死運び部隊
傷口から内臓と大量の血を吹き出す者、顔が潰れて目玉が転がっている者、そのほかにも死体やもうすぐ死体になるものが当たり前のようにここには転がっている。
異質なのがその死体は全て傷口が一つまたは一撃で破壊されたような印象を持っていて、『中国軍』の制服を着た者しかいないというところだろう。
「…五番隊は相変わらずだな」
「一番うちの異名を代弁してますからね」
戦線中を駆け巡り損害無しで敵部隊を屠り続けてきた部隊、僕たちはそのうちに『死運び』と呼ばれるようになった。
意味はそのまま、『死を運んでいる部隊』だったり、そのまま『死神』と呼ばれることもある。
「さて、仕事を忘れんなよ…左方に敵小隊!」
「一班は右、二班は左に展開、残りは遊撃しつつ援護」
迅速な対応が指揮官なしで行える部隊はそう多くない、指揮する者がいて初めて『軍』これが基本だ、だから隊長副隊長の下にも班長がある。
それ込みでもこの部隊は動きが早い、指揮統制がしっかりしているほど指揮がない時の動きは少ないがそれは指揮がなければ対応が遅いということになる、それはこの隊も例外ではない
『早く動いて勝つ』ではなく『迅速な行動で勝つ』同じように見えるが違う、前者は『動き出し』が早くて迷いがない、後者は『どんな指揮でも』従い、迅速に実行する、そう、早さではなく動きが違う。
「少し敵がかわいそうになってきた」
「それは生き残ってから言ってくださいよ副隊長」
「おい!さっさと行かねえと五番が全部やっちまうぞ」
「…行くぞ」
先ほどまで生きていた敵の残骸に短く黙禱してから現在主戦場となっているはずの中央通り側へ移動を開始する、その間僕の思考は前へと進んで『最悪の状況』を描き出した。
「っ…全員っ!反転しろ!敵がいないなら俺たちで指令部を叩く!」
「…了解」
「副隊長、今回は何を思いついたんですか」
すでに部下の声が聞こえないほどに仮定が進み、一瞬のうちに回避策を複数個提示する。
その中から一番成功しやすいものを選択して実行、その他を成功率が高い順に修正し、別パターンとして記憶する。
「隼人につないでくれ、大至急だ」
「はい……繋がりました」
「おい」
『どうした、できるだけ手短に頼む』
無線越しにも伝わる殺気と空薬莢が地を打ち、肉を貫いている音。
そして、片手で小銃を握り迎撃を繰り返しているであろう相棒に目的と用件を伝える。
「悪いが…そっちには行けなさそうだ」
『どうした』
「そうだな…どうやら、俺たちが想像してたよりもここの司令官は質が悪いらしい」
『…っ』
「…そっちが援軍になってくれ」
最後にそう言い、通信を切るさっき聞こえた中で空薬莢が地を打つ音だけは両側でなっていた音だった。
「さてと…バカタレ共」
「久しぶりですね、その言い方」
隣にいた班長数名と目が合い、軽く笑いあう
そして、僕は指令とともに自分が出せるだけの激励を発した。
「千だろうが、万だろうが、俺たちが『死』へ導いてやろうじゃねえか!俺たちはっ『死を運ぶ部隊』だ!」
今までにない、雄叫び、地を揺るがし、目の前に布陣している敵主力軍五千を血肉の残骸へと変えようとする獣への自分が嫌う皮肉まで込めた激励。
その獣たちは従順な戦士であり戦友、僕が唯一心地良いと思っている場所に一緒にいる馬鹿共、そいつらに、ここを突破し、早期終結の礎となる者たち
――総員、展開開始
上海攻略戦、最終戦の舞台は驚くべきか、瓦礫に埋め尽くされた郊外だった。
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