ!」
セリアは智春の背後にある、巨大な亀の死骸にも気づかず、メイアに向かって威嚇する。
《あら、ごめんなさい。私は今、故あって実体化できないの。》
「そう、ならいいわ、で、どんなつもりで私のトモハルに手を出したのかしら?炎姫精霊?」
《ふーん、私のトモハルね・・・残念、あたしがトモハルの初めてもらったわよ。》
「は、は、初めて!?あ、あんた達なにしてんのよ!」
「いや、セリア落ち着け、俺はただ、メイアと『フルコネクト』しただけだ。」
「へ?ふ、フルコネクトを?・・・と、トモハルのばかーーーーー」
セリアは実体を解いて指輪に籠ってしまった。
「あ、セリア!・・・なんでそんなに怒ったんだ?」
「それは、『フルコネクト』っていうのは最高の信頼の証、簡単に言うと、お前は俺のものだー、的な告白みたいなものだからよ。」
「へ?それ、本当かシャリアさん?」
「ああ、俺とシャリアみたいに心と体もつながっグフェ」
「んん、本当のことよ。」
智春がひっぱてきた亀を街に入れる手続きをしていたディベラとシャリアがいつも通り仲良く(?)近づいてきた。
「ちょっ、メイア、聞いてないぞ!」
《ええ、言ってないもの・・・私とそういうことするの嫌?》
悪びれもなく返すメイアだが、最後の部分は不安そうに声が揺れる。
相変わらず、変な勘違いをしそうな言い方でる。
「いや、べ、別に嫌ではないが・・・」
「して、トモハル、ボルカーラ火山で何があった?」
「ああ、なんかこの亀が急に火山に来て、生き物を食い荒らしていたみたいなんだけど、全然生き物がいなくて簡単に山頂まで行けたんだ。で、帰りに、要石をこいつに食われて瀕死だったメイアと出会って、契約してこの亀倒して走って帰って来たんだ。」
「あ、ああ、そうか・・・とりあえず、ボルカーラ火山の生態調査隊の編成は決まりだな。はあ、で、証明品は?」
「ああ、ここだ。」
智春はシャドウクローゼットからボルケイノフラワーを取り出して、ディベラに渡す。
「ああ、確認した。とりあえず、明日ギルドに来てくれ。その時にランクの更新とこの亀の代金は渡そう。」
「ああ、頼むよ。俺はもう宿で寝たい。」
「そうか、ゆっくり休むといい。」
「セリアちゃんの機嫌直しときなさいよ。」
ディベラとシャリアはそう言い残すとギルドの方向に帰って行った。
「はあ、俺らも帰るか。」
《ええ、早く休みなさい。》
この後、智春にはもっと大変な役目が待ち受けているのだった。
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