『荒涼たる岩山の主』
ステルを仲間に加えたルードは、周囲の情報と相棒であるロムの行方を探すため、あたり一帯の探索を開始した。
しかし、どこまで行っても景色は変わらない。地面には大小の岩がゴロゴロと転がっているだけで、草木の一本すら生えてはいなかった。ただ、なだらかな上り坂が延々と続いていることから、ルードは一つの推測を立てていた。
「ステル、この傾斜……どうやら俺たちは、かなり広大な岩山の頂上付近にいるみたいだ」
「そのようだな、ルード。それにしても、この不気味な静寂はなんだ。人の気配が、まったく感じられない」
「ああ。だけど、ロムがこの近くにいる可能性だってゼロじゃない。まずは登りきってみよう」
ルードはいつものフランクな調子で笑い、大魔剣を背負い直して一歩一歩、確実な足取りで岩坂を進んだ。ステルもまた、生真面目な顔つきで周囲を見渡しながら、静かにその背中に従う。
やがて、果てしないと思われた岩山の頂へ辿り着いたその時、二人の視界に一軒の無骨な小屋が飛び込んできた。風化した巨岩の影に、ひっそりと佇んでいる。
「……小屋、か。人がいるのか?」
「さぁ。気配はなさそうだけど、行方を知る手がかりがあるかもしれない。一応、訪ねてみよう」
二人はゆっくりと扉を開け、中へと足を踏み入れた。室内には誰もいなかったが、整えられた家具やいくつかの日用品など、誰かがここで確実に生活している痕跡が色濃く残されている。主は一時的に外出しているだけだろう。
二人が部屋の様子を注意深く調べていた、その時だった。
ギィ……と、開け放たれていた扉の隙間から、光が遮られた。
「あ……」
細い驚きの声に、ルードとステルは同時に振り返る。そこに立っていたのは、カゴを腕に抱えた一人のエルフの女性だった。
彼女はあり得ないものを見たと言わんばかりに、驚愕のあまりその場に硬直していた。
「あなた達……一体、どうして……??」
彼女はただただ激しく困惑し、カゴを握る手を微かに震わせながら二人を凝視している。
「驚かせてすまない。勝手に入り込んで悪かった。俺はルード。こっちの真面目そうなのがステルだ」
「ステルだ。勝手に上がり込んでしまい、すまなかった」
ルードのフランクな謝罪を受け、ステルも落ち着いたトーンで頭を下げる。ルードはすぐに真剣な表情に戻り、彼女に向かって一番の目的を切り出した。
「仲間を探しているんだ。ロムっていう。この近くで、そんな男を見かけたりしなかっただろうか?」
藁にもすがる思いの問いかけ。しかし、エルフの女性はなおも激しく困惑した表情を浮かべたまま、ただ静かに首を横に振った。
「いいえ……知らないわ。そんな人、見ていない」




