40時間のプロフェッショナル
そこからの24時間は、ただ破滅へ向かって静かにカウントダウンを刻む時間だった。
当然ながら、ロムにはこの世界の「魔法科学」に関する知識など皆無であり、ベレルムの精密な基盤の組み立てを手伝うことなどできるはずもない。
ベレルムは言葉通り、超人的な集中力でたった一人、脇目も振らずに作業に没頭し続けた。
手持ち無沙汰になったロムは、研究所の片隅、廃棄パーツの山に無造作に埋もれていた一本の無骨な銃を見つけた。鈍い銀色の輝きを放つ、見慣れない形状の魔法銃。ベレルムに尋ねると、彼は顕微鏡を覗いたまま淡々と答えた。
「ああ、それは理論値だけで作った試作型の魔法銃さ。内部に魔力を自動補填する機構を積んだんだけどね……普通の兵士が撃てば、その理不尽な魔力反動だけで肩の骨が砕けるか後ろに吹っ飛ぶ代物だ。制御不能の失敗作だから、好きにしていいよ」
「……そうか。なら、ついでに貰っておく」
ロムはそのじゃじゃ馬を手に取り、研究所の裏手へと向かった。ベレルムが黙々と門を組み立てる金属音が響く中、ロムは一人、ひたすらその魔法銃の『射撃練習』に時間を費やすことにした。到着時に怪我が完全に完治していたおかげで、ロムは何の憂いもなく銃との対話に没頭できた。
――轟音。
初めて引き金を引いた瞬間、並の戦士なら消し飛ぶはずの凄まじい衝撃がロムの腕を襲った。
(……なるほど。俺ならこの反動に耐えられはするが、とにかく魔力のブレが酷い。まっすぐ狙ったはずの弾丸がこれだけ外れるとなると、実戦で命中させるには相当の『練習』が必要だな)
ロムは銃の激しい反動の周期と、魔力の弾道を冷徹に脳内で演算しながら、数十発、数百発と淡々と試し撃ちを繰り返した。卓越した空間把握能力を持つロムは、24時間という猶予の中で、その理不尽な癖を自らの技量だけで強引にねじ伏せ、確実に支配していった。
解を導き出すスピードは、ベレルムの門の組み立ても同様に凄まじかった。
24時間後(世界の寿命まで残り16時間)にして、魔法科学版の転移門が完璧な形で完成した。
「素晴らしい、完全に接続を確立したよ」
ベレルムは額の汗を拭い、満足げに完成した門を見上げた。
「これで、僕たちの脱出ルートは確保された」




