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エリオット様登場です!!変わらず10歳アナベル視点です!!
「さ、アナベル。ご挨拶なさい」
お父様に託されて私はぎこちない動きのまま倏淑女らしく挨拶をする。
「...アナベル、マーティンですわ。会えて、光栄です。エリオット様...、アシュレイ侯爵...」
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私とエリオット様はしんと静まった部屋で、お互い何も話さずに時間が過ぎていく。
ちなみにお父様達は「若い2人で...」なんて前世のお見合いの様な言い方で出て行ってしまった。なんで初対面の人とすぐ話せると思ったのかな!?しかもディランも連れてくとか無くない!?この不自然に静かな空気、既に苦痛でしかないよ。
私は遠い目をしながらこの前の事を思い出す。
そう、お父様に婚約者に会わせる宣言された日だ。つい婚約者の事を忘れてしまっていたが、ディランに婚約者に会うからその為のドレスの準備をして欲しいと言うと、満面の笑みで紅茶を零していた。
急いで侍女を呼んだおかげかディランは火傷をせずにすんだが、ぼうっとしたあとすぐに覚醒し「純粋無垢なお嬢様が穢れるっ!!!!」と叫び始めた。
えっ、ディランの中では私は純粋無垢なお嬢様なの?しかも穢れるって...一応相手は侯爵家だからね?しかも次期宰相候補になるかもしれん相手だよ??それに、穢される事は無いだろう。きっとその前に婚約破棄してくれるさ。
それにしてもあの時のディランの暴走やばかったなぁ...。
と、回想の中に入っていると不意にエリオット様が動き出した。10歳だからか私よりも少し小さな背でめいいっぱい背伸びをして、棚から厚い本を出し...な、なんとっ!?読み始めた!!?
舐めてる。完全に舐めてかかってきてる。
確かに爵位としては伯爵家より侯爵家の方が上だが、これは正式な婚約者との『挨拶』なのだ。それを、おまっ、本を読むとか無い!!完全に見下されてる!!
そんな私の感情に気付いていないだろう、エリオット様は無表情にペラペラと本を捲る。見た目は随分と厚いので絶対に絵本などではないだろう。アッなんか政治うんぬんみたいなタイトル見えた。こいつ本当に同い年なの???
って、そんな事思っている場合では無い。たしかに婚約は嫌だが、お父様に迷惑をかけるのはもっと嫌だ。ここは穏便に話を...。
「あの、エリオット様...」
「............なに」
「これは正式な婚約者同士の『挨拶』ですのよ?本を閉じてくださると...」
「君と話す事は無い。よって時間の無駄を省くために僕は本を読む。それがなにか?」
なにか?じゃねぇよ。
なにさり気なく私の事を時間の無駄とか言ってるの??私だってこんな婚約今すぐ切り捨てたいわ!!貴方が侯爵家の嫡男じゃなかったらすぐに頬ぶっ叩いて帰ってますから!
が、そんな事を言えるわけもなく私渋々と言った感じで口を開く。
「...では大変申し訳ないのですが、私もこの部屋の本を読んでも良いでしょうか。伯爵家にない珍しい本が並んでいてとても興味があるので」
「...かまわない」
少しだけ目を見開いたエリオット様はすぐに目を伏せてそう呟く。構わないそうなので早速棚に近づく。
棚には様々な本が並べられている。刺繍の本から経済、武術の本まで。なんもいう一体感の無さ。
私はしばらくそのタイトルに目を通していると、棚の上部に一つの本が立てられているのが分かる。丁度私が背伸びをして届く位の高さだ。
興味が湧き、それを手に取りタイトルを見る。
...『白雪姫』。しかも絵本。こんなメルヘンチックな絵本がなぜあの棚の中に...。実際この本は前世で知ってるので今更見なくとも分かる。私はまた背伸びをして元に戻そうとした時...
────バサッ
驚いて音の原因を見ると、そこには唖然としたまま分厚い本を雑に落としているエリオット様がいた。え、なに、なんですか?この絵本さわっちゃだめだった??
エリオット様はわなわなと私に問いかける。
「え、な、なんで、それ、どうやって...」
「普通に取りましたが...?」
私はつま先立ちになり本が元にあった位置をチョンと触る。
「ほら、こうして取ったのです。ちょうど手が届いたので幸いでした」
「っ...」
その事に気付くとエリオット様は少し拗ねた顔でふいっと横を向く。
な、なんで...?あ、そうか。
「エリオット様の方が私より小さいのでしたね」
「うっ、うるさい!!僕は小さくなんてない!」
おっと、口に出していたようだ。私は口に手を当てるが、エリオット様は先ほどの余裕は何処へか真っ赤な顔をしたまま叫ぶ。
「大体、みんなみんな僕の事をなんだと思ってっ...!!その本だってお祖母様から貰った大事な絵本なのに、意地悪な使用人が勝手にそこに置いて取れないようにしたし、どうせ心の底では僕は一生小さいままだと思っているんだろ!!だから今だって婚約者にまで『小さい』なんて言われるんだ!だからっ、ずっと座っていたかったのに、こんなの、屈辱以外の何物でもないっ!!お前もっ、婚約者が一生小さい奴だったら嫌だろう!?僕だって、嫌だ、小さいままじゃ...」
...まさかそこまで思い詰めていたとは。あとその使用人解雇にした方が良いですよ。
顔を真っ赤にして目尻には涙が浮かんでいるエリオット様は、先ほどの大人ぶった態度と違い年相応に見える。
そんな彼に、私は絵本を持ちながら静かに近寄る。
「いえ、小さいままではないですよ」
「え?」
「今は確かに私よりも小さいですが、それは女性の方が成長期が早いからですので、暫くすればエリオット様は私よりも大きくなりますよ」
「...わからないだろ、そんなこと」
「そんな事ないですよ。よく考えてみてください、エリオット様のお父様はお母様よりも小さいでしょうか?」
「...おっきい」
「エリオット様のお家の男性は全て女性より小さいでしょうか?」
「......おっきい」
「そうなんですよ。私は暫くすれば身長は止まりますが、エリオット様はどんどん身長が大きくなりますよ。それにエリオット様のお母様は女性の中でも背は高い方なのできっとエリオット様のお父様より大きくなりますわ」
「...そ、うかな」
「はい。あと訂正させていただきますが、私は別に背の低い高いで婚約者を決めませんよ」
「...で、でも、メイドが恋人や婚約者は自身より背の低い人は嫌だと...。僕は君より背が低いと知って君に近寄らないようにしていたんだけど...」
「私の為だったのですか?その気持ちはとても嬉しいですが、私はそんな事より楽しく話せる方が好みですわ(攻略キャラは論外)。だって将来夫婦になるんですもの(恐らく別の誰かと)」
私の副声音が聴こえていないエリオット様は、また目尻に涙が溜まりそうなのを一生懸命我慢している。いままでそういう気持ちを溜めてきたのだろう、彼の表情は憑き物が落ちた様な雰囲気に包まれていた。
それにしてもエリオット様。なんていう子供っぽい悩み...。逆に感服いたしました。
予想以上に子供っぽすぎる悩みにしてしまいました(^^)でも幼少期の頃は届かない物になんど腹を立てたことか...(遠い目)




