第二章:クルーペ編 12話:ある日、森の中、熊さん?に、出会った
12話:ある日、森の中、熊さん?に、出会った
セリアとレイラが部屋に戻るとお風呂に行く前と内装が変わっていた。
「せ、セリア、レイラ、は、早かったな。」
なぜかティアラを頭の上に乗せた智春が冷や汗をかきながら部屋の真ん中に立っていた。
「あら、トモハル。結構長く浸かっていたつもりなんだけど早かったかしら?」
「あ、ああ、できればもう少し浸かってきて欲しいんだが・・・」
「もう少し長く浸かれば、家具は帰ってくるのかしら?」
そう、内装が変わったというよりも何も無くなったというのが正解である。
「そ、それはい、今調べてるから。」
「はあ、あらかた影魔法の『シャドウクローゼット』でも使って暴走させたんでしょ。」
「はい、ごめんなさい。」
ズバリとセリアに言い当てられ、智春は素直に謝る。
「『シャドウクローゼット』って、確か村長が使ってた・・・どうしたら部屋ごとしまっちゃうなんてことができるんですか。」
「いや・・・なんかできました。」
「はあ、まあ、なんとかでできる範囲ではないんですが・・・」
「しょうがないわね、私が何とかしてあげるわ。」
「へ?できるのか。」
「ええ、貴方の契約精霊ですもの。っと、子猫、起きてたのね。そいつの上は少し危ないからあのお姉ちゃんの肩にでも乗っててちょうだい。」
「にゃあ」
ティアラは素直にレイラのところまで走っていく。
「ふふ、いい子ね。レイラ、入り口から動いてはだめよ。」
「はい、」
レイラはティアラを抱き上げながら返事をする。
「はあ、貴方は手がかかるんだから。」
ため息を一つついて、セリアは智春を抱きしめた。
「なっ」
「お、おい、セリア?」
「う、うるさいわね、少し待ちなさい。」
顔を赤らめながらセリアはうるさそうに言う。
セリアの柔らかい二つのふくらみとお風呂上がりの香りにドギマギしていた智春だったが、自分の中を誰かに触られるような感覚を覚える。
すると、智春の影が部屋中に広がり、影の中から家具が元通り出てきた。
「はあ、まったく、部屋中に『幻影魔法』で影を広げてから『シャドウクローゼット』使ったでしょ。」
「いやー、影を広げても使えるか実験を・・・」
「実験で暴走したら元も子もないわね。」
「ああ、すまん。それはそうと、セリア、今のは何だ?」
「はあ、これはただあなたに干渉して暴走で起こったことの逆を起こしただけよ。」
「そんなことができるのか」
「私はあなたの契約精霊よ。当然でしょ。」
「で、お二人はいつまで抱き合っているつもりですか?」
レイラは冷たい視線で二人にジト目をおくる。
「へ?、あ、っと、トモハル、今度から気を付けるのよ。」
セリアは顔を赤くしながら智春から離れ、ソッポを向いた。
「あ、ああ、すまん。セリアありがとな。」
レイラは見ていて面白くないので助け船を出すことにした。
「はあ、で、トモハルさん。この子起きたんですね。」
「あ、ああ。さっきな。で、名前は勝手に決めさせてもらったぞ。」
「いいんじゃない。貴方が拾ってきたのだし。」
「そうですね、で、どんな名前ですか?」
「おう、こいつの名前は『ティアラ』だ。」
「ふーん、貴方にしてはいい名前ね。」
「可愛いじゃないですか。ティアラちゃん、私はレイラです。よろしくお願いしますね。」
「にゃあ」
ティアラの返事にレイラは黄色い悲鳴を上げ、それから智春がお風呂に行っている間中セリアと一緒に可愛がるのだった。
宿の一階で夕食を済ませてから、智春たちは部屋で明日の計画を立てていた。
「なあ、次の依頼は討伐系の依頼を受けてみたいんだがいいか?」
「ええ、かまわないけど、魔法をいきなり実戦で試そうとしてまた暴走しないようにするのよ。」
「あ、ああ、善処する。」
「そこはかとなく心配なのですが・・・・」
「大丈夫よレイラ、私もそんな気がするから。」
「全然大丈夫じゃありませんね。」
「ええ、森が更地にならないことを祈るばかりよ。」
「ちょっと、二人ともなんかひどすぎない?」
二人の辛辣な態度に智春は涙目で反論する。
「じゃあ、その怪しげな紙捨ててくれないかしら。」
「そ、それは。」
セリアが指した紙は智春が魔法の教本を読みながら色々メモしたもので『地球の文字』で書いてあるため、セリアたちには解読不能の不安の塊でしかない。
「では、なんと書いてあるのか教えていただけませんか?」
「あっとーーー、怒らない?」
「「子ども(です)か!」」
二人の突っ込みが見事に重なる。
「いいから、どんなことが書いてあるかだけでも言ってみてください。」
「えっと、こ、これは教本を読んでて思いついた魔法と既存の魔法の改良を考えたメモなんだ。」
「へ?思いついた魔法?改良?」
智春の言葉に二人は首を傾げる。
「ああ、俺の持ってる知識で色々考えてみたんだ。」
「貴方の知識?そのメモ危険な事が書いてあるの?」
「いや、そんなに危険なものは無い。」
「どうせ、捨てろって言ったって聞かないでしょ。」
「もちろん。」
「はあ、レイラ諦めて明日に備えた方が建設的よ。」
「はい、私もそんな気がします。」
「じゃあ、私はもう寝るわ。お休みなさい。」
セリアはそう言うと実体を解いて、智春の指輪の中に戻った。
「ちょっと、セリア、わざわざ指輪の中で寝なくてもいいじゃないですか。」
『いやよ、なんだか疲れそうだもの。』
二人の頭の中にセリアの疲れた声が響く。
「はわわ、あの、えっと、その。」
レイラがテンパっているのをしり目に智春はクローゼットから予備の毛布を取り出す。
「じゃあ、俺はソファーで寝るからお休み。」
「へ?あ、え、そ、そんな・・・」
レイラは残念そうな安心したような声をもらす。
智春はソファーに横になってすぐに目を閉じる。
「と、トモハルさん。せ、せっかく二人用のベッドなんですから、い、一緒にど、どうですか?」
「Zzz」
智春から返って来たのは寝息だった。
「は、早いですよ。トモハルさん。」
レイラは肩を落とし、ろうそくの明かりを消してから、一人寂しくベッドに潜るのだった。
『あ、あぶねー。一緒になんて寝ちまったら俺の理性がもつかどうか・・・』
そんなレイラの裏で智春が一人、心の中で冷や汗を拭ったのは内緒である。
翌朝、三人は早速ギルドに向かう。
「あ、おはようございます。依頼ですか?」
ギルドに入ると、今日もカウンターのエリナさんが声をかけてくれる。
「ああ、おはよう、エリナさん。討伐系の依頼って無いかな?」
「討伐系ですか?」
「うん、手ごろなのがあれば教えてくれないか?」
「それはいいのですが、討伐系というと最近は最低でも『森蛇犬』くらいしかありませんよ。これでもCランクが目安ですから別の物にした方がいいですよ。」
『フォレストファング』は、緑色の鱗に体を覆われた大型犬くらいの大きさの犬で、牙には毒がある下級上位の獣である。
牙にある毒は幻覚作用があり、毒を受けた生き物は幻覚に惑わされながらゆっくりと死んでいくという結構危険な毒である。
「ん?『フォレストファング』って、確か『ホングル』より弱いよな?」
「ええ、そうですが。」
「じゃあ、大丈夫。エリナさん、その依頼って受けられる?」
「ええ、対応ランクが自分のランクより上の依頼なので可能ですが、怪我じゃすまないかもしれませんよ?」
「エリナさん、大丈夫ですよ。トモハルさんは一人で『ホングル』を倒せる実力を持ってますから。」
「あと、『二尾怪鰐』も足手まといがいなかったら余裕ね。」
「へ?トモハルさんってそんなに強いんですか?」
「ええ、魔法なしでもおそらく魔獣や魔物と対峙できるんじゃないかしら。」
「え、えっと、それなら大丈夫と思いますが、失敗したら罰金ですからね、そこのところ気を付けてください。」
「おう、ありがとな、エリナさん。」
「いいえ、では、この依頼です。内容はこの街から東に少し行ったところにある森で『フォレストファング』五頭倒してきてください。達成証明品は『フォレストファング』の尻尾を五本持ってきてください。」
「おう、その森までの距離はどんくらいだ?」
「片道二時間程度です。」
「よし、そんくらいなら今から解毒薬だけ買って出発すっか。」
「え、えっと、防具などはつけないんですか?」
「防具?・・・・わ、忘れてないからな。も、もちろん見繕って行くさ。」
「はあ、ギルドを出て左斜め前の防具やがギルドと提携しています。そしてこれが解毒薬です。一本100ピクルです。」
エリナさんはカウンターの下から青色の液体が入った小瓶を出した。
「う、結構するんだな。」
「はい、原料が高価なものですから。」
「ああ、背に腹は代えられん、5本くれ。」
智春はポケットの中から大銅貨を五枚取り出す。
「はい、では頑張ってきてください。」
エリナさんから小瓶を受け取り、智春たちは教えてもらった防具やに向かった。
「いらっしゃい。おっと、新入りの冒険者かい?」
「ああ、初心者向けの防具をこの子に見繕ってくれないか?」
智春はレイラの肩に手をおく。
「おう、嬢ちゃんはどんな戦闘スタイルだい?」
「はい、私は水魔法を主体にダガーで戦います。」
「うーん、軽量戦士か・・・じゃあ、なるべく軽くするためにこの軽鎧一式でいい。」
防具屋の店主はそう言うと棚から要所だけに金属を使って、残りは何かの革でできた胸当てやブーツなどを取り出した。
「で、そっちの嬢ちゃんと兄ちゃんは?」
「ん、俺はこのグローブとブーツ、あと、この胸当てでいいかな?」
「んー、戦闘スタイルによるが、まあ悪くねえ選択だな。で、嬢ちゃんは?」
「私は精霊だからいらないわ。」
「ほう、嬢ちゃんは上位の精霊だったのか。じゃあ、必要ねーな。」
「ああ、全部でいくらになる?」
「お前らギルドカードあるだろ、ん、やっぱEランクだな。なら500ピクル引きで、全部合わせて3300ピクルだ。」
「ん、結構安いんだな。」
「ああ、革の防具だけだしな、それに懐が寒いだろうからあんまり高くないのを選んだからな。」
「おお、おっちゃんありがとな。」
「いいさ、それが商売ってもんさ、」
智春とレイラはその場で装備を整えると店を出た。
智春は制服に革鎧があんまり合っていないがこの際置いておくことにした。
狩りの前にこの世界の魔物などについての話をしよう。
この世界で冒険者たちに討伐などの依頼がくる生き物は大きく分けて三種類いる。
一つ目が『獣』で、地球で言う熊やイノシシみたいな存在だ。
二つ目は『魔獣』、これは見た目は獣と変わりないが、魔法を使うことができる存在だ。
最後が『魔物』、これはゴブリンやオーク、オーガのように見た目が獣とかけ離れているものたちで、魔法が使えないものもいる。
この三種は強さで上級上位から下級下位まで分類わけされており、『獣』の中級上位が『魔獣』『魔物』の下級下位の強さ関係になっている。
また、『魔獣』、『魔物』は体内に魔石を持っており、その魔石はギルドなどで大きさ、品質に比例した値段で換金することができるのだ。
ちょうど近くを通る行商人のおじさんに馬車に乗せてもらい、智春たちは目的の森にたどり着いた。
「うっし、じゃあ、フォレストファングを探すか。」
「はい、フォレストファングは水辺を好みますからあの小川沿いを進みましょう。」
「了解。」
三人は小川に沿って森の中を歩く。
「なあ、セリア、さっき言ってた精霊は防具がいらないってどうしてだ?」
「ああ、それはね、私たち精霊の体は実体はあるのだけれどそれが本体ではないの。だから、怪我をしても気力を失うだけで、死ぬことはないわ。」
「ふーん、でもごはんなんかは食べるんだな。」
「ええ、気力を自分で作るためにエネルギーを消費するからよ。契約者からもらう分だけでは魔法とかが使えないのよ。」
「そうなのか。」
「私も聞いたことがあります。精霊の体は人間の体の機能とほぼ変わらない、産もうと思えば人間との間に子供を産むことだってできるっておばさまに聞きました。」
「ふーん、まあ、結婚ている人たちもいるくらいだからな。」
「ええ、そうね。私も精霊図書で読んだことがあるわね。っと、トモハル、ターゲットのお出ましよ。」
あたりを見ると三匹のフォレストファングが智春たちを囲むように出てきた。
「最初から囲まれちまったか・・・」
「はい、油断しました。」
レイラはダガーを抜き、智春は刀に手をかけ、相手の出方を伺う。
「セリア、三つ数えたら俺の前以外の奴の足を氷つかせてれ。」
「分かったわ。」
「レイラ、防御姿勢で準備を。」
「はい。」
レイラが腰を落として構える。
「よい、じゃあ、一、二、三っ」
三の声と共に智春は目の前の一体に肉薄し、居合切りの要領で抜刀する。
急に相手が飛び出してきて反応が遅れたフォレストファングAの首が胴から離れ、崩れ落ちる。
「よし、まず一体。」
智春が振り返ると、まさにフォレストファングBがレイラに飛び掛かろうとして、首をかき切られていた。
「ごめん、トモハル一体逃したの。」
「ああ、セリア、レイラ、その場に伏せろ!」
よそ見をしたセリアとレイラの後ろから、セリアに足を凍らされたはずのフォレストファングCが飛び掛かる。
チンッ
智春はその場で刀を鳴らす。
「飛剣『燕返し』」
智春から三メルも離れていたはずのフォレストファングCは体が前足の後ろあたりから二つに別れその場に落ちた。
「あ、ありがとう。相変わらずとんでもない技ね。」
「わ、私、トモハルさんの剣が見えませんでした。」
二人は顔を引きつらせる。
「ああ、まあ、人の見える速度を超えないとできない技だからな。っと、こいつの売れる部位ってなんだっけ?」
「はあ、爪と牙、後皮ね。あ、尻尾は別の袋に入れるのよ。」
「了解。っと、そっちの二体は任せた。」
「はい、」
三人は黙々とフォレストファングの亡骸を解体し、いらない部位は土魔法で掘った穴に埋める。
「よし、次を探そう。」
「ええ、」
また、川沿いを歩き始める。
お昼時になったので、三人は開けた場所でお昼にする。
智春は今までお利口にリュックから顔だけ出した状態だったティアラを膝の上に乗せ、パンと干し肉を齧る。
今日は日帰りなので手抜きだ。
ティアラミルクは朝、宿でもらったものをセリアに氷塊にしてもらってちゃんと持ってきている。
「それにしてもティアラちゃんはトモハルさんによくなついてますね。」
「にゃあ」
「うーん、ミルクに俺の血を混ぜてるからじゃないかな。」
「そうね、でも、最初に見つけたのが貴方だからじゃないの?」
「それもありそうだな。」
「にゃあ」
「ふふふ、ティアラちゃんも会話に参加してるみたいですね。」
三人と一匹でまったりとした時間を過ごしていたが、それはあまり長くは続かなかった。
「ん?レイラダガーを抜け。来るぞ。」
レイアの後ろの藪の中からフォレストファングがすごい勢いで飛び出してきた。
智春はとっさに切り上げフォレストファングを縦真っ二つにする。
しかし、フォレストファングは一頭だけでなくまだ藪の中から飛び出してくる。
レイラが喉をかき切り、セリアが氷で串刺しにし、智春が斬り飛ばし、ティアラが傍観すること十頭と少し、最後のフォレストファングを智春が切り裂いた。
「はあ、びっくりした。すごい勢いだったな・・・・」
「ええ、まるで何かから逃げて来たような。」
「えっと、とりあえず、剥ぎ取って帰りましょう。依頼達成には十分な数倒しましたよ。」
「そうだな、そうしよう。」
三人が無言で倒したフォレストファングの解体をしていると、
「シャーーーー」
「ん?どうしたティアラ?」
ティアラがフォレストファングが襲ってきた方に向かって威嚇する。
「なにか来てるんじゃないですか?またフォレストファングとか。」
「うーん、よくわかんないけど嫌な予感がするわ・・・」
「セリアに激しく同意だ。ティアラ、リュックに戻れ。」
「にゃあ」
ティアラはおとなしく智春の背中によじ登り、リュックの中にもぐりこんだ。
「セリア、レイラ、警戒しながら撤収。フォレストファングの尻尾はもう十分だからとりあえず放置。」
「「了解。」」
三人は手早くその場を離れようとする。
しかし、その努力も空しく茂みから何か巨大な生き物が出て来た。
「ん?二本角の熊?ホングルの亜種かなんかか?」
智春の発言通り、二本の角を生やした赤い毛なみで全長5メルはありそうな熊が姿を現す。
「え、な、なんで『二角魔熊』がこんなとこにいるのよ・・・・」
「ん?デュラルグ?」
セリアの漏らしたつぶやきに智春は首を傾げる。
「か、下級上位のま、魔獣です。」
「ふーん、てことは強いのか・・・」
「グガァぁぁぁぁ」
智春のつぶやきに応えるかのようにデュラルグは咆哮を上げる。
デュラルグの咆哮に呼応するかのように二本の角の間に火球が出現する。
「そういえば、魔獣は魔法が使えるんだっけ・・・」
ぼやく智春に火球が躍りかかる。
「熱っ、」
智春は後ろに下がってかわすが火球の余波だけでも皮膚が焼けそうになる。
「セリア、下がって氷の壁かなんかに隠れてろ!」
「いえ、私も戦うわ。」
「グァァァァァぁ、グフッ」
「大丈夫だ、それより今から使う魔法を見ていて、後で思ったことでも教えてくれ。っと」
「は?な、え・・・・」
突進してきたデュラルグを刀で押し返しながら言う智春にセリアは絶句する。
「もう、レイラ、こっちに寄って。」
「は、はい。」
『我が怨敵の刃を、その凍てつく氷壁でとどめん、絶対氷壁』
セリアたちと智春の間を遮るように氷の盾が立つ。
氷の盾はまるでガラス越しに見るかのように智春とデュラルグの姿をセリアたちにみせる。
「よっし、赤熊、こっからが本番だ・・・恵みたる水も時には人に牙をむかんウォーターボール」
智春の頭上に出現した水球がデュラルグに飛んでいく。
「ガァァァぁ」
「わっと、効いてねー」
水球はデュラルグの少し手前で何かにぶつかったように霧散する。
「さっきのは何だったんだ?」
「グルルルルルル」
デュラルグはまた火球を作る。
「うーん、困ったなあ、これじゃあ魔法で倒せないじゃないか・・・」
火球を危なげなくかわしながら智春は愚痴る。
「トモハルさん、デュラルグは火系統の魔法以外を打ち消す魔法を使うことができます。」
「ん、了解。じゃあ、作戦変更・・・無より生まれし我が腕は空間を超越せん、マジックアーム」
小川の方に移動しかながら智春は小川から操作魔法で水を持ち上げる。
「と、トモハル、魔法じゃ効かないからって、川の水かけても攻撃になんないわよ。」
セリアは訝しげな視線を向ける。
「大丈夫だって・・・風動きて存在するは空虚なりバキュームチューブ・・・っと、複合魔法ウォーターカッター。」
「へ?なにそれ?複合?」
セリアの頭上に?マークが浮かぶ。
すると、智春が操作魔法で持ち上げていた小川の水が勢いのいい水鉄砲みたく襲い掛かる。
「グガ?ガァァァァァァァァぁ」
野生の勘かとっさに避けようとしたデュラルグだったが、その巨体が災いウォーターカッターによって肩を貫かれ、智春の操作で腕を切り飛ばされる。
「な、何ですかあの魔法・・・・」
「私も知りたいわそれ・・・」
そんな二人の声も届かず智春は次の魔法を発動させる。
「うし、じゃあ次・・・その硬き身で人の利となれ、アイアンボール、神の怒りを身にて表せ、サンダーボルト、複合魔法、電磁兵器」
智春の魔法で作られた直径一セルくらいの鉄球が光の速さでデュラルグの心臓のあるあたりに大きな穴をあけ、背後の草木をなぎ倒した。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「やっべ、これ威力強すぎたな・・・・」
二人は魔法のあまりの威力に絶句し、智春は失敗したと頭をかく。
「と、トモハル、危険なものは無いのではなかったかしら?」
「えっと、俺も想定外でした。いやー、原理だけでマネしちゃいけなかったね・・・」
智春の気の抜ける言葉に二人はため息しか出なかったのだった。
「で、あのとんでもない魔法はどういうものなんですか?」
帰り道、行きとは違い徒歩であるので暇つぶしにレイラが質問する。
「あ、それ私も気になるわ。」
「ああ、まず、ウォーターカッターは風魔法で気流を操作して真空のパイプを作ってそこに水を入れて、穴をあけるだけの簡単な仕様だ。」
「ちょっと待って、へ?意味が分かんないんだけど。」
「う、レイラもか?」
「はい、私もさっぱりです。」
「っく、うんとだなあ、まず、空気も何にもない空間を作るんだ。空気はその空間に入りたがるがそれを防ぎながら水を入れる。この時、水でその空間を満たしてはいけない、で、その空間に外からの力は受付なくても中からの力に弱い部分を作りそこに水を集める、後はその部分の反対側に穴をあけ、そこに入ってくる空気の勢いで水を相手に飛ばすんだ。まあ、その状態でもかなりの調整が必要だがな・・・で、次のレール「「ちょっと、待って」ください」へ?」
「いえ、詳しく説明してくれているところを悪いんですが、さっぱり分かりません。なので私はもういいです。」
「私もいいわ。もう何言ってんのかちんぷんかんぷんよ。」
「あ、ああ、そうか・・・」
「ええ、とりあえず、とんでもない魔法だという事がわかったわ。」
智春は悲しそうに肩を落としてとぼとぼ歩く。
「にゃあ」
ティアラがそんな智春を慰めるように智春に頬ずりする。
街に着くまで三人はいろんな意味で疲れた表情で黙々と歩いていくのだった。
どうも、このお話を読んでいただきありがとうございます。
皆さん、智春の自作魔法について突っ込みどころもあるかと思いますが、どうか生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
では、また来週お会いしましょう。




