未来の娑婆
銃を構えてゲートの外に出る、周囲を見回すが人影も気配も無い。
「よかったですね、他の同業者に後を付けられるほど無能では無かったようです」
外の世界は思ってた以上に悪かった、暗く淀んだ空、緑とか紫に変色した沼地、ねっとりと絡みつくような空気、最悪だ。
「思ってた以上に大気の汚染が酷いですね、これでは普通の生命が生きていくのは難しそうです」
「放射能とかもあったりする?」
「そんなもので済めばいいほうですね、もっととんでもない物がわんさか漂っています」
咄嗟に口を覆うがそれで何になろうか。
「大丈夫です、あなたのボディはこの程度の汚染なんともありませんよ」
自分の体を見てふと思う。
「戦闘力目当ての機械化というより生きる為のだったのかなこいつ等も」
「両方じゃないですかね、生きる為と奪う為、一挙両得って奴です」
「得か?それ得って換算か?」
「侵入者共の車はこちらです、はぐれないでくださいね」
俺の意見を無視して歩みを進める箱、仕方なく俺も瓦礫の積み重なった大地を歩く。
暫く歩くと倒壊した建物で周囲から身を隠す事が出来る位置に車が置かれているのが見えた。
「あれか」
対象が近づいてきて細かな部分が見えてくるが、なんだこれ。
「バギーか?」
高い車高にオフロードタイヤ、観光用の小さいのではなくラリーなんかに出たり軍隊が使ってそうなやつだ。
「デザインからそこはかとない未来を感じるけど、未来ってもっとこう、さ」
「現在の状況に見合った車ではないですか、舗装されていない道どころか道の無い所を進む必要があるんですから」
そりゃそうなんだけど。
「これじゃ世紀末じゃないか」
「それも連載当時では未来の出来事を描いていますよ、このイカれた時代へようこそ」
うずくまって泣いてても始まらない、か。
車に近づくとその陰にバイクが2台止められていた、これもオフロード仕様で特に変わった機能は持って無さそうだ、未来だったらもっとこう超電導モーターでどうとか、変形してアーマーになるとか、そういうの期待しちゃうじゃん。
「また変な事考えているんですか、そのバイクも持っていきますので車の後ろに括りつけて下さい、何のためにその長い手足があるんですか、まさかこのボディである私にやらせようと言うのでは無いでしょうね」
「やります、やりますよ」
いちいち文句を挟まないと喋れないのかあの箱は。
荷台に積む為にバイクを持ち上げる、バイク自体が軽いのかこのサイボーグボディが強いのか驚くほど軽々と持ち上がってしまってたたらを踏む。
「身体の使い方は追々慣れてください、貧弱な人間だった頃の感覚で行動すると色々な物を壊してしまいますよ」
「わ、わかった」
まるで中身の入っていない袋でも持ち上げているようだ、気を付けないと撫でたつもりで殺してしまう悲しいモンスターになってしまいそうだ。
持ち上げたバイクをバギーの荷台にそっと載せる、何処も壊してない事を確認してもう一台も荷台に載せる。
「ロープで固定して欲しいですが、大丈夫ですか?破壊しません?」
「大丈夫だ、そっとやる、安物の完成品トイを触るように慎重にやるから」
ロープを引っ掻け、緩すぎず且つテンションが掛かりすぎないぐらいでバイクを固定する。
「例えの意味はよく解らないですが、まあまあうまく出来てますよ」
「おいおい細いツノ部分なんてちょっと力んだらポキンだぜ」
「訳の分からない事を言ってないで早く助手席に乗ってください」
「はいはい、って助手席!?お前が運転すんのか?」
「何を驚いているのやら、このような原始的な乗り物の操作など楽勝です」
恐る恐る運転席を覗いてみると、運転席の椅子の上に立ちその細いアームでハンドルを掴む箱の姿が見えた。
「いやいや、ハッキングして操作するんじゃないんかい!」
「なんでもかんでも機械制御と思わないほうがいいですよ、車全体を電子的に制御するような技術はもう失われているようですからね」
なんともチグハグなこった、体を機械にしてビームガン撃ってるけど車はステアリング操作なのか。
「いや、わざとかも知れませんね、車をハッキングして事故に見せかけた殺人、なんてものが2200年代には良く起きていたようですから」
「嫌すぎる未来世界だ」
「ほら早く乗って、ここから一番近いトチギシティまで20キロはあるんですから」
「トチギ!」
思いもかけない名前、北関東だったんだここ。




