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死のクリスマスイブ・24

   二十四


 いったいこんなものをどうしろっていうんだ? おまえは俺の計画のなかには入っていなかったんだぞ!

 克行はかつて友人であった男の死体を見つめ頭を悩ませていた。

 死体から出た血はカーペットへしみこみ、ダークグレーのカーペットは薄気味悪い赤黒い色に染まっている。西崎が息を引き取ってから三十分が過ぎている。しだいに体は冷たく変わり、いずれはガチガチに固くなることだろう。すでに顔の色は血の気を失って、白く変色してきている。

 いつまでもここに置いておくわけにはいかない。何よりもこのままここに置いておけば今はなんとか押さえてこんでいる吐き気が、必ず胃のなかにあるものを押し出してしまうだろう。かといってこの世の中簡単に死体を処理する場所なんかあるはずがない。

 なんて片手間な計画なんだ。どうせなら自由に死体を持ちこみ、処分することの出来る場所くらい用意しておいてくれたっていいじゃないか。

 さあ、どうすればいい?

 これまではただその体にコードの刻みこまれた弾丸をぶち込めばいいだけだった。そうすれば誰かが警察に連絡し、その死体は処理されることになる。だが、ここにある限り警察は処理してくれそうはない。ほんの一本電話すれば片付くのかもしれない。だが、警察に連絡する気持ちにはなれなかった。昼間、学校を追われるように逃げ出したのも同じ理由だ。

 警察を……いや、警察官が怖いからだ。警察官という権威が怖いわけじゃない。今の克行ならばむしろ警察官のほうが怖がることは立証済みだ。問題はあの立花が同じ警察官という職業についているということだ。

 立花には克行のやっていることが知れるのは避けたかった。いや、もう手遅れかもしれない。何よりも弾丸に刻みこまれたコードによって特権者たちを殺しているのが克行であることは知られている。その情報はすでに立花のもとへ届いているかもしれないのだ。それは立花との戦いが不利になることを意味する。

 立花はこの俺を敵と見なすだろうか。そして……

 倒れている西崎の姿がそのまま自分の姿へとつながって見えた。

 いったいなんで俺の目の前に現れやがったんだ? まるで「火気厳禁」と書かれた立て札を捜して、そいつの前でタバコを吸おうとするようなもんじゃないか。いや、こいつはもっと悪い。なぜなら、こいつは俺を殺そうとしやがった。克行は思わず喉元に手をやった。西崎のナイフによってかき切られそうになった喉元。痛みはまるでなかったが、手にほんの少し血がついているのが見えた。おそらくさっきナイフが当てられた時に皮一枚切られたのだろう。

 転がっている西崎の死体に唾を吐いてやりたいような衝動にかられた。血の匂いが部屋に充満している。おそらくこの匂いは部屋をそっくり洗い流さないかぎり消えることはないだろう。克行は立ち上がると死体を見下ろし思いっ切り蹴りつけた。人間として扱いたくなかった。人間として考えなければどうにでも処分出来る。

 さあ、こいつをどうする?

 バスルームでバラバラに解体し、ゴミ袋へ入れて宅配便で夢の島へでも送ってしまうか? それとも いっそ、今すぐにそこの窓から放り投げてしまうか?

 この時間ならばまだ家路を急ぐ多くの会社員やロマンスを語る恋人たち、子供連れの母親だっているはずだ。

 空から降ってくる死体。そうそう、真っ赤な服に白い髭でもつけて空へ放り投げてやろう。サンタクロースの死体。ピッタリじゃないか。サンタは死んだ。今年はサンタはやって来ない。今どきの子供たちに大人たちはどうやって説明する?

 だが、そんな空想もちっとも面白くなかった。それがユニークに思えるとしたら、あくまでも空想のなかの話であって、今目の前にあるのは現実として克行を襲っていた。

 さあ、考えるんだ。時間はまだたっぷりあるんだ。今夜、麻美の部屋を訪ねるまでに始末すればそれでいい。

 さあ、考えろ。

 西崎の死体を見つめながら克行はじっと思案にくれていた。


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