迎撃
艦隊の容赦ない砲撃の中でも敵は突撃してきた。
言っちゃ悪いが艦砲射撃の正確さは砲主に依存するところが大きい、それに今回投入された戦艦は新型の…確か扶桑型だ、新型だとどんな熟練兵でも多少精度が落ちるので敵指揮官の判断は損害度外視ならばいい判断だと言える…無駄に兵を死なせるのに代わりは無いが。
「敵の指揮官は合理的なようで」
「らしいな、総員迎撃戦用意。第二防衛線を抜かせるなよ」
「「「「「「了解っ」」」」」」
細かい指揮は山下将軍に任せるとして、今はこっちの戦闘だ。
どれだけ兵を投入してもここだけは抜けない、なんせ国内で実質的に一番の実力者の直下隊と時には万をも喰らいつくす『死運び』がいるのだから
「行くぞっー!!」
「「「「「「応!!!」」」」」
そんな中、一明らかに突出している、というよりも、敵を殲滅することだけを目的として前進する部隊があった。
「なっ…あれどこの隊だ!」
「多分隼人達。あいつら今回は出るなって言っといたのに」
「また隊長のとこですか!?」
「…いつものことですが、あれで誰も死なないのが不思議ですね」
また、という言葉通りあの行動は今回が初めてではない。ここに来てからずっとだ、どんな戦場でも確実に先陣を切り敵を一番多く討つのが一番隊、隼人の直下隊だ。
最早、僕も何も感じなくなってくるほどには重症だ、昔からの性でもある、いつも一番危険なところに自分から飛び込んで行くのが青木隼人という人間なのだ。
「あれはもう放置で、いつものことだし…伝令、隼人たちの持ち場に予備隊を行かせて補強して、あとできるだけ援護、反撃開始だ」
「了解、全部隊に伝達しろ!」
「はっ」
さてと、じゃあここからは隼人たちが指揮官を襲撃するまで耐えればこっちの勝ちだ。
既に伝令は全隊に伝わっているのか予備隊が動き出し、穴は塞がっている。どんな指揮官でも役立つなら命令に従いちゃんと戦ってくれるのが山下将軍の部隊の長所の一つだ。
僕みたいな無名の軍人の指揮でもしっかり伝令に従い、戦ってくれる。
「このまま隼人たちを援護しつつ敵を止めよう。細かい動きは各部隊長と将軍の判断で行って」
僕らが敵を止めている間でも隼人たちは敵の真っただ中を疾駆する。
前線を貫き、後方の砲兵を潰し敵の指揮官へと着実に迫る。
少なくとも二千人はいる敵の最終防衛線に僅か百の兵士を率い突っ込んでいく
敵の防衛線を視認し、全員に合図を送る。
全員が確認・了承したのを確認して、タイミングを計り、叫ぶ。
「…今だ!総員散解しろっ」
号令で少ない兵をさらに五つに分散、その全てが敵部隊の間に入り、そのまま駆け抜けるそのまま敵の指揮所に突入し、数発発砲し、指揮官の死亡を確認してから撤退する。
混乱で動きが崩れている敵部隊を行きとは逆の要領で部隊長と思われる人物を狙い撃ちしながら突っ切る。
「よし、抜けた。まだ走るぞ、次は背後を撃ってやれっ味方の射線には出るなよ!」
「「「「「はっ」」」」」
自分たちの持ち場には戻らずに敵が多い場所へ一直線に向かうと背中に弾丸を叩きこむ。
敵が気付いたら退いて、追いかけてくるなら逆に防衛線の味方に敵の背中を撃たせる。
「次いくぞ!」
「「「「「応っ!」」」」」
隼人たちが戻ってきたのを確認したのと同時に数部隊を前進させ、敵が塹壕の中心部分に誘導させるための指揮を出す、敵にわざと突破しやすいように見せ、隼人が背後を取るように誘導する。
「第三部隊、左側を撃って。第四第五は隼人を変わらず援護、他はそのまま、敵が振り向いた瞬間に反撃するよ」
「了解っ!」
「敵後方、反転!後ろの部隊を追いかけていきます!」
敵の一部が反転したのを確認した瞬間、さっき前に出した部隊が左右にずれ、包囲する形をとる。
隼人の撤退を確認し、全部隊に反転攻勢の号令を出す。
「山下将軍」
『?いきなりつないできてどうした」
「こっちは片付きました、他戦線の援護に部隊を回します」
『相変わらず仕事が早いな…今だとそっちから見て左側が膠着している。そっちに回してくれ』
「了解、他はどうなってるんですか?」
『ほとんどで優勢だ、このままいけば勝てる』
「わかりました、まず左の背後をつきます」
『任せた』
無線をきり、最低限の守備部隊を残し移動命令を出す。もちろん隼人の部隊は予備隊と交代させて休ませてある。三十分以上全力疾走していたから当然と言えば当然だ。
僕はそのまま前線指揮官として継続、左側の戦場を援護するために部隊を連れて走り出した。
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