脅威判定と被害の抑制
しかし、敵はそれに構うことなく、距離を詰めてきていた。さらに後続の車両のワンボックスカーからもサンルーフが開いてAKらしき銃を持った人が立って身を乗り出していた。「新たな敵を確認!対応の許可を求める!」そのように報告をあげながら、まず俺は持っていた銃のレーザーモジュールで照準を合わせた。目標が定まると、指切りでのバースト射撃を行い、セダンのボンネットに向けて実弾を叩き込んだ。爆発物を積んだセダンは、一番脅威度が高くて、優先して排除するべき目標だと認識したからだ。ボンネットを狙ったのはエンジンを損傷させて停止させるためだった。しかし、俺の射撃では着弾位置に火花が散るだけで、実際にはボディを凹ませただけで、壊れたのはエンジンでは無くフロントガラスだった。撃った後の弾が跳弾していると感じた俺は直ちに射撃をやめた。関係のない人に被害が及ぶかもしれないと考えたからだ。一方で安藤が持つ武器の弾は7.62mmという大口径弾だった。それはかなり威力が高かった。狙いを外れた弾の一部はサイドミラーやフロントフェンダーを破壊したが、敵が停止することはなかった。ワンボックスカーの方は、フレンドリーファイアーを恐れたのか、いまだに仕掛けてくる様子はなかった。そのため、俺は手持ちの武器が効果を発揮できるのはしばらくあとだと考えて、照準をサポートする観測手に徹することにした。「20センチ右、ボディとの継ぎ目がある。そこを狙ってエンジンを露出させるんだ!」
「わかった」そう言って射手の安藤は一呼吸息を吸って吐きつつ、その途中で息を止めた後、ゆっくりと絞るように引き金を引いた。渾身の一発は命中し、ボンネットは後ろに弾き飛ばされていった。それによってエンジンが剥き出しの状態になった。それに向けて俺も共に銃弾を浴びせ続けると白煙が出だした。それと同時に車の速度は落ちていき、相対距離は開いていった。
しかし、2台目のワンボックスカーは一時的に車線を切り替え、減速しているセダンを避け、さらには追い抜いていった。彼らは俺たちの進行方向を正面とした時、右後ろから迫りつつあった。「2台目との交戦を許可する。車列に近づけさせるな!」ちょうどその時、虹香から司令が降りた。対象を確認するために改めて近づいてきた車両を観察すると、サンルーフから身を乗り出していたのは、あどけなさの残る少女だった。さらに運転席もチェックすると、父親らしき中年男性がハンドルを握っていた。俺はそれに気がついた時、一見すると、どこにでもいそうな親子も、大人の泥試合のようなことのために命をかけてまで、戦いに参加しているのかと思ってかなり心が揺さぶらされた。彼らのように本来なら戦闘をしなくていい人間を前にして、この社会が狂気に染まりつつあると感じてしまったからだ。しかし、それでも敵対する意思が見えたのなら排除することが仕事であることに変わりはなく、私情を挟む余地は残されていなかった。
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次回の投稿予定は9月21日です。




