摩天楼への道
「この先シティに近づいてからは【ゾーラ】と名乗って下さい」
バギーの助手席で揺られていると急にそんな事を言われた。
「偽名を名乗る理由もよくわからんが、なぜゾーラ?」
「その体の元の持ち主の名前です、今後我々は侵入者共のIDを利用して生活していくので、本人になりすまします」
「うわぁめっちゃ悪い事してる感じがする」
「施設に侵入してきて散々荒らしたカスの事などを悪く思う必要はありません」
「まあそれもそうか」
なるほどゾーラね、このへん栃木のはずなんだけど500年も経てばグローバル化も進むか。
「私は【プリス】と名乗らせていただきます、高圧電流でやられた奴です」
「女の子二人旅かよ」
「あなたが頭を吹き飛ばしたせいで男のデータをハッキング出来なかったんですよ、ゾーラ」
「なら事前に頭は残せって言って欲しかったわね、プリス」
すげえ違和感。
「もうちょっと自然に会話出来るように練習しておいてください」
「オマエモナー」
こんな三文芝居で大丈夫か?
「こんなんでさ親しい人とかを騙せるのか?」
「問題ありません、ハッキングで得た情報だと親しいと言えるような人間はいないようでした」
まあ見るからにはみ出し者って感じではあったか。
「侵入してきた6人は全員が仲間という訳ではなく、防衛を突破するために手を組んだ一時的な仲間、と言った感じだったようです」
「6人?4人しか見てないが」
「2名は侵入時に防衛機構にやられています、捨て駒として使われた感じですね」
思ったよりろくでもない集まりだった。
バギーは道なき道を進む、けっこう大きく跳ねたりしているがそれほど大きな衝撃は感じない、こんな見た目だけどちゃんと未来の乗り物なのかもしれないな。
「では歴史の授業の続きといきますか」
話を聞いたのが2400年までで、今が2500年らしいからここ100年の出来事って訳だな。
「企業がシェルターを作って人々を管理し出した、あたりまで話しましたのでその続きです」
支配層が変わっただけで別に社会構造は変わらなそうだけどな。
「企業はシェルターに人を迎え入れ、その労働力でシェルターを拡張、更に人を受けれて、とどんどんシェルターを大きくして行ったそうです」
まあ人が集まって生きていくのは普通か。
「そしてシェルターと呼ぶには大きくなり過ぎたそれをシティと呼び始めた」
もう都市レベルのサイズにまでデカくなったんだろうな。
「その後も企業はどんどん住人たちを迎え入れたそうです、もちろん対価は必要で表向きには労働」
「裏向きには?」
「人間を商品として別星系へ売り払っているようです」
「ありそうな話ではあるが、いったい誰買うって言うんだ、自分の体を改造しないと生きていけないぐらい弱っちい生き物なんか必要か?」
「どういった人間が商品として扱われているのかは不明ですが、シティ内で条件に合った人間が商品として出荷されているようです」
人間牧場じゃん。
「もう碌な資源も無い地球にとって最後の資源という訳ですね」
「そんなシティに行くっての?」
「大丈夫です、あなたにはもう脳しか残っていませんので出荷対象になる事も無いでしょう」
喜んでいいのかどうか。
「ほらシティが見えてきましたよ」
立ち上がって前を見る、やはり好奇心には勝てない。
黒く淀んだ空まで伸びる一本の柱、天を衝く塔、摩天楼。
塔全体が煌びやかに光り、サーチライトのようなものが何条も周囲を照らす。
「なんだあの悪趣味なのは」
「あれがトチギシティ、最大全高2キロのビル型都市です」




