閑話 火災を見た者たち 愚かなる者たち
遅くなり申し訳ないです。
ハアハア…何でこうなった!
俺はスタートダッシュをかますために森の中に入った。もちろん勝算ゼロという訳ではなく奇襲や罠を使えばゴブリンを1対1で倒せるぐらいには俺は強かった。だが森の中を進んでいると、まったく見覚えの無く明らかにやばい雰囲気を纏った、恐らく次のフィールドだと思われるとこに出ていた。
そして現在さまざまなゴブリンが跋扈する中、自然に紛れるようにして隠れていた。実はこのゲーム、フィールドで途中の中断はできず、ログアウトは宿屋でしかできず、実質的にこの場を乗り切る手段は死ぬことだけだ。しかし、デスペナルティをしっかりと把握されていない今ではどうなるか怖い。
そんな、葛藤をしながら魔物が身の回りから去るのを祈っていた。
向こう側から火のような、赤い光が見えた。誰かが戦っている!この森から抜け出させてもらえるようお願いするしかデスペナを受けずにすむ手段は他に無い!と即座に判断し、周囲の危険を確認すると魔物たちが赤い光が見えたほうから離れていく野に逆らうように向かっていく。生物としての天敵は火だ。それがこんな燃えやすい森の中だったらなおさら危険を感じるだろう。
―――シュン―何かを一振りした音。しかし、今までと明らかに違う一撃。何の抵抗も無く斬れた音。――ボォオオ―燃えている音。それが運良く自分には到達しなかった。が、腰が抜けた。動けない。火が燃え盛る中ただ1人立つ、堂々たるその姿はゲームからかけ離れていた。
火が燃え移り木が倒れてきた。それを避わす余裕など無く目の前の現状とその姿を呆然と見つめていた。
そして俺の視界は真っ暗になった。
★★★★
~王都~
ゴオオオオオ――王都は混乱していた。ギルドでは冒険者の怒号が、国民らは何が起きどうすべきかパニック状態となり怪我人も出ているようだった。
『火』は獣人たちにとって恐怖の対象であると共に、獣神に対する信仰の象徴だ。それ故に戸惑っていた。「あれは、獣神様の出現を指しているのでは」と思う者もいれば、「あの火災を起こした者がこの国に混沌をもたらすのでは」と考える者、人それぞれ過ぎるからこそ混乱も大きかった。
プレイヤーの冒険者達は新イベントが始まるのか!?と期待し受付に問いただしていた。
何時までも燃え続けるのではと危機感を募らせ、ようやく冒険者ギルドは緊急クエストとして高ランク冒険者に調査を頼もうとした、そのときだった。
ゴオオオオオ――と鳴り響いていた音は聞こえなくなり、先ほど煙と共に見えていた火も消えていた。残っていたのは燃えたことを示す煙と城壁からは緑一色の森の中に黒一点の燃えた後だけが見えた。
しかし、国民達は火の燃えていた音が消えたことに気づいていない。ギルドの方も急なことに驚きを隠せずより混乱が大きくなった。凶悪な魔物が複数いるんじゃないかとギルドは手が回らずにいた。たくさんの人たちが今日一気に登録したためと言うのもあってその人たちの相手とその人数に押されていた。
その後、冒険者ギルド長のレオが一喝し、場が丸く収まった。レオには誰がやったのかなんとなく察しが着いていたことで周りより落ち着いていた。その後、ため息をつきながら火災で増えた仕事の処理に取り掛かった。
結論として、今の段階ではどうとも判断できないということ、少し時間を空けてから調査に向かってもらうとの2つが決定された。
国民達も時間が経ってくると落ち着きを取り戻していった。「あれは獣神様の出現を暗示しているんだ!」と喜んでいるものもいた。ずいぶんと信仰が深い者だ。
予定通り調査部隊が向かった。その報告は、『犯人と思しき存在が発見できなかった』との事だった。
★★★★
~とある豚の獣人の貴族~
なんなのだ!なんなのだ!なぜ私の申し出を断る。これほど名誉なことはないと言うのに!
あの赤目の人族の男!
人族の癖にこの国でも高い地位にある私を軽くあしらいおって!
机にこぶしを振り下ろし、怒りをあらわにしていた。
将来有望な冒険者を部下にし、より『力』を手に入れるためにギルド内にいつ現れていいようにと自分の手の者を送り込んでいた。しかし、貴族である私の申し出と言うことを含めて言ったのに対し取り付く島もなく、「断る」と即答された。これでは私の面目丸潰れである。説得しようと頑張り、脅しも掛けてみたが意志は固くどこかへ依頼をこなしに行った。
これだけ聞けばそこまで無い話ではない。スカウトしたが断られただけのこと、他の冒険者を探せばいい。だが、この貴族は傲慢でプライドが高かった。それに始めてのスカウトした相手だったからというのもあったのだろう。
ふざけるな!ただ済むと思うなよ!潰してやる!
この時、怒りを誰に向けているかこの貴族はまだ知らない。




