挨拶
幹太を抱きかかえ、三人がちゃんとついてきているか確認しながらところどころ穴が開いたり、煤けている街中を歩く。行き先はもちろん駐屯地
「大丈夫か?」
「うん、仁美もちゃんとついてこれてる」
尋ねるとしっかりと芯の通った声が返ってくる。さっきの今で不安を感じていないはずはないが、それを悟らせないために、年下を不安にさせないためにそうしているのだろうと勝手に思った。
「にしても、変わったな佐紀」
「…いきなり何」
「ん、ちゃんと姉やってるよなって話」
「……前のことは関係ない」
佐紀は少し恥ずかしそうに目を逸らす。前の佐紀とは確かに変わった、子供の性格や言動は生活する環境次第と言うが、佐紀はそれを表したようだった。
両親を失ったショックで心を閉ざし、四人の中では一番暗かったと記憶している。といっても一番最初に佐紀が来てそこから俺が拾ってきて増えた感じだが。
「はら、着いた。ここが…えーと…」
「――第五歩兵師団駐屯地。です青木師団長」
「ああ、それだ。ありがとうな達城」
「自分の部隊名くらいは覚えてください………一応聞きますが、前の部隊の名前は?」
「第五機械歩兵団?」
「逆にどうやって間違えたんですかそれ?重装歩兵です。あと第三です」
「…そうだっけ?」
「はあ…とりあえずその子たちも一緒でいいので来てください」
呆れられながら先に行く達城に続く、入り口を抜けて朝礼や訓練で使われるのであろう演習場へ出る。
そこには恐らく全員が集まっており、気を付けの姿で整列している…古参メンバーはにやけているやつが数名いるが。
「あー…挨拶しなきゃダメな流れ?」
「ええ、もちろん」
「…佐紀、ちょっと幹太を頼む」
「はいはい」
抱えていた幹太を佐紀に預け、用意されている壇上へ立つ。
そこに並ぶ優に五千名の師団員を眺めてから息を吸い、できるだけ大きな声で呼びかけるように話す。
「俺が師団長、青木隼人だ。」
「この師団では、階級なんてクソくらえの精神が基本だ!ああ、そうさ!階級なんざ飾りだ。俺は准将だが、模擬戦でもなんでもかかってこい。俺を倒せば手前が師団長だ!そして新人の学校を卒業したばかりの少尉もいるな。手前らの隊長は上等兵かもしれない。だが不満はこぼすなっ!あるならそいつを倒して隊長になりやがれ。以上だ!」
息をついて、話を終える。
新人が多い部分が異常にざわついているが、そのうち不満が飛んでくるだろうと思いながら壇上で待機する。
「師団長!」
「なんだ」
「学校に行ってない自分でも、部隊長になれますかっ」
「なれる!上官を倒せばお前が隊長だ」
「ふざけるな!!」
おそらく士官になったばかりの青年が声を上げ、こちらを睨みつける。それを受け流しながら俺は淡々と「なんだ」と問いかける。
「俺たち士官は、これまで試験に耐えて、そこで選ばれた優秀な軍人だ!それをないがしろにするなんてふざけているだろうがっ!」
その周りにいる自称エリート共からも共感の声が上がる。
どの時代にも経験してないものを経験したように言う馬鹿はいるんだなと嘆息しながらそいつを目いっぱいにらみつけ、言い返す。
「確かにそうだ。お前らは紙の上では優秀だな、それ自体は何も否定しない」
「ならば、ならばなぜだっ」
「実戦を経験していないただの学生だからだ」
またざわめきが広がる。それを気にしていないように質問者だけを見つめ「それと」と、付け加える。
「本質的には理解していないからだよ、お前らが『人殺し』そして『友と家族を見捨てること』この二つをな」
「…その友と家族を守るために軍に入ったんだよ」
「じゃあ言わせてもらう。同じ部隊にいると自然と友ができる、戦場に出ればそいつを見捨てて自分が生き延びるなんてざらだ。その判断が正常にできるような経験がないからお前らを下っ端にしているんだ」
「だから、見捨てないために軍人になったんだ!」
「甘えるな」
自分でも驚くくらい、低い声が出た。
それは恐らく、怒りだ。修也を助けられなかった俺への、昔の何でも自分がどうにかできると思っていたころの俺のような士官への、八つ当たりだ。
それがわかっていても、言葉を紡ぐ。
「力は敵を砕くためにある。知識は効率よく世界を回すためにある。勇気は恐怖を乗り越えるためにある。守るための物は存在しない、だからこそ見捨てろ。自分を生かし、そして乗り越えるためにな」
「言ってる意味が分からん!!」
でしょうね、俺も途中からよくわからなくなってきたもん
「…そうだな……じゃあ、お前が戦う理由はなんだ」
「だから、守るためだ」
「そうか、立派なことだ」
「だけど、俺は違うな。俺は天皇を、同僚を守ろうなんて最初から思ってすらいねえからな」
「…外道が」
「最後まで聞け、それと罰として後で腕立て100回な」
「………ハイ」
上官への侮辱は処罰しなければ示しがつかない、無視したいが上が面倒くさい
…………すっげえ今更と思った人、その通りだ。今思い出した制度だからな
「俺は別にお偉いさん守るために戦っているんじゃねえよ、未来を担う子供を守りたいんだ。俺は自分の子供に軍服着せてまで国を守る気は起きないからな」
「…………」
「以上だ。他に言いたいことがあるやつ」
誰もが押し黙る。共感かそれともただ単に聞く気がないのか、少なくとも古参の奴らは一切聞いていない。いい加減にしろよお前ら本当に
俺はそんな少しシリアス気味の雰囲気などクソくらえの精神でテンションを上げながらに話を続ける。
「どうでもいいと思うが、まず俺がやりたいことに付き合ってもらう」
「私利私欲に利用しようとすんな隊長」
「師団長だ」
「隊長」
「師団長つってんだろ」
「「「「「「隊長!」」」」」」
「……もういいや」
もういいと諦めながら壇上から飛び降りて達城に運ばせておいた箱からその試作品を取り出す。
「これを量産する」
「それって…ただの歩兵銃じゃないですか」
「違うんだなこれが。これは面制圧を可能にする画期的(自称)なものだ」
取り出したのは今の歩兵銃に頑張って改造を加えた現代で言うサブマシンガンだ。
弾丸を小型化し、発射機構、撃鉄を改良することで連射速度を上げ初速を上げたこれにより一人でも面制圧ができるようになるのだ!
ちなみに日本軍が作った百式短機関銃はもっと後、と言うか今はサブマシンガン的なのを作ろうと世界中が四苦八苦している時代である…戦車かもしれないけど。
「俺たちは日本軍初の『起動打撃部隊』となる」
解説
・百式ry
発射速度が速すぎて敵を絶対に死体撃ちする武器。資源不足でそこまで量産できなかった
・起動打撃部隊
実際はもっと違う意味だけどかっこいいから採用。作者の好みが出ちゃいました。
ブックマークありがとうございます




